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  • 映画『犬の生活』 チャップリン初期の転換期となった短編

    映画『犬の生活』 チャップリン初期の転換期となった短編

    映画『犬の生活』 A DOG’S LIFE

    犬の生活

    チャップリン・スタイルが確立した作品

    チャップリンの映画が本当に初期の頃から、少しずつ変わり始めた作品。
    それまでドタバタ振りを見せて観客を楽しませる・・・だけの作品から、チャップリンらしい笑いに、貧しさや人間の夢や強さを表現し始めた作品。

    そう、この作品には人の生活というものが描かれ始めている。
    むしろ、人の生活を一匹の犬に投影することで、おもしろおかしく、実はそこに人間の悲哀を感じさせてくれる。
    この映画では、その後の チャップリンの作品に色濃く出てくる特徴が、ふんだんに見ることが出来る。

    チャップリン作品の集大成(と言っても、いつの作品もチャップリンは存分に見せてくれるけど)のような芸の数々。
    映画は見せるもの、観客に動きを見せることで笑いや哀しみを感じさせる、そんな彼の芸がこの作品にも有ります。

    有名な犬のしっぽでミルクをなめさせるシーン、笑いと共にそこには本当の貧しさ、最後の一滴まで大切にする知恵、そこがチャップリンらしい。
    笑いの中に人間の生活が見えてくる。
    食事もままならず、盗んだソーセージを自分がお腹が空いているのに、しっぽを振る犬にあげてしまう。そこに見るチャップリンの優しさ、彼の根底には強き者を挫き弱き者を助ける、本当の優しさがそこには存在します。
    この作品には、既に彼のその後の作品『独裁者』や『殺人狂時代』の根底に流れるものが有るのです。

    今回のこの作品、パイオニアから発売されているDVDでの鑑賞。
    最初に公開されたものに、後にチャップリン自ら音楽を付けたもの。
    チャップリンの才能は、サイレントからトーキーの移行の中で、音というものまで見事に演出している。 ドラマチックな迄の音楽、これもチャップリン自身が作曲、本当に多彩な芸術家である。

    Reviewed in 09.2000

    ちょっと補足

    テレビで見た外国映画で、意識して見たのはチャップリンが初めてである、ちょうど小学生低学年の頃。
    何故か?というと同級生のお兄さんが聴覚障害者で、よくチャップリンを一緒に見たからだ。
    セリフがないのに誰でも笑うことのできる映像、現代の日本のテレビ界を見れば考えられないことだと思うし、当時としても驚きがあった。

    チャールズ・チャップリンは映画の創世記に現れた天才児(本来は努力の人だが)で、映画の本質を理解して最後までトーキー化(セリフを喋る映画)に抵抗し続けた映画人である。

    この作品はそんな初期のドタバタ喜劇で笑わせるだけではなく、悲哀もセリフを語らせることなく映像だけで表現してしまった作品。

    映画『犬の生活』のデータ

    チャップリン Blu-ray BOX — Amazonで見る

    A DOG’S LIFE 30分 1918年 アメリカ

    監督■チャールズ・チャップリン
    製作■チャールズ・チャップリン
    脚本■チャールズ・チャップリン
    撮影■ローランド・トサロー
    助監督■チャック・ライズナー
    出演■チャールズ・チャップリン/エドナ・パーヴィアンス/トム・ウィルソン/シドニー・チャップリン/ビリー・ホワイト/アルバート・オースチン/ジェームズ・T・ケリー/チャック・ライズナー/ヘンリー・バーグマン

    <DATA>

     浮浪者チャーリー(チャールズ・チャップリン)は生活のため職安に出かけるが、周りの連中との競走に敗れ、職は決まらずじまい。
     ふて腐れる彼の前にやがて野良犬同志のケンカが始まる。
     その中でやられそうになっている一匹の犬に自分と同じ姿を見出したチャーリーは、矢も楯もたまらずその犬を助け出し、以後彼と犬との共同生活が始まって行く・・・。

     比較的初期のチャップリン映画だが、ドタバタ喜劇の中に貧窮のつらさをにじみ込ませる辺りなど、笑いにペーソスを織り込む独自の作風はこの作品で誕生したと言われている。
     その意味で、後年の諸名作の原典と言っても差し支えはないだろう。
     後に音楽(勿論作曲は彼自身)を付け加えたサウンド版が作られているが、ここでもオープニングを悲劇的に盛り上げたり、又犬を助け出すシーンでの効果的な使い方などに、“音楽とアクションがコミックです”という彼の信条が伺え、興味深い。 <allcinema>

  • 映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 苦しい時は逃げてもいい・・・

    映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 苦しい時は逃げてもいい・・・

    映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 Manchester by the Sea

    癒えない傷も、
    忘れられない痛みも。
    その心ごと、生きていく。

    2017年5月13日(土)シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

    まずは見てから語ろう!

    個人的には独りで見たい作品だが、心が通じてるカップル同士で見るのも良いかもしれない。
    アメリカ・ボストン近郊の小さな漁港の街のマンチェスター・バイ・ザ・シーという街での物語。

    とても地味な物語で、日本映画でいうところの小津安二郎作品のような映画で、ケイシー・アフレックがアカデミー賞の主演男優賞を取らなかったら、どう宣伝するんだろう~と思ってしまう。
    ケイシー・アフレックはベン・アフレックの弟で、今作品のプロデューサーはマット・デイモン。
    ベン・アフレックとマット・デイモンは親友で『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でも3人は共演している。

    当初、マット・デイモンが監督・主演で企画されたものだが、脚本をケネス・ロナーガンに依頼して、そこから彼の監督、ケイシー・アフレックの主演となった作品。
    そして、第89回アカデミー賞で、ケイシー・アフレックが主演男優賞、ケネス・ロナーガンが脚本賞を受賞した。

    そしてこの作品が終わる頃には、劇場にいる人々の涙を拭う姿があった。

    BEVERLY HILLS, CA – NOVEMBER 14: Producer Matt Damon, Ben Affleck gets a brotherlly grab by Casey Affleck at the “Manchester By The Sea” Los Angeles Premiere at AMPAS Samuel Goldwyn Theater on November 14, 2016 in Beverly Hills, California. (Photo by Todd Williamson/Getty Images for Swisher Productions)

    重い十字架、考えさせられるラストへ

    口数の少ない主人公のリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)は、ボストンで便利屋をしていて、独り暮らしで友人もいない。
    そんな彼の元に、マンチェスター・バイ・ザ・シーに住んでロブスター漁をしている兄が倒れたという連絡が入る。
    ボストンから1時間くらいのマンチェスター・バイ・ザ・シーの病院に駆けつけると、既に兄はなくなっていた。
    兄の遺言で、兄の一人息子の後見人になるようにとあるが、リーは頑なにそれを拒む。

    リーが頑なにマンチェスター・バイ・ザ・シーでの甥の後見を断る理由がこの作品の最大のターニングポイントになるが、ネタバレになるのでここでは語れない。
    このシーンで観客からは嗚咽があがった。
    本当に良い映画なので、絶対、見て欲しい!そして確認して欲しい。

    家族や友人たちとの絆が強い人ほど、この重い十字架を背負った時に深い傷を負うことになる。
    この映画のラストには、最初はなかなかスッキリしたものを感じられなかったが、後から色んな感情が込み上げてきて、忘れられない作品となった。

    以下は、ネタバレがあるかもしれないので注意してください。

    私的『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    人は心が折れた時、どうやって再生するのだろうか?
    主人公は心に大きな傷を負い、彼は何も悪くはないのに重い十字架を背負ってしまった。
    彼を支えてくれるのは、彼が近づきたがらないマンチェスター・バイ・ザ・シーに住む友人たち。

    彼にはマンチェスター・バイ・ザ・シーに楽しい想い出と辛い思いが共にあることで、彼にとってこの街がトラウマになっている。

    ラストは私にはスッキリするものではなかったので、少し考えさせられた。
    人は逃げてもいいんだ!と。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    決して暗いだけの話ではない。
    主人公の甥・パトリックは街で二股をかけているなど、父親が亡くなったのに前向きに強く生きていこうとしている。
    ある意味、主人公・リーとは対照的である。

    人が生き続ける意味、そして生きる源は、人との関係性なのだと感じる。
    人は独りでは生きていけない、どんなに離れていても繋がりを感じることが重要なのだと。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    ケイシー・アフレックの演技が素晴らしい!脚本自体が素晴らしいがそれに応えた彼の演技が見事。
    実は主人公・リーの陰陽を分けている演じるという困難にチャレンジして成功している。

    彼を取り巻く、リーの兄・ジョーを演じたカイル・チャンドラーも良かったし、中盤からキーになってくるリーの妻・ランディを演じたミシェル・ウィリアムズも素晴らしい。

    作品の中の重い十字架以外にも、出て来る人々がそれぞれに背負っている日常がある。
    甥・パトリックにも母親との関係がのしかかる。

    実にリアルに人々の生活が描かれている。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    背負わされる十字架の重さを思うとテレビにはできない、そしてこの脚本を舞台劇でやるのも難しいだろう。
    映画でしか表現できない世界観があり、表現がそこにあり、映像や音楽の素晴らしさも合わさっているので劇場で見て欲しい作品。

    ⑤ エンターテインメント性

    娯楽と芸術という合間という点では、芸術やリアリティに振れている作品だと思う。
    それくらい地味にできている作品。
    でも、俳優の素晴らしい演技を楽しむ、アカデミー賞監督賞を取ることはできなかったが、演出も素晴らしかったので、映画としての楽しみ方もできる作品。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    今年は『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼルが史上最年少のアカデミー監督となった訳だが、どっちが好きか?というと、ケネス・ロナーガンの演出の方が好きだった。

    『ラ・ラ・ランド』の演出は、色んな工夫や努力がされていて、あのアイディアには感服したしアカデミーに値すると思っている。

    一方で今作品は、ガス・ヴァン・サント監督のような演出でビックリした。
    少ないセリフで心情が表現されていて、脚本の持つテーマと共に静かに時間が経過していく様が見事に表現されている。
    映像全体が瑞々しさを感じさせてくれる。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    なんと言っても脚本が素晴らしい!!

    映画を見終わった直後は「凄い衝撃的な物語だなぁ~」と思ったが、しばらくするとこの脚本こそがキーになっていると感づかされる。
    時系列で物語を構成したら、これ程の作品にはならなかっただろう。

    主人公の兄が亡くなるところから時系列に物語が進むが、そこに過去の回想が差し込まれていく。
    その回想の使い方がこれだけ見事な作品は珍しい(回想が多いと失敗することがおおいが)。

    主人公や周辺の人々のトラウマが一つの回想毎に明かされて行く。

    そしてタイトル。
    単なる街の名前をタイトルにしているが、邦題もそのままにした配給元の勇気には拍手もの。
    これを情緒的な放題に変えて欲しくないし、街の名前がタイトルであることに大きな意味がある。

    ⑧何度も見たくなるか?

    決して軽い話でも、エンターテインメント性が高い作品ではないが、心にしみいる作品。
    人生は常に夢が叶うものではない、逆に失敗することのほうが多いと思う。

    そんな時に見たい作品。
    それ以外にも、この美しい作品は何度見ても心に響き続けると思う。

    映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のデータ

    監督・脚本■ケネス・ロナーガン
    出演■ケイシー・アフレック/ミシェル・ウィリアムズ/カイル・チャンドラー/ルーカス・ヘッジズ/カーラ・ヘイワード
    製作■2016年/アメリカ/ユニバーサル作品
    上映時間■137分
    配給■ビターズ・エンド/パルコ

    (C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

    映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

    【作品紹介】
    本年度アカデミー賞主要6部門ノミネート!主演男優賞(ケイシー・アフレック)、脚本賞(ケネス・ロナーガン)が受賞!ゴールデン・グローブ賞主演男優賞受賞!
    マット・デイモンがプロデューサーを務め、『ギャング・オブ・ニューヨーク』の脚本でアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたケネス・ロナーガンが監督・脚本を務めた珠玉の人間ドラマ。

    ボストン郊外で便利屋として生計を立てている主人公が、兄の死をきっかけに故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーへ戻り、16歳の甥の面倒を見ながら過去の悲劇と向き合っていく。

    (C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

  • 「死にたい」と思ったときに、元気なるための映画

    「死にたい」と思ったときに、元気なるための映画

    どんな時に人は「死にたい」と思うのだろう

    ベルリン・天使の詩

    死とはなに?

    自分が「生きる」ことへの執着心が低いせいか、よく「死ぬ」ことを考えます。
    考え始めると、こんな怖いことはなくて、死ぬことが怖くなります。

    死の定義が難しいのですが、決して脳死がどうのとかと言う医学的なお話ではありません。
    どちらかと言うと宗教観に近い輪廻転生のようなものでしょうか?
    人は死んだら、輪廻転生するのか?それとも天国(や地獄)に行くのか?人が絶望しないためには、輪廻転生や天国に行けることを考えることは、その苦痛の大きさからは当然かもしれません。

    80歳になる母親は「死にたくない」と言います、長生きしたいと。
    歳を取ると覚悟ができるのかな?と思ったりするのですが、どうやらそうでもないようです。
    母は会う度に「自然に死にたい、癌になっても告知をして欲しくない」と言っています。
    自分はどうなんだろう~とそんな時にふと思います。

    もし人間が不死だったら?
    それは願望であり、だから吸血鬼のような不老不死の怪物を想像してみたり、クローン人間を想像?創造?してみたりするのだと思う。
    でもそれって、A.I.化されたアンドロイドとなにが違うんだろう~と。
    このあたりは、スティーヴン・スピルバーグ監督の『A.I.』は一つの回答で、人間が不老不死になることはないし、人の生きがいは、限りある人生だからとも言える。

    確実なことは、今の段階では肉体が滅びることが死なのは間違いないということです。

    映画『永遠の僕たち』 RESTLESS

    ガス・ヴァン・サント監督の『永遠の僕たち』は、主人公が自らの臨死体験から霊が見えるようになり、死にとらわれるようになり、見ず知らずの故人の葬式に参列することを繰り返す少年。
    ある葬式で余命3ヶ月の少女と出会うことで、少年は死を違うとらえ方をし始める。

    決して死というものを後ろ向きにとらえず、いつかは訪れるもの。
    でも一つ一つの命には価値があることを教えてくれる作品です。

    監督■ガス・ヴァン・サント
    製作■2011年/90分/アメリカ
    出演■ヘンリー・ホッパー/ミア・ワシコウスカ/加瀬亮

    映画『永遠の僕たち』

    死にたい

    何度か思ったことがある、でも具体的な行動に出たことはない、そこまでの勇気はなかったと言うべきか、それともそれ程強い願望ではなかったのかもしれない。

    若い頃の死にたいは、生きることが「辛い」の思い。

    それはいじめであったり、家庭での親子関係が上手くいかなかったり、勉強が思うようにならなかったりだった気がする。
    やはり大きいのはいじめの問題かな?
    単純にいじめと言うと、友だちから仲間外れにされたり、嫌がらせされたり、暴力を振るわれたりだけど、もっと精神的な孤立感も有るのかなと。

    映画 アニメ『聲の形』 The shape of voice

    小学生の時、聾唖の少女が転校してきて思わずいじめてしまった。
    友人の裏切りで、いじめの責任を一人に負わされてしまった主人公は、5年後、周囲から孤立して自殺を決意した主人公の少年は、かつていじめた少女に会いに行く。

    いじめという問題に向かい合い、少しずつ家族や友人に触れながら一歩前進する少年の姿を感動的に描いた作品。

    詳しくは「映画『聲の形』 ストレートに伝わらない心の声」をどうぞ

    監督■山田尚子
    アニメーション制作■京都アニメーション
    原作■大今良時
    脚本■吉田玲子
    キャラクターデザイン■西屋太志
    製作■2016/129分/日本
    声の出演■入野自由/早見沙織/悠木碧

    映画『聲の形』

    自分の場合はなかったけど、社会人の自殺は仕事に追い詰められてと言うケースが多いように思える。
    最近はそうでもないけど、仕事量とその責任に押しつぶされて自殺するサラリーマンは何人かいた。

    これはちょっと想像がつかないけど、借金苦からなのか・・・でも今の日本で死ぬほどお金に困ることはあるのかな?
    自己破産と言う手段もあるし、逆に良心の呵責から自殺してしまうのかもと。
    でも、お金に困るということは人を追い詰めていく・・・少しでも働く意欲があればよいけど。

  • 映画『ラ・ラ・ランド』 伝えずにはいられない、この楽しさ!切なさ!

    映画『ラ・ラ・ランド』 伝えずにはいられない、この楽しさ!切なさ!

    映画『ラ・ラ・ランド』 LA LA LAND

    夢をみていた

    2017年2月24日から絶賛ロードショー中!

    『セッション』のデイミアン・チャゼル監督、最新作!

    いよいよ明日に控えるアカデミー賞に14ノミネート、既に前哨戦のゴールデン・グローブ賞を歴代最多7部門受賞という作品、おそらくアカデミー賞も作品賞と監督賞は確実でしょう。

    ちなみに『セッション』は面白かったけど、世間の評判ほど私は評価しておらず・・・ジャズにこだわりを感じる監督ですが、私の知っているジャズとイメージが違ったりと、『セッション』は『愛と青春の旅だち』の焼き直しというところも有って。

    さて話はそれたので戻すと、主演の二人、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの魅力が全開!
    歌に踊りにピアノに!と全てを見せてくれます。

    なんと言っても、過去のミュージカル映画へのオマージュが凄かったり。
    先日、チャゼル監督が来日した時には、ウルトラワイドアングルとか映像の色使いとかは、故・鈴木清順監督に影響を受けたとも語っていた。
    本当によく勉強していて、それが画面いっぱいにあふれている、映画愛を感じる作品だし監督。

    そして映像や音楽だけではなく、恋愛映画としても本当に切ない見事な物語になっています!

    オープニングから、これがミュージカル!という入り方、あれも凄いなぁ~よく撮ったなぁ~と感心させられる、いきなり感動!
    逆にミュージカルが苦手な人は、オープニングでNGかも。

    実は大人のための『君の名は。』だったり

    去年は日本から世界中で『君の名は。』旋風が起きた、10代から30代くらいまでは熱中できた、50の私が分岐点くらいでこの世代から上はNGだったっぽい、私は『君の名は。』は大好きだが。

    個人的には、去年の『君の名は。』のような鑑賞後の興奮を感じている。

    『ラ・ラ・ランド』は逆に30代から上のゾーンにハマりそうな作品。
    実際は『ウエストサイド物語』やもっと古いハリウッドのミュージカル『雨に唄えば』や『バンド・ワゴン』など、そしてジャック・ドゥミ監督の『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』などの作品へのオマージュと思われるシーンが出てくる。

    フレッド・アステアやジーン・ケリーのダンスを模したりと、映画好きにはたまらないシーンのオンパレード。

    そう言った演出、それに音楽の良さもあるが、なんと言っても物語が映画好きの琴線に触れる。
    映画スターに夢見る女性の夢と挫折とそして・・・
    ハリウッドのアカデミー会員、映画を作っている人たち、映画好きの観客にはたまらない!

    ミュージカルが苦手じゃない映画が好きな人には絶対オススメの極上ラヴ・ストーリー!

    私的『タイトル』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    夢をあきらめるな!
    『セッション』でもそうだが、夢のためには犠牲にするものがある。

    前半はボーイ・ミーツ・ガールもので、ハッピーな恋愛ミュージカルという趣き。
    中盤から少し主人公二人の葛藤を音楽なしで語られる。
    それはシビアな現実!夢をとるのか、二人の愛をとるのか?

    ラストに結果が判るけど、どちらを選んでもそれぞれの幸せがある、それは自分が選択したことだから。
    人生は一度きり、やり直しはきかない、だったら自分の夢をあきらめるな!

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    1940年代から’60年代くらいのミュージカル映画へのオマージュが凄い!それがこの監督の映画愛なんだと思う。

    それでいて、それを越えようとするチャレンジが凄くて、映像が凄いし音楽も踊りも最高!
    オリジナルでこんな作品を作れてしまうなんて。

    ジェームス・ディーンの『理由なき反抗』の舞台となったグリフィス天文台が重要なシーンととして使われている。
    なんとなく、ライアン・ゴズリングとジェームス・ディーンが被って見えるのは私だけ?

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンが、歌に踊りと見事にやりきっている!
    まるでフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのよう~(流石にレベルが違うけど)
    歌も決して上手くないけど、全編に渡って頑張ってる。

    ライアン・ゴズリングはピアノを実際に弾いてるらしい、指の動きはかなり完璧!役者根性を感じる。
    実際の演奏は他の人だと思うけど、『セッション』でもこだわった演奏シーンも迫力もの。

    エマ・ストーンはこのところ、いろんな名監督の作品に主演しているが、今回はハリウッド・スターに憧れる女優の卵、色々な表情を見せながら、同じ女優卵たちには共感できるシーンであふれている。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    ミュージカルって、本当に映画でしかできないと思う。

    そして今回は、演出が映画らしさ!にこだわっている。
    過去のミュージカルでは、スタジオ(室内セット)を使って、トワイライト・タイムのシーンを再現したりするが、今回は完全ロケ(外での撮影)!

    トワイライト・タイムは30分位しかないが、そこを一発撮りをしている。
    もちろん入念に準備をして挑んでると思うけど、背景の夕日が最高に美しいところを映像化している。

    『ウエストサイド物語』で上空からニューヨークの街中に入っていくシーンに驚かされたが、そんな映画でしかできない!と言うような驚きのシーンが冒頭から詰まっている!!

    ⑤ エンターテイメント性

    人の好き嫌いが分かれるところだけど、私にとってはミュージカルは最高のエンターテインメント。
    逆に映画の要素の他に、歌や踊りという要素にも完璧が求められる。

    個人的にはチャゼル監督のジャズへのこだわりがあまり好みではない(私がジャズを理解していない・汗)ので、そのあたりには不満はあるけど。

    この作品は、映像も凄いし、歌や踊りのノリもよい!しかし物語も、ハリウッドのサクセス・ストーリーとしての完成度も高い。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    この監督は本当に映画を勉強している、過去のシーンを真似ているのではなく、オマージュとして取り入れているという感じ。

    オープニングのクローズなカメラから音楽と踊りとともにウルトラワイドにパンしていくカメラとか、凄いなぁ~と思わせる。
    一方で、ジャズ・バーの中を移動していく主人公を追うようなハンディカメラを使った映像とかも、躍動感を映画に持たせている。

    ちょっとしたシーンでもこだわってこだわって作っている。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    オリジナル!
    ハリウッド・スターを夢見る女優の卵とジャズ・バーを持ちたいジャズピアニストの男性が出会って恋をして・・・
    そして夢に向かって、困難を乗り越えていく姿を描いている。

    この監督は、どちらの人生を選んでも、その人生に間違いはないと。
    本当は切ない物語なんだけど、でも二人とも夢を叶えた人生を歩んでいく。

    ⑧何度も見たくなるか?

    夢を諦めかけた時、夢を見失った時に勇気を与えてくれる作品。

    そして映画としてこんなに楽しい作品は久々!映画は夢の世界!そんなことを一時でも楽しめるなんて素敵なことだと思う!

    映画『ラ・ラ・ランド』のデータ

    上映時間■128分
    製作国■アメリカ
    公開情報■劇場公開(ギャガ=ポニーキャニオン)
    初公開年月■2017/02/24
    監督■デイミアン・チャゼル
    脚本■デイミアン・チャゼル
    撮影■リヌス・サンドグレン
    衣装デザイン■メアリー・ゾフレス
    振付■マンディ・ムーア
    作詞■ベンジ・パセック/ジャスティン・ポール
    作曲■ジャスティン・ハーウィッツ
    音楽■ジャスティン・ハーウィッツ
    音楽監修■スティーヴン・ギジッキ
    エグゼクティブ音楽プロデューサー■マリウス・デヴリーズ
    出演■ライアン・ゴズリング(セブ)/エマ・ストーン(ミア)/ジョン・レジェンド/ローズマリー・デウィット/ソノヤ・ミズノ/J・K・シモンズ
    (C)2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. Photo credit EW0001 Sebastian(Ryan Gosling)and Mia(Emma Stone)in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

    公式サイトはこちら

    【解説】
     「セッション」のデイミアン・チャゼル監督がライアン・ゴズリングとエマ・ストーンを主演に迎えて贈る本格ミュージカル・ラブストーリー。大きな夢を抱いてLAへとやって来た男女の出会いと甘く切ない恋の行方を、カラフルかつマジカルなミュージカル・シーンと、夢と現実の狭間で苦闘する主人公2人の葛藤のドラマを織り交ぜほろ苦くもロマンティックに綴る。
     夢を追う人々が集う街、ロサンゼルス。女優志望のミアは映画スタジオのカフェで働きながら、いくつものオーディションを受ける日々。なかなか役がもらえず意気消沈する彼女は、場末のバーから流れてくるピアノの音色に心惹かれる。弾いていたのは、以前フリーウェイで最悪な出会いをした相手セブだった。彼も自分の店を持って思う存分ジャズを演奏したいという夢を持ちながらも、厳しい現実に打ちのめされていた。そんな2人はいつしか恋に落ち、互いに励まし合いながらそれぞれの夢に向かって奮闘していくのだったが…。<allcinema>

  • 映画『雪女』 現代・雪女の愛とエロティシズム

    映画『雪女』 現代・雪女の愛とエロティシズム

    映画『雪女』

    あなたに また、
    あいたかった-

    2017年3月4日(土) よりヒューマントラストシネマ有楽町、シネマ・ジャック&ベティほか全国順次公開

    現代に蘇る雪女

    100年以上前の小泉八雲の「怪談」の一遍「雪女」を杉野希妃監督が独自の解釈で、現代の「雪女」として蘇らせた作品。
    彼女自身が、主演の雪女とユキの二役に挑んだ意欲作。
    撮影も杉野希妃監督の故郷・広島(尾道を中心として)で撮影が行われた。

    雪深い寒村で、ユキという見知らぬ土地から来た女性を妻にしたことから、村の中では彼女や彼女の娘を差別視する。
    日本という排他的な社会を象徴するかのようでもあり、ユキと青木崇高演じる主人公の巳之吉役の二人が愛の力で乗り越えて行く。

     

    本来、雪女という怪物を、人を愛した一人の女性として描いている。
    とても現代的なメロドラマでもあり、ユキを演じる杉野希妃の妖艶な美しさを楽しむ作品とも言える。

    またそれが日本的な映像とも余って、非常に美しい映像としてスクリーンに映し出される。
    日本の美というものを、発信している作品とも言える。

    私的『タイトル』

    テーマが有るか?共感できるか?

    どちらかと言うとホラー的な視点で怖いもの、というのが「雪女」の存在で有ったが、この作品では人間を愛してしまった一人の女性という視点から描いている。

    その一方で、人間がよそ者を迫害してしまうさまを描いていると言う点で、現代社会を感じる。

    作り手の強い意思を感じるか?

    杉野希妃が自ら演出して演じている、雪女の愛の強さがこの作品の芯となるが、体当たりの演技でそれを見せてくれている。

    俳優の意思や演技力が伝わるか?

    杉野希妃監督が、主人公に青木崇高を起用したのは「山臭さを感じたから」だという。
    彼の野性味あふれる力強い部分が、ユキを飲み込んでいく愛の力となっている。

    またベテランの佐野史郎や宮崎美子らの演技も、日本の古典的な部分を上手く引き出している。
    若手の山口まゆが、日本人らしい少女を好演している。

    映画らしい楽しさが備わっているか?

    部落的な差別の隠喩を感じるとともに、杉野希妃の本気の演技は映画ならでは。

    エンターテイメント性

    国際派映画人・杉野希妃として、日本の伝統を映像化している点や上野彰吾のカメラがそれを見事にモノクロとカラーで切り取っている。

    ただ時代設定が良くわからず混乱、マタギ(東北・北海道だけの名称?)の姿や着物姿と同時に、普通の背広も出てくるので、第二次世界大戦後のどこか、なんだとは思う。

    演出が素晴らしいか?

    独特の世界観がある、日本人が見ても(当たり前だが)違和感のない寒村。
    そして古くからの行事。

    一方で、海外を意識していると思われる所作の長回しによる撮影、日本発の作品としての見せ方としては「なるほど」というところがあった。

    脚本が素晴らしいか?

    今回は完全に、男女の愛に重きを置いている。
    その中で、二人の娘の存在の大きさを感じる、ただ娘を捨てて出ていくのだろうか?
    雪女は不老不死なのかな・・・と。

    日本という国の不思議さ、美しさを堪能できる作品としてオススメ。

    映画『タイトル』のデータ

    出演■杉野希妃/青木崇高/山口まゆ/佐野史郎/水野久美/宮崎美子/山本剛史/松岡広大/梅野渚/ほか
    監督■杉野希妃
    エグゼクティブプロデューサー■坂本敏明/田中弘樹/梶浦隆章/小野光輔/門田大地/市村友一 
    プロデューサー■小野光輔/門田大地
    コプロデューサー■福島珠理/山口幸彦
    2016年/日本/日本語(英語字幕付)/96分/カラー&モノクロ/シネマスコープ/Stereo/
    ©Snow Woman Film Partners
    配給:和エンタテインメント

    公式サイトはこちら

    映画『雪女』 【杉野希妃主演】

    【ストーリー】

    —恐怖と神秘と、そして雪の結晶のように繊細ではかなく美しい愛の物語—

    ある時代、ある山の奥深く、吹雪の夜。猟師の巳之吉は、山小屋で、雪女が仲間の茂作の命を奪う姿を目撃してしまう。
    雪女は「この事を口外したら、お前の命を奪う」と言い残して消え去る。
    翌年、茂作の一周忌法要の帰り道に、巳之吉は美しい女ユキと出会う。
    やがて二人は結婚し、娘ウメが生まれる。
    14年後。
    美しく聡明な少女に成長したウメは、茂作の遠戚にあたる病弱な幹生の良き話し相手だった。
    しかしある日、茂作の死んだ山小屋で幹生が亡くなってしまう。
    幹生の遺体には、茂作と同じような凍傷の跡があった。
    ユキの血を引く娘のせいだと、巳之吉を激しく問いつめる幹生の祖父。
    巳之吉の脳裏に14年前の出来事が蘇り、以前から自分の中にあったユキに対する疑心と葛藤する。
    自分があの夜の山小屋で見たものは何だったのか、そしてユキは誰なのか…。
    ©Snow Woman Film Partners

  • 映画『ブラインド・マッサージ』  目が見えないと見えてくる衝撃的な世界

    映画『ブラインド・マッサージ』 目が見えないと見えてくる衝撃的な世界

    映画『ブラインド・マッサージ』

    光を見る目、闇を見る目。

    2017年1月14日(土)より、アップリンク渋谷、新宿K’s cinemaほか全国順次公開

    イントロダクション

    南京の盲人マッサージ院を舞台に、激しい感情のぶつかり合い、目の見える人には想像できない人間関係を描いた本作は、2014年第64回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を、台湾のアカデミー賞・第51回金馬奨で作品賞を含む6冠、第9回アジア・フィルム・アワードで作品賞、撮影賞など、数多くの賞を受賞した作品。

    原作「ブラインド・マッサージ」 ビー・フェイユイ著は中国で20万部のベストセラー小説。
    監督は『二重生活』などのロウ・イエ、主演には新星ホアン・シュエン、実力派のチン・ハオなど。

    心が震える衝撃作品!

    「目には種類があるの。光が見える目と、闇が見える目が――」

    一番、印象的だったのは、盲目の美女をマッサージを受けに来た健常者の男性たちが口々に「彼女は美しい」と言う、すると彼女の外見を見ることができない、同僚の盲人マッサージ師が彼女に強い興味を持ち始めること。

    人は「五感」を持っているというが、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、そして視覚、この中でやはり一番なくて不便なのは視覚なんだと思う。
    美的感覚は、視覚と聴覚から得るものがほとんどのような気がするので、視覚がない場合の「美しい」の意味はなんなだろう、と。

    そして、盲目でありながら、人として生きると言うことは、恋愛もすればセックスもする。
    目が見えないことの不便さ、健常者には計り知れない世界が映し出される。

    私的『ブラインド・マッサージ』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    この作品の根底にあるのは「格差」。
    中国の中でも(日本も同様だけど)貧富の格差が広がっていて、特に盲目と言う弱者には限られた仕事しかできない。

    作品の中で、盲目の主人公が風俗店で売春婦と恋に落ちるが、盲目の人ができる人は自分の肉体を使うマッサージ師くらいしか仕事がない、都会でまっとうなマッサージ師になれる方がまだマシ。
    売春婦も自分の身体でお金を稼いでいる。

    兄弟が背負った借金を肩代わりする話を借金取りとしている中で「目が見えないと、街に立てば”物乞い”としてお金はもらえるが、そんなことはしない」と言う。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    この作品では目が見えないことが弱者として描かれているが、何が人を弱者にするかは様々であり、そこにスポットを当てることで見えてくるものがある。

    盲目の人からは健常者は”怖い”存在らしい、それは見えているものが違うから、接する態度が変わってくる。
    これは普通の金持ちと貧しい人の間では同じような気がする。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    今回、主要な登場人物は、健常者の役者が盲人役をしているが、これは素晴らしかった、てっきり全員盲人の人かと思っていた。

    時には人より激しい感情を露わにする、一昨年くらいに聾唖者の若者たちの生態を描いた『ザ・トライブ』がラストに殺人に走ると言う”動的”な描き方だったが、こちらは”静的”な描き方にも関わらず、感情の起伏の幅が大きく感じたのは、役者の力量の差も大きかった。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    盲目の世界をどう表現するか?どういう世界が広がっているのか、そして彼ら彼女らが何を考えているのか?そして、盲人が人として生きるという深さを描くには、映画でしかできない世界観があった。

    ⑤ エンターテイメント性

    演出が素晴らしいから、飽きることがない。
    ただ楽しいだけの話ではない、静的な世界観の中に感情的な激しさに衝撃がある。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    盲目の表現の仕方に、ピンぼけを使ったり、あえて暗闇が続いたり。
    盲人にとっては暗闇は、暗闇ではない、それが日常だから。

    ⑦ 脚本(原作)が素晴らしいか?

    主人公の女性に対する感情、カップルのセックス、そして日常の仕事、主人公が少しずつ成長していくことで、暗闇の中に見える人生の光を感じる。

    ⑧何度も見たくなるか?

    自分が体験できないことでもあるので、非常に興味深い。
    また、青年が成長する物語として、その感情の起伏の激しさを感じることができる。

    今の日本人の若者には少ない「生きる」ことへの欲求を感じることができると言う意味で、見る度に勇気づけられそう。

    映画『ブラインド・マッサージ』のデータ

    原題■推拿/英題:Blind Massage
    製作国■中国/フランス
    製作年■2014年
    上映時間■115分
    監督■ロウ・イエ
    脚本■マー・インリー
    撮影■ツォン・ジエン
    原作■ビー・フェイユイ著 『ブラインド・マッサージ』(飯塚容訳/白水社刊)
    編集■コン・ジンレイ、ジュー・リン
    出演■ホアン・シュエン/チン・ハオ/グオ・シャオトン/メイ・ティンほか
    配給・宣伝■アップリンク
    公開日■2017年1月14日(土)より
    公開情報■アップリンク渋谷、新宿K’s cinemaほか全国順次公開

    公式サイトはこちら

    ■作品紹介
    己の“美”に嫌気がさした女、“美”に執着する男、欲望の中で己を失う男――
    盲人マッサージ院で巻き起こる人間模様を苛烈に描き、観る者の価値基準を大きく揺さぶる衝撃作。

    南京のマッサージ院。ここでは多くの盲人が働いている。幼い頃に交通事故で視力を失い、「いつか回復する」と言われ続けた若手のシャオマー、結婚を夢見て見合いを繰り返す院長のシャー、客から「美人すぎる」と評判の新人ドゥ・ホン。ある日、マッサージ院にシャーを頼って同級生のワンが恋人のコンと駆け落ち同然で転がり込んできたことで、それまでの平穏な日常が一転、マッサージ院に緊張が走る――。

  • 映画『天使にショパンの歌声を』  家を失った少女たちの希望は音楽だった

    映画『天使にショパンの歌声を』 家を失った少女たちの希望は音楽だった

    映画『天使にショパンの歌声を』

    天使にショパンの歌声を

    自然豊かな美しいケベックの小さな音楽学校。
    突然訪れた学校閉鎖の危機に揺れる、教師と生徒たち。
    音楽の力を信じて、いま彼女たちの心は一つになる――

    本年度ケベック映画賞最多6部門受賞!!
    (作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、衣装賞、ヘアスタイリング賞)

    2017年1/14(土)より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー

    イントロダクション

    カナダを代表するフィルムメーカー、レア・プール。奇蹟の実話『天国の青い蝶』(04)、異色の青春映画『翼をください』(01)に続き、時代に翻弄されながらも、音楽の力を信じて強く生きる女性たちを描き、本年度ケベック映画賞最多6部門受賞、そして世界中の映画祭で大絶賛を博した新たな名作が誕生した。
    1960年代カナダ・ケベックの近代化を社会背景に、つつましくも逞しく、伝統と歴史に立ち向かう女性たちの姿に、生きる勇気と希望が沸いてくる。
    劇中には、ショパンの「別れの曲」、リストの「愛の夢」ほか、偉大なる作曲家による数々の有名曲が登場する。
    少女たちが奏でる未来の音色に、美しく豊かな名曲がもたらす希望の光に、誰もが心を打たれるに違いない。

    心に伝わる音楽の響き

    1950~1960年代のクラシックな香りがする作品、それは音楽がクラシックと言うだけではなく、古き良きハリウッド時代のような作風なのが心地よい。
    最近のハリウッド映画は”ハッピーエンド”が当たり前のような感じもあるが、’50~年代のハリウッドの美男美女(スター)映画は悲劇的で、切ない作品が多い、『慕情』や『哀愁』、『欲望という名の電車』、そしてノクターンが印象的な『愛情物語』など。

    この作品は「泣ける映画」ではなく、どちらかと言う微笑ましいヒューマンタッチな作品ですが、ラストはやはり切なくなる、その味わいを楽しむ作品。

    作品は『天使にラブ・ソングを…』にタイトルも、内容も似ている、修道院が音楽で財政難を乗り切ろうとすると、次から次へと災難が降り掛かってくる、その困難を乗り越えて行く姿と音楽が美しい。

    “LA PASSION D’AUGUSTINE”

    私的『天使にショパンの歌声を』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    人生再生の物語、何らかの事情で修道院に入れられた女性たち、そこにしか行き場のない少女たちが、音楽を通して立ち直っていく。
    その場を守ろうとする校長の想いと、成長していく姿が清々しい。

    一方で、世の中はそんな場所に対して寛容さはない。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    ラストは切ないが、少女たちが成長して巣立っていく姿に、未来への希望を感じる。
    ショパン、リスト、モーツァルトなどの数々の名曲を通して、音楽の持つ力や素晴らしさを感じる。

    それは映画の中での音楽の重要性と言う意味でも、また人生においても・・・

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    日本では無名な俳優たち、修道院の校長を演じたセリーヌ・ボニアーの演技が素晴らしい。
    修道女や生徒たちも個性的で、生き生きと演じている。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    映画にとっては映像は大きな要素となるが、心情と曲が非常に合っている。
    また、一昔前のカナダ・ケベックを舞台にしていて、四季の映像を見るのもこの作品の面白さ。

    ⑤ エンターテインメント性

    苦難を乗り越えて行く姿を見せるストーリーに、素敵な音楽の数々、そして美しい映像があり、それだけでも楽しめる作品。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    実は、監督のレア・プールの演出が良かった。
    シーンを説明するためのセリフが本当に少なくて、代わりに音楽で心情を表現しているようでもあった。

    また、少女に母親が亡くなったことを伝えるシーンを遠景で撮影することでの表現とかが、逆に言葉が聞こえないだけに心に響くものを感じる。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    典型的なハリウッド脚本、起承転結がハッキリしていて、次々と苦難が降り掛かってくる。
    そして、校長と姪の少女との対立と理解・信頼へと続く・・・

    決してハッピー・エンドではないが、登場人物たちは成長して希望へと独り立ちしていく。

    リストの「愛の夢 第三番」が印象的に使われていて、ラストへの感動へと続く。

    ⑧何度も見たくなるか?

    誰が見ても面白いと思う反面、ターゲットがハッキリとはしない。
    女性向けの映画と言えば言えるかも、クラシック音楽が(詳しくなくても)好きであれば心地よい映画。
    音楽を聞くような感覚で見れる作品。

    映画『天使にショパンの歌声を』のデータ

    天使にショパンの歌声を

    原題■La Passion d’Augustine
    監督■レア・プール 『天国の青い蝶』『翼をください』
    出演■セリーヌ・ボニアー/ライサンダー・メナード/ディアーヌ・ラヴァリー/ヴァレリー・ブレイズ/ピエレット・ロビタイユ/マリー・ティフォ/エリザベス・ギャニオン
    カナダ/2015/フランス語/カラー/103分/日本語字幕翻訳:古田由紀子/PG-12
    公開日■2017年1/14(土)より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー

    本年度ケベック映画賞最多6部門受賞!!
    (作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、衣装賞、ヘアスタイリング賞)

    公式サイトはこちら

    【ストーリー】
    白銀の世界に佇む小さな寄宿学校。
    そこは音楽教育に力を入れ、コンクール優勝者も輩出する立派な名門校だった。
    しかし、修道院による運営が見直され、採算の合わない音楽学校は閉鎖の危機に直面する。
    校長オーギュスティーヌは抵抗し、音楽の力で世論を動かす秘策を考える。
    一方、転校してきた姪・アリスに天性のピアニストの才能を見出すが、孤独で心を閉ざしたアリスは一筋縄ではいかない問題児だった。
    (c)2015-8212-9294-9759 QUEBEC INC. (une filiale de Lyla Films Inc.)

  • 映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』  今、最高のデート映画、泣ける!

    映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』 今、最高のデート映画、泣ける!

    映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

    たった30日
    恋するために
    ぼくたちは
    出会った

    イントロダクション

    150万部を突破した大ヒット小説「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」が遂に実写映画化!

    主人公・高寿を演じるのは、今、大人気の福士蒼汰、そしてヒロインには、ヒット作に出演し続ける注目の若手女優・小松菜奈。
    初共演の二人が、せつない運命を背負ったカップルを演じます。
    こちらも人気の若手俳優・東出昌大が、高寿の背中を押す親友役を熱演。

    監督・脚本には『ホットロード』『アオハライド』等、多くの恋愛青春映画のヒット作を世に出す三木孝浩監督×吉田智子コンビがふたたびタッグを組み、物語の舞台である京都の風光明媚な景色の中で、20歳のかけがえのない一瞬一瞬をみずみずしく映し出します。

    たまにはアイドル&デート映画で涙してみる!

    今年の日本映画を見ていて気付いたのは、『君の名は。』もこの作品も、そしてテレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」でも、モテナイ男の恋愛説明書(トリセツ)が必要なんだなぁ~って。

    それを今、もっとも人気のある若手俳優(山崎賢人くんと二分してるのかな?)の福士蒼汰くんが演じてる訳だから、女の子にとっても「こんな素敵なトリセツ」は無いはず。

    この作品はファンタジーです!

    実は『君の名は。』では、スマホを見るのにカレンダーをチェックしていない!と言う「あり得ない!」設定があるのだけど、アニメだから許される的なところがある。
    この作品は、話の中盤でタネ明かしがあるのだけど、それを受け入れるのか?不自然と感じるのか?で評価が分かれるところ、私はすんなり受け入れることができたけど。

    設定はファンタジックだけど、恋愛のすれ違いのある形、と思えばそれはそれで納得、そしてその恋のすれ違いが本当に切ない!
    後半は本当に泣けてくる、久々に誰も亡くならないのに泣ける映画だった~

    私的『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』・ここからネタバレもあり!

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    青春ラヴ・ストーリーです、初恋って切ないんです!
    昔だったら手紙ですれ違ったり、電話ですれ違ったり、今みたいにケータイ電話やスマホ、LINEで連絡が取れなかったから、恋愛にすれ違いは日常的だった。

    今は便利になり過ぎたから、ファンタジーにして「すれ違いを演出」している。

    そう言う意味では、最近流行りの時空を超えた?恋愛もの、本質は男の子の、女の子の、初恋の切なさ・一瞬の輝きにトキメイてどうしても泣いちゃうのです。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    三木孝浩監督と脚本・吉田智子さんというコンビ、この二人が作り出した青春映画が数多く。
    特に吉田さんの脚本は個人的に大好きで(笑)

    今は新しいラヴ・ストーリーをどう工夫するか?すれ違いの演出をどうするか?
    そう言う意味では、原作から持ってきた新奇性が上手く成功していると思う。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    この手の作品は、どれだけ旬な俳優を使って、若い人たちに届けるか、がポイント。
    少し前なら山崎賢人であり、撮影のタイミングで今度は、福士蒼汰の作品が続きそう。

    小松菜奈も『渇き。』以来、順調に映画やTVドラマで活躍している、この作品では可愛らしさが前面に出てるけど。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    ファンタジーとしての設定が映画ならでは。
    それと方言が無かったから判らなかったけど、舞台は京都、ポイント・ポイントで「あっ、京都だ」と言う雰囲気が味わえる。

    それと、やっぱりこの手の青春ラヴ・ストーリーは、美男美女の人気俳優さんが演じると言うのは、時代が変わっても続いていく。

    ⑤ エンターテイメント性

    今の日本では、恋愛の仕方を楽しく教えてくれる、という点では良い映画。
    福士蒼汰は決して上手い俳優ではないけど、やっぱりカッコイイ男の子がカワイイ女の子と恋に落ちるのは楽しい。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    三木孝浩監督の演出がどんどん上手くなっている(上から目線で失礼)。
    中盤で、小松菜奈演じるヒロインが、秘密を告白するシーンで、イマジナリーラインを背中越しに越えるところは、絶対『グッド・ウィル・ハンティング』と同じ手法だし。

    ラストでタネ明かし的に、物語をプレイバックするところも非常に判りやすい分、二人に共感しやすくなっている。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    吉田智子さんの脚本が今回も良かった、原作の通りかもしれないけど。
    後半は切なくて切なくて、ストンと落ちるものがある。

    人によっては『イニシエーション・ラブ』のようなトリック的な作品にも見えるけど、どちらかと言うとタイムパラドックスもの。
    ファンタジーの部分と純愛的なリアルな部分を、丁寧に描いていることで成功している。

    ⑧何度も見たくなるか?

    脚本・演出が一回見て判るように丁寧に作ってあるけど、もう一度見て確かめてみたいなぁ~
    と同時に、デトックス効果があるので、カップルで何度も見るのによいかも。

    そして最近見た青春ラヴ・ストーリーの中でも良くできてると思う!

    映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』のデータ

    監督■三木孝浩 
    原作■七月隆文「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(宝島社)
    脚本■吉田智子 
    音楽■松谷卓
    出演■福士蒼汰/小松菜奈/山田裕貴/清原果耶/東出昌大/大鷹明良/宮崎美子
    公開日■2016年12月17日・大ヒット上映中!
    公開情報■全国東宝系にてロードショー
    上映時間■111分
    製作国■日本

    公式サイトはこちら

    ぼくは明日、昨日のきみとデートする Blu-ray豪華版 — Amazonで見る

    【ストーリー】
    京都の美大に通う20歳の学生・南山高寿(福士蒼汰)は、いつものように大学まで向かう
    電車の中で出会った女性・福寿愛美(小松菜奈)を一目見た瞬間、恋に落ちた。
    勇気を振り絞って声をかけ、「また会える?」と約束を取り付けたようとした高寿だったが、
    それを聞いた彼女は、なぜか、突然涙してしまう―。彼女のこの時の涙の理由を知る由もない
    高寿だったが、2人は意気投合し、その後、すぐに交際をスタート。
    初めてのデート、初めて手をつなぎ、初めて名前で呼び合う。そんな初めてのことがあるたびに泣く
    愛美のことを少し不思議に思いながらも、より愛美への愛情を深めていく高寿。
    そんな二人の関係は、誰もがうらやむ程に順調で、すべてがうまくいくものだと信じていた…。
    「わたし、あなたに隠していることがある…」初めてキスをした日、高寿は、愛美から想像も
    できなかった大きな秘密を明かされる…。そして、二人の運命は“すれ違い”始める―――

    (C)2016「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」製作委員会


  • 映画『この世界の片隅に』  能年玲奈が「のん」に変わる時

    映画『この世界の片隅に』 能年玲奈が「のん」に変わる時

    映画『この世界の片隅に』

    この世界の片隅に

    昭和20年、広島・呉。
    わたしは ここで 生きている。

    戦争と共に生きるということ

    きっとこの映画を見て涙するのは、ある程度年配の人たち、私のような50代とかそれ以上なんだと思う。
    私の世代は、やはり子供の頃にマンガ「はだしのゲン」を読んで、戦争の悲惨さ・原爆の怖さを知った。
    そして大人になって、野坂昭如原作のジブリアニメ『火垂るの墓』に涙した。

    でも、この作品は本当に若い人たち、特に小中学生の頃に、自分たちの子供の頃に通過したように、必ず見て欲しいと思った作品。
    だから小中学生のお子さんがいるは親は、一緒に映画を見に行くには良い機会かもしれない。
    戦後70年が経過して、自分たちが語り継げない戦争のことを、家族で話をする良い機会になると思う。

    ドキュメンタリーに近い物語。
    主人公すずは、昭和元年生まれ、昭和史をそのまま生きたと言う設定、それは戦争と共に生きると言うことは何か?と言うことを前半は考えさせられる。
    軍港の街・呉、そこには普通に軍艦が停泊している、大和や武蔵が丘から見えるのが日常の風景。

    今の日本では考えられないが、日常の中に軍隊が存在している。(ちなみに海外でも普通の光景、隣国韓国に行ってみると街中に軍隊がいる)
    昭和20年までの日本はそれが普通の日常だった。

    でも戦争と隣合わせで生きていても、人は笑うし、泣くし、怒るし、そこには淡々とも言える日常があるということ。
    ここでは戦争に行かない人たちを描いている、一見のんびりした生活、苦しいけれど、そこをたくましく生きる主人公を描いている。
    たくましさとのんびりさ、この両方を併せ持つ主人公を超えで演じたのが能年玲奈改めのん。

    相反する「たくましさ」と「のんびりさ」を持つ主人公が、のんそのままのような感じさえする融合ぶり。
    きっと、のんでなければ成立しなかったのでは?と思わせるくらい彼女の演技(声)が良かった。

    小さい頃に祖父や父に聞いた地方都市の風景が見事に描かれていて「こうやって市井の人々が戦争に飲み込まれて行くんだ」と感じる。
    そして戦禍はどんどんと身近に近づき、そして運命の日へと続く。

    これはおそらく、アニメだから見れる、見ることのできる映像だろう、実写だったら目を背けたくなる光景が後半は続く。
    そして、昭和20年8月15日を迎え玉音放送を聞く主人公すずが叫ぶ。

    「なんで止めるんだよ~」

    と。
    止めるんだったら最初から戦争なんてするな、そんな無責任なことで戦争を始めるな!と。
    必要な戦争なんてない、自分たちの生活をどれだけ壊してくれたのか?!と。

    この作品には希望がある、戦争が終わって生活が楽になる保証はない、でも戦争のない日々がやってくると言う希望、そしてまたその新しい日常を淡々と生き抜くしかない。

    戦争に打ちのめされても人は強い、そこから立ち直っていく、日常を生き続けることの芯の強さがこの作品にはある。
    だから若い人に是非、見て欲しい作品でもある。

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    私的『この世界の片隅に』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    戦場とはどこにあるものなのか?最近の日本ではそんな「のん気」な議論がされている。
    いったん戦争になれば、戦場というものは果てしなく拡大していく、そして日常の一風景になってしまう。

    戦争をするということは、全ての人を巻き込み、そして不幸にしていく。

    私は小さい頃に祖父から富山大空襲の話を聞いたことがある。
    祖父の家は、富山市街からは離れていたため被害は無かったが、空が真っ赤になったと言っていた。
    この映画を見ていると、そういう戦争体験者の記憶を一つ一つ積み上げた感覚がある。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    原作のマンガをクラウドファンディングを作って映画化。

    多くの人が「あの大戦を忘れてはいけない」と言う思いがこもった作品。
    戦後が70年以上経過して、主人公・すずが生きていたら90年、広島に原爆を投下した国のプレジデントが訪問もした。

    日本はこの出来事を永遠に語り継いで、戦争をしない国として続いていかなければ、と言う想いを感じる。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で主役を務め、一躍国民的アイドルとなった能年玲奈。
    「あまちゃん」の直前に映画『ひまわり ~沖縄は忘れない、あの日の空を~』でヒロインをしていた彼女に会った時の印象は”本当におとなしい子”という印象で、小泉(今日子)さんの娘役をやるとは、ビックリしたもの。
    いつの間にか、能年玲奈が”のん”に改名していて、のんとしてはデビュー作にあたる。

    10歳くらいから21歳くらいまでのすずを見事に演じたのん(能年玲奈)、彼女があまりにもピッタリだった。
    周りの声優陣は、ベテランの人々で安定感があった。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    なんとも原作の絵をそのままアニメにしたような感じが良い。

    絵がほんわかとした雰囲気を醸しながら、一方でシビアな現実が描かれる。
    上にも書いたが、このギャップが良い、この作品を見て、二度と見たくなくなる作品では駄目だから。

    この世界の片隅に

    ⑤ エンターテイメント性

    淡々とした日常で、綿密な取材やロケハンをして、戦前・戦中を描いているが、一方で少女から大人の女性への成長を描いている。
    すず一人に起きた出来事は、おそらく色んな人の体験を集めて、演じさせているんだとは思うけど、映像や音楽の持つ柔らかさがマッチしている。

    そして戦争・原爆投下という戦争のある日常をオブラートに包んで私たちの前に提供してくれることで、何度も見たいと思わせる作品に仕上がっている。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    原作の持つ良さをそのままアニメーションにした感じ。

    一方でモノローグ(独り言や心の声)が多い、やはり今の私たちに理解できないところを説明する必要があるから、なのかもしれない。
    その点では、ドキュメンタリーっぽい作りになってしまっている。

    ただ、のんの声(やその雰囲気)に随分、助けられていると言う意味では、キャスティングの妙とも言える。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    脚本というか、原作が素晴らしい、本当に戦前・戦中の暮らしが良く描かれている。

    かつての戦前を描いた日本映画の家族の風景が、この作品にも描かれている、それがごく自然。
    彼女は不幸だったのだろうか?最後は前向きに強く生きていくのだから、きっと幸福になっていくんだと思う。

    そんなすずの姿を見ているだけで涙が出てくる。

    ⑧何度も見たくなるか?

    日本人は、毎年のようにこの作品を見て欲しいと思えるくらい。
    戦争の悲惨さも伝わってくる、でもこのほんわかとした雰囲気の絵が、クッションとなってくれる。

    おそらく実写で見てしまったら、数年は見たくなくなる、それでも心に伝わる作品の強さというものは決して変わらない。
    映画の枠で考えると、個人的には『君の名は。』の方が好きだけど、アニメ、マンガ、映画と言う枠を超えたところにある作とも言える一本。

    映画『この世界の片隅に』のデータ

    この世界の片隅に

    上映時間■126分
    製作国■日本
    公開情報■劇場公開(東京テアトル)
    初公開年月■2016/11/12

    監督■片渕須直
    アニメーション制作■MAPPA
    企画■丸山正雄
    プロデューサー■真木太郎
    原作■こうの史代

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    脚本■片渕須直
    キャラクターデザイン■松原秀典
    作画監督■松原秀典
    音楽■コトリンゴ
    主題歌■コトリンゴ  『悲しくてやりきれない』

    声の出演■のん 北條(浦野)すず/細谷佳正 北條周作/稲葉菜月 黒村晴美/尾身美詞 黒村径子/小野大輔 水原哲/潘めぐみ 浦野すみ/澁谷天外

    (C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

    公式サイトはこちら

    【解説】
     戦時下の広島の軍港都市・呉を舞台に、この街に嫁いできたのんびり屋のヒロインが、物がなく苦労が絶えない日々の中でも持ち前の明るさとしなやかさで、つましくも心豊かな生活を送っていくさまと、そんなささやかな幸せが徐々に戦火に呑み込まれていく残酷な現実を、丁寧な日常描写の積み重ねで描ききったこうの史代の傑作漫画を「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直監督が長編アニメ映画化した珠玉の感動作。TV「あまちゃん」で一躍国民的人気女優となった能年玲奈が“のん”名義でアニメ映画に初挑戦し、ヒロインの声を好演。
     1944年(昭和19年)2月。絵を描くことが好きな18歳のすずは、急に縁談話が持ち上がり、あれよあれよという間に広島市から海軍の街・呉に嫁にやってくる。彼女を待っていた夫・北條周作は海軍で働く文官で、幼い頃に出会ったすずのことが忘れられずにいたという一途で優しい人だった。こうして北條家に温かく迎えられたすずは、見知らぬ土地での生活に戸惑いつつも、健気に嫁としての仕事をこなしていく。戦況が悪化し、配給物資が次第に減っていく中でも、すずは様々な工夫を凝らして北條家の暮らしを懸命に守っていく。そんなある日、道に迷っていたところを助けられたのがきっかけで、遊女のリンと仲良くなっていくすずだったが…。(allcinema)

  • 映画『永い言い訳』  妻が死んでも泣けないアラフィフ男の本音と建前

    映画『永い言い訳』 妻が死んでも泣けないアラフィフ男の本音と建前

    映画『永い言い訳』

    永い言い訳

    妻が死んだ。
    これっぽっちも泣けなかった。
    そこから愛しはじめた。

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    イントロダクション

    妻を亡くした男と、母を亡くした子供たち。
    その不思議な出会いから、
    「あたらしい家族」の物語が動きはじめる。

    『おくりびと』以来7年ぶりに主人公・幸夫を演じるのは、『日本のいちばん長い日』で昭和天皇役が高評価だった本木雅弘。
    今回はタレント小説家を見事に演じてみせた、時にはチャーミングで時には憎々しく。
    主人公・幸夫の亡くなった妻と共に死んだ親友の夫・陽一にはミュージシャンの竹原ピストルを抜擢。
    幸夫の妻には深津絵里、幸夫の愛人役には黒木華、さらに池松壮亮、山田真歩などが共演。

    原作・脚本・監督は『ゆれる』『ディア・ドクター』『夢売るふたり』とオリジナル脚本で勝負し、本作の原作では直木賞候補となった西川美和監督。

    永い言い訳

    アラフィフ男の本音と建前が交差する

    有名作家の妻が死んだ、その時、その夫は若い女性と不倫をしていた。

    西川美和監督の最新作、映画『ゆれる』が衝撃的で、『ディア・ドクター』も本当に好きで、次はどんな作品を見せてくれるのだろうか?と期待していた。
    その西川監督が、それまでは完璧なものが壊れていって、そこに隠されていた人間の本性が露わとなる怖さが詰まっていたが、この作品では西川監督本人がインタビューで「その後を描いている」と言うように、壊れてしまった夫婦関係が妻の「死によって再生」していく、という物語。

    西川監督は、この作品を作るにあたってそのアイディアを、3.11の震災を目の前にした時に、死に別れた家族や友人とどういう別れ方をしたか?それを描きたかったとも言っている。
    そこには人それぞれの別れがあった筈、朝食を食べながら喧嘩してそのまま別れた家族もいるかもしれない、口も聞かずに出かけた子供との別れが有ったかもしれない、人の死はある日突然訪れる。

    無名の作家時代を支えてくれた妻、いつの間にか妻がいるのが当たり前になり、作家として有名になり、お金もあり女性も近づいてくる。
    50も近づき、自分の才能も枯渇してきてるのかもしれない、実は何も思い通りにならない自分がそこにはいる。
    その隙間を埋めるために、若い女性と身体を重ねる主人公、そんなタイミングに妻が事故死する。
    主人公の本音は「自分は何も悪くないのに、妻が死んでしまった」と言う思い。

    周りからは「大変でしたね」と言われ、それを演じなくてはと思う主人公。
    彼は、他人(妻の親友)の子供たちの世話を始める、子供たちとのやり取りが微笑ましく、またその子供たちが可愛い、特に可笑しく苦労もする、幸夫は自然に癒やされていき世間の喧騒から一時離れることができる、が、自分の子持ちのマネージャー(池松壮亮)から
    「子育ては男の免罪符ですから。自分がイヤな、ダメなヤツってことを帳消しにしてくれる逃げ場ですから」
    と言われてしまう。

    主人公の本音は「自分が好き」で誰も愛したことがない。

    永い言い訳

    失った愛を取り戻す

    作家を諦めかけていた時に、自分を励まし、金銭的にも支えてくれた妻。
    でも実際には、自分が有名になったことで少しずつ、彼女に対する思いが変わっていく。

    実際、何が変わったと言う訳ではなく、そこは時間が過ぎていくと言うことなんだと思う。

    妻の死によって失った愛、そして愛人からも捨てられていく。
    子供と接するうちに、妻の死にいつまでもグズグズと泣き崩れる男と接するうちに、自分は誰かを本当に愛せていたのだろうか?と感じ始める。
    そして、愛を取り戻す、寸前でいつも主人公の手からこぼれ落ちていく。

    ラスト、妻の写った写真を見て本当の妻の気持ちを知ることで、主人公は一歩、再生へと歩み始める。

    夫婦ってなに?愛ってなに?そんなことを思い始めた人には考えさせる何かがここにあります、今年一番のオススメ作品。
    渇いた心を少し癒やしてくれる映画、それってやっぱり貴重だと思う。

    永い言い訳

    私的『永い言い訳』ネタバレあり

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    不倫に対する見る人のスタンスで、この作品の解釈が変わってくると思う。

    不倫は絶対に駄目!と思っている人にとっては、主人公が情けなく、赦せない存在で、ラストに妻の本心を知って愛に向かって一歩歩み始める姿に映る。

    夫婦の愛がなくなったとしても、世間体や面倒くさいと言うことで別れずに不倫に走る男、それってあるよね、と思ってしまった人にとっては、「こんな俺でも妻は俺のことを愛してくれてたんだ」と思い、自己中心的な自分愛に自信を取り戻す。

    不倫が良いと言う訳ではないが、私は後者だと思ってこの作品を見た。
    “長い”ではなく“永い”と言う死ぬまで自分のことを言い訳し続ける主人公。

    それはある意味、アラフィフになり、自分の実力の限界も判り、人生と夢とのギャップで自分が何者にもなれなかったことに気付き始める、その心の隙間を埋めるのは「自分を愛する」ことかもしれない、そんな風に感じる。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    西川美和監督が、自ら原作本を書き、それを脚本・演出した作品。
    図らずも、今年、西川監督の師匠・是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』も、アラフィフ男の情けなさを描いていて、主人公が同じ作家でもある、そして子供も出てくる点も共通している。

    それまで問題提起をしてきた西川監督が、一歩踏み出して、その人間の本質に右往左往する人々を描いたところに、そして今のアラフィフの姿を描いていた点がとても良かった。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    この作品の番宣で、久々によく本木雅弘がテレビに出ていたが、過去作品より彼本人に近いのでは?感じさせる。
    もちろん彼が実生活で不倫をしてるっぽいとかではなく、どこか飄々としていて、どこかに熱いものを持っていて、そんな感じが主人公とダブる、だからこそなのか、情けなさが板についてるし、そして納得させられる。
    本木雅弘自身が「幸夫の方が(僕より)清いんですよ」と言ってるところが面白い。

    竹原ピストルの妻の死に、いつまでも泣いているトラック野郎と言う役どころが良かった、演技が新鮮で良かった点と、世間で持てはやされたビッグダディと似ているところを感じて、素直な人間性っぽい気もするが、本当は人生(この作品では子育て)から逃げている男の姿が、また良かった。

    深津絵里が登場するシーンは少ないがその美しさが素晴らしい、そしてやはり写真での登場の存在が凄い。
    二人の子供たちも掘り出しもの。
    池松壮亮は、いつもこんな斜に構えた、妙に説得力がある、そしてズルい感じの男が似合ってしまう。

    黒木華が、初めて?濡れ場に挑戦、昭和顔と本人が言っていたが、岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』から少しずつ変わってきて、この作品では色っぽかった!新しい発見であり、彼女はどこまで色んな顔を見せてくれるのか、本当に楽しみな女優。

    永い言い訳

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    今回、16ミリフィルムでの撮影と言うちょっと特殊な画作りをしている。
    ずっとボヤッとしたザラツイた映像が続く。
    きっと、自分を愛してやまない主人公の行き先の判らない人生そのもの、ボヤッとしたものとリンクしている。

    今回、子役を上手く使いつつ、親の本音、子供の本音が垣間見える。
    「子供なんかいなかったら・・・」と、でも一方で本当に子供を愛している、矛盾・・・やっぱりこれは映画で表現するべきことだと思う。

    ⑤ エンターテインメント性

    冒頭の妻の死、以外に何も取り立てて事件はない、それでも、人の本性がそこかしこに垣間見え、そして赦しが差し込まれていく。
    なにも事件はないのに、複雑に話が絡み合い、そして物語は起伏を持ってラストに続く。

    最大のサスペンスは「自分は妻に愛されていたのだろうか?」と自分勝手な男の謎解きが縦軸にしっかり柱がある。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    是枝監督に師事して、ということで非常に演出が似ている。
    そして、西川監督の好きな作品の影響も大きいと思う。

    説明的なセリフやシーン(キャラクターの動作)をできるだけ排した画作りをしてくる。
    タクシーの鏡で髪型を直すところは象徴的。

    今回は、是枝監督並に子供も演出できることが判った(笑)

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    原作・脚本と監督が一緒、完全なオリジナルと言うこと。

    縦に一本「愛される自分」があって、妻を失った家族や愛人、出版社に振り回されながら、本音を撒き散らす主人公の姿が滑稽でもあり、真実でもある。
    女性がこれだけ男の本音の部分を描けるのか?そんなに冷静に男を見てるのか?とちょっと西川監督の頭の中を覗いてみたくなる。

    ⑧何度も見たくなるか?

    2016年も残り数ヶ月、日本のアラフィフ男性は疲れ果てている、そんな作品が数多く出てきたが、一番、男の本音が表現されていて面白かった。
    そこに家族や妻への愛、と言うものを考えさせるものがあった。
    映画としての完成度やストーリーの面白さ、今の自分を見つめ直す機会に見たい作品。

    映画『永い言い訳』のデータ

    永い言い訳

    原作・脚本・監督■西川美和
    撮影■山崎裕
    出演■本木雅弘/竹原ピストル/藤田健心/白鳥玉季/堀内敬子/池松壮亮/黒木華/山田真歩/深津絵里
    公開日■2016年10月14日

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    【ストーリー】
    人気作家の津村啓こと衣笠幸夫(きぬがささちお)は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。
    その時不倫相手と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。

    そんなある日、妻の親友の遺族―トラック運転手の夫・陽一とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い彼らの世話を買って出る。
    保育園に通う灯(あかり)と、妹の世話のため中学受験を諦めようとしていた兄の真平。
    子どもを持たない幸夫は、誰かのために生きる幸せを初めて知り、虚しかった毎日が輝き出すのだが・・・
    (C) 2016 「永い言い訳」製作委員会 PG-12