タグ: 切ない

切ない

  • 広瀬すずをアイコンにした岩井俊二の傑作! 映画『ラストレター』

    広瀬すずをアイコンにした岩井俊二の傑作! 映画『ラストレター』

    映画『ラストレター』

    ラストレター

    君にまだずっと
     恋してるって言ったら
      信じますか?

    堂々のロリコン映画の傑作!

    21歳(1998年生まれ)の広瀬すずと18歳の森七菜(2001年生まれ)が高校生役に!

    本当の岩井俊二監督作品が帰ってきた!という興奮が冷めない、広瀬すずの高校生役が『海街diary』と被ります。
    岩井俊二監督のかつての傑作『Love Letter』と同様に一人二役で、現在と過去を絡めていきます。

    広瀬すずは、作品によって見え方が大きく変わる女優ですが、この作品では彼女の魅力が光ります。
    一方、森七菜の清々しさと広瀬すずとの立ち位置が、映像的にも絶妙で、流石!ロリコン監督岩井俊二の面目躍如といったところです。

    一方で、珍しい『花とアリス』以来の東宝作品、プロデュースは『悪人』『君の名は。』『怒り』『天気の子』の川村元気。
    当初の岩井俊二の持っていた企画を、川村元気Pが大幅に変更を依頼して、今作品に至ったとのこと・・・不倫に近い関係を匂わせた物語や衝撃的な結末も、川村元気の鬱(うつ)の部分がよく現れているような気がします。
    (『世界から猫が消えたなら』は余命宣告をされた若者が鬱になり妄想を見て、『億男』では億万長者になった妄想にとりつかれた鬱男の話でもあり・・・世界が崩壊しようが二人の愛が大切な『君の名は。』等、川村元気Pの作品群はどこか、ズレた若者像が存在します)

    だからこそ、映像で広瀬すずと森七菜の若さが光ると思います。
    そして、今まで岩井俊二監督作品を愛してきた人には、やっとこの立ち位置に戻ってきてくれた、そんな感想を抱く作品になっています。

    タイトルも似ている『Love Letter』との共通性

    『Love Letter』『スワロウテイル』『花とアリス』『リップヴァンウィンクルの花嫁』と数々の名作を世に送り出してきた映画監督・岩井俊二。
    初めて出身地である宮城(や地元仙台)を舞台に、手紙の行き違いをきっかけに始まったふたつの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の再生と成長を描く。

    初期の名作『Love Letter』と通じる世界観があります、その大きな要因は、まず、物語の前半と後半が大きく変わっていきます。
    今作品では、前半は松たか子が演じる裕里を中心に物語が進み、後半は福山雅治演じる鏡史郎、そして広瀬すずが演じる一人二役へと繋がっていきます。

    『Love Letter』は中山美穂が一人二役を演じていたのと同様に、今作品ではより複雑に、一人二役、二人一役と物語が紡がれて行きます。

    そして『Love Letter』とは直接関係はないものの、『Love Letter』の主人公二人、中山美穂と豊川悦司が、夫婦役(内縁)で出てきます。
    但し、『Love Letter』と『ラストレター』では直接、物語のつながりもなく、共通の登場人物や場所もありません。
    ただ、『Love Letter』が撮影された当時は、日本にもまだまだ成長し続け希望もある明るい時代ですが、『ラストレター』ではその後の四半世紀で大きく、挫折や絶望にあふれる時代になったのかもしれません。

    また面白いのは、少し話はズレますが、もう一人の日本の映画界の第一人者・是枝裕和監督との作品との関連性。
    前述の『海街diary』では広瀬すずを高校生役に瑞々しく、一方で縁や血の繋がりを演じさせることでそのキャラクターを輝かせていました。
    この作品では、男に翻弄されて人生を誤った女性と、一人のおじさんのオマージュの対象の少女という二面性に処女性と女性の欲深さを感じさせるところが面白い。

    合わせて、『そして父になる』のエリートビジネスマンでありながら、駄目な父親像とも被る、うだつの上がらない小説家役が、二枚目の福山雅治が演じることで、過去とのギャップという点で、上手く演出している。
    その点で、岩井俊二の中の『Love Letter』と『ラストレター』の時代の流れ、是枝裕和監督との現代の見え方という点で興味深い。

    他に『エヴァンゲリオン』の庵野秀明や神木隆之介が出演という東宝ならではの豪華キャスト。
    私には、岩井俊二監督の過去作品と比べても最も好きな作品となりました。

    映画『ラストレター』

  • ルキノ・ヴィスコンティ -ビデオグラム-

    ルキノ・ヴィスコンティ -ビデオグラム-

    作品のビデオ

    私の手元にあるDVDやBlue-rayの紹介。
    CD-ROMもこちらに分類。

    既に発売が終わっているものも多いので、参考になればと思ってアップしています。

    ルートヴィヒ 神々の黄昏 完全復元版

    発売日:1997年3月19日
    発売元:EMIミュージック・ジャパン
    収録作品:ルートヴィヒ (1972年)
    仕様:DVD

    LUDWIG1

    LUDWIG2LUDWIG3

    夏の嵐 Senso

    発売日:1998年4月25日
    販売元:アイ・ヴィ・シー
    収録作品:夏の嵐(1954年)
    仕様:DVD

    SENSO1

    SENSO2

    郵便配達は二度ベルを鳴らす

    発売日:1998年12月18日
    販売元:アイ・ヴィ・シー
    収録作品:郵便配達は二度ベルを鳴らす(1942年)
    仕様:DVD

    Ossessione1
    Ossessione2

    白夜 Le notti bianche

    発売日:2002年2月6日
    販売元:紀伊國屋書店
    収録作品:白夜(1957年)
    仕様:DVD

    LE NOTTI BLANCH 2

    LE NOTTI BLANCH 2

  • 映画『この森で、天使はバスを降りた』 切なく泣ける隠れた名作

    映画『この森で、天使はバスを降りた』 切なく泣ける隠れた名作

    映画『この森で、天使はバスを降りた』 THE SPITFIRE GRILL

    この森で、天使はバスを降りた

    誰にも言えない過去を抱えて、 彼女はここにやって来た–。
    凍てついた心を癒せるのは 傷ついた心だけ…。

    Amazonビデオで配信中!

    この森で、天使はバスを降りた(字幕版) — Amazonで見る

    人が背負う過去は、果たして癒されていくのだろうか?

    過去とは、未来が一瞬の現在を通り過ぎて生まれていくもの。
    人々は、その一瞬の中に自分の自身の道筋を決めていく。
    人々の決断は何によって行われるのだろうか?それは、その人がそれまで生きてきた人生、そう過去を引きずって生きている。
    人は過去を捨て去ることは出来ない。
    しかし過去の経験から、自分の未来を変えていくことは出来るはず。

    主人公パーシー(アリソン・エリオット)は、自分の過去に重い傷みを感じながら生きている。
    人生の出直しを考えた時、緑深いギリアドの町を選ぶ。
    町と言うには小さい、村という表現があっているかもしれない。

    そこは緑に囲まれた美しい風景が広がる。
    人は美しい自然を目の当たりにした時、自分の存在の小ささに気付き、そして自分の過去の重さが、どれほどのものか、いや如何に小さいものかを自覚する。彼女は自ら、それを自覚することに依って、自分の未来を変えようとする。

    彼女のか細い身体から、そのオーラが発せられたとき、周りの人々も少しずつ変化を無意識のうちに求めていく。
    スピットファイア・グリルの店主ハナ(エレン・バースティン)、息子を失った悲しみから頑なに心を閉ざす姿が、少しずつなにかが変わっていく。
    料理と洗濯しか出来なかったシェルビーも、彼女との出会いの中で、自分自身を見つめ行動を起こす。

    田舎のぼくとつとした青年ジョーも、この森の中の生活に光明を見いだそうと動き出す。
    そして森の住人ジョニー・Bも・・・

    パーシーが森を抜け小高い丘の上で歌を口ずさむ・・・大自然の中で自分の心を口ずさむ、そこへジョニー・Bが現れる。
    人と人の心が共鳴しあい、変化を生み出す瞬間の輝きがそこに存在する。

    この街を守ろうと、部外者の侵入に心を痛めるイーサンは、パーシーの発するオーラに恐怖する。
    彼も、自分の過去に小さな傷を持っている・・・

    作文コンテストの賞金がなくなった事件を境に、人々の暗い過去が、この自然にあふれた街の中に引きずり出される。
    そしてこの事件で、パーシーが命を落とす・・・

    それ自体は悲しい出来事、この事件がギリアドの人々の中に一つの重い過去と言う十字架を背負わせる。
    しかし、その死と同時にパーシーが残したものは、その過去を背負いながらも、自分自身しか未来を変えることは出来ない、人は自分の過去は変えることは出来なくても、未来を変えることが出来ると言うことを教えてくれた事だった。

    ハナとシェルビーは、作文コンテストを最後までやり遂げ、店を手にした親子を街に向かい入れる。
    人は自分の過去と向かい合い、そして未来を創っていく、人にはそれが出来る。
    パーシーは人々にそれを教えてくれた、だからこそその人の姿に感動し涙することが出来る。

    パーシー役のアリソン・エリオットの美しさ、どこか弱々しさと瑞々しさが混じり合った姿、演技が素晴らしい。

    そしてアメリカと言う国土の広さとその美しさに、改めて驚きを感じる。

    『タイタニック』でアカデミー賞を授賞したジェームズ・ホーナーの音楽は『タイタニック』のそれ以上に感動を与える旋律を持っていた。

    Reviewed in 02.2000

    その後のアリソン・エリオット

    アリソン・エリオット
    アリソン・エリオット

    サンダンス映画祭で観客賞をとって、当時の東京でミニシアター系と呼ばれる作品としてヒットをし、隠れた名作として話題になった作品。
    監督のリー・デヴィッド・ズロートフはTVディレクター出身で、この作品の前後でも映画は作ってないらしい。

    主演を演じたアリソン・エリオットは、この後、話題作『鳩の翼』にヘレナ・ボナム・カーターと共演したり、その他主演作もあるが、2000年以降はたまに小さな役で映画に出演しているのみで日本未公開が多く、TVシリーズへの出演が散見されるのみ。
    久々に『20センチュリー・ウーマン』(2016)で小さな役で出演がある。

    彼女はもっと活躍すると期待してましたが、残念ながら大きな役で見ることはありませんでした。
    この作品から20年が経って、1970年生まれの彼女は大人の女性として今も美しいようです。

    アリソン・エリオット
    最近のアリソン・エリオット

    映画『この森で、天使はバスを降りた』のデータ

    この森で、天使はバスを降りた DVD — Amazonで見る

    THE SPITFIRE GRILL 116分 1996年 アメリカ
    監督■リー・デヴィッド・ズロートフ
    製作■フォレスト・マーレイ
    脚本■リー・デヴィッド・ズロートフ
    撮影■ロブ・ドレイパー
    音楽■ジェームズ・ホーナー
    編集■マージ・グッドスピード
    美術■ハワード・カミングス
    出演■アリソン・エリオット/エレン・バースティン/マルシア・ゲイ・ハーデン/ウィル・パットン/キーラン・マローニー/ゲイラード・サーテイン/ジョン・M・ジャクソン/ルイーズ・デ・コーミア

    サンダンス映画祭 1996年
    観客賞授賞

    <ストーリー>

    ある冬の夜、パーシー(アリソン・エリオット)はたった一人、田舎町ギリアドのバス停に降り立った。
    古ぼけたレストラン“スピットファイアー・グリル”で働き始め た突然の来訪者に、住人たちは好奇の目を向ける。
    一人息子を戦争で失ったグリルの女主人ハナ(エレン・バースティン)。
    家庭に悩みを抱えた主婦シェルビー(マルシア・ゲイ・ハーデン)。
    町を囲む美しい森にすら無関心になった人々。
    そんな傷ついた心を、パーシーはその純粋な優しさで包み込み癒していく。
    しかし彼女自身、誰にも言えない過去を抱えていた・・・。

  • 映画『紅の豚』 飛ばねぇ~豚はただの豚だ、これこそ男のロマン!

    映画『紅の豚』 飛ばねぇ~豚はただの豚だ、これこそ男のロマン!

    映画『紅の豚』 Porco Rosso

    紅の豚
    © 1992 Studio Ghibli・NN

    カッコイイとは、こういうことさ。

    大人向けの宮崎アニメ

    宮崎駿アニメの一作品。
    彼の作品には数多くの名作が有る、いやいや出す作品全てが傑作と言えるくらい素晴らしい。
    でも個人的にはこの作品、彼の作品の中でもっとも好きな作品の一つだ。
    理由は簡単、(誤解を恐れずに言えば)男のための作品だから。

    『もののけ姫』も『風の谷のナウシカ』も素晴らしい。
    作品の出来と言う点では、そっちの方が上かもしれない。
    あと郷愁を誘うというか、心にしみる作品というと『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』などが有る。
    でも、男のロマンを描いた作品は、この作品と『ルパン三世 カリオストロの城』くらいのものである。

    宮崎アニメの醍醐味は、やっぱりその人間描写。
    宮崎アニメの登場人物は超人的な動きをする、人間らしい動きをデフォルメしているからだ。
    そのデフォルメの巧さは、宮崎アニメの神髄だろう。
    それを始めて見せられたのは「未来少年コナン」で有る。

    さてさて話がどんどんそれていくから、元に戻してと、宮崎アニメに特有の小道具や大道具、そう今回は飛行艇だけど、彼の近未来の乗り物や武器や生物?の描写も面白いけど、前時代的な乗り物の描写がとっても私は好きなのである。

    『ルパン三世 カリオストロの城』ならスバル380とか、ワルサーP38とかね。
    そんな飛行艇(おもちゃ?)に乗って動き回る男(ここでは豚だけど)観ている男ども(あっ!私)は憧れを胸に抱く。
    飛行機や船、そして車にはどこまでも自分の手で行きたいところに行けると言う自由さが有る。
    これが男の心、私の心をくすぐるのだ。

    でもその一方で、飛行艇を作るのが(戦時と言うことも有って)女性ばかりと言うのは、実はそんな男たちを自由に飛び回らせているのは、私たち女性よ!と言う主張も見えたりして!う~ん。

    男のロマンを思いっきり描きながらも、それを支える女性、それを愛する女性を描く、なんてロマンチックでカッコイイ映画なんだろう!

    それと今回のこの作品、声優さんの配役が素晴らしい。
    ポルコの声に森山周一郎の低い声が何とも、である。
    そしてマダム・ジーナに加藤登紀子を持ってきて、しかもしっかりと歌声まで聞かせてくれる。
    やっぱりこの映画は男のロマンだぁ~って。

    Reviewed in 06.2000

    2017年、宮崎駿監督は復活するのか?

    どうやら2019年に新作を作ることで話は進んでいるらしい。

    NHKスペシャル「終わらない人・宮崎駿」での放送で【企画書・覚書】を鈴木敏夫プロデューサーに渡して「お金を集めて」と言うところで終わっている。
    で、何を作るか?についていは明らかにされていないので、鈴木敏夫プロデューサーがヒットさせるタイミングを図って発表するんだろうなぁ~と思う。

    どちらにしても、今度は家族で楽しめる作品になるんだろうなぁ~と予想している。
    逆にいうと宮崎駿作品は、子供向け・子供と大人が一緒に楽しめる作品ということが本人も言っていることだけど、この『紅の豚』と『風立ちぬ』に関しては大人に向けた映画のような気がする(一応、ジブリの前の『ルバン三世 カリオストロの城』も大人向けだけど)。
    共通するのは、戦争で亡くなった人々が空に飛びだっていくシーンがある。

    映画『紅の豚』のデータ

    紅の豚 Blu-ray — Amazonで見る

    Porco Rosso 93分18秒19コマ 1992年 日本

    監督■宮崎駿
    原作■宮崎駿
    脚本■宮崎駿
    作画監督■賀川愛/川口俊夫
    美術■久村佳津
    色彩チーフ■保田道世
    音楽■久石譲
    主題歌■「さくらんぼの実る頃」 歌:加藤登紀子(J.B.Clement-A.Renard)
    挿入歌■「時には昔の話を」 作詞・作曲・歌:加藤登紀子
    音楽制作■徳間ジャパン
    録音演出■浅梨なおこ
    プロデューサー■鈴木俊夫
    制作■スタジオジブリ
    公開■1992.7.18
    作画枚数■58,443枚
    使用色数■476

    コピー■「カッコイイとは、こういうことさ。」 (糸井重里)

    キャスト(声)■ポルコ・ロッソ 森山周一郎/マダム・ジーナ 加藤登紀子/ピッコロおやじ 桂三枝/マンマユート・ボス 上條恒彦/フィオ・ ピッコロ 岡村明美 /ミスター・カーチス 大塚明夫/バアちゃん 関弘子

    <DATA>

     宮崎駿の短編漫画を映画化した長編アニメーション。
     ファシスト党の台頭する1920年代のイタリアを背景に、呪いを受けて“豚”となった中年パイロットの活躍を描く。
     森山周一郎がシブい声で扮する主人公・ポルコ・ロッソのダンディズムが光る秀作。
     飛行艇同士によるダイナミックな空中戦や、宮崎自身ファンである各機の細やかな設定も見どころ。 飛行艇を操る空賊が横行していた、第一次大戦後のイタリアはアドリア海。
     賞金稼ぎの飛行艇乗りであるポルコ・ロッソは、空賊たちには天敵の存在。
     自分の顔を魔法で豚に変えてしまったポルコを何とかやっつけたいと一計を案じた空賊たちは、アメリカからスゴ腕の飛行艇乗りを呼び寄せ、彼に一騎打ちを迫る。 <allcinema>

     第一次世界大戦を控えたイタリアのアドリア海。
     空賊と呼ばれる飛行艇をつかって船を襲う賊の一団、それを撃退するために金で雇われる賞金稼ぎ。
     賞金稼ぎの一人、ポルコはかつて人間だったものの今は豚になって、赤い飛行艇に乗ることから“紅の豚”と言われていた。
     ある日、空賊は、いつもポルコに邪魔をされることから、アメリカ人のカーチスに用心棒を頼む。
     ポルコの飛行艇が調子が悪いときに、カーチスに発見されて、ついには撃墜させられるポルコ。
     ミラノで飛行艇工場を営むピッコロおやじの元に行き、修理を依頼するが男手は無く、設計するのも孫のフィオという少女。
     しかしフィオの腕は確かで、ポルコの飛行艇は以前にも増して、素晴らしい操作性を示す。
     そしてその飛行艇を持って、再度、ポルコはカーチスと勝負することとなるが・・・

  • 映画『風と共に去りぬ』 ハリウッド映画史に残る不朽名作を語ってみる

    映画『風と共に去りぬ』 ハリウッド映画史に残る不朽名作を語ってみる

    映画『風と共に去りぬ』 GONE WITH THE WIND

    風と共に去りぬ

    雄大なスケールの中に燃え上がる炎の恋!映画史に輝く不朽の名作(リバイバル時)

    映画史上、燦然と輝く愛の金字塔!!
    炎のごとく燃え上がる世紀のロマンを雄大、華麗に描いた永遠・不朽の名作(リバイバル時)

    主人公スカーレットとヴィヴィアン・リーの奇跡の出会い

    一番最初にこの作品を観たときは、その良さが全く判らなかった!余りにも幼すぎて・・・
    その後、観たときに感動と共に大きなショックを受けた作品。
    アカデミー賞の監督賞を取ったフレミング監督と共に、映画の後半はジョージ・キューカー監督がメガホンをとった。

    作品としては、その影響もあり2部構成のような作りになっている。
    フレミングはあくまで大河ドラマとしてこの作品を撮り続け、キューカーは人間ドラマとして撮った。
    それでも、この作品が成功したのはプロデューサー・セルズニックの執念の現れだろう。

    当時、最新のカラー技術を用いて、映像的な美しさを演出したのはもちろん、セットも豪華に組まれた。
    俳優陣も、これ以上はないと言っても間違いないだろう。
    レット・バトラー役は、当時はクラーク・ゲイブル以外考えられなかったし、スカーレット・オハラ役はヴィヴィアン・リーを発見することが出来た。
    彼女にとっては、この作品に出たことによって一気にスターダムにのし上がった。
    これだけのスターが出演しながら、それぞれの配役がピッタリとマッチしている点も、今後はなしえないことだろう。

    ヴィヴィアン・リーの発見には逸話が残るぐらい有名。
    数多くの有名な女優がカメラテストを受けたが、恋人でありイギリスの名優ローレンス・オリビエと共にハリウッドを訪れた彼女に、白羽の矢が立ったのは有名な話。

    原作も、ミッチェル女史が南北戦争の話を伝え聞いたことを書き綴った部分と、彼女自身の体験を盛り込んだ話として書かれ、当時の大ベストセラーでもあった。
    ミッチェル女史自身が、かなりの美貌の持ち主であり資産家の娘だったことを考えると、スカーレットはミッチェル自身とも言える。

    この作品の素晴らしい点は、そのテーマにあった。
    確かに最高の俳優に恵まれ、湯水の如くお金を使い、原作にも恵まれた。
    やはりスカーレットの生き様を、南北戦争という大河ドラマをしっかり描きつつ、それに負けない力強さを持って描いていたことだ。
    それは上にも書いたとおり、いくつかの偶然(原作が既に持っていたスカーレット像と、それを演じきれるヴィヴィアン・リーという女優の存在)によってなされた。

    アトランタからタラに戻るシーンで、枯れ果てた木の傍らで力強く立ち上がるスカーレット、レッド・バトラーが去った後でもくじけない、スカーレットの精神的な強さ。
    そこには、アメリカン・スピリットと言う言葉では片づけられない、人間として逞しさ勇気を感じることが出来た。
    このテーマを見事に描き切り、傑作として映画史を語る上で、忘れることの出来ない作品となった。

    Reviewed in 11.1998

    風と共に去りぬ

    人間のドラマの全てが詰まった作品

    久しぶりにこの作品を観た。
    前回観たのは5,6年前でビデオ、映画館で観るのは十数年ぶり。
    今回の上映は、60年前のテクニカラーを再現する事を一番に考え処理したもの。
    今年でちょうど60周年記念と言うこと。

    映像自体は明らかにビデオに比べると美しく、映画館で聞く音楽はまた一段と良い。
    但し、今回の上映館、有楽町スバル座は音響設備が余り良くなかったのが残念。

    それはさておき、何度目か(十数度目か?)の鑑賞になるこの作品。
    何度観ても素晴らしさを実感せずにはいられない作品。
    今回はその素晴らしい点を色々発見する事も出来た。

    まずその最初がドラマとしての素晴らしさ。
    とにかく物語が面白い、それは原作者マーガレット・ミッチェルの功績で有る事は間違いない。
    四人の主人公(レット、スカーレット、アシュレーにメラニー)が魅力的であること。
    理想の男性像としてはレットであり、理想の女性像としてはメラニーなのだろう。
    が、優柔不断さと優しさが混在するアシュレーもまた一つの男性像だし、気が強くわがままで利己的なスカーレットもまた一つの女性像の憧れの姿だと思える。
    その四人の主人公が、アメリカ最大の内乱、南北戦争を舞台にして波瀾万丈の人生を送る。
    大河ドラマと人間ドラマが混在する。
    色々な愛の形を描きながらも、家族の絆や友情、そして奴隷制度や南部の文化も描いている。

    そしてこの劇的なドラマ性を持った小説を、見事に映像化したことの素晴らしさ。
    それは破綻のない演出もしかり、お金をふんだんに掛けたセットもしかり、で有る。

    ここに描かれるテーマは人間の本当の強さとは何か?人間が生き残るには何が必要か?と言うことだと思う。
    だからこそ、今でも人々の心を強く打つのだろう。

    この映画にはおそらく、これからも起こり得ない偶然がいくつも重なって、奇跡が生まれたと言った方が良いのかもしれない。
    それは60年前と言う映画の一番良い時代、ハリウッドの映画製作のシステムが完成した時期で有り、未だ初期の映画作りの純粋さを残していた時期でも有った。
    そして意欲的でバイタリティあふれるプロデューサー、デビッド・O・セルズニックの手元に、この小説が渡ったこと。
    更にクラーク・ゲイブルとヴィヴィアン・リーと言う二人の俳優が存在したこと。
    最後の偶然は、この時期、本格的にカラー映画が出てきたこと(この映画ができたのは第二次世界大戦前である!)。

    小学生の頃、この作品を観たときに、レットの男らしさを理解できず、スカーレットの魅力も理解できなかった。
    ただ壮大なドラマだけに感心したに過ぎなかった。
    それが少しずつ時間が経つにつれて、男女の愛に感動するようになった。

    そして今回は親子の愛情、それに涙する事が出来る年齢になった。
    オハラ親子の愛、レットの娘への溺愛、家族の大切さ...それらもこの作品、開拓精神旺盛なアメリカ人の心のより処、それが家族であることが、今、 この年齢になって理解できる。

    良い映画を何度も観ることの素晴らしさ!それができることが映画の素晴らしさである。
    そしてそう言う映画に出会えることこそが、(一つの)人生の喜びでもある。

    今回、60年前のテクニカラーの美しさ、音楽にのって冒頭のタイトルが出るシーンから心揺さぶられる。
    そして、スカーレットは言う「明日は明日の風が吹く」と。
    その姿こそが、人を強くして生きる道標をとなることを、人々の心に植え付けていく...永遠に!

    Reviewed in 11.1999

  • 映画『カサブランカ』 ボギーを生かすためのバーグマンの美しさ

    映画『カサブランカ』 ボギーを生かすためのバーグマンの美しさ

    映画『カサブランカ』 CASABLANCA

    カサブランカ

    アカデミー賞他世界映画賞に輝く 映画史上最高の《愛》の名篇! あなたの胸に すばらしい感動を捧げます
    激動のカサブランカに 激しくも哀しく燃え上がる 恋の炎–(リバイバル時)

    プロパカンダと甘いメロドラマ

    恋愛映画の良い要素を詰め込むだけ詰め込んで作った、甘い甘いメロドラマ。
    この作品がアカデミー作品賞を取るとは(゚o゜;)ウオオッ(ホント、この作品の演出はなってない・・・)
    とはいえ、この作品にどっぷりと浸かって楽しむのも一つの手。

    話は良くできているし、なんと言ってもボギーとバーグマンの主演の2人の恋愛劇は、観ていて感動もの。
    ボギーは他の作品でも格好良いが、この作品での徹底した二枚目ぶりには脱帽もの。
    またバーグマンは、この作品以外に数々の名演の有る本当の名女優だが、この作品での美しさは絶品!脇役のレインズも良い味を出している。

    対独ムードを盛り上げるプロパガンダの部分も盛り込んで、話を盛り上げているのは少しやり過ぎか?
    それでも、あくまでロマンチックな映像とセリフ、そして音楽と恋愛気分にどっぷり酔いたい時は良いかも・・・。

    Reviewed in 01.1999

    結局のところボギーがカッコイイ

    DVDビデオで、久々にこの名作を鑑賞。
    やはりこの映画、どう見ても国策映画のように感じてしまう。
    と言うのは、この映画のできる少し前、2年前まではアメリカではドイツとの参戦に関して、中立を保つべきか?戦うべきか?で国論が二分されていた。
    結局、この映画が製作された時には、アメリカは参戦する訳だが、そういった時代背景を反映してか、反ナチ色があからさまである。
    仏領モロッコは、フランスの植民地で有り、本来ならフランスも帝国主義の名の下にモロッコを略奪した事も史実である。

    それが第二次世界大戦からフランスの首都パリが、ナチスドイツ軍に占領されると、モロッコもあたかもドイツ領のごとくである。
    フランス人の警視総監ルノーが、ヴィシー産のミネラルウォーターをゴミ箱に捨てるシーンは、粋と感じるか、はたまたやりすぎると感じる か・・・少し複雑なところでもある。

    しかしこの映画をそういった視点で、今、観ることは少し不公平かもしれない。
    この作品は歴史的な映画と言うよりも、はやりラヴ・ロマンスの名品として捉えるのが正しいだろう。

    私がこの映画を愛して止まないのは、男女の心情そして男女の信条が見事に描かれているからだ。
    特にパリでのリック(ボギー)とイルザ(バーグマン)の心の揺れ、心情と信条の葛藤が見事なまでに表現されている。

    マイケル・カーティス監督の演出の上手さは、ボギーに有ると思う。
    きっとバーグマンは、もっと美しく撮れたと思う。
    しかしボギーは、これ以上ないくらい見事なキャラクターになっている。
    ボギーの持つ独特な男らしさを逆に利用して男の弱さを時折見せる、それが効果的なのである。
    だからこそ、リックは映画史上最も男らしい主人公と言えるのかもしれない。

    キザなまでな徹底したセリフ、しかしボギーとバーグマンの二人に掛かると、それが心地よいメロディーに聞こえる。

    今回見たDVDビデオには、ローレン・バコールをナレーションにした30分以上ものドキュメンタリーが挿入されている。
    この作品のできた背景や関係者の貴重な証言も聞くことができるもの。
    画像も美しくリニューアルしているのでお薦めの逸品。

    ※ 最新のBlu-ray版も豪華特典あり

    カサブランカ Blu-ray — Amazonで見る

    Reviewed in 06.2000

    古典として

    また戦後のナチの残党の話として、イングリッド・バーグマンとクロード・レインズが共演しているヒッチコック監督の『汚名』も似たような味わいがある。
    『汚名』はイングリッド・バーグマンを引き立たせるために作られた作品ではあるが。

    2017年日本公開作品にブラッド・ピットとマリオン・コティヤールの競演で『マリアンヌ』(ロバート・ゼメキス監督)があるが、1942年のモロッコを舞台にした諜報員の男女の話で、非常にモチーフが似ている。
    美男美女の悲恋ということで、古きハリウッド映画の雰囲気がよく出ている。

    映画『カサブランカ』のデータ

    カサブランカ (字幕版) — Amazonで見る

    CASABLANCA 103分 1942年 アメリカ
    監督■マイケル・カーティス
    製作■ハル・B・ウォリス
    原作■マーレイ・バーネット/ジョアン・アリソン
    脚本■ジュリアス・J・エプスタイン/フィリップ・G・エプスタイン/ハワード・コッチ
    撮影■アーサー・エディソン
    音楽■マックス・スタイナー
    出演■ハンフリー・ボガート/イングリッド・バーグマン/ポール・ヘンリード/クロード・レインズ/コンラート・ファイト/ピーター・ローレ/シドニー・グリーンストリート/ドゥーリイ・ウィルソン

    ◆1943年アカデミー賞
    作品賞授賞
    主演男優賞ノミネート ハンフリー・ボガート
    助演男優賞ノミネート クロード・レインズ
    監督賞授賞 マイケル・カーティス
    脚色賞授賞 ハワード・コッチ/フィリップ・G・エプスタイン/ジュリアス・J・エプスタイン
    撮影賞(白黒)ノミネート アーサー・エディソン
    作曲賞ノミネート マックス・スタイナー
    劇・喜劇映画音楽賞ノミネート マックス・スタイナー

    <DATA>

     戦火近づく’40年の仏領モロッコ、カサブランカは、自由を求めて渡米しようとする人々で溢れていた。
     ナイトクラブを経営するリック(ハンフリー・ボガート)の元へ、ナチの手を逃れてここまでやって来た抵抗運動の指導者ラズロ(ポール・ヘンリード)が現れる。
     だがその人物の妻は、かつてパリでリックと恋に落ちたイルザ(イングリッド・バーグマン)だった・・・。

     ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、そしてカサブランカの警察署長に扮しイイ味を醸し出すクロード・レインズ。
     激動の時代、別れた恋人、再燃する愛--これでもかと注ぎ込まれたロマンティックな要素。
     そして、『君の瞳に乾杯』、『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』など心くすぐるキーワード。
     言わずと知れたアメリカ映画の古典的作品で、アカデミーの作品・監督・脚色賞を受賞。
     だが、リアルタイムで観ていない限り、この作品に“よくできたメロドラマ”という以上の価値を見出す事は困難である。 <allcinema>

  • 映画『影武者』 コッポラとルーカスが認めた黒澤明作品

    映画『影武者』 コッポラとルーカスが認めた黒澤明作品

    映画『影武者』 THE SHADOW WARRIOR

    影武者

    動乱の戦国を巨大なる幻が行く--

    晩年の歴史絵巻、戦記ものというより人間ドラマ

    黒澤明監督晩年の作品と言って良いのだろう。
    黒澤監督は、やはりダイナミックな映像がその最大の持ち味だと思う。
    それこそは映画であり、また人々がダイナミックに躍動することで、一人一人のキャラクターが浮かび上がってくる。

    この作品では、歴史と言うものが大前提にある。
    影武者を捜し出すエピソード自体はオリジナルになるが、武田信玄の「喪を三年秘す」のは歴史的な事実。
    また弟・信廉が一時期、信玄の影武者になっていたのは、これまた歴史的な通説。

    信玄の偉大さが、影武者になった泥棒と武田勝頼を通して描かれている。
    そしてそこにあるのは、戦争の無情さで有る。
    武田信玄ほどの武将になると、戦国時代という時代であったとしても、人命の尊さを知っているのである。
    その事が人の上に立つものの資質なのかもしれない。

    それ以上にこの映画の醍醐味は、武田の騎馬隊を再現した数々の戦闘シーン。
    これだけの規模の人間達を操り、見事に合戦シーンを再現してみせた。
    これこそが映画なのである、黒澤監督にしか出来ないこだわりと完全主義。

    武田信玄と泥棒(影武者)、人格者と卑しい者、この相反する人間性の二役を見事に仲代達也が演じている。
    当初は勝新太郎が演じていたが、勝も黒澤監督も完全主義者で強情、意見が分かれて互いに折れず、勝が役を降りたという。
    そこには黒澤監督の、また勝新太郎の映画への執念が感じ取れる。
    この作品自体、執念の固まりのような凄味が有る。

    Reviewed in 12.1999

    2017年に改めて振り返って見ると

    黒澤明監督は1965年(私が生まれた年)までに作った映画が一番良い時期だったように思う。
    1999年頃はまだ私も日本映画をそれほど見ておらず、黒澤明監督の映画もそれほど見ていなかった。

    この『影武者』にしても続く『乱』にしても、黒澤明時代劇として十分に楽しめる作品だし、VFXを使わずに戦闘シーンを再現できるのは、黒澤明の名前がなければできないことだと思う。

    大規模戦闘シーンを再現できるだけの巨匠になったことは、それを作る資格を意味するが、ダイナミズムがそれで達成できるものではないことも事実と判った。
    『野良犬』『羅生門』から『天国と地獄』『赤ひげ』までのダイナミズムを超えることはもうなかった気がする。

    映画『影武者』のデータ

    影武者 — Amazonで見る

    THE SHADOW WARRIOR 179分 1980年 日本

    監督■黒澤明
    製作■黒澤明/田中友幸
    外国版製作■フランシス・コッポラ/ジョージ・ルーカス
    脚本■黒澤明/井手雅人
    撮影■斎藤孝雄/上田正治
    撮影協力■中井朝一/宮川一夫
    美術■村木与四郎/桜木晶(助手)
    音楽■池辺晋一郎
    録音■矢野口文雄
    監督部チーフ■本多猪四郎
    アドバイザー■橋本忍
    照明■佐野武治
    編集■黒澤明
    出演■仲代達也/山崎努/隆大介/萩原健一/根津甚八/大滝秀治/油井昌由樹/桃井かおり/倍賞美津子/室田日出男/志村喬

    カンヌ国際映画祭 1980年
    パルム・ドール(グランプリ)授賞

    英国アカデミー賞
    監督賞授賞 黒澤明
    衣装デザイン賞

    フランス・セザール賞
    最優秀外国映画賞授賞

    <DATA>

     巨匠・黒澤明監督が「デルス・ウザーラ」以来5年ぶり(日本映画としては「どですかでん」以来10年ぶり)に製作した、戦国スペクタクル巨編。
     武田信玄の影武者として生きた男の悲喜劇を荘厳にして絢爛な映像で描く。
     戦国時代。
     家康の野田城攻めの折り、鉄砲で撃たれこの世を去った武田信玄。
     弟信廉は信玄死すの報を打ち消すため信玄の影武者を立てる。男は盗みの罪から処刑されるところを信玄と瓜二つだったことから助けられたのだった。
     だが男にとって戦国の雄・信玄として生きることはあまりにも過酷だった……。
     製作費の高騰で計画が頓挫しかかったり、当初主役だった勝新太郎が監督との意見の相違から途中降板するなどの話題にも事欠かなかった。
     カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。 <allcinema>

    全国統一の気運が高まる戦国時代、その雄“武田信玄”は敵を欺くため、影武者を使ったと言われている。
    死刑執行寸前だった泥棒(仲代達也)が、実は武田信玄に瓜二つだったことからこの物語は始まる。
    そして、京に進軍の途中、信玄が死にその遺言で、三年の間信玄の死を隠すことに...
    海外版製作を、黒澤監督を師と仰ぐフランシス・コッポラ、ジョージ・ルーカスが引 き受けることで、製作が実現化した。

  • 映画『エリザベス』 血に塗られた女王・エリザベスを見事に描く

    映画『エリザベス』 血に塗られた女王・エリザベスを見事に描く

    映画『エリザベス』 ELIZABETH

    エリザベス

    世界の映画賞、堂々16部門受賞!!!
    その瞳が、唇が、その存在が革命<ヴァージン・クイーン>25歳。

    ヴァージン・クィーン演じきったケイト・ブランシェットの世界デビュー!

    イギリスの歴史時代劇と言うだけで、ちょっと楽しみにしていた作品。
    しかも今年(1999年)のアカデミー作品賞ノミネート作品でもある。
    ノミネートされた作品の中では、日本公開が一番遅い作品となったが、これまでのノミネート作品のどれもが面白く質が高く、その点でも楽しみにしていた作品。

    観終わった時の第一印象が、あぁ~楽しかった!なのである。
    私は歴史物が好きで、しかも時代に翻弄された人々を描いた作品を観ると、とっても感動してしまうのである。
    で、この作品はどうかというと、余り感動はないのだが楽しいのである!

    第一印象の後に、不満がいくつか出てきたことも確か。
    スケール感がないのである。
    映像も絢爛豪華だし、建築の様式美や船遊びの花火のシーン等の演出はあるのだが、どのシーンも奥行きが感じられないのだ。
    この点は、ヴィスコンティが涎が出るくらい巧いのだが、どうもこの作品ではお金の掛け方が足りないような気がするし、後はカメラワークが今ひとつな気がした。
    映画が始まってすぐは俯瞰などのシーンが有って良かったのだが、どうも画面全体が暗いことも有って、一つの場面での奥行きが出てこない。
    また、如実なのは、戦場のシーンでエキストラをケチったのか?写している場面が狭いような気もした。

    それと重厚さと言う点で、今ひとつなのである。
    エリザベスⅠ世の時代絵巻なのだから、個々の登場人物の描き込みをもう少ししたら良いのにと思う。
    一番気になったのが、ノーフォーク公の描き方。
    彼はメアリーⅠ世が亡くなったときに、女王の証である指輪をエリザベスに渡すように指示する。
    このシーンは、彼がイングランドに対しての忠誠心の高さ表す。
    その人物がエリザベス暗殺の中心人物になる理由や背景をもう少し描くべきだったような気がする。
    結局、時代という背景の描き込みが、もう少し踏み込まれていないことが、この作品から、重厚さを奪ってしまったのだろ う。

    また、この時代は暗殺や策略が当たり前。その点、もっと残虐なシーン等が有ると、逆にエリザベスの凛々しさや清らかさが際立ったのでは?と思わせる。

    が、これらの点が有ったとしても面白かったと思わせるのは、この映画のテーマは、その時代性よりも、エリザベス自身の 成長と言う点に焦点を絞り、それに応えてケイト・ブランシェットが見事な演技をしたことに有ると思う。

    不遇の少女時代から恋に落ちて、そして女王になり裏切られ政治の中で辛い立場に置かれてしまう。
    その中で愛らしく美しい女性から、戸惑いながら苦しむ女性、そして威厳と自身に満ちあふれた女性への変貌。
    決してブランシェットが美しい女優だとは思えないが、繊細な表情の素晴らしかったこと!彼女を見るだけで、この作品を観る価値が有ると思えてしまう。

    また彼女を囲む俳優陣。
    『恋におちたシェイクスピア』(時代も同じエリザベスⅠ世)と重なるジョセフ・ファインズとジェフリー・ラッシュの二人は、こっちの作品の方が断然良い。
    特にジェフリー・ラッシュが、ファニー・アルダン演じるメアリー・ド・ギーズを暗殺しに行ったときの演技が素晴らしい。
    他にもイギリスやフランスの名優が、素晴らしい演技を披露してくれる。

    結局、ケイト・ブランシェットの瑞々しさが私に楽しい!と言う思いにさせてくれた作品でした。
    アカデミー賞を授賞したジェニー・シャーコアのメイクアップは素晴らしかったし、意外と音楽が良かったなぁ~と。
    それにしてもこの作品、どこか『ゴッドファーザー』に似ていませんか?

    最後に、元フランス代表のサッカー選手だったカントナが、結構、演技して頑張っているのを観て思わず微笑んでしまっ た。

    Reviewed in 09.1999

    映画『エリザベス』のデータ

    エリザベス (字幕版) — Amazonで見る

    ELIZABETH 124分 1998年 イギリス

    監督■シェカール・カプール
    製作■アリソン・オーウェン/エリック・フェルナー/ティム・ビーヴァン
    脚本■マイケル・ハースト
    撮影■レミ・エイドファラシン
    プロダクション・デザイン■ジョン・マイヤー
    衣装■アレクサンドラ・バーン
    編集■ジル・ビルコック
    音楽■デヴィッド・ハーシュフェルダー
    キャスティング■ヴァネッサ・ペレイラ/シモーヌ・アイルランド
    ライン・プロデューサー■メリー・リチャーズ
    メイクアップ■ジェニー・シャーコア
    共同製作■デブラ・ヘイワード/リザ・チェイザン
    出演■ケイト・ブランシェット/ジョセフ・ファインズ/ジェフリー・ラッシュ/クリストファー・エクルストン/リチャード・アッテンボロー/ファニー・アルダン/キャシー・バーク/エリック・カントナ/ジェイムズ・フレイン/ヴァンサン・カッセル/ジョン・ギールグッド/ケリー・マクドナルド/ダニエル・クレイグ

    1999年 アカデミー賞
    最優秀メイクアップ賞授賞 ジェニー・シャーコア
    作品賞ノミネート
    主演女優賞ノミネート ケイト・ブランシェット
    撮影賞ノミネート レミ・エイドファラシン
    美術賞ノミネート ジョン・マイヤー
    衣装デザイン賞ノミネート アレクサンドラ・バーン
    作曲賞(ドラマ部門) デヴィッド・ハーシュフェルダー

    1999年(第51回) 英国アカデミー賞
    最優秀イギリス映画賞授賞
    最優秀主演女優賞授賞 ケイト・ブランシェット
    最優秀撮影賞授賞 レミ・エイドファラシン
    最優秀メイクアップ賞授賞 ジェニー・シャーコア
    最優秀楽曲賞授賞 デヴィッド・ハーシュフェルダー
    その他、7部門ノミネート

    1999年 ゴールデン・グローブ賞
    最優秀主演女優賞(ドラマ部門)授賞 ケイト・ブランシェット

    <DATA>

     16世紀イングランド。 3歳で私生児の烙印を押され、21歳で反逆罪に問 われロンドン塔に幽閉される。
     そして25歳で史上二番目のクイーンに即位。
     渦巻く権力闘争と血塗られた宗教争い・・・。
     全ヨーロッパを敵に回す中で、男を愛し、傷つき、愛を脱ぎ捨て、女をそして人間を超えた存在<ヴァー ジン・クイーン>となったエリザベス。
     彼女の壮絶な生きざまを描いた愛と激動の2時間 04分!

     英国王ヘンリー8世と、その愛人アン・ブーリンの間に生まれたエリザベス。
     腹違いの姉、メアリー女王の死後、弱冠25歳でイングランド女王に即位。
     側近のウォルシンガ ム、セシル、ノーフォーク卿でさえも誰が敵か味方か分からない中で、唯一彼女の心 の支えになっていた恋人のダドリー。
     王室のスキャンダルの的となりながらも、毎晩逢い引きを重ねる中で、国内の宗教争いは激化し、イングランド史上最大の危機に直面する。
     エリザベスを失脚させようと、時の権力者ローマ法王を始め、全ヨーロッパから忍び寄る暗殺司令と陰謀の影―。
     その計画の中に恋人のダドリーも加わっているという衝撃の事実を知る。
     自分の家来やヨーロッパ中に敵を作りながらも優れた判断力と英知で国を建て直そうとしたエリザベスだったが、無益な戦いで国民が傷ついていくのを目の当たりにした彼女は、ある決意をする・・・。

     爛豪華な世界の中で、ハリウッドのアクション大作を凌ぐ迫力の映像が展開! 女王エリザベスには、ゴールデングローブ賞他各賞を総なめにし、あのブラッド・ピットも大絶賛した新星ケイト・ブランシェット。
     その他、恋人のダドリーに「恋におちたシェイ クスピア」のジョセフ・ファインズ、「恋におちたシェイ クスピア」、「シャイン」のジェフリー・ラッシュ、「ドーベルマン」の ヴァンサン・カッセル、トリュフォー作品で知られるファニー・アルダンら、実力対決も見物。
     監督は本作で世界的な注目を浴びた「女盗賊プーラン」のシェカール・カプール。
     全てのルールを破り、世界の映画賞、堂々16部門を受賞した革命的映画がいよいよ 公開される。 (オフィシャル・サイトより)

     

  • 映画『海の上のピアニスト』 モリコーネの音楽が人生の素晴らしさを奏でる

    映画『海の上のピアニスト』 モリコーネの音楽が人生の素晴らしさを奏でる

    映画『海の上のピアニスト』 THE LEGEND OF 1900

    海の上のピアニスト

    人生、捨てたもんじゃない

    なんて美しい映画なのだろう。
    監督はあの『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督である。
    再び、この映画でも観客の心をつかんで離さない。

    生まれながらにして天才ピアニストの主人公ナインティーン・ハンドレッドが奏でる音楽も美しく聞き応えもたっぷり。
    この物語自体、トランペッターのマックスの作り話か?果たして本当の話か?判らない。
    だからこそ、神秘的で美しい語り口が許されるのだ。

    これは元々、戯曲として書かれた原作が有る物語だからしょうがないのかもしれないが、非常に映画的な語り口が、ラスト4分の1くらいから、説明的になってくる。
    そう現代(1946年)に豪華客船ヴァージニアン号が爆破される訳だけど、ここで現れるナインティーン・ハンドレッドとマックスの会話・・・大切な会話だけど、それまでが映像によって語られてきたのに、ここにあるのは言葉のみ。
    そして映像としてあるのは、絶対に存在し得ないで有ろうシチュエーションに現れたナインティーン・ハンドレッドなのだ。
    それまでが、存在するのか?しないのか?という狭間に存在していた人物に、いきなりリアリティが与えられてしまう。

    個人的にはこのラスト、夢のままの映像的な展開をして欲しかった。
    ここまで余りに素晴らしい作品だっただけに残念で仕方がない、人それぞれの感じ方だと思うけど。

    と言っても、この映画は素晴らしい。
    トルナトーレ監督は、映画というものを非常にロマンティックな語り口で、いつも私達に映し出してくれる。
    映画によって伝えられるもの、それはリアリティとかと言ったものではなく、作り話(=ファンタジー)であったとしても、その中に心が込められている事が重要なのであると。
    そしてその表現は非常に映像的なのである。

    この作品でも数々の美しいシーンが連続する。
    冒頭の沢山の移民を乗せた船の前に自由の女神が現れ「アメリカ!」と人々が叫ぶシーンと言い、生まれたばかりのナインティーン・ハンドレッドが蒸気機関に揺られながらじょうろでミルクを飲むシーン、大きくなったナインティーン・ハンドレッドが一等船客のダンス・ホールに初めて足を踏み入れるシーンなど。
    船の上に降り積もる雪、そしてナインティーン・ハンドレッドとトランペットの男マックスが出会う嵐の夜シーン。
    時化(しけ)で大揺れの船の一等船客では、靴磨きのために廊下に出された靴が揺れに併せて左右に滑っている。
    マックスはとてもじゃないけどまっすぐ歩けず、船酔いで花瓶に吐いていると、そこに何事も無いように真っ直ぐに立ったナインティーン・ハンドレッドが現れ、ピアノを弾くという。
    床に固定させるストッパーを外させて、まるでピアノ自身がワルツを踊るようにダンス・ホールを動き出す。なんて、素晴らしいシーンなんだろう!
    またジャズの創始者ジェリー・ロール・モートンが音楽での決闘を挑んでくるが、このシーンも見応えが有る。

    更に好きなシーンが、ナインティーン・ハンドレッドは、その人を見て思い浮かんだ音楽を奏でると言う才能を持っているが、ある日、船室の窓の外に見える少女を見て、ピアノによる演奏をするシーン。
    彼女の魅力と共に奏でられる音楽とナインティーン・ハンドレッドの表情。
    映画とは映像を見るもの、そう数々の素晴らしいシーンの積み重ねが、素晴らしい映画を作る。

    そして少女との出逢いと、少女の父親の言った言葉「陸から海を眺めていたら、海が語りかけてきた」で、海が自分の人生の方向性を決めてくれるなら、船を下りてみたいと。
    ただ、結局、自ら下りることは無かった、そう自分には陸地に広がる無限を受け入れることは出来ないと。

    映画では、一つの答えを出していると思う。
    それは友情であり、恋であり、人と人の結び付きが有れば、陸地でも人が生きていくことが出来ると、ただナインティーン・ハンドレッドには、その結び付きが無かっただけなのだと。
    ナインティーン・ハンドレッドの前をいくつもの人生が通り過ぎていく。
    しかし、それは通り過ぎていくだけで、彼の人生とは別のものだった。

    そこには『ニュー・シネマ・パラダイス』と同様に、映画を観る人々に対して、映画も人生の素晴らしさを教えてくれるが、実際の生活にこそ人生の素晴らしさが有るのだと!
    そうトルナトーレ監督は語りかけてくるかのようだ。

    ナインティーン・ハンドレッド役のティム・ロスは、今までの彼の役柄とは違い、普通の人(他の映画ではちょっと危ない役が多い)を演じて見せた。
    その中に人の孤独や優しさを見事に表現していたと思う。
    マックス役のプルート・テイラー・ヴィンスは一世一代の演技だった。

    この映像的な素晴らしい映画、物語の語り口も見事、そして更に素晴らしかったのがエンニオ・モリコーネのスコア=音楽。
    船で出会った人々の人生から音楽を作る、それを見事に旋律に換えていった彼の素晴らしさ。
    この音楽の素晴らしさ、これ無くしては、この映画は生まれなかったであろう。

    「いい物語があって、それを語る人がいるかぎり、人生、捨てたもんじゃない」

    Reviewed in 12.1999

    映画『海の上のピアニスト』のデータ

    THE LEGEND OF 1900 125分 1999年 アメリカ=イタリア

    監督■ジュゼッペ・トルナトーレ
    製作■フランチェスコ・トルナトーレ
    製作総指揮■ローラ・ファットーリ
    脚本■ジュゼッペ・トルナトーレ
    原作■アレッサンドロ・バリッコ
    撮影■ラヨシュ・コルタイ
    音楽■エンニオ・モリコーネ
    プロダクション・デザイン■マウリツィオ・ミレノッティ
    アート・ディレクター■ドメニコ・シーカ
    編集■マッシモ・カグリア
    キャスティング■ファブリツィオ・セルジェンティ・カステラーニ/ヴァレリー・マッキャフリィ/ジェレミー・ジマーマン
    特殊効果スーパーヴァイザー■デイヴィッド・ブッシュ
    出演■ティム・ロス/プルート・テイラー・ヴィンス/メラニー・ティエリー/クラレンス・ウィリアムズ三世/ビル・ナン/ピーター・ヴォーン/ナイオール・オブライアン/ガブリエレ・ラヴィア/アルベルト・ヴァスケス/ハリー・ディッスン/イーストン・ゲイジ/コリー・バック

    映画『海の上のピアニスト』
    ワーナーホームビデオ

    <DATA>

     1946年、トランペッターのマックス(ブルート・テイラー・ヴィンス)は中古楽器屋で甘美なピアノ曲が収録されている1枚の古びたレコードを発見する。
     そ してマックスはこの曲を演奏した「この世に存在しない伝説のピアニスト」の 物語を語り始めた。
     大西洋を果てしなく往復する豪華客船ヴァージニアン号に置き去りにされた小さな命。
     彼の名はナイ ンティーン・ハンドレッド=1900(大人になってからはティム・ロス)。
     時が世紀の変わり目を告げる1900年に、この船で拾われた彼はこ う名付けられた。
     船を下りることなく成長するナインティーン・ハンドレッドは、やがて88のピアノの鍵盤の上で信じが たい才能を発揮する。
     自らの研ぎ澄まされた感性でのみ奏でられるメロディ。
     楽譜は一切読まず、旋律は乗客達の表情や仕草に合わせて紡ぎ出されていく。
     優しく、しかも力強い。
     かつて聞いたこともないその素晴らしい音色は、あらゆる人を感動の渦に巻き込んでいった。
     そしてその噂は海を渡り陸地にまで広がっていくのだった。
     即興の音楽を通し、様々な人々と出会う中、ナインティーン・ハンドレッドはふと「陸地から見る海はどうなのだろう」と思いを巡らす。
     そんな時、舷窓越しに美しい少女を見る。
     その瞬間、彼はやさしいメ ロディを弾き、かつてないほど感動的な音楽を奏でた。
     その少女の姿を船中探し回り、やっと三等船室で見つけるが、ごった返す群衆の渦に引き離され、彼女は消えていってしまう。
     しかし想いを断ち 切れないナインティーン・ハンドレッドは、これまで一度も下りる事のなかった船のタラップに、その足を 掛けるのだった...。

  • 映画『メッセージ』 見終わった後に語り合いたくなる作品(ネタバレあり感想)

    映画『メッセージ』 見終わった後に語り合いたくなる作品(ネタバレあり感想)

    映画『メッセージ』 Arrival

    メッセージ

    ある日突然、巨大飛行体が地球に。
    その目的は不明--

    2017年5月19日(金)全国公開予定

    静かで深淵なSF映画、派手さはない

    突如世界各地に現れた物体、それは宇宙船だったが、彼らの発するメッセージを解読することに時間がかかっていた。
    そこにエイミー・アダムス演じる主人公ルイーズが指名されて、宇宙人とコンタクトをとることになるという物語。

    俗にいうファーストコンタクトもので、『2001年宇宙の旅』やスピルバーグ監督の『未知との遭遇』『E.T.』などもこのジャンルに入る。
    『インデペンデンス・デイ』のような宇宙人と地球人の戦いを描いたものも、コンタクトものの一つの形であり、『宇宙戦争』などこちらもたくさん生まれてきた。

    この作品は、どちらかというと『2001年宇宙の旅』や天文学者カール・セーガンのベストセラーを映画化した『コンタクト』に近く、作品の物語の進め方は『2001年宇宙の旅』に近い。

    この作品を見終わった時にいろんなことを考えさせられる、またいろんな解釈もできる作品となっている。
    作品的には低予算だからという訳ではないだろうが、派手な演出がなく、90%以上にエイミー・アダムスが登場する人間ドラマになっている。

    宇宙人が一体何を伝えたいのか?むしろそれを地球の人々はどう解釈をしたいのか?という点でサスペンス・タッチで話が進み、ラストは思ってもいなかった事実が明かされて行く。

    映画を見た後に議論をしたくなる映画だが、この解釈の自由さを好むかどうかは賛否が分かれるところ。
    ちなみに私は、この手の作品が大好きだから、いろんな人に大きなスクリーンで見て欲しい作品と思っている。

    SFなのに見た人の人生観を問いかける作品

    監督は『プリズナーズ』や『ボーダーライン』で手堅い演出をし、次回作では『ブレードランナー2049』を監督するドゥニ・ヴィルヌーヴ。
    現在、注目の監督で『ブレードランナー』の続編の後には『砂の惑星デューン』の続編(リメイク?)も待っている。

    今年のアカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚色賞など8部門にノミネートされ、音響編集賞を受賞している。
    意外なのは、ゴールデン・グローブ賞、他でノミネートされている主演女優のエイミー・アダムスがアカデミー賞ではノミネートされなかったこと。
    個人的には『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンは努力賞も含めて受賞に相応しいとは思うけど、この作品のエイミー・アダムスは勝るとも劣らないくらい素晴らしい演技をしている点も見どころ。

    この作品は中国人のテッド・チャンの原作があるので、物語の構成は原作そのものだとは思うが、ラストでアッと驚かされるのは、編集の上手さがあると思う。

    SF映画であり、巨大宇宙船は出て来るが、決して派手なVFXもなく、むしろ静かで印象的な音楽をベースに人間ドラマが展開されていき、見ている人の人生観や死生観といったものが試される映画でもある気がする。

    2017年のベストの中の1本と言える。

    メッセージ

    私的『メッセージ』 ここからはネタバレがあります(鑑賞後にどうぞ)

    テーマが有るか?共感できるか?

    この作品は見終わった時点で、テーマは何か?それ以前に宇宙人はなぜ地球に来たのか?など、そこから語らないといけない作品。

    この作品の中では運命が明示されているにもかかわらず、自分で運命を選択することを繰り返している。
    運命は存在すが、運命を選択していくのはあなた自身だ!冒頭に「これはあなたの人生の物語です」というセリフから始まるが、これがラストへの作品のメッセージとなっている。

    作り手の強い意思を感じるか?

    原作者の意図を、ヴィルヌーヴ監督が汲み取って丁寧に演出している。
    上映後にヴィルヌーヴ監督の話を直接聞くことができて、感じることができた。

    タコのような七本脚の宇宙人ヘプタポッドが出て来るが、これは原作に出てくるもので、この宇宙人が表す文字が非常に重要な意味を持っている。
    このあたりを忠実に映像化している点も重要。

    輪のような文字は、中国語や日本語の漢字のような表意文字であり、文章でもある。
    一つの円の中に、形から読み取れる文章がある、しかも円なので始まりも終わりもない文章。

    カナダ人(英語・フランス語圏)の監督にとっては、表意文字は新鮮であり興味深いところだと思う。

    俳優の意思や演技力が伝わるか?

    主人公ルイーズは宇宙人と対峙するが、時折、娘のハンナとの日常のやり取りが脳裏に浮かぶ、その映像に写る娘ハンナは、年齢がバラバラでルイーズが宇宙人とコンタクトしている今現在には存在しないらしい、ということが判る。

    作品を見終わった時に判ることだが、ルイーズを演じたエイミー・アダムスはハンナを演じた子役とどういう立ち位置で向き合ったら良いか、非常に繊細な演技を求められていたと思う。

    映画を見続けていくと、ルイーズの行動に違和感や一貫性のなさを感じたりする、そこをエイミー・アダムスが演じ分けをしている点で秀逸だった。

    映画らしい楽しさが備わっているか?

    明確なテーマと観客への投げかけを持っている作品は、映画でしかできないと私は思っている。
    TVシリーズで冗長的に投げかけることはできないし、基が小説ではあるが時間軸の構成に関しては、やはり映像による表現力の高さは素晴らしいと思う。

    時間の概念に関しては『インターステラー』よりも優れていると思う。
    これは映像化というより物語の持つ力と編集の上手さによるものだと思う。

    エンターテインメント性

    人間ドラマとSFとの融合のしかたが面白い。
    宇宙人が来襲して、地球ではパニックが起きながら、宇宙船の周りでは整然と作業が行われている。

    映像の美しさや宇宙船の内部構造の巧みさはなかなか面白い。
    基本的にはモノリスと同じで、物体そのものが何なのか?は判明しないが、そこがまたサスペンス要素を盛り上げている。

    そして宇宙船という密室の中で、濃密なエイミー・アダムスの演技が行われている点も面白い。

    演出が素晴らしいか?

    今回は観客をどこまで騙しきるか!が重要で、その点に関しては見事だった。
    作品が投げかけてくる疑問点は観客にボールが投げられているが、ストーリーとしての流れとしては、見終わった時に「なるほど!」と唸ってしまう。

    脚本が素晴らしいか?

    原作の持つ過去・現在・未来といった時間軸を持たない生物とのコンタクト、それがサスペンスのようにラストで解き明かされて、何となく感じていた矛盾が一気に一つの線になるところは、脚本の素晴らしさに尽きる。

    何度も見たくなるか?

    主人公のルイーズは宇宙人とコンタクトをしてるうちに、自分の体験していることに時間の前後ないことに気付いていく。
    そして、それでも彼女は未来に不幸なことが待っていたとしても、それを選択する決断をする。

    再度、この時間軸の部分を意識しながら見てみたいという点もあるが、その時点でのルイーズの決断が、その時の彼女の心理的な心の表れであり、そのベースにあるのが善意や愛であることには間違いないと思うが、心の機微を確認したいところ。

    これも私の想像だけど、例えばルイーズは子供を育てる母親の無償の愛を選択することになるが、その後に待ち受ける悲劇も受け入れることになる。
    地球を救うことになる彼女の行動も、人と人との善意があって成り立つことでもあった。

    この作品を見て最大の疑問であり結論が出ないのは、中国のシャン将軍の妻が何を言ったのか?だ。

    「非ゼロ和」についての解釈(2017年5月30日追記)

    私にとっては聞きなれない言葉だったけど、英語に直すと non zero sum なるほどとなる。
    英語を見れば判るように、普段は逆の言葉の zero sum game とかよく使うが、ゼロサム=ゼロ和は一人が得をすると必ず誰かが損をするという考え方、全員の利得の総和がゼロになると言う考え方。

    ゼロサムはサイコパスが得意な分野で、最近は脳科学者の中野信子さんも書籍で書かれているが、サイコパスは会社社長や弁護士など社会的成功者に多いと言われている。
    それは資本主義が、冷静に人から奪う能力が高いほど成功することと一致している。

    「非ゼロ和」とはその逆であり、資源の蓄積していく過程で、誰かが利益を得たとしても他の誰も損失にはならないことである。
    時間がサークルすること共に、宇宙から来たと思われる生物(もしくは未来の人間)には非ゼロ和の考え方が、そのサークル文字から感じられる。
    人の生死にも時間軸がないから、+-ではなく存在している時間と存在していない時間があるだけと考えられる。

    宇宙人はルイーズに助けを求めるが、このサークル文字を解析することが彼らを助けることになる。
    ルイーズがシャン将軍を説得して世界を救ったのと同じ意味を持っている。

    非ゼロ和という言葉を一番近い英語にすると、Win-Win である。
    人類はゼロサムゲームから脱却しないと滅びるというメッセージだったのかもしれない。

    映画『メッセージ』のデータ

    メッセージ

    監督■ドゥニ・ヴィルヌーヴ
    脚本■リック・ハイセラー
    原作■テッド・チャン(「あなたの人生の物語」ハヤカワ文庫刊)
    撮影監督■ブラッドフォード・ヤング
    プロダクション・デザイン■パトリス・ヴァーメット
    音楽■ヨハン・ヨハンソン
    製作■2016年アメリカ映画/スコープ・サイズ/116分
    配給■ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
    出演■エイミー・アダムス(ルイーズ・バンクス)/ジェレミー・レナー(イアン・ドネリー)/フォレスト・ウィテカー(ウェバー大佐)/マイケル・スタールバーグ(ハルペーン)

    © 2016 SONY PICTURES DIGITAL PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.
    © 2016 XENOLINGUISTICS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

    公式サイトはこちら

    【イントロダクション】

    突如出現した未知なる飛行体―。
    “彼ら”は人類に<何>を伝えようとしているのか?
    『ブレードランナー』続編の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが贈るすべての人の胸を打つ感動のSFドラマ。

    【ストーリー】

    突如地上に降り立った、巨大な球体型宇宙船。謎の知的生命体と意志の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は、“彼ら”が人類に<何>を伝えようとしているのかを探っていく。
    その謎を知ったルイーズを待ち受ける、美しくそして残酷な切なさを秘めた人類へのラストメッセージとは―。