カテゴリー: 名作

  • 映画『カサブランカ』 ボギーを生かすためのバーグマンの美しさ

    映画『カサブランカ』 ボギーを生かすためのバーグマンの美しさ

    映画『カサブランカ』 CASABLANCA

    カサブランカ

    アカデミー賞他世界映画賞に輝く 映画史上最高の《愛》の名篇! あなたの胸に すばらしい感動を捧げます
    激動のカサブランカに 激しくも哀しく燃え上がる 恋の炎–(リバイバル時)

    プロパカンダと甘いメロドラマ

    恋愛映画の良い要素を詰め込むだけ詰め込んで作った、甘い甘いメロドラマ。
    この作品がアカデミー作品賞を取るとは(゚o゜;)ウオオッ(ホント、この作品の演出はなってない・・・)
    とはいえ、この作品にどっぷりと浸かって楽しむのも一つの手。

    話は良くできているし、なんと言ってもボギーとバーグマンの主演の2人の恋愛劇は、観ていて感動もの。
    ボギーは他の作品でも格好良いが、この作品での徹底した二枚目ぶりには脱帽もの。
    またバーグマンは、この作品以外に数々の名演の有る本当の名女優だが、この作品での美しさは絶品!脇役のレインズも良い味を出している。

    対独ムードを盛り上げるプロパガンダの部分も盛り込んで、話を盛り上げているのは少しやり過ぎか?
    それでも、あくまでロマンチックな映像とセリフ、そして音楽と恋愛気分にどっぷり酔いたい時は良いかも・・・。

    Reviewed in 01.1999

    結局のところボギーがカッコイイ

    DVDビデオで、久々にこの名作を鑑賞。
    やはりこの映画、どう見ても国策映画のように感じてしまう。
    と言うのは、この映画のできる少し前、2年前まではアメリカではドイツとの参戦に関して、中立を保つべきか?戦うべきか?で国論が二分されていた。
    結局、この映画が製作された時には、アメリカは参戦する訳だが、そういった時代背景を反映してか、反ナチ色があからさまである。
    仏領モロッコは、フランスの植民地で有り、本来ならフランスも帝国主義の名の下にモロッコを略奪した事も史実である。

    それが第二次世界大戦からフランスの首都パリが、ナチスドイツ軍に占領されると、モロッコもあたかもドイツ領のごとくである。
    フランス人の警視総監ルノーが、ヴィシー産のミネラルウォーターをゴミ箱に捨てるシーンは、粋と感じるか、はたまたやりすぎると感じる か・・・少し複雑なところでもある。

    しかしこの映画をそういった視点で、今、観ることは少し不公平かもしれない。
    この作品は歴史的な映画と言うよりも、はやりラヴ・ロマンスの名品として捉えるのが正しいだろう。

    私がこの映画を愛して止まないのは、男女の心情そして男女の信条が見事に描かれているからだ。
    特にパリでのリック(ボギー)とイルザ(バーグマン)の心の揺れ、心情と信条の葛藤が見事なまでに表現されている。

    マイケル・カーティス監督の演出の上手さは、ボギーに有ると思う。
    きっとバーグマンは、もっと美しく撮れたと思う。
    しかしボギーは、これ以上ないくらい見事なキャラクターになっている。
    ボギーの持つ独特な男らしさを逆に利用して男の弱さを時折見せる、それが効果的なのである。
    だからこそ、リックは映画史上最も男らしい主人公と言えるのかもしれない。

    キザなまでな徹底したセリフ、しかしボギーとバーグマンの二人に掛かると、それが心地よいメロディーに聞こえる。

    今回見たDVDビデオには、ローレン・バコールをナレーションにした30分以上ものドキュメンタリーが挿入されている。
    この作品のできた背景や関係者の貴重な証言も聞くことができるもの。
    画像も美しくリニューアルしているのでお薦めの逸品。

    ※ 最新のBlu-ray版も豪華特典あり

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    Reviewed in 06.2000

    古典として

    また戦後のナチの残党の話として、イングリッド・バーグマンとクロード・レインズが共演しているヒッチコック監督の『汚名』も似たような味わいがある。
    『汚名』はイングリッド・バーグマンを引き立たせるために作られた作品ではあるが。

    2017年日本公開作品にブラッド・ピットとマリオン・コティヤールの競演で『マリアンヌ』(ロバート・ゼメキス監督)があるが、1942年のモロッコを舞台にした諜報員の男女の話で、非常にモチーフが似ている。
    美男美女の悲恋ということで、古きハリウッド映画の雰囲気がよく出ている。

    映画『カサブランカ』のデータ

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    CASABLANCA 103分 1942年 アメリカ
    監督■マイケル・カーティス
    製作■ハル・B・ウォリス
    原作■マーレイ・バーネット/ジョアン・アリソン
    脚本■ジュリアス・J・エプスタイン/フィリップ・G・エプスタイン/ハワード・コッチ
    撮影■アーサー・エディソン
    音楽■マックス・スタイナー
    出演■ハンフリー・ボガート/イングリッド・バーグマン/ポール・ヘンリード/クロード・レインズ/コンラート・ファイト/ピーター・ローレ/シドニー・グリーンストリート/ドゥーリイ・ウィルソン

    ◆1943年アカデミー賞
    作品賞授賞
    主演男優賞ノミネート ハンフリー・ボガート
    助演男優賞ノミネート クロード・レインズ
    監督賞授賞 マイケル・カーティス
    脚色賞授賞 ハワード・コッチ/フィリップ・G・エプスタイン/ジュリアス・J・エプスタイン
    撮影賞(白黒)ノミネート アーサー・エディソン
    作曲賞ノミネート マックス・スタイナー
    劇・喜劇映画音楽賞ノミネート マックス・スタイナー

    <DATA>

     戦火近づく’40年の仏領モロッコ、カサブランカは、自由を求めて渡米しようとする人々で溢れていた。
     ナイトクラブを経営するリック(ハンフリー・ボガート)の元へ、ナチの手を逃れてここまでやって来た抵抗運動の指導者ラズロ(ポール・ヘンリード)が現れる。
     だがその人物の妻は、かつてパリでリックと恋に落ちたイルザ(イングリッド・バーグマン)だった・・・。

     ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、そしてカサブランカの警察署長に扮しイイ味を醸し出すクロード・レインズ。
     激動の時代、別れた恋人、再燃する愛--これでもかと注ぎ込まれたロマンティックな要素。
     そして、『君の瞳に乾杯』、『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』など心くすぐるキーワード。
     言わずと知れたアメリカ映画の古典的作品で、アカデミーの作品・監督・脚色賞を受賞。
     だが、リアルタイムで観ていない限り、この作品に“よくできたメロドラマ”という以上の価値を見出す事は困難である。 <allcinema>

  • 映画『影武者』 コッポラとルーカスが認めた黒澤明作品

    映画『影武者』 コッポラとルーカスが認めた黒澤明作品

    映画『影武者』 THE SHADOW WARRIOR

    影武者

    動乱の戦国を巨大なる幻が行く--

    晩年の歴史絵巻、戦記ものというより人間ドラマ

    黒澤明監督晩年の作品と言って良いのだろう。
    黒澤監督は、やはりダイナミックな映像がその最大の持ち味だと思う。
    それこそは映画であり、また人々がダイナミックに躍動することで、一人一人のキャラクターが浮かび上がってくる。

    この作品では、歴史と言うものが大前提にある。
    影武者を捜し出すエピソード自体はオリジナルになるが、武田信玄の「喪を三年秘す」のは歴史的な事実。
    また弟・信廉が一時期、信玄の影武者になっていたのは、これまた歴史的な通説。

    信玄の偉大さが、影武者になった泥棒と武田勝頼を通して描かれている。
    そしてそこにあるのは、戦争の無情さで有る。
    武田信玄ほどの武将になると、戦国時代という時代であったとしても、人命の尊さを知っているのである。
    その事が人の上に立つものの資質なのかもしれない。

    それ以上にこの映画の醍醐味は、武田の騎馬隊を再現した数々の戦闘シーン。
    これだけの規模の人間達を操り、見事に合戦シーンを再現してみせた。
    これこそが映画なのである、黒澤監督にしか出来ないこだわりと完全主義。

    武田信玄と泥棒(影武者)、人格者と卑しい者、この相反する人間性の二役を見事に仲代達也が演じている。
    当初は勝新太郎が演じていたが、勝も黒澤監督も完全主義者で強情、意見が分かれて互いに折れず、勝が役を降りたという。
    そこには黒澤監督の、また勝新太郎の映画への執念が感じ取れる。
    この作品自体、執念の固まりのような凄味が有る。

    Reviewed in 12.1999

    2017年に改めて振り返って見ると

    黒澤明監督は1965年(私が生まれた年)までに作った映画が一番良い時期だったように思う。
    1999年頃はまだ私も日本映画をそれほど見ておらず、黒澤明監督の映画もそれほど見ていなかった。

    この『影武者』にしても続く『乱』にしても、黒澤明時代劇として十分に楽しめる作品だし、VFXを使わずに戦闘シーンを再現できるのは、黒澤明の名前がなければできないことだと思う。

    大規模戦闘シーンを再現できるだけの巨匠になったことは、それを作る資格を意味するが、ダイナミズムがそれで達成できるものではないことも事実と判った。
    『野良犬』『羅生門』から『天国と地獄』『赤ひげ』までのダイナミズムを超えることはもうなかった気がする。

    映画『影武者』のデータ

    影武者 — Amazonで見る

    THE SHADOW WARRIOR 179分 1980年 日本

    監督■黒澤明
    製作■黒澤明/田中友幸
    外国版製作■フランシス・コッポラ/ジョージ・ルーカス
    脚本■黒澤明/井手雅人
    撮影■斎藤孝雄/上田正治
    撮影協力■中井朝一/宮川一夫
    美術■村木与四郎/桜木晶(助手)
    音楽■池辺晋一郎
    録音■矢野口文雄
    監督部チーフ■本多猪四郎
    アドバイザー■橋本忍
    照明■佐野武治
    編集■黒澤明
    出演■仲代達也/山崎努/隆大介/萩原健一/根津甚八/大滝秀治/油井昌由樹/桃井かおり/倍賞美津子/室田日出男/志村喬

    カンヌ国際映画祭 1980年
    パルム・ドール(グランプリ)授賞

    英国アカデミー賞
    監督賞授賞 黒澤明
    衣装デザイン賞

    フランス・セザール賞
    最優秀外国映画賞授賞

    <DATA>

     巨匠・黒澤明監督が「デルス・ウザーラ」以来5年ぶり(日本映画としては「どですかでん」以来10年ぶり)に製作した、戦国スペクタクル巨編。
     武田信玄の影武者として生きた男の悲喜劇を荘厳にして絢爛な映像で描く。
     戦国時代。
     家康の野田城攻めの折り、鉄砲で撃たれこの世を去った武田信玄。
     弟信廉は信玄死すの報を打ち消すため信玄の影武者を立てる。男は盗みの罪から処刑されるところを信玄と瓜二つだったことから助けられたのだった。
     だが男にとって戦国の雄・信玄として生きることはあまりにも過酷だった……。
     製作費の高騰で計画が頓挫しかかったり、当初主役だった勝新太郎が監督との意見の相違から途中降板するなどの話題にも事欠かなかった。
     カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。 <allcinema>

    全国統一の気運が高まる戦国時代、その雄“武田信玄”は敵を欺くため、影武者を使ったと言われている。
    死刑執行寸前だった泥棒(仲代達也)が、実は武田信玄に瓜二つだったことからこの物語は始まる。
    そして、京に進軍の途中、信玄が死にその遺言で、三年の間信玄の死を隠すことに...
    海外版製作を、黒澤監督を師と仰ぐフランシス・コッポラ、ジョージ・ルーカスが引 き受けることで、製作が実現化した。

  • 映画『汚名』 イングリッド・バーグマンの美しさが罪

    映画『汚名』 イングリッド・バーグマンの美しさが罪

    映画『汚名』 NOTORIOUS

    汚名

    イングリッド・バーグマンの美しさに酔う

    ヒッチコック作品か?それともイングリッド・バーグマンの作品か?それ程、この作品のバーグマンは美しい。
    とは言え、そのバーグマンの美しさを引き出したのは、間違いなくヒッチコックである。

    サスペンスとしての見せ方は、やはり一級。
    作品の細かい背景を全て省き、シンプルな構成に、しかしその中に複雑に張り巡らさせた伏線が、観客をいつの間にか、登場人物に同化させる作用となっている。

    アリシア(イングリッド・バーグマン)とデブリン(ケイリー・グランド)、二人の愛情が、セバスチャン(クロード・レインズ)の嫉妬を生み、それが物語のあらゆる伏線に。
    ブラジルでのセバスチャンと仲間たちの会話で、仲間の一人のミスを責め、暗殺する相談をする。
    この事がセバスチャン自身のミスの隠蔽へとつながる。
    セバスチャンと仲間達の強い絆と共に、そこにある真実は相互不信に他ならない。
    またアリシアが、アメリカでアル中であったことが、毒を飲まされた彼女を見たデブリンに誤解を生ませる。

    相変わらずカット割りの上手さで、見せ方が良い。
    それ以上にバーグマンの美しさが光る、酔いしれる。
    バーグマンは背が高いが、彼女の一番美しいアングルは、上向き加減に目を閉じてキスをする表情。
    これを背の高いケイリー・グラントと組み合わせて、存分に魅せてくれる。

    逆に背の低いセバスチャン役のクロード・レインズの立場が強調されてくる。
    そう彼のコンプレックス、一つは背が低いこと。
    もう一つはマザコンで有ること、この事が大きな伏線になる。
    彼はアリシアのような美しく、大きな女性にモテるはずが無い、受け入れられるはずが無いと考えてい た。
    だからこそ、アリシアが近づいてきた時に、それを有頂天になって何の疑いもなく受け入れてしまっている。
    これは、ヒッチコック自身の、母親に対する愛情の深さと、自分の体型に対するコンプレックスの裏返しだろう。

    また重要なのは、アリシアの中の二つの観念。
    一つは愛国心という道徳観と、もう一つは愛情というもの。
    愛国心のため、またデブリンに対する愛情のために、アリシアは敵のスパイであるセバスチャンと結婚までしてしまう。
    この板挟み、同時にそれはデブリンにも言えること(好きな女性を、他人の妻に送り込む)で、この事が、観客の心情に迷 いを生じさせ同情を生む。
    完璧なまでに作り込まれた脚本(ベン・ヘクト)と、ヒッチコックの見事な演出、そしてバーグマン、グラント、レインズの見事な演技が醸し出す、サスペンスとラブ・ロマンス。

    ヒッチコック作品の中でも秀逸な一本で有る。

    Reviewed in 09.1999 

    映画『汚名』のデータ

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    NOTORIOUS 101分 1946年 アメリカ

    監督■アルフレッド・ヒッチコック
    製作■アルフレッド・ヒッチコック
    共同製作■バーバラ・ケオン
    助監督■ウィリアム・ドーフマン
    原案■アルフレッド・ヒッチコック
    脚本■ベン・ヘクト
    撮影■テッド・テツラフ
    特殊効果■ヴァーレン・L・ウォーカー/ポール・イーグラー
    美術■アルバート・S・ダゴスティーノ/キャロル・クラーク/ダレル・シルヴェラ/クロード・カーペンター
    音楽■ロイ・ウェッブ
    衣装■イディス・ヘツド
    録音■ジョン・トリビー/クレム・ポートマン
    編集■テロン・ウォース
    製作会社■RKO
    備考■白黒
    日本公開■1948年、1968年、1983年
    出演■ケイリー・グラント/イングリッド・バーグマン/クロード・レインズ/ルイス・カルハーン/レオポルディン・コンスタンティン/ラインホルト・シュンツェル/マローニ・オルセン/イヴァン・トリーソルト/アレクシス・ミノティス/エバーハルト・クルンシュミット/フェイ・ベイカー

    アカデミー賞 1946年
    助演男優賞ノミネート クロード・レインズ
    脚本賞ノミネート ベン・ヘクト

    <DATA>

     父親にドイツのスパイ容疑がかけられ、売国奴の娘と呼ばれたアリシア(イングリッド・バーグマン)にFBIの捜査官デブリン(ケイリー・グラント)が接近してきた。
     ナチの残党と思しき人物セバスチャン(クロード・レインズ)が父の友人であったことから、アリシアにその内情を探って欲しいという依頼だった。
     舞台は、マイアミからリオ・デ・ジャネイロに移り、アリシアはそこでセバスチャンの求婚に応じるが、デブリンとの連絡も引き続き行われていた。
     やがて、彼女は屋敷の酒蔵で組織の秘密を突き止めるが、その事に気づいたセバスチャンは・・・。

     ヒッチコック作品の中では、スリラーの要素よりもメロドラマの色を濃くした作品で、バーグマンとグラントが見せた熱烈なラブ・シーンは公開当時かなりの話題となった。
     登場人物の設定と行動について、いささか説明不足の感もあり、ドラマの中にすんなり入って行けるとは言い難いが、さすが、個々のサスペンス醸造は見事。 <allcinema>

  • 映画『エリザベス』 血に塗られた女王・エリザベスを見事に描く

    映画『エリザベス』 血に塗られた女王・エリザベスを見事に描く

    映画『エリザベス』 ELIZABETH

    エリザベス

    世界の映画賞、堂々16部門受賞!!!
    その瞳が、唇が、その存在が革命<ヴァージン・クイーン>25歳。

    ヴァージン・クィーン演じきったケイト・ブランシェットの世界デビュー!

    イギリスの歴史時代劇と言うだけで、ちょっと楽しみにしていた作品。
    しかも今年(1999年)のアカデミー作品賞ノミネート作品でもある。
    ノミネートされた作品の中では、日本公開が一番遅い作品となったが、これまでのノミネート作品のどれもが面白く質が高く、その点でも楽しみにしていた作品。

    観終わった時の第一印象が、あぁ~楽しかった!なのである。
    私は歴史物が好きで、しかも時代に翻弄された人々を描いた作品を観ると、とっても感動してしまうのである。
    で、この作品はどうかというと、余り感動はないのだが楽しいのである!

    第一印象の後に、不満がいくつか出てきたことも確か。
    スケール感がないのである。
    映像も絢爛豪華だし、建築の様式美や船遊びの花火のシーン等の演出はあるのだが、どのシーンも奥行きが感じられないのだ。
    この点は、ヴィスコンティが涎が出るくらい巧いのだが、どうもこの作品ではお金の掛け方が足りないような気がするし、後はカメラワークが今ひとつな気がした。
    映画が始まってすぐは俯瞰などのシーンが有って良かったのだが、どうも画面全体が暗いことも有って、一つの場面での奥行きが出てこない。
    また、如実なのは、戦場のシーンでエキストラをケチったのか?写している場面が狭いような気もした。

    それと重厚さと言う点で、今ひとつなのである。
    エリザベスⅠ世の時代絵巻なのだから、個々の登場人物の描き込みをもう少ししたら良いのにと思う。
    一番気になったのが、ノーフォーク公の描き方。
    彼はメアリーⅠ世が亡くなったときに、女王の証である指輪をエリザベスに渡すように指示する。
    このシーンは、彼がイングランドに対しての忠誠心の高さ表す。
    その人物がエリザベス暗殺の中心人物になる理由や背景をもう少し描くべきだったような気がする。
    結局、時代という背景の描き込みが、もう少し踏み込まれていないことが、この作品から、重厚さを奪ってしまったのだろ う。

    また、この時代は暗殺や策略が当たり前。その点、もっと残虐なシーン等が有ると、逆にエリザベスの凛々しさや清らかさが際立ったのでは?と思わせる。

    が、これらの点が有ったとしても面白かったと思わせるのは、この映画のテーマは、その時代性よりも、エリザベス自身の 成長と言う点に焦点を絞り、それに応えてケイト・ブランシェットが見事な演技をしたことに有ると思う。

    不遇の少女時代から恋に落ちて、そして女王になり裏切られ政治の中で辛い立場に置かれてしまう。
    その中で愛らしく美しい女性から、戸惑いながら苦しむ女性、そして威厳と自身に満ちあふれた女性への変貌。
    決してブランシェットが美しい女優だとは思えないが、繊細な表情の素晴らしかったこと!彼女を見るだけで、この作品を観る価値が有ると思えてしまう。

    また彼女を囲む俳優陣。
    『恋におちたシェイクスピア』(時代も同じエリザベスⅠ世)と重なるジョセフ・ファインズとジェフリー・ラッシュの二人は、こっちの作品の方が断然良い。
    特にジェフリー・ラッシュが、ファニー・アルダン演じるメアリー・ド・ギーズを暗殺しに行ったときの演技が素晴らしい。
    他にもイギリスやフランスの名優が、素晴らしい演技を披露してくれる。

    結局、ケイト・ブランシェットの瑞々しさが私に楽しい!と言う思いにさせてくれた作品でした。
    アカデミー賞を授賞したジェニー・シャーコアのメイクアップは素晴らしかったし、意外と音楽が良かったなぁ~と。
    それにしてもこの作品、どこか『ゴッドファーザー』に似ていませんか?

    最後に、元フランス代表のサッカー選手だったカントナが、結構、演技して頑張っているのを観て思わず微笑んでしまっ た。

    Reviewed in 09.1999

    映画『エリザベス』のデータ

    エリザベス (字幕版) — Amazonで見る

    ELIZABETH 124分 1998年 イギリス

    監督■シェカール・カプール
    製作■アリソン・オーウェン/エリック・フェルナー/ティム・ビーヴァン
    脚本■マイケル・ハースト
    撮影■レミ・エイドファラシン
    プロダクション・デザイン■ジョン・マイヤー
    衣装■アレクサンドラ・バーン
    編集■ジル・ビルコック
    音楽■デヴィッド・ハーシュフェルダー
    キャスティング■ヴァネッサ・ペレイラ/シモーヌ・アイルランド
    ライン・プロデューサー■メリー・リチャーズ
    メイクアップ■ジェニー・シャーコア
    共同製作■デブラ・ヘイワード/リザ・チェイザン
    出演■ケイト・ブランシェット/ジョセフ・ファインズ/ジェフリー・ラッシュ/クリストファー・エクルストン/リチャード・アッテンボロー/ファニー・アルダン/キャシー・バーク/エリック・カントナ/ジェイムズ・フレイン/ヴァンサン・カッセル/ジョン・ギールグッド/ケリー・マクドナルド/ダニエル・クレイグ

    1999年 アカデミー賞
    最優秀メイクアップ賞授賞 ジェニー・シャーコア
    作品賞ノミネート
    主演女優賞ノミネート ケイト・ブランシェット
    撮影賞ノミネート レミ・エイドファラシン
    美術賞ノミネート ジョン・マイヤー
    衣装デザイン賞ノミネート アレクサンドラ・バーン
    作曲賞(ドラマ部門) デヴィッド・ハーシュフェルダー

    1999年(第51回) 英国アカデミー賞
    最優秀イギリス映画賞授賞
    最優秀主演女優賞授賞 ケイト・ブランシェット
    最優秀撮影賞授賞 レミ・エイドファラシン
    最優秀メイクアップ賞授賞 ジェニー・シャーコア
    最優秀楽曲賞授賞 デヴィッド・ハーシュフェルダー
    その他、7部門ノミネート

    1999年 ゴールデン・グローブ賞
    最優秀主演女優賞(ドラマ部門)授賞 ケイト・ブランシェット

    <DATA>

     16世紀イングランド。 3歳で私生児の烙印を押され、21歳で反逆罪に問 われロンドン塔に幽閉される。
     そして25歳で史上二番目のクイーンに即位。
     渦巻く権力闘争と血塗られた宗教争い・・・。
     全ヨーロッパを敵に回す中で、男を愛し、傷つき、愛を脱ぎ捨て、女をそして人間を超えた存在<ヴァー ジン・クイーン>となったエリザベス。
     彼女の壮絶な生きざまを描いた愛と激動の2時間 04分!

     英国王ヘンリー8世と、その愛人アン・ブーリンの間に生まれたエリザベス。
     腹違いの姉、メアリー女王の死後、弱冠25歳でイングランド女王に即位。
     側近のウォルシンガ ム、セシル、ノーフォーク卿でさえも誰が敵か味方か分からない中で、唯一彼女の心 の支えになっていた恋人のダドリー。
     王室のスキャンダルの的となりながらも、毎晩逢い引きを重ねる中で、国内の宗教争いは激化し、イングランド史上最大の危機に直面する。
     エリザベスを失脚させようと、時の権力者ローマ法王を始め、全ヨーロッパから忍び寄る暗殺司令と陰謀の影―。
     その計画の中に恋人のダドリーも加わっているという衝撃の事実を知る。
     自分の家来やヨーロッパ中に敵を作りながらも優れた判断力と英知で国を建て直そうとしたエリザベスだったが、無益な戦いで国民が傷ついていくのを目の当たりにした彼女は、ある決意をする・・・。

     爛豪華な世界の中で、ハリウッドのアクション大作を凌ぐ迫力の映像が展開! 女王エリザベスには、ゴールデングローブ賞他各賞を総なめにし、あのブラッド・ピットも大絶賛した新星ケイト・ブランシェット。
     その他、恋人のダドリーに「恋におちたシェイ クスピア」のジョセフ・ファインズ、「恋におちたシェイ クスピア」、「シャイン」のジェフリー・ラッシュ、「ドーベルマン」の ヴァンサン・カッセル、トリュフォー作品で知られるファニー・アルダンら、実力対決も見物。
     監督は本作で世界的な注目を浴びた「女盗賊プーラン」のシェカール・カプール。
     全てのルールを破り、世界の映画賞、堂々16部門を受賞した革命的映画がいよいよ 公開される。 (オフィシャル・サイトより)

     

  • 映画『海の上のピアニスト』 モリコーネの音楽が人生の素晴らしさを奏でる

    映画『海の上のピアニスト』 モリコーネの音楽が人生の素晴らしさを奏でる

    映画『海の上のピアニスト』 THE LEGEND OF 1900

    海の上のピアニスト

    人生、捨てたもんじゃない

    なんて美しい映画なのだろう。
    監督はあの『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督である。
    再び、この映画でも観客の心をつかんで離さない。

    生まれながらにして天才ピアニストの主人公ナインティーン・ハンドレッドが奏でる音楽も美しく聞き応えもたっぷり。
    この物語自体、トランペッターのマックスの作り話か?果たして本当の話か?判らない。
    だからこそ、神秘的で美しい語り口が許されるのだ。

    これは元々、戯曲として書かれた原作が有る物語だからしょうがないのかもしれないが、非常に映画的な語り口が、ラスト4分の1くらいから、説明的になってくる。
    そう現代(1946年)に豪華客船ヴァージニアン号が爆破される訳だけど、ここで現れるナインティーン・ハンドレッドとマックスの会話・・・大切な会話だけど、それまでが映像によって語られてきたのに、ここにあるのは言葉のみ。
    そして映像としてあるのは、絶対に存在し得ないで有ろうシチュエーションに現れたナインティーン・ハンドレッドなのだ。
    それまでが、存在するのか?しないのか?という狭間に存在していた人物に、いきなりリアリティが与えられてしまう。

    個人的にはこのラスト、夢のままの映像的な展開をして欲しかった。
    ここまで余りに素晴らしい作品だっただけに残念で仕方がない、人それぞれの感じ方だと思うけど。

    と言っても、この映画は素晴らしい。
    トルナトーレ監督は、映画というものを非常にロマンティックな語り口で、いつも私達に映し出してくれる。
    映画によって伝えられるもの、それはリアリティとかと言ったものではなく、作り話(=ファンタジー)であったとしても、その中に心が込められている事が重要なのであると。
    そしてその表現は非常に映像的なのである。

    この作品でも数々の美しいシーンが連続する。
    冒頭の沢山の移民を乗せた船の前に自由の女神が現れ「アメリカ!」と人々が叫ぶシーンと言い、生まれたばかりのナインティーン・ハンドレッドが蒸気機関に揺られながらじょうろでミルクを飲むシーン、大きくなったナインティーン・ハンドレッドが一等船客のダンス・ホールに初めて足を踏み入れるシーンなど。
    船の上に降り積もる雪、そしてナインティーン・ハンドレッドとトランペットの男マックスが出会う嵐の夜シーン。
    時化(しけ)で大揺れの船の一等船客では、靴磨きのために廊下に出された靴が揺れに併せて左右に滑っている。
    マックスはとてもじゃないけどまっすぐ歩けず、船酔いで花瓶に吐いていると、そこに何事も無いように真っ直ぐに立ったナインティーン・ハンドレッドが現れ、ピアノを弾くという。
    床に固定させるストッパーを外させて、まるでピアノ自身がワルツを踊るようにダンス・ホールを動き出す。なんて、素晴らしいシーンなんだろう!
    またジャズの創始者ジェリー・ロール・モートンが音楽での決闘を挑んでくるが、このシーンも見応えが有る。

    更に好きなシーンが、ナインティーン・ハンドレッドは、その人を見て思い浮かんだ音楽を奏でると言う才能を持っているが、ある日、船室の窓の外に見える少女を見て、ピアノによる演奏をするシーン。
    彼女の魅力と共に奏でられる音楽とナインティーン・ハンドレッドの表情。
    映画とは映像を見るもの、そう数々の素晴らしいシーンの積み重ねが、素晴らしい映画を作る。

    そして少女との出逢いと、少女の父親の言った言葉「陸から海を眺めていたら、海が語りかけてきた」で、海が自分の人生の方向性を決めてくれるなら、船を下りてみたいと。
    ただ、結局、自ら下りることは無かった、そう自分には陸地に広がる無限を受け入れることは出来ないと。

    映画では、一つの答えを出していると思う。
    それは友情であり、恋であり、人と人の結び付きが有れば、陸地でも人が生きていくことが出来ると、ただナインティーン・ハンドレッドには、その結び付きが無かっただけなのだと。
    ナインティーン・ハンドレッドの前をいくつもの人生が通り過ぎていく。
    しかし、それは通り過ぎていくだけで、彼の人生とは別のものだった。

    そこには『ニュー・シネマ・パラダイス』と同様に、映画を観る人々に対して、映画も人生の素晴らしさを教えてくれるが、実際の生活にこそ人生の素晴らしさが有るのだと!
    そうトルナトーレ監督は語りかけてくるかのようだ。

    ナインティーン・ハンドレッド役のティム・ロスは、今までの彼の役柄とは違い、普通の人(他の映画ではちょっと危ない役が多い)を演じて見せた。
    その中に人の孤独や優しさを見事に表現していたと思う。
    マックス役のプルート・テイラー・ヴィンスは一世一代の演技だった。

    この映像的な素晴らしい映画、物語の語り口も見事、そして更に素晴らしかったのがエンニオ・モリコーネのスコア=音楽。
    船で出会った人々の人生から音楽を作る、それを見事に旋律に換えていった彼の素晴らしさ。
    この音楽の素晴らしさ、これ無くしては、この映画は生まれなかったであろう。

    「いい物語があって、それを語る人がいるかぎり、人生、捨てたもんじゃない」

    Reviewed in 12.1999

    映画『海の上のピアニスト』のデータ

    THE LEGEND OF 1900 125分 1999年 アメリカ=イタリア

    監督■ジュゼッペ・トルナトーレ
    製作■フランチェスコ・トルナトーレ
    製作総指揮■ローラ・ファットーリ
    脚本■ジュゼッペ・トルナトーレ
    原作■アレッサンドロ・バリッコ
    撮影■ラヨシュ・コルタイ
    音楽■エンニオ・モリコーネ
    プロダクション・デザイン■マウリツィオ・ミレノッティ
    アート・ディレクター■ドメニコ・シーカ
    編集■マッシモ・カグリア
    キャスティング■ファブリツィオ・セルジェンティ・カステラーニ/ヴァレリー・マッキャフリィ/ジェレミー・ジマーマン
    特殊効果スーパーヴァイザー■デイヴィッド・ブッシュ
    出演■ティム・ロス/プルート・テイラー・ヴィンス/メラニー・ティエリー/クラレンス・ウィリアムズ三世/ビル・ナン/ピーター・ヴォーン/ナイオール・オブライアン/ガブリエレ・ラヴィア/アルベルト・ヴァスケス/ハリー・ディッスン/イーストン・ゲイジ/コリー・バック

    映画『海の上のピアニスト』
    ワーナーホームビデオ

    <DATA>

     1946年、トランペッターのマックス(ブルート・テイラー・ヴィンス)は中古楽器屋で甘美なピアノ曲が収録されている1枚の古びたレコードを発見する。
     そ してマックスはこの曲を演奏した「この世に存在しない伝説のピアニスト」の 物語を語り始めた。
     大西洋を果てしなく往復する豪華客船ヴァージニアン号に置き去りにされた小さな命。
     彼の名はナイ ンティーン・ハンドレッド=1900(大人になってからはティム・ロス)。
     時が世紀の変わり目を告げる1900年に、この船で拾われた彼はこ う名付けられた。
     船を下りることなく成長するナインティーン・ハンドレッドは、やがて88のピアノの鍵盤の上で信じが たい才能を発揮する。
     自らの研ぎ澄まされた感性でのみ奏でられるメロディ。
     楽譜は一切読まず、旋律は乗客達の表情や仕草に合わせて紡ぎ出されていく。
     優しく、しかも力強い。
     かつて聞いたこともないその素晴らしい音色は、あらゆる人を感動の渦に巻き込んでいった。
     そしてその噂は海を渡り陸地にまで広がっていくのだった。
     即興の音楽を通し、様々な人々と出会う中、ナインティーン・ハンドレッドはふと「陸地から見る海はどうなのだろう」と思いを巡らす。
     そんな時、舷窓越しに美しい少女を見る。
     その瞬間、彼はやさしいメ ロディを弾き、かつてないほど感動的な音楽を奏でた。
     その少女の姿を船中探し回り、やっと三等船室で見つけるが、ごった返す群衆の渦に引き離され、彼女は消えていってしまう。
     しかし想いを断ち 切れないナインティーン・ハンドレッドは、これまで一度も下りる事のなかった船のタラップに、その足を 掛けるのだった...。

  • 映画『ウェイクアップ!ネッド』 アイルランドの美しい情景と人間賛歌!

    映画『ウェイクアップ!ネッド』 アイルランドの美しい情景と人間賛歌!

    映画『ウェイクアップ!ネッド』 Waking Ned

    ウェイクアップ!ネッド

    ネコばばる?

    人間に一番大切なものは、人生を楽しむこと!

    アイルランドの寒村で12億円の宝くじが当たったことが判る、小さな村で誰が当選者か?村中が大騒動となるが、当選者は喜びのあまり心臓発作で昇天していた!
    村の人々は代役を立てて賞金を手に入れようと右往左往する。

    この映画を見終わった時、ふと自分を振り返る。
    人間ってなんだろう?って。
    人間って欲の皮が突っ張った存在?そしてそれは人々が住んでいる地上・・・自然から見ればちっぽけなものなんだろうなぁ~と。

    ここに出てくる人々は、本当に小さな村の人々。
    その人々が、一枚の宝くじを巡って右往左往する。
    なんでそんな事になるのか?それは人間の持つ欲。
    決して大きな欲ではない、それでも大金が手に入るかも!?でも、そのお金の使い道は、結婚資金だったり、飲み代だったりとつつましい。

    結局、自分が生きてきた世界の枠からはみ出ることは出来ない人々。
    だから彼らの欲張りな行動も、結局は微笑ましく感じてしまうに違いない。
    彼らにとっては、普段のそれまで続けてきた生活、それをほんのちょっと良くなれば、それだけで満足。
    大金が入ったからと言って、結局はそのちょっとの満足で納得してしまうに違いない。
    だから、彼らはお金にこだわっているのではなく、そのお金で手に入れられる、ほんのちょっとの幸せを求めているのだと思う。

    余りにも緑(自然)が美しい!彼らは既に自然という一番の宝物を持った人々。
    だから、きっと心が豊かでほんのちょっとの幸せで満足してしまうのだろう。

    自分を振り返ると(汗)そう、いつしか自然からは遠く離れたところに生きている。
    だから必要以上に欲張り、そのためにあくせく働いているのかもしれない。

    人間にとって一番必要なものは何か?大切なものは?この作品はそんな事を語りかけてくる。
    そして彼らは、宝くじを手に入れたことを、自然に向かって酒を持って感謝する(笑)

    アイルランドを舞台にした、本当に緑が美しい映像。
    撮影は、あの『スカートの翼ひろげて』のヘンリー・ブラハムという人。
    緑はアイルランドのナショナル・カラーでもある、その色を見事に表現した映像は、この作品をより際立たせてくれた。

    そしてショーン・デイヴィの手による音楽、イーリアン・パイプやフィドルといったアイルランド伝統の楽器を使っての演奏が印象的。

    主役の二人、それを囲む村の人々を演じた俳優達も味わいが有り、一層、作品を引き立たせた。
    こんなに美しい作品、映画館で観ることが出来なかったのが、唯一残念なことだった。

    Reviewed in 12.2000 

    映画『ウェイクアップ!ネッド』のデータ

    ウェイクアップ!ネッド DVD — Amazonで見る

    WAKING NED DIVINE 92分 1998年 イギリス

    監督■カーク・ジョーンズ
    製作■グリニス・ミュレイ/リチャード・ホルムズ/ニール・ペプロー(共同)
    脚本■カーク・ジョーンズ
    撮影■ヘンリー・ブラハム/B.S.C.
    プロダクション・デザイナー■ジョン・エブデン
    音楽■ショーン・デイヴィ
    編集■アラン・ストラチャン
    出演■イアン・バネン/デヴィッド・ケリー/スーザン・リンチ/ジェームズ・ネスビット/フィオヌラ・フラナガン/モーラ・オマリー/ロバート・ヒッキー

    <DATA>

     アイルランドの小さな村で12億円の宝くじが当たったことから村中を巻き込んだ大騒動となるさまを描いたほのぼのコメディ。
     南アイルランドに浮かぶ小島の村タリーモア。
     のどかなこの村に住む老人ジャッキー(イアン・バネン)は、地方紙を見て村の誰かが宝くじに当た ったことを発見する。
     おこぼれにあずかろうと考えたジャッキーは、親友のマイケル(デヴィッド・ケリー)を誘って当選者探しを始める。
     が、やっと見 つけ出した当選者は笑みを浮かべ、当たりくじを握りしめたまま昇天していて・・・。<allcinema>

     監督はコマーシャルの世界で活躍してきたカーク・ジョーンズ。
     ある小さな田舎町で宝くじを当てた婦人郵便局長の新聞記事をヒントに ジョーンズは脚本を執筆、4年間に渡り推敲を重ね、’97年夏マン島で6週間に渡る撮影に臨んだ。
     プロデューサーは『シューティング・フィッシュ』(97)の成功で、一躍注目を集めたグリニス・ミュレイとリチャード・ホルムズ。
     本作が全米 で2400万ドルを越えるヒットとなり、今やイギリスで最も期待を集めるプロデューサーである。
     映画・テレビ音楽を手がけるショーン・デイ ヴィが、アイルランドで活躍するミュージシャンを集め、イーリアン・パイプやフィドルといったアイルランド伝統の楽器を使って印象的なオ リジナル・サウンドトラックを提供している。

  • 映画『犬の生活』 チャップリン初期の転換期となった短編

    映画『犬の生活』 チャップリン初期の転換期となった短編

    映画『犬の生活』 A DOG’S LIFE

    犬の生活

    チャップリン・スタイルが確立した作品

    チャップリンの映画が本当に初期の頃から、少しずつ変わり始めた作品。
    それまでドタバタ振りを見せて観客を楽しませる・・・だけの作品から、チャップリンらしい笑いに、貧しさや人間の夢や強さを表現し始めた作品。

    そう、この作品には人の生活というものが描かれ始めている。
    むしろ、人の生活を一匹の犬に投影することで、おもしろおかしく、実はそこに人間の悲哀を感じさせてくれる。
    この映画では、その後の チャップリンの作品に色濃く出てくる特徴が、ふんだんに見ることが出来る。

    チャップリン作品の集大成(と言っても、いつの作品もチャップリンは存分に見せてくれるけど)のような芸の数々。
    映画は見せるもの、観客に動きを見せることで笑いや哀しみを感じさせる、そんな彼の芸がこの作品にも有ります。

    有名な犬のしっぽでミルクをなめさせるシーン、笑いと共にそこには本当の貧しさ、最後の一滴まで大切にする知恵、そこがチャップリンらしい。
    笑いの中に人間の生活が見えてくる。
    食事もままならず、盗んだソーセージを自分がお腹が空いているのに、しっぽを振る犬にあげてしまう。そこに見るチャップリンの優しさ、彼の根底には強き者を挫き弱き者を助ける、本当の優しさがそこには存在します。
    この作品には、既に彼のその後の作品『独裁者』や『殺人狂時代』の根底に流れるものが有るのです。

    今回のこの作品、パイオニアから発売されているDVDでの鑑賞。
    最初に公開されたものに、後にチャップリン自ら音楽を付けたもの。
    チャップリンの才能は、サイレントからトーキーの移行の中で、音というものまで見事に演出している。 ドラマチックな迄の音楽、これもチャップリン自身が作曲、本当に多彩な芸術家である。

    Reviewed in 09.2000

    ちょっと補足

    テレビで見た外国映画で、意識して見たのはチャップリンが初めてである、ちょうど小学生低学年の頃。
    何故か?というと同級生のお兄さんが聴覚障害者で、よくチャップリンを一緒に見たからだ。
    セリフがないのに誰でも笑うことのできる映像、現代の日本のテレビ界を見れば考えられないことだと思うし、当時としても驚きがあった。

    チャールズ・チャップリンは映画の創世記に現れた天才児(本来は努力の人だが)で、映画の本質を理解して最後までトーキー化(セリフを喋る映画)に抵抗し続けた映画人である。

    この作品はそんな初期のドタバタ喜劇で笑わせるだけではなく、悲哀もセリフを語らせることなく映像だけで表現してしまった作品。

    映画『犬の生活』のデータ

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    A DOG’S LIFE 30分 1918年 アメリカ

    監督■チャールズ・チャップリン
    製作■チャールズ・チャップリン
    脚本■チャールズ・チャップリン
    撮影■ローランド・トサロー
    助監督■チャック・ライズナー
    出演■チャールズ・チャップリン/エドナ・パーヴィアンス/トム・ウィルソン/シドニー・チャップリン/ビリー・ホワイト/アルバート・オースチン/ジェームズ・T・ケリー/チャック・ライズナー/ヘンリー・バーグマン

    <DATA>

     浮浪者チャーリー(チャールズ・チャップリン)は生活のため職安に出かけるが、周りの連中との競走に敗れ、職は決まらずじまい。
     ふて腐れる彼の前にやがて野良犬同志のケンカが始まる。
     その中でやられそうになっている一匹の犬に自分と同じ姿を見出したチャーリーは、矢も楯もたまらずその犬を助け出し、以後彼と犬との共同生活が始まって行く・・・。

     比較的初期のチャップリン映画だが、ドタバタ喜劇の中に貧窮のつらさをにじみ込ませる辺りなど、笑いにペーソスを織り込む独自の作風はこの作品で誕生したと言われている。
     その意味で、後年の諸名作の原典と言っても差し支えはないだろう。
     後に音楽(勿論作曲は彼自身)を付け加えたサウンド版が作られているが、ここでもオープニングを悲劇的に盛り上げたり、又犬を助け出すシーンでの効果的な使い方などに、“音楽とアクションがコミックです”という彼の信条が伺え、興味深い。 <allcinema>

  • 映画『甘い生活』 イタリア人のローマ、そしてイタリア人そのものを描いた傑作

    映画『甘い生活』 イタリア人のローマ、そしてイタリア人そのものを描いた傑作

    映画『甘い生活』 LA DOLCE VITA

    甘い生活

    フェリーニの映画は楽しい、でも苦手

    この作品もフェリーニらしい作品、とにかくフェリーニの映画の本質は、“サーカス”なので有る!そしてパレード...

    この作品には、印象的なシーンが多い、オープニングのキリスト像が、空をヘリコプターに宙吊りにされて運ばれていくシーン、アニタ・エクバーグ演じる女優が、レストラン(?)でそこにいる人々を連れて踊り回るシーン、またその女優が酔ってトレビの泉に入るシーン、主人公マルチェロ(マルチェロ・マストロヤンニ)が、父親を連れて行ったクラブで芸人のラッパを聞くシーン、マリアが現れたと言い人々が集まるシーン等々。
    それは常に“サーカス”に人が集い、喜び、悲しむシーン。

    この作品は、公開当時は大きな反響を持って迎えられたらしい。
    フランスではヌーヴェルバーグが始まった頃、反体制的であり反宗教的で有ること。
    それらが、反響の元で有るようだ。(フェリーニ本人は、反体制でも反宗教でも無く、形骸化したものへの反発心が有るだけだと思うのだが)
    でも、今、これを観ても、それ程、おぞましく感じることは出来ない。
    時代は変わってしまったのだ。

    甘い生活、退廃的な生活で有り、目的も無く無軌道な生活。
    しかし、そこには文明がもたらした甘美な世界が有る。
    主人公マルチェロの友人スタイナーが、子供2人を道連れに自殺してしまうところは、この世の救済にも絶望感が感じられる。
    ラストでは、唯一の望みで有る少女バロラの存在が有るが、結局、彼女とはどこで出会ったかも判らず、元の仲間の所へ戻ってしまうマルチェロ。

    当時、その世界を見事に描いてみせたフェリーニの冷徹さ、その表現力の素晴らしさは伝わるが、残念ながら、ここの描かれたテーマ自体が古くなってしまったと思う。
    今は、もっと退廃的な世の中になってしまったと思えるのだ。

    主演のマストロヤンニが若い!彼はこの作品で見事な俳優になったと聞く。
    確かにイタリア人の良さと嫌らしさを見事に表現していた。

    またフェリーニの女性の趣味もアニタ・エクバーグを通して見ることが出来る。
    そう、グラマラスで健康的な女性、と同時にアヌーク・エーメのような女性の描き方も上手い。

    ニーノ・ロータの音楽も軽妙で、この作品をより際立たせる。
    美術を担当したゲラルディのローマの繁華街“ヴェネト通り”は雰囲気を伝える。

    フェリーニの独特な甘美な世界、見事な表現力を持った作品で有ると同時に、その時代を描く事により、時代の移り変わりに取り残されてしまった傑作とも言える。

    Reviewed in 05.1999

    甘い生活

    映画『甘い生活』のデータ

    甘い生活 Blu-ray — Amazonで見る

    LA DOLCE VITA
    LA DOUCEUR DO VIVRE [仏] 185分 1959年 イタリア=フランス
    監督■フェデリコ・フェリーニ
    製作■ジュゼッペ・アマート/アンジェロ・リッツォーリ
    原案■フェデリコ・フェリーニ
    脚本■フェデリコ・フェリーニ/エンニオ・フライアーノ/トゥリオ・ピネッリ/ブルネッロ・ロンディ
    撮影■オテッロ・マルテッリ
    音楽■ニーノ・ロータ
    美術■ピエロ・ゲラルディ
    編集■レオ・カトッツォ
    製作会社■リアマ・フィルム/パテ・コンソルティウム・シネマ
    備考■白黒
    日本公開■1960年
    出演■マルチェロ・マストロヤンニ/アニタ・エクバーグ/アヌーク・エーメ/ワルテル・サンテッソ/レックス・バーカー/アラン・キュニー/アンニバーレ・ニンキ/ポリドール/バーバラ・スティール/ナディア・グレイ/ラウラ・ベッティ/イヴォンヌ・フルノー/マガリ・ノエル/ヴァレリア・チァンゴッティーニ/アラン・ディジョン

    1961年アカデミー賞
    監督賞ノミネート フェデリコ・フェリーニ
    脚本賞ノミネート フェデリコ・フェリーニ/エンニオ・フライアーノ/トゥリオ・ピネッリ/ブルネッロ・ロンディ

    1960年カンヌ国際映画祭
    パルム・ドール授賞 フェデリコ・フェリーニ

    1961年N.Y.批評家協会賞
    外国映画賞授賞

    <DATA>

     強烈な通俗性の中に、豊潤な映像美学を開花させ、一つの大都市をこれだけ魅力的に捉えた作品は他にない。
     この映画の主役は間違いなくローマそのものだ。
    無論、M・マストロヤンニという最適の語り部を用意してはいるが。

     作家志望の夢破れて、今はしがないゴシップ記者のマルチェロ(マルチェロ・マストロヤンニ)は豪華なナイトクラブで富豪の娘マッダレーナ(アヌーク・エーメ)と出会い、安ホテルで一夜を明かす。
     ハリウッドのグラマー女優(アニタ・エクバーグ)を取材すれば、野外で狂騒し、トレビの泉で戯れる。
     乱痴気と頽廃に支配された街ローマ。
     同棲中のエンマ(イヴォンヌ・フルノー)は彼の言動を嘆く。
     二人で訪れた友人スタイナー(アラン・キュニー)一家の知的で落ち着いた暮らしぶりを羨むマルチェロだが、彼らも子連れの無理心中で突如死に、残るは絶望の実感のみ。
     いよいよ狂乱の生活に没入するマルチェロは海に近い別荘で仲間と淫らに遊び耽る。
     彼らが享楽に疲れ果てた体を海風にさらす朝、マルチェロは波打ち際に打ち上げられた怪魚の、悪臭を放って腐り果てるさまを凝視した。
     彼方で顔見知りの可憐な少女バロラ(ヴァレリア・チァンゴッティーニ)が声をかけるが、波音に消されて聞こえない。かくて純粋な青春の時は終わったのか・・・。

     素晴らしいラストシーンを持った、フェリーニにしか描けない都市のデカダンスが弾ける。N・ロータの音楽も多様な変奏を聴かせ、映画と完全に溶け合って見事。 <allcinema>

  • 映画『愛と青春の旅立ち』 軍人をカッコよく描いた青春映画の傑作

    映画『愛と青春の旅立ち』 軍人をカッコよく描いた青春映画の傑作

    映画『愛と青春の旅立ち』 AN OFFICER AND A GENTLEMAN

    愛と青春の旅立ち

    1980年代の青春映画の傑作の一つ

    何度観ても良いものは良い、泣けるものは泣ける。
    見事なまでにカッコイイ青春映画。

    主演のリチャード・ギアが未だ未だ青臭い、『アメリカン・ジゴロ』でブレイク後、この作品で国際的なスター(少なくとも日本ではトップ・スタ ーになったと思う)になったギア。
    青臭さが、青春映画のヒーローとしては、本当にマッチしていて良いと思う。

    この作品、日本ではラヴ・ロマンスとしての印象の方が強い気もするけど、個人的には青春映画・・・。日本ではちょっと想像できないが、士官学校の厳しい訓練風景と彼らの立場と言うものが、意外とリアルに描かれていると思う。

    特にルイス・ゴセット・Jr演じる教官は見事。
    やっぱり、この作品で一番格好良いと言うか、得な役回りだったかな。
    ラストの立場が入れ替わるところなんて・・・う~んと唸ってしまう、まっ、良くできている。

    主人公の友人が女性の一言で自殺まで追い込まれていくエピソードや、主人公が同じ訓練生の女性を助けるところなど、本当に脚本が上手いと思わせてくれるし。

    この映画の最も素晴らしいところは、やはり一人の青年の成長と言う点だろう。
    ギア演じる青年は、子供の頃のトラウマで女性に対する不信感を心の片隅に常に持ち、大人の汚いところを他人より早く知ったことで、どこか大人びて屈折したところを持っている。
    そして、要領の良さと言うものを併せ持ち、自分の世界に逃避している青年である。

    一方、ゴセット・Jr演じる教官は、数多くの士官候補生を育ててきて、青年の生半可な部分を正面から受け止める力量が有る。
    教官からの厳しい愛情と候補生仲間の友情、そしてデブラ・ウィンガー演じる女性の愛情によって、彼のトラウマは見事なまでに克服されていく。

    ラストのラストは、やっぱり出来すぎの感は有るけど、主人公の成長というバックボーンをちゃんと見せてくれているから嫌みにならない。
    脚本・演出、そして俳優陣がマッチングして、本当に良い映画になった・・・そんな一本。

    この作品、結構地味目に作られたのか、最初からそれほどヒットするとは考えられていなかったらしい。と言うのも、アカデミー賞歌曲賞も授賞しているけど、主題歌を歌ったジョー・コッカーとジェニファー・ウォーンズは、別々に録音してレコー ド化したとの話。映画がヒットして初めて顔合わせをしたとの有名な話も有る。

    Reviewed in 09.2000 

    愛と青春の旅立ち

    2017年現在から振り返ってみると

    監督のテイラー・ハックフォードはハリウッド立て続け作品を監督、1995年の『黙秘』や2004年の『Ray/レイ』といった私の好きな作品をその後も輩出している。
    名女優ヘレン・ミレンの夫でもある。

    リチャード・ギアはこの作品で大スターに、当時は小生意気に見える(役どころ?)ところもあり、一時低迷する事もあったが『プリティ・ウーマン』で再ブレイク。
    その後は、渋さと共にセクシーな男性像を演じている、特に2000年前後の活躍が絶頂期か。

    デブラ・ウィンガーはこの作品の頃は絶頂期で、その後は結婚を歴て女優としても活躍し続けている。
    この作品でアカデミー賞助演男優賞を授賞したルイス・ゴセット・Jrは、脇役として数々の作品に出演し続けている。

    最近では、デイミアン・チャゼル監督の『セッション』などは話のベースは非常に似ていると思う。
    『セッション』のラストは少しシニカルであり、『愛と青春の旅立ち』は純粋なハッピー・エンドという違いはある。
    ただ徹底的なシゴキに耐え抜く生徒という立ち位置は近い。

    1986年には空軍版といえる『トップガン』が大ヒット。
    こちらもトム・クルーズという大スターを生み、主題歌も大ヒットしたという点で似ている。

    映画『愛と青春の旅立ち』のデータ

    AN OFFICER AND A GENTLEMAN 124分 1982年 アメリカ

    監督■テイラー・ハックフォード
    製作■マーティン・エルファンド
    脚本■ダグラス・デイ・スチュワート
    撮影■ドナルド・ソーリン
    作詞■ウィル・ジェニングス
    作曲■バフィ・セント=マリー
    音楽■ジャック・ニッチェ
    出演■リチャード・ギア/デブラ・ウィンガー/ルイス・ゴセット・Jr/デヴィッド・キース/ロバート・ロジア/リサ・ブロント/デヴィッド・カルーソ/リサ・アイルバッハー/ヴィクター・フレンチ/グレイス・ザブリスキー

    ◆アカデミー賞 1982年
    主演女優賞ノミネート デブラ・ウィンガー
    助演男優賞授賞 ルイス・ゴセット・JR
    脚本賞ノミネート ダグラス・デイ・スチュワート
    作曲賞ノミネート ジャック・ニッチェ
    歌曲賞授賞 ウィル・ジェニングス(作詞)/バフィ・セント=マリー(作曲)/ジャック・ニッチェ(作曲) 『愛と青春の旅だち』 Up Where
    We Belong 編集賞ノミネート PETER ZINNER

    ◆ゴールデン・グローブ 1982年
    助演男優賞授賞 ルイス・ゴセット・JR
    歌曲賞授賞 ウィル・ジェニングス(作詞)/バフィ・セント=マリー(作曲)/ジャック・ニッチェ(作曲) 『愛と青春の旅だち』 Up Where We Belong

    映画『愛と青春の旅だち』 [ リチャード・ギア ]

    <DATA>

     シアトルに住む青年ザック。彼は元兵士の不甲斐ない父と2人で暮らしていた。母はザックが幼い頃、父の不実が原因で自殺した。ある日、ザックはかねてからの夢だったパイロットになるため、父の反対を押し切って海軍士官養成学校に入学する。そして鬼軍曹フォーリーによる厳しい指導のもと、他の士官候補生たちと共に過酷な訓練を受け始めた。やがて数週間が経ち、公に骨休めすることを許可された候補生たちは地元の盛り場へ。そこでザックは、町工場で働く女性ポーラと出会い恋に落ちるのだが…。

     海軍士官学校の新入生と、町工場の娘とのロマンスを軸にし、日本でも大ヒットした青春映画。士官学校の厳しい訓練の描写は、教官であるL・ゴセット・Jrの好演(アカデミー助演男優賞受賞)もあって迫力あるものになっており、地元の女性がみんな玉の輿を狙って士官候補生に言い寄るくだりなどの興味深い描写が多い。中でも、主人公の親友が挫折の果てに自殺するシーンなどは胸に迫るものがある。ただ、そういった側面よりもラブ・ロマンスの方に偏ってしまうのは、こういう作品の常として仕方がないのだが、どうしても歯がゆくなる。だからこそ、若い女性のバイブル的作品になってしまっているのだろうが・・・。 <allcinema>

  • 映画『アイズ ワイド シャット』 夫婦の形とセックスについての考察

    映画『アイズ ワイド シャット』 夫婦の形とセックスについての考察

    映画『アイズ ワイド シャット』 EYES WIDE SHUT

    アイズ ワイド シャット

    見てはいけない、愛

    偉大な哲学者・スタンリー・キューブリック監督の遺作

    この作品を見終わった時、或る種の脱力に襲われる。

    シーン、シーンの素晴らしさには目を見張るものの...この作品から何かを受け取ることが出来なかった。
    もっと言うなら、意味不明...理解不能。
    キューブリックは何を描きたかったの?過去のキューブリック作品では、色々な疑問難問は提示されるものの、作品自体からは溢れるばかりのオーラ...と言うか、観ていて面白い!と言うものを感じることが出来た。
    この作品で初めて、それ自体も“?”が付いてしまった。

    先に書いてしまうと、この作品に対して賛否両論の批評感想が有る。
    私が感じたこの作品に対する不満は、(いろいろなHPも見たけど、)この作品を批判する評の中にも書かれていない。
    この作品に満足したという批評や感想...それにも納得するものが現れていない。

    オープニングのトム・クルーズとニコール・キッドマンの夫婦が出かける何気ないシーン、そこには、この夫婦の倦怠期の関係がさりげなく描かれている。
    出かけて行ったパーティー会場の部屋の調度品等のエロチックな点...そしてニコールとハンガリー人の男性の絡 み...
    夫婦共に、意識する・しないに関わらず、異性と近づく。
    その反動でパーティーから戻り、夫婦の営み(Sex)のシーンに画面が切れ代わる。
    それはこの夫婦の欲求不満の表れ、なかなか刺激的なカット。

    更に刺激を求め、ドラックを楽しみながらのSex、そこから出た会話に夫婦の真実が語られるシーン。
    妻の語った言葉に衝撃を受け、ニューヨークの町中を彷徨い歩く夫。
    また怪しいパーティー会場に足を運びそこで目にするもの。

    夫婦の心の変化や、表層に現れる言動。
    その描き方の上手さ、いや完璧なまでの演出。
    トム・クルーズ演じる夫の動揺の仕方が、余りにも純粋すぎる人物として描かれている。

    また怪しいパーティーのシーンが、今の時代では古すぎる。
    このこと自体を非難するのは、当てはまらない。

    “性”、“Sex”と言うものを描いているものの、その描写自体は時代遅れなのかもしれない。
    それは単にストーリーとしての設定にしか過ぎない。
    一つ一つの描写は完璧なのだ!

    多少、冗長な感じを受けるのは、本当にキューブリックが最後まで編集を手掛けたのか?それとも私がただ単に途中で、理解不能・感覚麻痺状態だったから?

    根本的に、この作品を理解不能にさせたのは、キューブリックがこの作品で描いた、“愛”の形や、“夫婦”関係、“Sex”、 “家族”の関係が、私の考えているものと余りに違いが有るからだろう。(もちろん私の妻がニコール・キッドマンのようにセクシーとか、主人公の医師のように高い収入が有るとかじゃなくてね)

    ド ラッグをやりながら夫婦の会話で語られる内容は真実では有るが、それに対する妻の妄想の告白、夫の動揺。
    そんなに夫婦関係は単純なの?(作品の中で、ちょっ見には、複雑な夫婦の関係にように見えるけど...)
    逆に、夫婦を結びつける真実は語られていない。
    “Sex”だけじゃないでしょ(ここには書かないけど、もっと重要なものが 有ると、私は思っている)。

    仮面を通して人間の二面性を描きつつも、主人公である“夫”の二面性が余りにも無視されている。
    いや主人公の男性としての“性”が抜け落ちている。
    男性は、本当は妻の「あなたも他の女と寝たいと思っているのね?」の言葉の答えを、確信的に持っていると私は思う。
    でもそれは相手には言わないけど、それが夫婦だからごまかすものでしょ?
    その前提が崩れてしまうから、私はその後、脳が麻痺してスクリーンの前でオロオロしてしまう。

    完璧な演出と、それを支えたニコールの魅力的な演技、肢体の美しさ(彼女が眼鏡を掛けて、夜、夫を待つ姿などは素晴らしい!)、トム・クルーズの野暮ったい演技や彼の持つ雰囲気は、意外と合っているのかもしれない、嫌らしさを感じさせない。

    この作品を褒める言葉をいおうと思えばいくらでも。
    演出の素晴らしさと音楽の調和、夫婦の微妙な関係とそれに関わ る人々、それを表現する映像の力、流石、キューブリック!
    ただ、その持つテーマから発する“何か?”が感じられない、もちろん私だけかもしれないが。

    “Sex”と“愛”自体をテーマにする事は、決して間違っていないと思う。
    何度か観ることによって、キューブリックが問い掛けているもの、訴えているものが判るかもしれない。 しかしそれは、私にとって“感じる”と言う行為ではなく、既に“考える”と言う行為になっている。
    “考える”と言うことも、また楽しいのだけど。

    この作品の完成度と言う点では申し分ない、お薦めの作品である、でも私は何も受け止めることが出来なかった。
    もちろん人によっては、受け取るものが大きい場合も有るだろうけど。

    アイズ ワイド シャット

    『アイド ワイド シャット』に見る愛の形

    キューブリックの遺作『アイズ ワイド シャット』を観に行く。
    13年ぶりの新作と言うことも有るし、キューブリック作品が好きな私には、やはり期待度は大きい。

    はたして3時間近くになるこの大作、見終わった時、私はいろいろな事を考えはじめる。
    そう、面白いとか感動したとか、逆につまんなかった、納得できないとか、そう言った感情が起きてこない。
    この作品を観て、私の感性には何も訴えてくるものが存在しなかった。

    この作品で一番の疑問点は、やはりトム・クルーズ演じる主人公だろう。
    確かに彼は、今時、絶対に存在し得ない純粋な男性と言えるのかもしれない。
    金と地位と女性に恵まれ、しかもニューヨークという大都会に住んでいるのである。
    彼のような人物が存在するかしないかは別にして、この夫婦の会話が突然、私には信じられないものに聞こえてくる。
    その事によって、この作品からのメッセージが、私の耳には届かなくなってしまった、と。
    作品は、非常に微妙な夫婦関係を丁寧にとらえている。
    しかし主人公の医師は、あまりに男性としての“性”とかけ離れている。

    妻の「他の女性と寝ない理由…」を問い質されても、答えも「君を愛しているから…」。
    嘘でしょ!違うでしょ!夫婦の間には、“愛情”以外の“信頼”と言うものが有るでしょ!私が言いたいのは、愛という保証の上に立つ“信用”ではなく、長い時間をかけて、築き上げてきたもの。
    本当は、他に妻より愛することの出来る女性が現れれば、その女性とSexしたいというのは男の本能だと思う。
    それを押さえるのは、二人で築き上げたものの重さによるのだと!

    もちろん若い夫婦の離婚はアメリカでは当たり前のように起こり、日本でもその傾向が強まっている。
    それは二人の築き上げたものが、余りに軽いからではないか?
    人生を長い間一緒に暮らしてきた夫婦が離婚する場合も有る、築き上げたものが幻想だったから。

    妻が、他の男性に抱かれる妄想を抱いたと、告白する。
    妄想を抱いたことが裏切りではなく、告白したことが裏切りだと思う。
    夫婦の間で、全ての真実を語り合うことが必要なの?全てを語り合える関係が有ることが幸せなの?と。

    ある特定の人に、それが妻・夫で有ったり、親友で有ったり、恋人であったとしても、何もかも自分の内に秘めた真実を語ることは出来るのだろうか?

    人が生きていくためには様々な障害が存在する。
    それは夫婦で乗り越えなくてはいけない障害の場合も有るし、個人が乗り越えなければいけない障害の場合も有る。
    その中には、それぞれの個人に隠された問題が存在し、必要に応じてそれを相手に隠すことも信頼の証だと思うのだが...。

    この作品の中で、仮面舞踏会風の乱交パーティが開かれるシーンが有る。
    ここで象徴されていることは、“Sex”と“愛”の関係。
    この作品を通じて、ニューヨークの街中で主人公が経験する出来事も、“Sex”と“愛”の関係である。
    愛がなくてもSexは出来ると言うことを映し出す。
    逆にラストの危機を乗り越えた夫婦が、今必要なこととして「ファック!」と妻が言うのは、愛情を継続させるには“Sex”が必要で有ることを明示しているが、夫婦の関係を続ける事に必要なのは、“Sex”のような一瞬の喜びではないはず。

    この作品を観てラストを幸せと感じ、「良い作品だったなぁ~」と感じる人は、人生においても幸せなんだと思う。
    この作品を観て「つまんない」と感じた人は不幸な人なんだと思う。
    不幸という言葉の意味には2つあって、この映画を全く理解できずにけなすしか感性を持てない人。
    もう1つは、この作品の主人公以上に複雑な人生を歩んでいる人。
    不幸すぎて(私は人生こそが苦難の道と思っているけど)理解することが出来ないと思う。

    だからキューブリックの描いた愛のこの作品、今、幸せに溢れている人は、この作品をキューブリックの愛の贈り物と感じ、今、障害に立ち向かっている人には、自分で愛を探しに行くに違いない...

    Reviewed in 08.1999 

    映画『アイド ワイド シャット』のデータ

    映画『アイズ ワイド シャット』 [ トム・クルーズ /ニコール・キッドマン]

    EYES WIDE SHUT 159分 1999年 アメリカ

    監督■スタンリー・キューブリック
    製作■スタンリー・キューブリック
    製作総指揮■ヤン・ハーラン
    原作■アルトゥール・シュニッツラー
    脚本■スタンリー・キューブリック/ フレデリック・ラファエル
    撮影■ラリー・スミス
    出演■トム・クルーズ/ニコール・キッドマン/シドニー・ポラック/トッド・フィールド/マリー・リチャードソン/アラン・カミング/マディソン・エジントン/トーマス・ギブソン/レイド・セルベッジア/リーリー・ソビエスキー/ヴィネッサ・ショウ

    <DATA>

    スタンリー・キューブリックが「フルメタル・ジャケット」以来、12年ぶりに手がけた最新作にして遺作。全て が極秘の内に製作され、マスコミにもほとんどの情報が流されず、わずかにトム・クルーズとニコール・キッ ドマンが実生活同様に夫婦を演じ、愛とセックスがテーマらしい事だけが知らされていた。その話題作が遂 にベールを脱いだ。

     ニューヨークの瀟洒なアパートメントに暮らす内科医ビル・ハーフォード(トム・クルーズ)には美しい妻アリス(ニコール・キッドマン)と6歳になる娘がいた。
     だが、幸福に包まれたかのように見えたビルの人生は、ある夜、パーティから帰宅した妻の口 から出た台詞で闇の中に放り込まれてしまう。
     かつてアリスは、一度視線を交わしただけの男に抱かれる事を夢想した事があると言うのだ。
     敬虔な妻であり、娘の母であったはずのアリスからのこの意外な告白に、妻へ絶対の信頼を寄せていたビルの心は大きく動く。
     そして夜の街をさまよう内に、ビルは郊外の屋敷で開かれている秘密のパーティに潜り込むのだった・・・。

     今をときめくハリウッドの夫婦スターを起用し、セックスをテーマとしたキューブリックの最新作は、それだけでも話題性が充分だったのに、フィルムの完成直後にキューブリックが急逝したため、噂には拍車がかかった。
     いつものごとく秘密主義と完璧主義を貫いて作り上げたキューブリックの遺言状。
     そこにこめられ たものは果たして何だったのか...