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  • 映画『アイズ ワイド シャット』 夫婦の形とセックスについての考察

    映画『アイズ ワイド シャット』 夫婦の形とセックスについての考察

    映画『アイズ ワイド シャット』 EYES WIDE SHUT

    アイズ ワイド シャット

    見てはいけない、愛

    偉大な哲学者・スタンリー・キューブリック監督の遺作

    この作品を見終わった時、或る種の脱力に襲われる。

    シーン、シーンの素晴らしさには目を見張るものの...この作品から何かを受け取ることが出来なかった。
    もっと言うなら、意味不明...理解不能。
    キューブリックは何を描きたかったの?過去のキューブリック作品では、色々な疑問難問は提示されるものの、作品自体からは溢れるばかりのオーラ...と言うか、観ていて面白い!と言うものを感じることが出来た。
    この作品で初めて、それ自体も“?”が付いてしまった。

    先に書いてしまうと、この作品に対して賛否両論の批評感想が有る。
    私が感じたこの作品に対する不満は、(いろいろなHPも見たけど、)この作品を批判する評の中にも書かれていない。
    この作品に満足したという批評や感想...それにも納得するものが現れていない。

    オープニングのトム・クルーズとニコール・キッドマンの夫婦が出かける何気ないシーン、そこには、この夫婦の倦怠期の関係がさりげなく描かれている。
    出かけて行ったパーティー会場の部屋の調度品等のエロチックな点...そしてニコールとハンガリー人の男性の絡 み...
    夫婦共に、意識する・しないに関わらず、異性と近づく。
    その反動でパーティーから戻り、夫婦の営み(Sex)のシーンに画面が切れ代わる。
    それはこの夫婦の欲求不満の表れ、なかなか刺激的なカット。

    更に刺激を求め、ドラックを楽しみながらのSex、そこから出た会話に夫婦の真実が語られるシーン。
    妻の語った言葉に衝撃を受け、ニューヨークの町中を彷徨い歩く夫。
    また怪しいパーティー会場に足を運びそこで目にするもの。

    夫婦の心の変化や、表層に現れる言動。
    その描き方の上手さ、いや完璧なまでの演出。
    トム・クルーズ演じる夫の動揺の仕方が、余りにも純粋すぎる人物として描かれている。

    また怪しいパーティーのシーンが、今の時代では古すぎる。
    このこと自体を非難するのは、当てはまらない。

    “性”、“Sex”と言うものを描いているものの、その描写自体は時代遅れなのかもしれない。
    それは単にストーリーとしての設定にしか過ぎない。
    一つ一つの描写は完璧なのだ!

    多少、冗長な感じを受けるのは、本当にキューブリックが最後まで編集を手掛けたのか?それとも私がただ単に途中で、理解不能・感覚麻痺状態だったから?

    根本的に、この作品を理解不能にさせたのは、キューブリックがこの作品で描いた、“愛”の形や、“夫婦”関係、“Sex”、 “家族”の関係が、私の考えているものと余りに違いが有るからだろう。(もちろん私の妻がニコール・キッドマンのようにセクシーとか、主人公の医師のように高い収入が有るとかじゃなくてね)

    ド ラッグをやりながら夫婦の会話で語られる内容は真実では有るが、それに対する妻の妄想の告白、夫の動揺。
    そんなに夫婦関係は単純なの?(作品の中で、ちょっ見には、複雑な夫婦の関係にように見えるけど...)
    逆に、夫婦を結びつける真実は語られていない。
    “Sex”だけじゃないでしょ(ここには書かないけど、もっと重要なものが 有ると、私は思っている)。

    仮面を通して人間の二面性を描きつつも、主人公である“夫”の二面性が余りにも無視されている。
    いや主人公の男性としての“性”が抜け落ちている。
    男性は、本当は妻の「あなたも他の女と寝たいと思っているのね?」の言葉の答えを、確信的に持っていると私は思う。
    でもそれは相手には言わないけど、それが夫婦だからごまかすものでしょ?
    その前提が崩れてしまうから、私はその後、脳が麻痺してスクリーンの前でオロオロしてしまう。

    完璧な演出と、それを支えたニコールの魅力的な演技、肢体の美しさ(彼女が眼鏡を掛けて、夜、夫を待つ姿などは素晴らしい!)、トム・クルーズの野暮ったい演技や彼の持つ雰囲気は、意外と合っているのかもしれない、嫌らしさを感じさせない。

    この作品を褒める言葉をいおうと思えばいくらでも。
    演出の素晴らしさと音楽の調和、夫婦の微妙な関係とそれに関わ る人々、それを表現する映像の力、流石、キューブリック!
    ただ、その持つテーマから発する“何か?”が感じられない、もちろん私だけかもしれないが。

    “Sex”と“愛”自体をテーマにする事は、決して間違っていないと思う。
    何度か観ることによって、キューブリックが問い掛けているもの、訴えているものが判るかもしれない。 しかしそれは、私にとって“感じる”と言う行為ではなく、既に“考える”と言う行為になっている。
    “考える”と言うことも、また楽しいのだけど。

    この作品の完成度と言う点では申し分ない、お薦めの作品である、でも私は何も受け止めることが出来なかった。
    もちろん人によっては、受け取るものが大きい場合も有るだろうけど。

    アイズ ワイド シャット

    『アイド ワイド シャット』に見る愛の形

    キューブリックの遺作『アイズ ワイド シャット』を観に行く。
    13年ぶりの新作と言うことも有るし、キューブリック作品が好きな私には、やはり期待度は大きい。

    はたして3時間近くになるこの大作、見終わった時、私はいろいろな事を考えはじめる。
    そう、面白いとか感動したとか、逆につまんなかった、納得できないとか、そう言った感情が起きてこない。
    この作品を観て、私の感性には何も訴えてくるものが存在しなかった。

    この作品で一番の疑問点は、やはりトム・クルーズ演じる主人公だろう。
    確かに彼は、今時、絶対に存在し得ない純粋な男性と言えるのかもしれない。
    金と地位と女性に恵まれ、しかもニューヨークという大都会に住んでいるのである。
    彼のような人物が存在するかしないかは別にして、この夫婦の会話が突然、私には信じられないものに聞こえてくる。
    その事によって、この作品からのメッセージが、私の耳には届かなくなってしまった、と。
    作品は、非常に微妙な夫婦関係を丁寧にとらえている。
    しかし主人公の医師は、あまりに男性としての“性”とかけ離れている。

    妻の「他の女性と寝ない理由…」を問い質されても、答えも「君を愛しているから…」。
    嘘でしょ!違うでしょ!夫婦の間には、“愛情”以外の“信頼”と言うものが有るでしょ!私が言いたいのは、愛という保証の上に立つ“信用”ではなく、長い時間をかけて、築き上げてきたもの。
    本当は、他に妻より愛することの出来る女性が現れれば、その女性とSexしたいというのは男の本能だと思う。
    それを押さえるのは、二人で築き上げたものの重さによるのだと!

    もちろん若い夫婦の離婚はアメリカでは当たり前のように起こり、日本でもその傾向が強まっている。
    それは二人の築き上げたものが、余りに軽いからではないか?
    人生を長い間一緒に暮らしてきた夫婦が離婚する場合も有る、築き上げたものが幻想だったから。

    妻が、他の男性に抱かれる妄想を抱いたと、告白する。
    妄想を抱いたことが裏切りではなく、告白したことが裏切りだと思う。
    夫婦の間で、全ての真実を語り合うことが必要なの?全てを語り合える関係が有ることが幸せなの?と。

    ある特定の人に、それが妻・夫で有ったり、親友で有ったり、恋人であったとしても、何もかも自分の内に秘めた真実を語ることは出来るのだろうか?

    人が生きていくためには様々な障害が存在する。
    それは夫婦で乗り越えなくてはいけない障害の場合も有るし、個人が乗り越えなければいけない障害の場合も有る。
    その中には、それぞれの個人に隠された問題が存在し、必要に応じてそれを相手に隠すことも信頼の証だと思うのだが...。

    この作品の中で、仮面舞踏会風の乱交パーティが開かれるシーンが有る。
    ここで象徴されていることは、“Sex”と“愛”の関係。
    この作品を通じて、ニューヨークの街中で主人公が経験する出来事も、“Sex”と“愛”の関係である。
    愛がなくてもSexは出来ると言うことを映し出す。
    逆にラストの危機を乗り越えた夫婦が、今必要なこととして「ファック!」と妻が言うのは、愛情を継続させるには“Sex”が必要で有ることを明示しているが、夫婦の関係を続ける事に必要なのは、“Sex”のような一瞬の喜びではないはず。

    この作品を観てラストを幸せと感じ、「良い作品だったなぁ~」と感じる人は、人生においても幸せなんだと思う。
    この作品を観て「つまんない」と感じた人は不幸な人なんだと思う。
    不幸という言葉の意味には2つあって、この映画を全く理解できずにけなすしか感性を持てない人。
    もう1つは、この作品の主人公以上に複雑な人生を歩んでいる人。
    不幸すぎて(私は人生こそが苦難の道と思っているけど)理解することが出来ないと思う。

    だからキューブリックの描いた愛のこの作品、今、幸せに溢れている人は、この作品をキューブリックの愛の贈り物と感じ、今、障害に立ち向かっている人には、自分で愛を探しに行くに違いない...

    Reviewed in 08.1999 

    映画『アイド ワイド シャット』のデータ

    映画『アイズ ワイド シャット』 [ トム・クルーズ /ニコール・キッドマン]

    EYES WIDE SHUT 159分 1999年 アメリカ

    監督■スタンリー・キューブリック
    製作■スタンリー・キューブリック
    製作総指揮■ヤン・ハーラン
    原作■アルトゥール・シュニッツラー
    脚本■スタンリー・キューブリック/ フレデリック・ラファエル
    撮影■ラリー・スミス
    出演■トム・クルーズ/ニコール・キッドマン/シドニー・ポラック/トッド・フィールド/マリー・リチャードソン/アラン・カミング/マディソン・エジントン/トーマス・ギブソン/レイド・セルベッジア/リーリー・ソビエスキー/ヴィネッサ・ショウ

    <DATA>

    スタンリー・キューブリックが「フルメタル・ジャケット」以来、12年ぶりに手がけた最新作にして遺作。全て が極秘の内に製作され、マスコミにもほとんどの情報が流されず、わずかにトム・クルーズとニコール・キッ ドマンが実生活同様に夫婦を演じ、愛とセックスがテーマらしい事だけが知らされていた。その話題作が遂 にベールを脱いだ。

     ニューヨークの瀟洒なアパートメントに暮らす内科医ビル・ハーフォード(トム・クルーズ)には美しい妻アリス(ニコール・キッドマン)と6歳になる娘がいた。
     だが、幸福に包まれたかのように見えたビルの人生は、ある夜、パーティから帰宅した妻の口 から出た台詞で闇の中に放り込まれてしまう。
     かつてアリスは、一度視線を交わしただけの男に抱かれる事を夢想した事があると言うのだ。
     敬虔な妻であり、娘の母であったはずのアリスからのこの意外な告白に、妻へ絶対の信頼を寄せていたビルの心は大きく動く。
     そして夜の街をさまよう内に、ビルは郊外の屋敷で開かれている秘密のパーティに潜り込むのだった・・・。

     今をときめくハリウッドの夫婦スターを起用し、セックスをテーマとしたキューブリックの最新作は、それだけでも話題性が充分だったのに、フィルムの完成直後にキューブリックが急逝したため、噂には拍車がかかった。
     いつものごとく秘密主義と完璧主義を貫いて作り上げたキューブリックの遺言状。
     そこにこめられ たものは果たして何だったのか...

  • 映画『アンダーグラウンド』 国を失う悲劇をコミカルに描いたファンタジー

    映画『アンダーグラウンド』 国を失う悲劇をコミカルに描いたファンタジー

    映画『アンダーグラウンド』UNDERGROUND

    アンダーグラウンド

    昔、ある所に国があった。

    地上と地下、それは支配するものとされるものを描いていた

    久々の怪作を観た。
    ユーゴスラビアの近代史を紐解く作品とも言える。

    冒頭から騒々しい音楽と共にユーゴスラビアに生きる人々が、生き生きと映し出される。
    と、同時に第二次世界大戦に突入。
    東欧の映画らしい、洗練はされていないが、人間味有る独特の雰囲気に溢れる。

    映画としては少し冗長なとこも確かにあるが、それ以上に素晴らしいテーマを持つ、一つ一つのシーンが美しい。

    前半はひたすら人々の暮らしや人間の愛憎が描かれる。
    マルコとクロと女優のナタリアの三角関係が軸になる。
    戦争の激化、ゲリラ化に伴い、人々は地下に潜る。
    マルコとナタリアだけが地上で生活をし、地下の人々に生活物資を送る。
    地下の人々はその中で、希望を失うこと無しに自分たちの生活を続ける。

    画面には滑稽な風景が映し出される。
    しかしそこにはユーゴスラビアの人々の生きる事への力強さ、国を取り戻す事への強い意志が現れている。

    地上では戦争が終わり、共産党のチトーが政権を執る。
    映画の中盤から、実写も織り込みながら歴史を語り始める。
    と同時にマルコとナタリアの苦悩が描かれる、地下の人々を裏切り続ける事、騙し続ける事への...

    地下の人々は、地上の戦争が終わったことを知らない。
    マルコのとった行動は、地下の人々を殺すことだった。
    クロとその息子は地上に脱出する。
    クロの息子が初めて見る太陽のシーンは感動的ですらある。
    映画史上の最も美しい1シーンと言える。

    それから20年が過ぎ、ユーゴスラビアは内戦に突入する。
    そこには民族の対立、ユーゴスラビアの崩壊が有った。

    結局、クロは自分を裏切ったマルコとナタリーを間接的に殺すことに...。
    そして自らも命を落とす。

    生き生きとした人々、その生活を描きながら、その人々が住む故郷・ユーゴスラビアと言う国が存在しない事への底知れぬ、悲しみ、怒りが描かれている。

    ラストのイヴァン(マルコの弟で、チンパンジーを連れた動物園の元飼育係)の言葉に心が痛む。
    それでも人々は生き続ける、踊り続ける!そこに自分の土地が無くても。
    映画のテーマに、底知れぬ痛みと感動を憶える、大作であり、傑作である。

    Reviewed in 03.1999 

    映画『アンダーグラウンド』のデータ

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    UNDERGROUND 171分 1995年 フランス=ドイツ=ハンガリー
    監督■エミール・クストリッツァ
    製作総指揮■ピエール・スペングラー
    製作■カール・ボームガートナー
    原作■デュシャン・コバチェヴィチ
    脚本■デュシャン・コバチェヴィチ/エミール・クストリッツァ
    撮影■ヴィルコ・フィラチ
    音楽■ゴラン・ブレゴヴィク
    編集■ブランカ・ツェペラチ
    衣装■ネボイシャ・リバノヴィチ
    美術■ミリェン・クリャコヴィチ“クレガ”
    出演■ミキ・マノイロヴィッチ/ミリャナ・ヤコヴィッチ/ラザル・リストフスキー/スラヴコ・スティマ

    1995年カンヌ国際映画祭
    パルム・ドール授賞 エミール・クストリッツァ

    <DATA>

     1941年から始まった旧ユーゴスラヴィアの戦いと動乱の歴史を、マルコとクロという二人の男を通して描いた作品。

    1941年、ユーゴ王国はナチス・ドイツに侵略された。
    クロを誘ってパルチザンに参加したマルコは、自分の祖父の地下室に弟やクロの妻などをかくまう。
    やがて重傷を負ったクロも地下室に運び込まれる。
    終わりなき戦争を信じる彼らが、地上に戻った時、既に戦争が終わり20年が過ぎていた。

    クストリッツァ監督は、デビュー作「パパは出張中」でも、’85年カンヌ国際映画祭でグランプリ、「ジプシーのとき」で、’89年カンヌ国際映画祭監督賞を授賞している。
    世界でも最も独創的な映画作家の一人である。 <allcinema>

  • 映画『暗殺の森』 ドミニク・サンダに魅了される、悪の華

    映画『暗殺の森』 ドミニク・サンダに魅了される、悪の華

    映画『暗殺の森』 IL CONFORMISTA

    暗殺の森

    輝かしい栄光が青年を裏切る、 孤独を脱れる虚無と愛欲の日々- 彼は暗殺者となる–
    現代文学の旗手モラビアが描いた《孤独な青年》の愛と挫折!

    イタリア人にとってのファシズム、その悪

    ベルナルド・ベルトルッチ監督の作品というと『ラストエンペラー』以降の大作くらいしか観たことが無かった自分。
    改めて、この作品を観てベルトルッチ監督の手腕には驚かされる。

    1930年代から第二次世界大戦の終焉までのイタリアを背景に、ローマとパリで物語は展開する。
    ベルトルッチは、イタリア出身。
    イタリア出身の監督と言えば、私の敬愛するルキノ・ヴィスコンティ監督がいるが、どうもこの二人には共通するものを感じずにはいられ ない。

    この作品が製作されたのは1970年、イタリアのファシズムを描いた作品である。
    ヴィスコンティは前年の1969年、ドイツのファシズムを描いた『地獄に堕ちた勇者ども』を撮っている。
    ベルトルッチ自身は、ヴィスコンティよりもフェリーニやロッセリーニの影響を受けたと言われる。
    逆にヴィスコンティは、ベルトルッチに自分に近いものを感じていたらしい。

    ヴィスコンティは、よりヨーロッパ的な退廃としたドロドロとした人間の欲望の中に、ナチスのファシズムを描いて見せた。
    それに対してベルトルッチは、あくまでイタリア人としての視点のファシズムで有る。
    それは後年の『1900年』でも明確である。
    彼はイタリアのファシズムが、借り物であることを知っている上で、イタリア人の心の揺れを描いて見せた。

    ヴィスコンティの演出は精緻で有る。
    ディテールにまでこだわり、あくまで本物を映し出すことに専念する。
    ベルトルッチは映像的な美しさを表現する。
    ここでは悪臭漂う美しさなのだ。
    ドミニク・サンダやステファニア・サンドレッリが美しく有れば有るほど、そこには醜悪さが映し出されていく。
    逆説的でも有る、それはやはりベルトルッチはヴィスコンティよりも、フェリーニに近い存在無いのかもしれない。

    この作品は、全編を通して美しい映像が印象的だ。
    あまりにも美しすぎることが、人々の心とその背景を遊離させていく。
    主人公が借り物のファシズムと言うものに気付いたとき、群衆が現れる。群衆の力・・・その向かう新しい方向を暗示して終わる。

    この作品で最も印象的なのは、(作品としても、その映像美も印象的だが・・・)やはりドミニク・サンダの存在だろう。
    彼女ほど女性の妖しさを持ち、それでいて中性的な女優は私の知る限り存在しない。
    それはファシズムの反対に有るもの、最も忌み嫌う存在の象徴のように思えてならない。

    ファシズムの美への固執と憎悪、男色的な運命共同体的体質とその排除の歴史・・・。
    サンダは中性的な・・・ある種、男色的な意味も含め・・・魅力と、美しさが存在した。

    だからこそ彼女は殺されなくてはならず、また主人公マルチェロ(トランティニャン)は彼女に惹かれたのだと。

    Reviewed in 06.2000 

    映画『暗殺の森』のデータ

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    THE CONFORMIST/IL CONFORMISTA 110分 1970年 イタリア=フランス=西ドイツ

    監督■ベルナルド・ベルトルッチ
    製作■ジョヴァンニ・ベルトルッチ/マウリツィオ・ローディ・フィエ
    原作■アルベルト・モラヴィア 『孤独な少年』
    脚本■ベルナルド・ベルトルッチ
    撮影■ヴィットリオ・ストラーロ
    音楽■ジョルジュ・ドルリュー
    出演■ジャン=ルイ・トランティニャン/ドミニク・サンダ/ステファニア・サンドレッリ/ピエール・クレマンティ/エンツォ・タラショガストーネ/・モスキン

    ◆アカデミー賞 1971年
    脚色賞ノミネート ベルナルド・ベルトルッチ

    <DATA>
     ファシズムに席巻された欧州の退廃を描く映画として、ヴィスコンティの「地獄に堕ちた勇者ども」と並んで傑出した作品。以後70年代を通じ、同種の主題を扱った映画が濫作されたが、いずれもこの両作の域には遠く及ばなかった。
     若い哲学講師のマルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は少年の頃、彼を犯そうとした男を射殺した罪悪感に今もさいなまされていた。
     その苦しみから解放されるためファシズムを選択した彼に、パリ亡命中の恩師である教授を調査するよう密命が下る。
     ハネムーンを口実にパリに赴いたマルチェロと妻ジュリア(ステファニア・サンドレッリ)は、快く教授に迎え入れられた。
     だが、恩師の若妻アンナ(ドミニク・サンダ)には目的を悟られてしまい、敵意を抱かれると同時に深い仲にもなってしまう。
     やがて、別荘に向かう教授夫妻は、マルチェロの目前で暗殺されるのだが・・・。

     “体制順応主義者(原題)”のいびつな生き方を、ベルトルッチはなめらかな官能で包み込み、深い余韻を与える。雪の森での暗殺シーンなど映画史に残る美しさだ。 <allcinema>

  • 映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 苦しい時は逃げてもいい・・・

    映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 苦しい時は逃げてもいい・・・

    映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 Manchester by the Sea

    癒えない傷も、
    忘れられない痛みも。
    その心ごと、生きていく。

    2017年5月13日(土)シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

    まずは見てから語ろう!

    個人的には独りで見たい作品だが、心が通じてるカップル同士で見るのも良いかもしれない。
    アメリカ・ボストン近郊の小さな漁港の街のマンチェスター・バイ・ザ・シーという街での物語。

    とても地味な物語で、日本映画でいうところの小津安二郎作品のような映画で、ケイシー・アフレックがアカデミー賞の主演男優賞を取らなかったら、どう宣伝するんだろう~と思ってしまう。
    ケイシー・アフレックはベン・アフレックの弟で、今作品のプロデューサーはマット・デイモン。
    ベン・アフレックとマット・デイモンは親友で『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でも3人は共演している。

    当初、マット・デイモンが監督・主演で企画されたものだが、脚本をケネス・ロナーガンに依頼して、そこから彼の監督、ケイシー・アフレックの主演となった作品。
    そして、第89回アカデミー賞で、ケイシー・アフレックが主演男優賞、ケネス・ロナーガンが脚本賞を受賞した。

    そしてこの作品が終わる頃には、劇場にいる人々の涙を拭う姿があった。

    BEVERLY HILLS, CA – NOVEMBER 14: Producer Matt Damon, Ben Affleck gets a brotherlly grab by Casey Affleck at the “Manchester By The Sea” Los Angeles Premiere at AMPAS Samuel Goldwyn Theater on November 14, 2016 in Beverly Hills, California. (Photo by Todd Williamson/Getty Images for Swisher Productions)

    重い十字架、考えさせられるラストへ

    口数の少ない主人公のリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)は、ボストンで便利屋をしていて、独り暮らしで友人もいない。
    そんな彼の元に、マンチェスター・バイ・ザ・シーに住んでロブスター漁をしている兄が倒れたという連絡が入る。
    ボストンから1時間くらいのマンチェスター・バイ・ザ・シーの病院に駆けつけると、既に兄はなくなっていた。
    兄の遺言で、兄の一人息子の後見人になるようにとあるが、リーは頑なにそれを拒む。

    リーが頑なにマンチェスター・バイ・ザ・シーでの甥の後見を断る理由がこの作品の最大のターニングポイントになるが、ネタバレになるのでここでは語れない。
    このシーンで観客からは嗚咽があがった。
    本当に良い映画なので、絶対、見て欲しい!そして確認して欲しい。

    家族や友人たちとの絆が強い人ほど、この重い十字架を背負った時に深い傷を負うことになる。
    この映画のラストには、最初はなかなかスッキリしたものを感じられなかったが、後から色んな感情が込み上げてきて、忘れられない作品となった。

    以下は、ネタバレがあるかもしれないので注意してください。

    私的『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    人は心が折れた時、どうやって再生するのだろうか?
    主人公は心に大きな傷を負い、彼は何も悪くはないのに重い十字架を背負ってしまった。
    彼を支えてくれるのは、彼が近づきたがらないマンチェスター・バイ・ザ・シーに住む友人たち。

    彼にはマンチェスター・バイ・ザ・シーに楽しい想い出と辛い思いが共にあることで、彼にとってこの街がトラウマになっている。

    ラストは私にはスッキリするものではなかったので、少し考えさせられた。
    人は逃げてもいいんだ!と。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    決して暗いだけの話ではない。
    主人公の甥・パトリックは街で二股をかけているなど、父親が亡くなったのに前向きに強く生きていこうとしている。
    ある意味、主人公・リーとは対照的である。

    人が生き続ける意味、そして生きる源は、人との関係性なのだと感じる。
    人は独りでは生きていけない、どんなに離れていても繋がりを感じることが重要なのだと。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    ケイシー・アフレックの演技が素晴らしい!脚本自体が素晴らしいがそれに応えた彼の演技が見事。
    実は主人公・リーの陰陽を分けている演じるという困難にチャレンジして成功している。

    彼を取り巻く、リーの兄・ジョーを演じたカイル・チャンドラーも良かったし、中盤からキーになってくるリーの妻・ランディを演じたミシェル・ウィリアムズも素晴らしい。

    作品の中の重い十字架以外にも、出て来る人々がそれぞれに背負っている日常がある。
    甥・パトリックにも母親との関係がのしかかる。

    実にリアルに人々の生活が描かれている。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    背負わされる十字架の重さを思うとテレビにはできない、そしてこの脚本を舞台劇でやるのも難しいだろう。
    映画でしか表現できない世界観があり、表現がそこにあり、映像や音楽の素晴らしさも合わさっているので劇場で見て欲しい作品。

    ⑤ エンターテインメント性

    娯楽と芸術という合間という点では、芸術やリアリティに振れている作品だと思う。
    それくらい地味にできている作品。
    でも、俳優の素晴らしい演技を楽しむ、アカデミー賞監督賞を取ることはできなかったが、演出も素晴らしかったので、映画としての楽しみ方もできる作品。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    今年は『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼルが史上最年少のアカデミー監督となった訳だが、どっちが好きか?というと、ケネス・ロナーガンの演出の方が好きだった。

    『ラ・ラ・ランド』の演出は、色んな工夫や努力がされていて、あのアイディアには感服したしアカデミーに値すると思っている。

    一方で今作品は、ガス・ヴァン・サント監督のような演出でビックリした。
    少ないセリフで心情が表現されていて、脚本の持つテーマと共に静かに時間が経過していく様が見事に表現されている。
    映像全体が瑞々しさを感じさせてくれる。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    なんと言っても脚本が素晴らしい!!

    映画を見終わった直後は「凄い衝撃的な物語だなぁ~」と思ったが、しばらくするとこの脚本こそがキーになっていると感づかされる。
    時系列で物語を構成したら、これ程の作品にはならなかっただろう。

    主人公の兄が亡くなるところから時系列に物語が進むが、そこに過去の回想が差し込まれていく。
    その回想の使い方がこれだけ見事な作品は珍しい(回想が多いと失敗することがおおいが)。

    主人公や周辺の人々のトラウマが一つの回想毎に明かされて行く。

    そしてタイトル。
    単なる街の名前をタイトルにしているが、邦題もそのままにした配給元の勇気には拍手もの。
    これを情緒的な放題に変えて欲しくないし、街の名前がタイトルであることに大きな意味がある。

    ⑧何度も見たくなるか?

    決して軽い話でも、エンターテインメント性が高い作品ではないが、心にしみいる作品。
    人生は常に夢が叶うものではない、逆に失敗することのほうが多いと思う。

    そんな時に見たい作品。
    それ以外にも、この美しい作品は何度見ても心に響き続けると思う。

    映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のデータ

    監督・脚本■ケネス・ロナーガン
    出演■ケイシー・アフレック/ミシェル・ウィリアムズ/カイル・チャンドラー/ルーカス・ヘッジズ/カーラ・ヘイワード
    製作■2016年/アメリカ/ユニバーサル作品
    上映時間■137分
    配給■ビターズ・エンド/パルコ

    (C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

    映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

    【作品紹介】
    本年度アカデミー賞主要6部門ノミネート!主演男優賞(ケイシー・アフレック)、脚本賞(ケネス・ロナーガン)が受賞!ゴールデン・グローブ賞主演男優賞受賞!
    マット・デイモンがプロデューサーを務め、『ギャング・オブ・ニューヨーク』の脚本でアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたケネス・ロナーガンが監督・脚本を務めた珠玉の人間ドラマ。

    ボストン郊外で便利屋として生計を立てている主人公が、兄の死をきっかけに故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーへ戻り、16歳の甥の面倒を見ながら過去の悲劇と向き合っていく。

    (C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

  • 映画『愛情物語』とノクターンと私のニューヨーク

    映画『愛情物語』とノクターンと私のニューヨーク

    映画『愛情物語』

    THE EDDY DUCHIN STORY 123分 アメリカ 1956年

    悲劇の天才ピアニスト エディ・デューチンの 妻と子と音楽に捧げた限りない愛の人生–
    静かな感動が…暖かい心のふれ合いが 数々の名曲とともに いま甦る不朽の名作

    ハリウッド黄金期の古き良き映画、涙無くして見られない

    ハリウッド映画はハッピー・エンドという固定概念があるが、実はこの作品も含めて、ハリウッド黄金期(1940年代~1950年代)の美男美女映画は、意外と悲恋とか泣ける映画が多い。
    この作品も涙無くして見られないそんな作品になっている。

    そう1950年代の古き良きハリウッド映画です。
    監督は名匠ジョージ・シドニー、主役にはタイロン・パワーとキム・ノバクの二人。
    実際にいた不世出と言われた名ピアニスト・エディ・デューチンの伝記物語。

    主人公エディが無名な新人時代から、ニューヨークで成功して華やかな生活、愛妻の死、そして新しい恋人とはほろ苦い恋、息子との心の葛藤など、波瀾万丈な人生を送る感動のドラマ。

    なんといっても44歳で亡くなったタイロンパワーの2枚目ぶりが光る、彼の晩年の作品だが一番脂の乗っていた時期でもあった。
    そしてヒロインのキム・ノバクは『ピクニック』『黄金の腕』『夜の豹』『めまい』『媚薬』と一番美しい時期にこの役を演じている。

    私の想い出

    私が両親に連れて行ってもらった初めての洋画だと思う。
    (この後に『奇跡の人』『暗殺者のメロディ』を二本立てで見た記憶がある)

    もちろん1956年の映画なので、リバイバル上映で見たはずだが、シートが満席で両親は立って、当時小学生の低学年だった私は、通路に座って見た記憶がある。

    この作品を見ながらボロボロ泣いた記憶があり、そしてこの作品をキッカケで、ハリウッド映画にのめり込んでいった最初でもあった。
    この時期は、淀川長治さんが日曜洋画劇場をやっていたのと、確かイレギュラーで22時台スタートの白黒ハリウッド映画を放送していた気もする(未確認)。
    深夜帯にSONY一社で、途中にCMを入れない映画の放送もしていた。

    と言うことで、この作品は『慕情』や『めぐり逢い』『哀愁』といった美男美女たちの悲恋の虜になる第一弾であった。

    私的『愛情物語』

    テーマが有るか?共感できるか?

    人生の悲劇を描いている、そして人はいい時もあれば必ず苦しい時も訪れる。

    それでも人は生きていかなくてはいけない。
    本当に辛いのは、周りの人間たちなのかもしれない。

    主人公とヒロインが美男美女と言うこともあるが、貧乏人からはい上がると言うアメリカン・ドリームを手にする主人公に観客は共感せずにはいられない。

    貧しい彼を盛り上げたのは、ニューヨークで既に実業家として成功していたヒロインのキム・ノバクであった。
    成功には必ずそれをサポートするパートナーが現れるものだ。

    作り手の強い意思を感じるか?

    この頃のハリウッド映画は、美男美女を使って夢のようなメロドラマを作り上げている。
    実際、美男美女だからその悲しみの深さや喜びが伝わる場合もある。
    この際作品はだからこそ成立するのかもしれない。

    俳優の意思や演技力が伝わるか?

    タイロン・パワーはすでにこの時40代であるが、劇中で若い頃から年配までの主人公を演じきっている。
    後半は彼の実年齢に近づき、中年の渋みも加わり大人の恋愛を魅せて圧倒してくる。

    映画らしい楽しさが備わっているか?

    この作品はハリウッド黄金期の華やかさがあり、その上で最後に悲劇が訪れると言う脚本も素晴らしい。

    ハリウッドスターを揃えているという点でも、ハリウッド映画黄金期の最も華やかな美しい時代の作品とも言える。

    エンターテインメント性

    この作品では実際にエディー・デューチンの見事なピアノの調べが使われている。
    もちろん引いてるシーンにおいてはタイロンパワーがあたかも弾いているかのように演じきっている。

    この映画の最大の見どころは、やはり使われている音楽のノクターンのメロディにあると思う。

    演出が素晴らしいか?

    印象的なシーンが散りばめられている。

    新人の頃はピアノ途中で明け渡す時に椅子から落とされたり、少し笑えるしまったりする。
    一方でラスト近くになるとグランドピアノを二台並べて演奏するシーンで、交互に親子の表情が映し出されいるが、病気になった父親は途中で姿を消していく。
    そして部屋からカメラが家の外に出て行く、父親がいなくなることを象徴している演出でもある。

    脚本が素晴らしいか?

    ハリウッドスタイルのこの脚本については申し分ない。
    主人公がいくつもの困難を乗り越えて、それでもラストに悲劇が待っている。

    起承転結の他にもターニングポイントとなる中間地点で、愛する一人目の妻(キム・ノバク)を亡くす主人公。
    ラストは涙をなくしてみる事はできない。

    何度も見たくなるか?

    これぞハリウッド黄金期!2人の美男美女の演技を見るだけでも楽しい!
    さらに音楽も素晴らしくノクターンは最も好きなピアノの一曲でもある。

    私が新婚旅行でニューヨークを訪れた時に、ブルックリン橋の近くのピアノバーで、ノクターンの演奏をリクエストしたのが想い出である。

    映画『愛情物語』のデータ

    映画『愛情物語』

    監督■ジョージ・シドニー
    脚本■サミュエル・テイラー
    撮影■ハリー・ストラドリング
    音楽■モリス・ストロフ
    オリジナル音楽■ジョージ・ダニング
    ピアノ演奏■カーメン・キャバレロ
    出演■タイロン・パワー/キム・ノヴァク/ヴィクトリア・ショウ /ジェームズ・ホイットモア/ジャック・アルバートソン

    【解説】
     ピアニストとして生計を立てようとニューヨークにやって来たエディ。
     彼は資産家の令嬢マージョリーに見出され、オーケストラで演奏することに。
     また、2人の間には恋が芽生え、結婚。やがて息子ピーターが生まれたエディは、順風満帆な人生を送っていくように思われた。
     だがクリスマスの夜、マージョリーが急死してしまう。
     落ち込んだエディはピーターを残し巡業、そして第二次大戦に身を委ねていく。
     終戦後、10歳になったピーターのもとへ戻ってくるエディだが…。

     不世出と言われた名ピアニスト、エディ・デューチンの伝記物語。
     音楽家としての華々しい成功だけでなく、愛妻の死、新しい恋人とのほろ苦い恋、そして息子との心の葛藤など、人間として苦悩に満ちた生涯を送った男の感動的な人間ドラマに仕上がっている。
     監督G・シドニーは、見事な職人芸でまとめ上げており恋愛映画の教科書と言っても過言ではない。(allcinemaより)

  • 映画『バーニング・オーシャン』 実話を映画化する意味を感じさせるスペクタクル作品!

    映画『バーニング・オーシャン』 実話を映画化する意味を感じさせるスペクタクル作品!

    映画『バーニング・オーシャン』 Deepwater Horizon

    必ず、生きて帰る。

    2017年4月21日(金)全国ロードショー

    あれ『THE LAST MESSAGE 海猿』?いやいや、もっと凄いです!

    この作品は2010年に実際に有った事故を基にして描かれた海上スペクタクル、そう言えば『海猿』でも似たようなシチュエーションの作品がありましたね~。
    2010年のこの事故は、ニュースでも取り上げられてかなり印象に残っている、なんと言ってもメキシコ湾を石油だらけにした事故。

    監督のピーター・バーグと主演のマーク・ウォールバーグは、3作品立て続けで実話ベースの作品を作っている。
    2013年のアフガンでのネイビーシールズの緊迫した戦場を描いた『ローン・サバイバー』、そして今作品と今年(2017年6月)公開予定のこちらも記憶に新しいボストンマラソン爆弾テロ事件を題材にした『パトリオット・デイ』が控えている。

    3作品に共通することは、何がこれから起きるのが予想外でサスペンス的な要素を含みつつ、パニックに陥った人々の中で、勇気を見せたヒーローを描いている。
    決して、そのヒーローは強いだけではなく、あくまでどこにでもいる人々という点で、主人公に共感して感動することができる作品に仕上がっている。

    スペクタクル巨編としても迫力がある映像なので、この手の作品が好きな人は大画面でハラハラドキドキして欲しい。

    私的『バーニング・オーシャン』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    ヒーローというものが、スーパーマンやアイアンマンのような特殊な能力を持っていなくても、勇気や決断によってなされるものと言うのがよく判る。

    だからこそ、ここに出てくる主人公たちは観客から共感を呼び、そして観客に感動を与えるんだと思う。
    ラストに辛い現実の中に安堵感を感じさせる作品。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    大きな事件や事故は、人災で起きることが多い。
    そこに人の悪意がなかったとしても、善意ではない欲や都合やそれぞれの思惑が存在する、それが悲劇を生むことがある。

    人はそう言ったことから何を学ぶことができるのだろうか?それを語り継ぐことに意味があり、この映画の存在価値があるのだろう。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    主演のマーク・ウォールバーグは、プロデュースとしてもこの作品に関わっていて、この作品を映画化することに強い意志を感じる。
    彼の演じる主人公は、決して特別な人間ではなく、自分の仕事をこなすプロフェッショナル。

    家族を愛し、同僚を尊敬し、仕事にプライドを持っている普通の人。
    そのことがこの作品では重要である。

    カート・ラッセルやジョン・マルコヴィッチも個性的な役どころではあるが、彼らも社会性のある人間として市井の人々である。

    主人公の妻役のケイト・ハドソンは、かつてはラブコメ中心だったが母親役として良い味を出している。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    『タワーリング・インフェルノ』や『ポセイドン・アドベンチャー』以来のスペクタクル大作の系譜にある作品。
    この手の作品はやはり大画面と大音響で見たい!

    ⑤ エンターテインメント性

    物語としては予告で全てなんです(汗)
    それでも、この作品を見ると感動ができて、ハラハラ・ドキドキが止まりません。

    ⑥ 演出・脚本が素晴らしいか?

    実際にあった出来事をあえて映画化しています、ドキュメンタリーではなく。
    ドキュメンタリーでは事実として感動させる力や事実として認識させる力はあるかもしれませんが、人間ドラマとして、作り手の意志を盛り込むにはドラマにする必要があると思っています。

    その点で、家族のため困難に立ち向かって生き抜こうとするドラマを演出している点でこの作品は優れていると思っています。

    中盤からジェットコースターのように襲いかかる炎や残骸、それを乗り越えた先に感動があります。

    映画『バーニング・オーシャン』のデータ

    上映時間■107分
    製作国■アメリカ
    公開情報■KADOKAWA
    初公開年月■2017.4.21.
    監督■ピーター・バーグ
    出演■マーク・ウォールバーグ/カート・ラッセル/ジョン・マルコヴィッチ/ジーナ・ロドリゲス/ディラン・オブライエン/ケイト・ハドソン

    (C)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

    公式サイトはこちら

    【作品紹介】
    2010年4月、メキシコ湾で作業中だったBP社の石油掘削施設”ディープウォーター・ホライゾン”で起こった大事故を映画化。
    海底油田から逆流してきた天然ガスの引火により大規模な爆発が発生。その後も未曾有の被害を出し、米国史上最悪の事故となってしまう。施設内に閉じ込められた作業員たちの決死の脱出そして救出活動を大スケールで描いた、実話に基づく感動の海洋スペクタクル。

    監督は『ローン・サバイバー』、『バトルシップ』など、リアルなアクション描写に定評のあるピーター・バーグ。見 る者がまるでその場にいるかのような迫力の映像を作り上げた。主演はマーク・ウォールバーグ。共演に、実力 派のカート・ラッセル、ジョン・マルコヴィッチ。さらにはジーナ・ロドリゲスやディラン・オブライエン、ケイト・ハドソン が名を連ねている。 

    (C)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

  • 映画『お嬢さん』 変態なほど卑猥でエロい!パク・チャヌクらしい傑作

    映画『お嬢さん』 変態なほど卑猥でエロい!パク・チャヌクらしい傑作

    映画『お嬢さん』 THE HANDMAIDEN

    幕が上がったら最後、あなたはもう、
    極限の騙し合いから逃げられない――

    絶賛公開中!

    決してカップルで見てはいけない

    こっそりと映画館に行ってください、この作品は決してカップル向きの作品ではありません。

    韓国のパク・チャヌク監督作品、『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』『渇き』『イノセント・ガーデン』の最新作、どの作品もエロとバイオレンスに包まれた作品たち。

    このミステリーがすごい!第1位のサラ・ウォーターズの『荊の城』が原作、今回も原作は読んでませんが、映画では独特の世界観を展開しているという話、確かにここまで、ただただ卑猥な映像になってるのは凄い!

    映画の方は、1938年当時の日本占領下の韓国と後半は日本を舞台にしている。
    主要な俳優陣は全員韓国人、それでも少し変な日本語を駆使して物語が進行していくのは愛嬌ということで。

    バイオレンスとエロさの中に人の本質を描く

    この物語はミステリーであり、サスペンスである、主人公のお嬢さんの莫大な資産を誰が奪うのか?
    サスペンス部分は、3人の視点から徐々に謎が解き明かされて、と言うパターン。

    どうしてパク・チャヌク監督が、官能な世界を物語の中心においたか?というのが面白い。
    逆に書くと、監督の他の作品でも言えることだが、エロいから成り立つ作品でもある。

    私的『お嬢さん』 ※ ここからネタバレもあるかも

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    資産家の令嬢を巡って、物欲と性欲に溺れる男たちの愚かさを描いている。
    男にとって性欲は切っては切れないもの、男が女を操っているつもりで、実は男がもてあそばれる。

    その裏側には、真実の愛とは一体何なんだろう?という監督の投げかけもあるんだろうけど。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    日本の文化の中にある猥褻さを徹底的に描いている。
    うーん、これって日本の韓国を併合したことへの皮肉も含まれてるのかな?ようは、演じるのは韓国人俳優だが、韓国人が日本人に化けて詐欺をしようというのも。

    パク・チャヌク監督は、徹底してバイオレンスとエロさが人間の本質にあると描いている。
    人間は欺き、嫉妬をして騙し、裏切る、最後に残るのは強いもの、そして美しいものが勝つと。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    お嬢さま役のキム・ミニと女中役のキム・テリ(オーディションで選ばれた新人!)の(本当の)体当たりの演技が凄い!

    この本気度が、この作品の肝になっている、ハニー・トラップとそして愛はセックスで計るものだと言うのが良く判る。

    そして、キム・ミニがネット上で松たか子に似ていると話題に、私個人的には知り合いの女優さんに似てるんだけど(笑)

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    この卑猥さは映画でしか表現できない、果たしてこれはテレビで放送できるのだろうか?

    そういう意味では、映画でしか描けない、そして人間の本質を描くという点で優れているし、この世界観を味わうとなんとも言えない楽しさがある。

    ⑤ エンターテイメント性

    サスペンスとしても面白い!
    もちろんアダルトビデオではないので、官能シーンばかりという訳ではない(とも言えないかな)。

    片言でも日本語で演じるところがポイントで、日本の卑猥な文化というものが面白い。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    閉じた空間の使い方が上手い、のぞき穴から見てはいけないものを見せている、そんなシーンが切り取られている。
    しかも美しい映像に、官能シーンがとても工夫がされていて、なるほど~という感じで。

    ⑦ 原作・脚本が素晴らしいか?

    サスペンス部分は原作の通りなんだと思う、ここも見どころ、ただ『ワイルドシングス』とほぼ一緒の展開なんだよなぁ~と終わった後に。

    でもここまでエロティックに描くことで、ラストが本質的にセックスの相性が愛情の大きさに繋がるところがこの映画のキーポイント。

    ⑧何度も見たくなるか?

    この毒々しさがたまらなく癖になる、いつも見たい訳ではないが、時々とても見たくなるタイプの作品。
    そういうところは、パク・チャヌク監督作品に共通するところ。

    人間の本質はバイオレンスとエロにある、という大人のための映画である。

    映画『お嬢さん』のデータ

    上映時間■145分
    製作国■韓国
    公開情報■劇場公開(ファントム・フィルム)
    初公開年月■2017.3.3.

    監督■パク・チャヌク
    原作■サラ・ウォーターズ『荊の城』
    脚本■パク・チャヌク/チョン・ソギョン
    撮影■チョン・ジョンフン
    美術■リュ・ソンヒ
    音楽■チョ・ヨンウク
    出演■キム・ミニ(秀子お嬢様)/キム・テリ(スッキ・珠子)/ハ・ジョンウ(藤原伯爵・詐欺師)/チョ・ジヌン(叔父・上月)

    (C)2016 CJ E&M CORPORATION, MOHO FILM, YONG FILM ALL RIGHTS RESERVED

    公式サイトはこちら

    映画『お嬢さん』 [パク・チャヌク監督]
    【解説】
     サラ・ウォーターズの傑作ミステリー『荊の城』を「オールド・ボーイ」「イノセント・ガーデン」のパク・チャヌク監督が、舞台をヴィクトリア時代のロンドから日本統治下の朝鮮半島に移して映画化。莫大な遺産を相続する日本人令嬢と、その財産を狙う詐欺師の片棒を担ぎ侍女として令嬢に近づいた孤児の少女が辿る驚愕の運命を、過激な性愛描写を織り交ぜサスペンスフルかつ官能的に描き出す。カンヌ国際映画祭で芸術貢献賞に輝いた華麗な美術も見どころ。出演はハ・ジョンウ、キム・ミニ、チョ・ジヌン、そしてオーディションで選ばれた新人、キム・テリ。
     1939年の朝鮮半島。貧民街で泥棒一家に拾われ、スリの腕を磨いて育った孤児の少女スッキ。ある日、“伯爵”と呼ばれる詐欺師にスカウトされ、彼の計画を手伝うことに。ターゲットは、支配的な叔父・上月のもとで孤独に暮らす華族の令嬢・秀子。彼女は、結婚した暁には莫大な遺産を相続することになっていた。そこで伯爵が秀子を誘惑して結婚し、財産をまるまる奪い取ってしまおうというのだった。スッキの役割は、メイドとして屋敷に入り込み、純真で世間知らずな秀子を巧みに操り、彼女を確実に結婚へと誘導していくというものだったが…。
    <allcinema>

  • 「死にたい」と思ったときに、元気なるための映画

    「死にたい」と思ったときに、元気なるための映画

    どんな時に人は「死にたい」と思うのだろう

    ベルリン・天使の詩

    死とはなに?

    自分が「生きる」ことへの執着心が低いせいか、よく「死ぬ」ことを考えます。
    考え始めると、こんな怖いことはなくて、死ぬことが怖くなります。

    死の定義が難しいのですが、決して脳死がどうのとかと言う医学的なお話ではありません。
    どちらかと言うと宗教観に近い輪廻転生のようなものでしょうか?
    人は死んだら、輪廻転生するのか?それとも天国(や地獄)に行くのか?人が絶望しないためには、輪廻転生や天国に行けることを考えることは、その苦痛の大きさからは当然かもしれません。

    80歳になる母親は「死にたくない」と言います、長生きしたいと。
    歳を取ると覚悟ができるのかな?と思ったりするのですが、どうやらそうでもないようです。
    母は会う度に「自然に死にたい、癌になっても告知をして欲しくない」と言っています。
    自分はどうなんだろう~とそんな時にふと思います。

    もし人間が不死だったら?
    それは願望であり、だから吸血鬼のような不老不死の怪物を想像してみたり、クローン人間を想像?創造?してみたりするのだと思う。
    でもそれって、A.I.化されたアンドロイドとなにが違うんだろう~と。
    このあたりは、スティーヴン・スピルバーグ監督の『A.I.』は一つの回答で、人間が不老不死になることはないし、人の生きがいは、限りある人生だからとも言える。

    確実なことは、今の段階では肉体が滅びることが死なのは間違いないということです。

    映画『永遠の僕たち』 RESTLESS

    ガス・ヴァン・サント監督の『永遠の僕たち』は、主人公が自らの臨死体験から霊が見えるようになり、死にとらわれるようになり、見ず知らずの故人の葬式に参列することを繰り返す少年。
    ある葬式で余命3ヶ月の少女と出会うことで、少年は死を違うとらえ方をし始める。

    決して死というものを後ろ向きにとらえず、いつかは訪れるもの。
    でも一つ一つの命には価値があることを教えてくれる作品です。

    監督■ガス・ヴァン・サント
    製作■2011年/90分/アメリカ
    出演■ヘンリー・ホッパー/ミア・ワシコウスカ/加瀬亮

    映画『永遠の僕たち』

    死にたい

    何度か思ったことがある、でも具体的な行動に出たことはない、そこまでの勇気はなかったと言うべきか、それともそれ程強い願望ではなかったのかもしれない。

    若い頃の死にたいは、生きることが「辛い」の思い。

    それはいじめであったり、家庭での親子関係が上手くいかなかったり、勉強が思うようにならなかったりだった気がする。
    やはり大きいのはいじめの問題かな?
    単純にいじめと言うと、友だちから仲間外れにされたり、嫌がらせされたり、暴力を振るわれたりだけど、もっと精神的な孤立感も有るのかなと。

    映画 アニメ『聲の形』 The shape of voice

    小学生の時、聾唖の少女が転校してきて思わずいじめてしまった。
    友人の裏切りで、いじめの責任を一人に負わされてしまった主人公は、5年後、周囲から孤立して自殺を決意した主人公の少年は、かつていじめた少女に会いに行く。

    いじめという問題に向かい合い、少しずつ家族や友人に触れながら一歩前進する少年の姿を感動的に描いた作品。

    詳しくは「映画『聲の形』 ストレートに伝わらない心の声」をどうぞ

    監督■山田尚子
    アニメーション制作■京都アニメーション
    原作■大今良時
    脚本■吉田玲子
    キャラクターデザイン■西屋太志
    製作■2016/129分/日本
    声の出演■入野自由/早見沙織/悠木碧

    映画『聲の形』

    自分の場合はなかったけど、社会人の自殺は仕事に追い詰められてと言うケースが多いように思える。
    最近はそうでもないけど、仕事量とその責任に押しつぶされて自殺するサラリーマンは何人かいた。

    これはちょっと想像がつかないけど、借金苦からなのか・・・でも今の日本で死ぬほどお金に困ることはあるのかな?
    自己破産と言う手段もあるし、逆に良心の呵責から自殺してしまうのかもと。
    でも、お金に困るということは人を追い詰めていく・・・少しでも働く意欲があればよいけど。

  • 映画『ラ・ラ・ランド』 伝えずにはいられない、この楽しさ!切なさ!

    映画『ラ・ラ・ランド』 伝えずにはいられない、この楽しさ!切なさ!

    映画『ラ・ラ・ランド』 LA LA LAND

    夢をみていた

    2017年2月24日から絶賛ロードショー中!

    『セッション』のデイミアン・チャゼル監督、最新作!

    いよいよ明日に控えるアカデミー賞に14ノミネート、既に前哨戦のゴールデン・グローブ賞を歴代最多7部門受賞という作品、おそらくアカデミー賞も作品賞と監督賞は確実でしょう。

    ちなみに『セッション』は面白かったけど、世間の評判ほど私は評価しておらず・・・ジャズにこだわりを感じる監督ですが、私の知っているジャズとイメージが違ったりと、『セッション』は『愛と青春の旅だち』の焼き直しというところも有って。

    さて話はそれたので戻すと、主演の二人、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの魅力が全開!
    歌に踊りにピアノに!と全てを見せてくれます。

    なんと言っても、過去のミュージカル映画へのオマージュが凄かったり。
    先日、チャゼル監督が来日した時には、ウルトラワイドアングルとか映像の色使いとかは、故・鈴木清順監督に影響を受けたとも語っていた。
    本当によく勉強していて、それが画面いっぱいにあふれている、映画愛を感じる作品だし監督。

    そして映像や音楽だけではなく、恋愛映画としても本当に切ない見事な物語になっています!

    オープニングから、これがミュージカル!という入り方、あれも凄いなぁ~よく撮ったなぁ~と感心させられる、いきなり感動!
    逆にミュージカルが苦手な人は、オープニングでNGかも。

    実は大人のための『君の名は。』だったり

    去年は日本から世界中で『君の名は。』旋風が起きた、10代から30代くらいまでは熱中できた、50の私が分岐点くらいでこの世代から上はNGだったっぽい、私は『君の名は。』は大好きだが。

    個人的には、去年の『君の名は。』のような鑑賞後の興奮を感じている。

    『ラ・ラ・ランド』は逆に30代から上のゾーンにハマりそうな作品。
    実際は『ウエストサイド物語』やもっと古いハリウッドのミュージカル『雨に唄えば』や『バンド・ワゴン』など、そしてジャック・ドゥミ監督の『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』などの作品へのオマージュと思われるシーンが出てくる。

    フレッド・アステアやジーン・ケリーのダンスを模したりと、映画好きにはたまらないシーンのオンパレード。

    そう言った演出、それに音楽の良さもあるが、なんと言っても物語が映画好きの琴線に触れる。
    映画スターに夢見る女性の夢と挫折とそして・・・
    ハリウッドのアカデミー会員、映画を作っている人たち、映画好きの観客にはたまらない!

    ミュージカルが苦手じゃない映画が好きな人には絶対オススメの極上ラヴ・ストーリー!

    私的『タイトル』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    夢をあきらめるな!
    『セッション』でもそうだが、夢のためには犠牲にするものがある。

    前半はボーイ・ミーツ・ガールもので、ハッピーな恋愛ミュージカルという趣き。
    中盤から少し主人公二人の葛藤を音楽なしで語られる。
    それはシビアな現実!夢をとるのか、二人の愛をとるのか?

    ラストに結果が判るけど、どちらを選んでもそれぞれの幸せがある、それは自分が選択したことだから。
    人生は一度きり、やり直しはきかない、だったら自分の夢をあきらめるな!

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    1940年代から’60年代くらいのミュージカル映画へのオマージュが凄い!それがこの監督の映画愛なんだと思う。

    それでいて、それを越えようとするチャレンジが凄くて、映像が凄いし音楽も踊りも最高!
    オリジナルでこんな作品を作れてしまうなんて。

    ジェームス・ディーンの『理由なき反抗』の舞台となったグリフィス天文台が重要なシーンととして使われている。
    なんとなく、ライアン・ゴズリングとジェームス・ディーンが被って見えるのは私だけ?

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンが、歌に踊りと見事にやりきっている!
    まるでフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのよう~(流石にレベルが違うけど)
    歌も決して上手くないけど、全編に渡って頑張ってる。

    ライアン・ゴズリングはピアノを実際に弾いてるらしい、指の動きはかなり完璧!役者根性を感じる。
    実際の演奏は他の人だと思うけど、『セッション』でもこだわった演奏シーンも迫力もの。

    エマ・ストーンはこのところ、いろんな名監督の作品に主演しているが、今回はハリウッド・スターに憧れる女優の卵、色々な表情を見せながら、同じ女優卵たちには共感できるシーンであふれている。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    ミュージカルって、本当に映画でしかできないと思う。

    そして今回は、演出が映画らしさ!にこだわっている。
    過去のミュージカルでは、スタジオ(室内セット)を使って、トワイライト・タイムのシーンを再現したりするが、今回は完全ロケ(外での撮影)!

    トワイライト・タイムは30分位しかないが、そこを一発撮りをしている。
    もちろん入念に準備をして挑んでると思うけど、背景の夕日が最高に美しいところを映像化している。

    『ウエストサイド物語』で上空からニューヨークの街中に入っていくシーンに驚かされたが、そんな映画でしかできない!と言うような驚きのシーンが冒頭から詰まっている!!

    ⑤ エンターテイメント性

    人の好き嫌いが分かれるところだけど、私にとってはミュージカルは最高のエンターテインメント。
    逆に映画の要素の他に、歌や踊りという要素にも完璧が求められる。

    個人的にはチャゼル監督のジャズへのこだわりがあまり好みではない(私がジャズを理解していない・汗)ので、そのあたりには不満はあるけど。

    この作品は、映像も凄いし、歌や踊りのノリもよい!しかし物語も、ハリウッドのサクセス・ストーリーとしての完成度も高い。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    この監督は本当に映画を勉強している、過去のシーンを真似ているのではなく、オマージュとして取り入れているという感じ。

    オープニングのクローズなカメラから音楽と踊りとともにウルトラワイドにパンしていくカメラとか、凄いなぁ~と思わせる。
    一方で、ジャズ・バーの中を移動していく主人公を追うようなハンディカメラを使った映像とかも、躍動感を映画に持たせている。

    ちょっとしたシーンでもこだわってこだわって作っている。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    オリジナル!
    ハリウッド・スターを夢見る女優の卵とジャズ・バーを持ちたいジャズピアニストの男性が出会って恋をして・・・
    そして夢に向かって、困難を乗り越えていく姿を描いている。

    この監督は、どちらの人生を選んでも、その人生に間違いはないと。
    本当は切ない物語なんだけど、でも二人とも夢を叶えた人生を歩んでいく。

    ⑧何度も見たくなるか?

    夢を諦めかけた時、夢を見失った時に勇気を与えてくれる作品。

    そして映画としてこんなに楽しい作品は久々!映画は夢の世界!そんなことを一時でも楽しめるなんて素敵なことだと思う!

    映画『ラ・ラ・ランド』のデータ

    上映時間■128分
    製作国■アメリカ
    公開情報■劇場公開(ギャガ=ポニーキャニオン)
    初公開年月■2017/02/24
    監督■デイミアン・チャゼル
    脚本■デイミアン・チャゼル
    撮影■リヌス・サンドグレン
    衣装デザイン■メアリー・ゾフレス
    振付■マンディ・ムーア
    作詞■ベンジ・パセック/ジャスティン・ポール
    作曲■ジャスティン・ハーウィッツ
    音楽■ジャスティン・ハーウィッツ
    音楽監修■スティーヴン・ギジッキ
    エグゼクティブ音楽プロデューサー■マリウス・デヴリーズ
    出演■ライアン・ゴズリング(セブ)/エマ・ストーン(ミア)/ジョン・レジェンド/ローズマリー・デウィット/ソノヤ・ミズノ/J・K・シモンズ
    (C)2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. Photo credit EW0001 Sebastian(Ryan Gosling)and Mia(Emma Stone)in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

    公式サイトはこちら

    【解説】
     「セッション」のデイミアン・チャゼル監督がライアン・ゴズリングとエマ・ストーンを主演に迎えて贈る本格ミュージカル・ラブストーリー。大きな夢を抱いてLAへとやって来た男女の出会いと甘く切ない恋の行方を、カラフルかつマジカルなミュージカル・シーンと、夢と現実の狭間で苦闘する主人公2人の葛藤のドラマを織り交ぜほろ苦くもロマンティックに綴る。
     夢を追う人々が集う街、ロサンゼルス。女優志望のミアは映画スタジオのカフェで働きながら、いくつものオーディションを受ける日々。なかなか役がもらえず意気消沈する彼女は、場末のバーから流れてくるピアノの音色に心惹かれる。弾いていたのは、以前フリーウェイで最悪な出会いをした相手セブだった。彼も自分の店を持って思う存分ジャズを演奏したいという夢を持ちながらも、厳しい現実に打ちのめされていた。そんな2人はいつしか恋に落ち、互いに励まし合いながらそれぞれの夢に向かって奮闘していくのだったが…。<allcinema>

  • 映画『クリミナル 2人の記憶を持つ男』悪役のケヴィン・コスナーが渋い!

    映画『クリミナル 2人の記憶を持つ男』悪役のケヴィン・コスナーが渋い!

    映画『クリミナル 2人の記憶を持つ男』 CRIMINAL

    囚人に埋め込まれた、殺されたCIAの記憶
    世界を救うタイムリミットは記憶が消えるまでの48時間

    公開情報■2017年2月25日 新宿バルト9他、全国ロードショー

    新しいバイオレンス・アクション・ムービーの登場

    『フェイス/オフ』や『ボーン・シリーズ』などのテロリストから世界を救う物語。
    007に始まったこの手のバイオレンス・アクションの作品群は、入り口にどういう設定を持ってくるか?と言う点が見どころの一つになってくる。

    『フェイス/オフ』では顔を入れ替えられ、『ボーン・シリーズ』では記憶を書き換えられる。
    この作品では、死んだCIA捜査官の記憶を犯罪者の脳に注力するというもの。
    アクションものではないが、SF映画では『トライセンデンス』が脳の機能をコンピュータに移植する、『ペイチェック 消された記憶』では記憶を消される、古くはフィリップ・K・ディック原作の『トータル・リコール』まで遡れる。

    なんとなく近いうちに記憶の一部は移植できる時代が来そう~という気にはなってきます。
    IPS細胞とかでもそうですが、人自身のコピーとか記憶のコピーができた時に、人格や人権とかどうなっていくのか?という命題にぶち当たります。

    この作品は、ハリウッドの大スター、ケヴィン・コスナーがサイコパスの犯罪者、サイコパスは脳自体に欠陥があるので、(映画ではそこに記憶を注入できるような設定のお話になっています)記憶の移植先の脳適合者となります。

    犯罪を解いていていく、そして戦うアクション・シーンと男っぽい映画であると同時に、それまで善悪や笑いや悲しみと言う共感性を持たなかった人間に、他人の記憶と共に感情が入ってくる姿が入ってくる、そこがこの作品の見どころになります。

    そこでぶち当たるのが上記の命題で、記憶の持ち主が愛した女性を愛せるのか?また愛されていた女性は、外見の違う愛した人の記憶(共有した経験)を持つ人を愛せるのか?
    というところに向かっていきます。

    アクションだけではない、見事なラブ・ストーリーになっている作品です。

    私的『タイトル』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    二つの記憶を持たされてしまった主人公、サイコパスで正義心や愛といった感情を持つことが無かった人生に、強制的にそれが記憶と共に入ってくる。

    記憶を挿入されて男は、徐々に死んだCIA捜査官の妻との愛の記憶を思い出し、彼女に好意を感じ始める。
    そして彼女は・・・

    作品では答えは出ませんが方向性を持って終わります、それが正しいかどうかは判りませんが、これからの時代はそういうことも考える時代がくるということかもしれません。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    バイオレンス・アクションに新しい工夫をしようとする意気込みを感じることができる。
    また、愛というものがどこに存在するのか?

    一方で近未来的な物語として、脳移植や記憶の保存ということに対する倫理観がどうなるのか?
    この作品の先には興味深い世界がある気がする。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    変わろうとしない男と内面から変わっていく姿をケヴィン・コスナーが見事に演じている。
    基本、正義の味方を演じてきた彼が、久々に悪役を演じているが、この役も前回同様に善悪が折り重なった役柄になっている。

    そして個人的にはなんと言っても、ガル・ガドットの存在、亡くなったCIA捜査官の妻で、元犯罪者の中にその夫の姿を見るという難しい役どころと、そして”反則”と思わせるくらいの美しさで「そりゃぁ~サイコパスでも惚れるでしょ!?」と思ってしまうくらい。

    脇にゲイリー・オールドマンとトミー・リー・ジョーンズを配しているところは豪華、ゲイリー・オールドマンは今回は正義の味方。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    やはりアクションものは大画面で見ると迫力があります。

    それになんと言っても映画ならではの豪華俳優陣、ケヴィン・コスナー、ゲイリー・オールドマン、トミー・リー・ジョーンズはもちろんのこと、ガル・ガドットは『ワイルド・スピード・シリーズ』の活躍が認められて『ワンダーウーマン』では主演デビュー、冒頭で殺されるCIA捜査官役にライアン・レイノルズは『デッドプール』で主演と新旧の主役級が勢揃い。
    脇でもジョルディ・モリャという悪役は、いつもどこかで観た気がする人(笑)

    ⑤ エンターテイメント性

    アクションあり、人間ドラマあり、そして恋愛ありの楽しめる作品です。
    もちろん使われているVFXもなかなか、車、ヘリコプター、軍用輸送機も使った迫力のシーンも見もの。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    ノンストップ・アクション映画として取りまとめている点も良いが、個人的には主人公の変化してく様子を、ケヴィン・コスナーから演技として引き出している点と、やはりガル・がドットの魅力を引き出したことにより、冒頭に亡くなったライアン・レイノルズ演じる捜査官の愛の深さが伝わり、主人公の人格の変化にリアリティを持たせている。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    アクション映画の傑作『ザ・ロック』(マイケル・ベイ監督、ニコラス・ケイジ主演)のデヴィッド・ワイズバーグ。
    最近は脳科学や神経生物学、A.I.といった研究の進歩で、記憶の移植と言うものも可能になる日も近いと言われている。
    そのアイディアを基に壮大なアクション作品を作り上げている。

    と同時に、上にも書いたように亡くなった夫を愛する妻、その夫の記憶を持つ凶悪犯との人間関係というもの織り交ぜながら描いている。

    ⑧何度も見たくなるか?

    作品としての展開の面白さという点もあるが、個人的にはガル・ガドットの魅力が大きい。
    けっこう、そこの価値は大きいと思っている。
    でも、この手の作品が好きな人には何度でも楽しめる作品。

    映画『タイトル』のデータ

    監督■アリエル・ヴロメン『THE ICEMAN 氷の処刑人』
    脚本■ダグラス・S・クック、デヴィッド・ワイズバーグ『ザ・ロック』
    出演■ケヴィン・コスナー/ゲイリー・オールドマン/トミー・リー・ジョーンズ/ガル・ガドット/ライアン・レイノルズ
    公開情報■2017年2月25日 新宿バルト9他、全国ロードショー
    配給■KADOKAWA

    (C)2015 CRIMINAL PRODUCTIONS, INC. All Rights Reserved.

    公式サイトはこちら

    国際秩序を崩壊させかねない重大なテロを阻止しようとしていたCIAのスパイが、任務中に非業の死を遂げた。
    オープニングから圧倒的な緊迫感がみなぎる本作は、殉死したスパイの“記憶”を脳に移植された死刑囚の運命を壮大なスケールで映像化したアクション・エンターテインメント。
    CIAとテロリストの熾烈な駆け引きを背景に、凶悪犯でありながら世界を救う“最後の希望”となった男の孤独な闘いを描き出す。
    記憶が失われるまでの48時間以内にテロを防がなくてはならない設定が濃密なスリルを呼び起こすとともに、未知の感情に目覚めた主人公が新たなアイデンティティーを探し求めるドラマが、観る者の胸を熱く揺さぶってやまない。

    ハリウッドのスーパースターから円熟の演技派へと転身したケヴィン・コスナーが主演を務め、ゲイリー・オールドマン、トミー・リー・ジョーンズ、さらには『デッドプール』で大ヒットを飛ばしたライアン・レイノルズ、『ワンダーウーマン』に主演するハリウッドの新ミューズ、ガル・ガドットという新旧の豪華キャスト共演が実現。“記憶”というエモーショナルなモチーフと極限のタイムリミット・サスペンスが想像を絶する形で融合し、まさに予測不可能な驚きに満ちた快作がここに誕生した!(C)2015 CRIMINAL PRODUCTIONS, INC. All Rights Reserved.