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  • 映画『この森で、天使はバスを降りた』 切なく泣ける隠れた名作

    映画『この森で、天使はバスを降りた』 切なく泣ける隠れた名作

    映画『この森で、天使はバスを降りた』 THE SPITFIRE GRILL

    この森で、天使はバスを降りた

    誰にも言えない過去を抱えて、 彼女はここにやって来た–。
    凍てついた心を癒せるのは 傷ついた心だけ…。

    Amazonビデオで配信中!

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    人が背負う過去は、果たして癒されていくのだろうか?

    過去とは、未来が一瞬の現在を通り過ぎて生まれていくもの。
    人々は、その一瞬の中に自分の自身の道筋を決めていく。
    人々の決断は何によって行われるのだろうか?それは、その人がそれまで生きてきた人生、そう過去を引きずって生きている。
    人は過去を捨て去ることは出来ない。
    しかし過去の経験から、自分の未来を変えていくことは出来るはず。

    主人公パーシー(アリソン・エリオット)は、自分の過去に重い傷みを感じながら生きている。
    人生の出直しを考えた時、緑深いギリアドの町を選ぶ。
    町と言うには小さい、村という表現があっているかもしれない。

    そこは緑に囲まれた美しい風景が広がる。
    人は美しい自然を目の当たりにした時、自分の存在の小ささに気付き、そして自分の過去の重さが、どれほどのものか、いや如何に小さいものかを自覚する。彼女は自ら、それを自覚することに依って、自分の未来を変えようとする。

    彼女のか細い身体から、そのオーラが発せられたとき、周りの人々も少しずつ変化を無意識のうちに求めていく。
    スピットファイア・グリルの店主ハナ(エレン・バースティン)、息子を失った悲しみから頑なに心を閉ざす姿が、少しずつなにかが変わっていく。
    料理と洗濯しか出来なかったシェルビーも、彼女との出会いの中で、自分自身を見つめ行動を起こす。

    田舎のぼくとつとした青年ジョーも、この森の中の生活に光明を見いだそうと動き出す。
    そして森の住人ジョニー・Bも・・・

    パーシーが森を抜け小高い丘の上で歌を口ずさむ・・・大自然の中で自分の心を口ずさむ、そこへジョニー・Bが現れる。
    人と人の心が共鳴しあい、変化を生み出す瞬間の輝きがそこに存在する。

    この街を守ろうと、部外者の侵入に心を痛めるイーサンは、パーシーの発するオーラに恐怖する。
    彼も、自分の過去に小さな傷を持っている・・・

    作文コンテストの賞金がなくなった事件を境に、人々の暗い過去が、この自然にあふれた街の中に引きずり出される。
    そしてこの事件で、パーシーが命を落とす・・・

    それ自体は悲しい出来事、この事件がギリアドの人々の中に一つの重い過去と言う十字架を背負わせる。
    しかし、その死と同時にパーシーが残したものは、その過去を背負いながらも、自分自身しか未来を変えることは出来ない、人は自分の過去は変えることは出来なくても、未来を変えることが出来ると言うことを教えてくれた事だった。

    ハナとシェルビーは、作文コンテストを最後までやり遂げ、店を手にした親子を街に向かい入れる。
    人は自分の過去と向かい合い、そして未来を創っていく、人にはそれが出来る。
    パーシーは人々にそれを教えてくれた、だからこそその人の姿に感動し涙することが出来る。

    パーシー役のアリソン・エリオットの美しさ、どこか弱々しさと瑞々しさが混じり合った姿、演技が素晴らしい。

    そしてアメリカと言う国土の広さとその美しさに、改めて驚きを感じる。

    『タイタニック』でアカデミー賞を授賞したジェームズ・ホーナーの音楽は『タイタニック』のそれ以上に感動を与える旋律を持っていた。

    Reviewed in 02.2000

    その後のアリソン・エリオット

    アリソン・エリオット
    アリソン・エリオット

    サンダンス映画祭で観客賞をとって、当時の東京でミニシアター系と呼ばれる作品としてヒットをし、隠れた名作として話題になった作品。
    監督のリー・デヴィッド・ズロートフはTVディレクター出身で、この作品の前後でも映画は作ってないらしい。

    主演を演じたアリソン・エリオットは、この後、話題作『鳩の翼』にヘレナ・ボナム・カーターと共演したり、その他主演作もあるが、2000年以降はたまに小さな役で映画に出演しているのみで日本未公開が多く、TVシリーズへの出演が散見されるのみ。
    久々に『20センチュリー・ウーマン』(2016)で小さな役で出演がある。

    彼女はもっと活躍すると期待してましたが、残念ながら大きな役で見ることはありませんでした。
    この作品から20年が経って、1970年生まれの彼女は大人の女性として今も美しいようです。

    アリソン・エリオット
    最近のアリソン・エリオット

    映画『この森で、天使はバスを降りた』のデータ

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    THE SPITFIRE GRILL 116分 1996年 アメリカ
    監督■リー・デヴィッド・ズロートフ
    製作■フォレスト・マーレイ
    脚本■リー・デヴィッド・ズロートフ
    撮影■ロブ・ドレイパー
    音楽■ジェームズ・ホーナー
    編集■マージ・グッドスピード
    美術■ハワード・カミングス
    出演■アリソン・エリオット/エレン・バースティン/マルシア・ゲイ・ハーデン/ウィル・パットン/キーラン・マローニー/ゲイラード・サーテイン/ジョン・M・ジャクソン/ルイーズ・デ・コーミア

    サンダンス映画祭 1996年
    観客賞授賞

    <ストーリー>

    ある冬の夜、パーシー(アリソン・エリオット)はたった一人、田舎町ギリアドのバス停に降り立った。
    古ぼけたレストラン“スピットファイアー・グリル”で働き始め た突然の来訪者に、住人たちは好奇の目を向ける。
    一人息子を戦争で失ったグリルの女主人ハナ(エレン・バースティン)。
    家庭に悩みを抱えた主婦シェルビー(マルシア・ゲイ・ハーデン)。
    町を囲む美しい森にすら無関心になった人々。
    そんな傷ついた心を、パーシーはその純粋な優しさで包み込み癒していく。
    しかし彼女自身、誰にも言えない過去を抱えていた・・・。

  • 映画『奇跡の海』 キリスト教とセックスの関係についての妄想的考察

    映画『奇跡の海』 キリスト教とセックスの関係についての妄想的考察

    映画『奇跡の海』 BREAKING THE WAVES

    奇跡の海

    宗教を無垢に信じる恐怖

    なんて怖い映画なのだろう~、それが第一印象。
    信仰の描き方がベルイマン的である。

    観ていてまず気付くのが、ハンディのキャメラで撮った映像。
    常に上下に揺れていたり、画面がピンボケしたりする。
    編集も面白い、主人公ベスから他の登場人物にキャメラが移動する時は、そのまま映像を繋ぐが、他の人からベスにキャメラが移動する時は、途中でカットしてスパッと切り替わる。

    全体として映像が寒々として冷たい印象がする。
    それは、そこに写されるスコットランドの風景なのかもしれない(個人的には、デビッド・リーンの『ライアンの娘』のアイルランドを想像した)。
    ベルイマンのスウェーデン等の北欧のそれに近い雰囲気が感じられる(監督さんがデンマークの人ですね...)。
    そう言ったインパクトの有る映像と共に、出だしは俗物的なドラマが展開されるかのように始まる。

    しかし、この作品のテーマは、ラストのシーンが示すように“神の啓示”に有る。
    そのテーマにぐいぐい引き込まれていく。

    怖いというのは、大きく2つの点に関して。
    プロテスタントの非常に厳格な宗派(実際の宗派は私には判らないが)の中で、その人間の取る行動の恐ろしさ。
    主人公のベスは、その中で純粋培養された人間。
    この町に住む人々の宗教観には神の不在を感じずにはいられない。
    そこには形骸化した、伝統しか感じられない。
    神は主人公ベスに啓示を与えるが、それはラストまで、狂気なのか啓示なのか、判らない。
    しかしあれが啓示だとすれば、彼女を生んだこの街の、この戒律や宗教観の肯定になるような気がしてならない。

    確かに主人公のベスは、その純粋さの上、教会の戒律に背き、破門され“(神を愛することは出来ても、神の)言葉(だけ)を愛することは出来ない!”と叫ぶが。
    ベスが娼婦になり、教会から破門になり精神病院に送られそうになるが、脱走して自分の街、自分の実家に戻るシーンが有る。
    しかし街の子供達は、ベスに石を投げつける。
    追いかけては来ては投げつける。
    キリストの教えに、隣人を愛せって有るのに...。

    この街の人々の宗教観が生み出した、伝統や習慣(のようなもの)には恐ろしいものを感じるが、これが絵空事ではないのは、(日本の)オウム(真理教)等を見れば判ること。
    宗教とはある種の洗脳も有るのだから...

    もう一点のこの映画の恐ろしさ...主人公ベス。
    彼女を純真な女性と感じるか?それても知能の低い人間と捉えるか?は有るが、彼女はこの街の宗教観の中で純粋培養されてきた女性。
    結婚によって、男性との初めての行為におよび、その喜びを知る。
    しかし、その後の行動と言ったら、私の目からは常軌を逸しているとしか言えないもの。
    キリスト教って人に与えることでしょ?と言いたくなるような場面が続く。
    愛するものから何でも奪い取ろうとする。
    また純粋上の事なのか?神の言葉を自分で作り上げて語り出す。
    愛をせがむ表情や自分の望みが受け入れられず叫び泣く姿は、私にはどうしても怖く写る。
    彼女の笑いの表情には、何かに取り憑かれたものを感じるのは私だけだろうか?

    主人公ベスの夫は、下半身不随になる怪我をするが、ベスの死と共に歩けるようになっている。
    しかもなんの前触れもなく、突然に!そして鐘が鳴る。
    全て神の“啓示”なのだろうか? セックスレスになった男性のセックスを感じたいがために、妻に他の男との関係を求める、極限の愛の形と言うより、神との関わりを描いた作品として考えさせる。

    でもベスと言う女性像には、嫌悪を感じずにはいられない。
    決して好きな作品ではないが、凄い作品では有る!

    Reviewed in 03.1999

    2017年のラース・フォン・トリアー

    この作品が私とラース・フォン・トリアー監督の出会い、と言っても初めて見た作品という話だけですが。
    ラース・フォン・トリアー監督の初期の傑作で、実はこれが一番判りやすい作品かもしれない。

    この作品はモチーフがイングマール・ベルイマン監督の『処女の泉』に近いが、主人公が死んだ後に聖人(神に祝福される)となるか、異教徒?に葬られるか、の違いがある。
    このあたりが、その後のラース・フォン・トリアー監督の独特な世界観へと突き進む予感だったのかもしれないが。

    ベルイマンが神と人間の関係を日常の中に描いたのに対して、ラース・フォン・トリアーは自由な発想で映像化することにチャレンジしている。
    「天国」「煉獄」「地獄」を描いた『アンチクライスト』や性に縛られる女性を描いた『ニンフォマニアック』など。

    カンヌ国際映画祭で色々な賞を受賞・ノミネートされていることを考えると、ヨーロッパ文化とキリスト教やその他の宗教との関係については複雑な関係で、人々の生活に影響を与えていることが判る。
    宗教観とベルイマン、ラース・フォン・トリアーを考察するのは楽しそうだが、キリスト教ではない私がキリスト教について知っている知識が少なすぎるかもしれない。

    主演のエミリー・ワトソンはこの作品で最高の演技をして見せて、逆にイメージがついてしまったところがある。
    現在も名脇役として活躍しているイギリスの名女優。

    そう言えば、主人公の夫役はステラン・スカルスガルドだったなぁ~
    スウェーデン出身のスカルスガルドはそれまでも脇役として少しずつハリウッド作品にも出ていたが、この作品で一気に有名になり、その後もラース・フォン・トリアー作品に出続けている。
    もちろん、ハリウッドの大作にも出続ける名脇役。

    映画『奇跡の海』のデータ

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    BREAKING THE WAVES 158分 1996年 デンマーク
    監督■ラース・フォン・トリアー
    製作■ヴィベク・ウィンドレフ/ピーター・オルベク・イェンセン
    脚本■ラース・フォン・トリアー
    撮影■ロビー・ミューラー
    美術■カール・ユリウスン
    音楽■レイ・ウィリアムズ/マーク・ウォーリック
    編集■アナス・レフン
    衣装■マノン・ラスムッセン
    製作総指揮■ラース・ヨーンソン
    出演■エミリー・ワトソン/ステラン・スカースガード/カトリン・カートリッジ/ジャン=マルク・バール/ジョナサン・ハケット/エイドリアン・ローリンズ/ジョナサン・ハケット/サンドラ・ヴォー/ウド・キアー/ミケル・ゴープ/ローフ・ラガス/フィル・マッコール/サラ・グジョン

    1996年アカデミー賞
    主演女優賞ノミネート エミリー・ワトソン

    1996年カンヌ国際映画祭
    審査員特別賞授賞 ラース・フォン・トリアー

    1996年N.Y.批評家協会賞
    女優賞授賞 エミリー・ワトソン
    監督賞授賞 ラース・フォン・トリアー
    撮影賞授賞 ロビー・ミューラー

    1996年L.A.批評家協会賞
    ニュー・ジェネレーション賞授賞 エミリー・ワトソン

    <DATA>

     プロテスタント信仰が強い、70年代のスコットランドの村が舞台。
     ベスは、油田工場で働くヤンと結婚した。
     彼女は、仕事のために家に戻れない彼を愛するあまり、早く帰ってくるよう神に祈る。
     するとヤンは工場で事故にあい、願い通りに早く戻ってきた。
     だが回復しても寝たきりの上に、不能になっていた・・・。
     やがてヤンは、妻を愛する気持ちから他の男と寝るよう勧め、ベスもまた、夫を愛するがゆえに男たちを誘惑してゆく。

     映像派ラース・フォン・トリアー監督は、1996年カンヌ国際映画祭で大絶賛されグランプリを受賞、この作品がデビュー作となる、主人公ベスを演じたイギリス人女優、エミリー・ワトソンは、アカデミー賞主演女優賞にノミネート。
     全8章、2時間38分からなる、濃密な愛の物語。 <allcinema>

  • 映画『アンダーグラウンド』 国を失う悲劇をコミカルに描いたファンタジー

    映画『アンダーグラウンド』 国を失う悲劇をコミカルに描いたファンタジー

    映画『アンダーグラウンド』UNDERGROUND

    アンダーグラウンド

    昔、ある所に国があった。

    地上と地下、それは支配するものとされるものを描いていた

    久々の怪作を観た。
    ユーゴスラビアの近代史を紐解く作品とも言える。

    冒頭から騒々しい音楽と共にユーゴスラビアに生きる人々が、生き生きと映し出される。
    と、同時に第二次世界大戦に突入。
    東欧の映画らしい、洗練はされていないが、人間味有る独特の雰囲気に溢れる。

    映画としては少し冗長なとこも確かにあるが、それ以上に素晴らしいテーマを持つ、一つ一つのシーンが美しい。

    前半はひたすら人々の暮らしや人間の愛憎が描かれる。
    マルコとクロと女優のナタリアの三角関係が軸になる。
    戦争の激化、ゲリラ化に伴い、人々は地下に潜る。
    マルコとナタリアだけが地上で生活をし、地下の人々に生活物資を送る。
    地下の人々はその中で、希望を失うこと無しに自分たちの生活を続ける。

    画面には滑稽な風景が映し出される。
    しかしそこにはユーゴスラビアの人々の生きる事への力強さ、国を取り戻す事への強い意志が現れている。

    地上では戦争が終わり、共産党のチトーが政権を執る。
    映画の中盤から、実写も織り込みながら歴史を語り始める。
    と同時にマルコとナタリアの苦悩が描かれる、地下の人々を裏切り続ける事、騙し続ける事への...

    地下の人々は、地上の戦争が終わったことを知らない。
    マルコのとった行動は、地下の人々を殺すことだった。
    クロとその息子は地上に脱出する。
    クロの息子が初めて見る太陽のシーンは感動的ですらある。
    映画史上の最も美しい1シーンと言える。

    それから20年が過ぎ、ユーゴスラビアは内戦に突入する。
    そこには民族の対立、ユーゴスラビアの崩壊が有った。

    結局、クロは自分を裏切ったマルコとナタリーを間接的に殺すことに...。
    そして自らも命を落とす。

    生き生きとした人々、その生活を描きながら、その人々が住む故郷・ユーゴスラビアと言う国が存在しない事への底知れぬ、悲しみ、怒りが描かれている。

    ラストのイヴァン(マルコの弟で、チンパンジーを連れた動物園の元飼育係)の言葉に心が痛む。
    それでも人々は生き続ける、踊り続ける!そこに自分の土地が無くても。
    映画のテーマに、底知れぬ痛みと感動を憶える、大作であり、傑作である。

    Reviewed in 03.1999 

    映画『アンダーグラウンド』のデータ

    アンダーグラウンド Blu-ray — Amazonで見る

    UNDERGROUND 171分 1995年 フランス=ドイツ=ハンガリー
    監督■エミール・クストリッツァ
    製作総指揮■ピエール・スペングラー
    製作■カール・ボームガートナー
    原作■デュシャン・コバチェヴィチ
    脚本■デュシャン・コバチェヴィチ/エミール・クストリッツァ
    撮影■ヴィルコ・フィラチ
    音楽■ゴラン・ブレゴヴィク
    編集■ブランカ・ツェペラチ
    衣装■ネボイシャ・リバノヴィチ
    美術■ミリェン・クリャコヴィチ“クレガ”
    出演■ミキ・マノイロヴィッチ/ミリャナ・ヤコヴィッチ/ラザル・リストフスキー/スラヴコ・スティマ

    1995年カンヌ国際映画祭
    パルム・ドール授賞 エミール・クストリッツァ

    <DATA>

     1941年から始まった旧ユーゴスラヴィアの戦いと動乱の歴史を、マルコとクロという二人の男を通して描いた作品。

    1941年、ユーゴ王国はナチス・ドイツに侵略された。
    クロを誘ってパルチザンに参加したマルコは、自分の祖父の地下室に弟やクロの妻などをかくまう。
    やがて重傷を負ったクロも地下室に運び込まれる。
    終わりなき戦争を信じる彼らが、地上に戻った時、既に戦争が終わり20年が過ぎていた。

    クストリッツァ監督は、デビュー作「パパは出張中」でも、’85年カンヌ国際映画祭でグランプリ、「ジプシーのとき」で、’89年カンヌ国際映画祭監督賞を授賞している。
    世界でも最も独創的な映画作家の一人である。 <allcinema>

  • 映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 苦しい時は逃げてもいい・・・

    映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 苦しい時は逃げてもいい・・・

    映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 Manchester by the Sea

    癒えない傷も、
    忘れられない痛みも。
    その心ごと、生きていく。

    2017年5月13日(土)シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

    まずは見てから語ろう!

    個人的には独りで見たい作品だが、心が通じてるカップル同士で見るのも良いかもしれない。
    アメリカ・ボストン近郊の小さな漁港の街のマンチェスター・バイ・ザ・シーという街での物語。

    とても地味な物語で、日本映画でいうところの小津安二郎作品のような映画で、ケイシー・アフレックがアカデミー賞の主演男優賞を取らなかったら、どう宣伝するんだろう~と思ってしまう。
    ケイシー・アフレックはベン・アフレックの弟で、今作品のプロデューサーはマット・デイモン。
    ベン・アフレックとマット・デイモンは親友で『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でも3人は共演している。

    当初、マット・デイモンが監督・主演で企画されたものだが、脚本をケネス・ロナーガンに依頼して、そこから彼の監督、ケイシー・アフレックの主演となった作品。
    そして、第89回アカデミー賞で、ケイシー・アフレックが主演男優賞、ケネス・ロナーガンが脚本賞を受賞した。

    そしてこの作品が終わる頃には、劇場にいる人々の涙を拭う姿があった。

    BEVERLY HILLS, CA – NOVEMBER 14: Producer Matt Damon, Ben Affleck gets a brotherlly grab by Casey Affleck at the “Manchester By The Sea” Los Angeles Premiere at AMPAS Samuel Goldwyn Theater on November 14, 2016 in Beverly Hills, California. (Photo by Todd Williamson/Getty Images for Swisher Productions)

    重い十字架、考えさせられるラストへ

    口数の少ない主人公のリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)は、ボストンで便利屋をしていて、独り暮らしで友人もいない。
    そんな彼の元に、マンチェスター・バイ・ザ・シーに住んでロブスター漁をしている兄が倒れたという連絡が入る。
    ボストンから1時間くらいのマンチェスター・バイ・ザ・シーの病院に駆けつけると、既に兄はなくなっていた。
    兄の遺言で、兄の一人息子の後見人になるようにとあるが、リーは頑なにそれを拒む。

    リーが頑なにマンチェスター・バイ・ザ・シーでの甥の後見を断る理由がこの作品の最大のターニングポイントになるが、ネタバレになるのでここでは語れない。
    このシーンで観客からは嗚咽があがった。
    本当に良い映画なので、絶対、見て欲しい!そして確認して欲しい。

    家族や友人たちとの絆が強い人ほど、この重い十字架を背負った時に深い傷を負うことになる。
    この映画のラストには、最初はなかなかスッキリしたものを感じられなかったが、後から色んな感情が込み上げてきて、忘れられない作品となった。

    以下は、ネタバレがあるかもしれないので注意してください。

    私的『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    人は心が折れた時、どうやって再生するのだろうか?
    主人公は心に大きな傷を負い、彼は何も悪くはないのに重い十字架を背負ってしまった。
    彼を支えてくれるのは、彼が近づきたがらないマンチェスター・バイ・ザ・シーに住む友人たち。

    彼にはマンチェスター・バイ・ザ・シーに楽しい想い出と辛い思いが共にあることで、彼にとってこの街がトラウマになっている。

    ラストは私にはスッキリするものではなかったので、少し考えさせられた。
    人は逃げてもいいんだ!と。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    決して暗いだけの話ではない。
    主人公の甥・パトリックは街で二股をかけているなど、父親が亡くなったのに前向きに強く生きていこうとしている。
    ある意味、主人公・リーとは対照的である。

    人が生き続ける意味、そして生きる源は、人との関係性なのだと感じる。
    人は独りでは生きていけない、どんなに離れていても繋がりを感じることが重要なのだと。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    ケイシー・アフレックの演技が素晴らしい!脚本自体が素晴らしいがそれに応えた彼の演技が見事。
    実は主人公・リーの陰陽を分けている演じるという困難にチャレンジして成功している。

    彼を取り巻く、リーの兄・ジョーを演じたカイル・チャンドラーも良かったし、中盤からキーになってくるリーの妻・ランディを演じたミシェル・ウィリアムズも素晴らしい。

    作品の中の重い十字架以外にも、出て来る人々がそれぞれに背負っている日常がある。
    甥・パトリックにも母親との関係がのしかかる。

    実にリアルに人々の生活が描かれている。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    背負わされる十字架の重さを思うとテレビにはできない、そしてこの脚本を舞台劇でやるのも難しいだろう。
    映画でしか表現できない世界観があり、表現がそこにあり、映像や音楽の素晴らしさも合わさっているので劇場で見て欲しい作品。

    ⑤ エンターテインメント性

    娯楽と芸術という合間という点では、芸術やリアリティに振れている作品だと思う。
    それくらい地味にできている作品。
    でも、俳優の素晴らしい演技を楽しむ、アカデミー賞監督賞を取ることはできなかったが、演出も素晴らしかったので、映画としての楽しみ方もできる作品。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    今年は『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼルが史上最年少のアカデミー監督となった訳だが、どっちが好きか?というと、ケネス・ロナーガンの演出の方が好きだった。

    『ラ・ラ・ランド』の演出は、色んな工夫や努力がされていて、あのアイディアには感服したしアカデミーに値すると思っている。

    一方で今作品は、ガス・ヴァン・サント監督のような演出でビックリした。
    少ないセリフで心情が表現されていて、脚本の持つテーマと共に静かに時間が経過していく様が見事に表現されている。
    映像全体が瑞々しさを感じさせてくれる。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    なんと言っても脚本が素晴らしい!!

    映画を見終わった直後は「凄い衝撃的な物語だなぁ~」と思ったが、しばらくするとこの脚本こそがキーになっていると感づかされる。
    時系列で物語を構成したら、これ程の作品にはならなかっただろう。

    主人公の兄が亡くなるところから時系列に物語が進むが、そこに過去の回想が差し込まれていく。
    その回想の使い方がこれだけ見事な作品は珍しい(回想が多いと失敗することがおおいが)。

    主人公や周辺の人々のトラウマが一つの回想毎に明かされて行く。

    そしてタイトル。
    単なる街の名前をタイトルにしているが、邦題もそのままにした配給元の勇気には拍手もの。
    これを情緒的な放題に変えて欲しくないし、街の名前がタイトルであることに大きな意味がある。

    ⑧何度も見たくなるか?

    決して軽い話でも、エンターテインメント性が高い作品ではないが、心にしみいる作品。
    人生は常に夢が叶うものではない、逆に失敗することのほうが多いと思う。

    そんな時に見たい作品。
    それ以外にも、この美しい作品は何度見ても心に響き続けると思う。

    映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のデータ

    監督・脚本■ケネス・ロナーガン
    出演■ケイシー・アフレック/ミシェル・ウィリアムズ/カイル・チャンドラー/ルーカス・ヘッジズ/カーラ・ヘイワード
    製作■2016年/アメリカ/ユニバーサル作品
    上映時間■137分
    配給■ビターズ・エンド/パルコ

    (C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

    映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

    【作品紹介】
    本年度アカデミー賞主要6部門ノミネート!主演男優賞(ケイシー・アフレック)、脚本賞(ケネス・ロナーガン)が受賞!ゴールデン・グローブ賞主演男優賞受賞!
    マット・デイモンがプロデューサーを務め、『ギャング・オブ・ニューヨーク』の脚本でアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたケネス・ロナーガンが監督・脚本を務めた珠玉の人間ドラマ。

    ボストン郊外で便利屋として生計を立てている主人公が、兄の死をきっかけに故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーへ戻り、16歳の甥の面倒を見ながら過去の悲劇と向き合っていく。

    (C)2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

  • 映画『愛情物語』とノクターンと私のニューヨーク

    映画『愛情物語』とノクターンと私のニューヨーク

    映画『愛情物語』

    THE EDDY DUCHIN STORY 123分 アメリカ 1956年

    悲劇の天才ピアニスト エディ・デューチンの 妻と子と音楽に捧げた限りない愛の人生–
    静かな感動が…暖かい心のふれ合いが 数々の名曲とともに いま甦る不朽の名作

    ハリウッド黄金期の古き良き映画、涙無くして見られない

    ハリウッド映画はハッピー・エンドという固定概念があるが、実はこの作品も含めて、ハリウッド黄金期(1940年代~1950年代)の美男美女映画は、意外と悲恋とか泣ける映画が多い。
    この作品も涙無くして見られないそんな作品になっている。

    そう1950年代の古き良きハリウッド映画です。
    監督は名匠ジョージ・シドニー、主役にはタイロン・パワーとキム・ノバクの二人。
    実際にいた不世出と言われた名ピアニスト・エディ・デューチンの伝記物語。

    主人公エディが無名な新人時代から、ニューヨークで成功して華やかな生活、愛妻の死、そして新しい恋人とはほろ苦い恋、息子との心の葛藤など、波瀾万丈な人生を送る感動のドラマ。

    なんといっても44歳で亡くなったタイロンパワーの2枚目ぶりが光る、彼の晩年の作品だが一番脂の乗っていた時期でもあった。
    そしてヒロインのキム・ノバクは『ピクニック』『黄金の腕』『夜の豹』『めまい』『媚薬』と一番美しい時期にこの役を演じている。

    私の想い出

    私が両親に連れて行ってもらった初めての洋画だと思う。
    (この後に『奇跡の人』『暗殺者のメロディ』を二本立てで見た記憶がある)

    もちろん1956年の映画なので、リバイバル上映で見たはずだが、シートが満席で両親は立って、当時小学生の低学年だった私は、通路に座って見た記憶がある。

    この作品を見ながらボロボロ泣いた記憶があり、そしてこの作品をキッカケで、ハリウッド映画にのめり込んでいった最初でもあった。
    この時期は、淀川長治さんが日曜洋画劇場をやっていたのと、確かイレギュラーで22時台スタートの白黒ハリウッド映画を放送していた気もする(未確認)。
    深夜帯にSONY一社で、途中にCMを入れない映画の放送もしていた。

    と言うことで、この作品は『慕情』や『めぐり逢い』『哀愁』といった美男美女たちの悲恋の虜になる第一弾であった。

    私的『愛情物語』

    テーマが有るか?共感できるか?

    人生の悲劇を描いている、そして人はいい時もあれば必ず苦しい時も訪れる。

    それでも人は生きていかなくてはいけない。
    本当に辛いのは、周りの人間たちなのかもしれない。

    主人公とヒロインが美男美女と言うこともあるが、貧乏人からはい上がると言うアメリカン・ドリームを手にする主人公に観客は共感せずにはいられない。

    貧しい彼を盛り上げたのは、ニューヨークで既に実業家として成功していたヒロインのキム・ノバクであった。
    成功には必ずそれをサポートするパートナーが現れるものだ。

    作り手の強い意思を感じるか?

    この頃のハリウッド映画は、美男美女を使って夢のようなメロドラマを作り上げている。
    実際、美男美女だからその悲しみの深さや喜びが伝わる場合もある。
    この際作品はだからこそ成立するのかもしれない。

    俳優の意思や演技力が伝わるか?

    タイロン・パワーはすでにこの時40代であるが、劇中で若い頃から年配までの主人公を演じきっている。
    後半は彼の実年齢に近づき、中年の渋みも加わり大人の恋愛を魅せて圧倒してくる。

    映画らしい楽しさが備わっているか?

    この作品はハリウッド黄金期の華やかさがあり、その上で最後に悲劇が訪れると言う脚本も素晴らしい。

    ハリウッドスターを揃えているという点でも、ハリウッド映画黄金期の最も華やかな美しい時代の作品とも言える。

    エンターテインメント性

    この作品では実際にエディー・デューチンの見事なピアノの調べが使われている。
    もちろん引いてるシーンにおいてはタイロンパワーがあたかも弾いているかのように演じきっている。

    この映画の最大の見どころは、やはり使われている音楽のノクターンのメロディにあると思う。

    演出が素晴らしいか?

    印象的なシーンが散りばめられている。

    新人の頃はピアノ途中で明け渡す時に椅子から落とされたり、少し笑えるしまったりする。
    一方でラスト近くになるとグランドピアノを二台並べて演奏するシーンで、交互に親子の表情が映し出されいるが、病気になった父親は途中で姿を消していく。
    そして部屋からカメラが家の外に出て行く、父親がいなくなることを象徴している演出でもある。

    脚本が素晴らしいか?

    ハリウッドスタイルのこの脚本については申し分ない。
    主人公がいくつもの困難を乗り越えて、それでもラストに悲劇が待っている。

    起承転結の他にもターニングポイントとなる中間地点で、愛する一人目の妻(キム・ノバク)を亡くす主人公。
    ラストは涙をなくしてみる事はできない。

    何度も見たくなるか?

    これぞハリウッド黄金期!2人の美男美女の演技を見るだけでも楽しい!
    さらに音楽も素晴らしくノクターンは最も好きなピアノの一曲でもある。

    私が新婚旅行でニューヨークを訪れた時に、ブルックリン橋の近くのピアノバーで、ノクターンの演奏をリクエストしたのが想い出である。

    映画『愛情物語』のデータ

    映画『愛情物語』

    監督■ジョージ・シドニー
    脚本■サミュエル・テイラー
    撮影■ハリー・ストラドリング
    音楽■モリス・ストロフ
    オリジナル音楽■ジョージ・ダニング
    ピアノ演奏■カーメン・キャバレロ
    出演■タイロン・パワー/キム・ノヴァク/ヴィクトリア・ショウ /ジェームズ・ホイットモア/ジャック・アルバートソン

    【解説】
     ピアニストとして生計を立てようとニューヨークにやって来たエディ。
     彼は資産家の令嬢マージョリーに見出され、オーケストラで演奏することに。
     また、2人の間には恋が芽生え、結婚。やがて息子ピーターが生まれたエディは、順風満帆な人生を送っていくように思われた。
     だがクリスマスの夜、マージョリーが急死してしまう。
     落ち込んだエディはピーターを残し巡業、そして第二次大戦に身を委ねていく。
     終戦後、10歳になったピーターのもとへ戻ってくるエディだが…。

     不世出と言われた名ピアニスト、エディ・デューチンの伝記物語。
     音楽家としての華々しい成功だけでなく、愛妻の死、新しい恋人とのほろ苦い恋、そして息子との心の葛藤など、人間として苦悩に満ちた生涯を送った男の感動的な人間ドラマに仕上がっている。
     監督G・シドニーは、見事な職人芸でまとめ上げており恋愛映画の教科書と言っても過言ではない。(allcinemaより)

  • 「死にたい」と思ったときに、元気なるための映画

    「死にたい」と思ったときに、元気なるための映画

    どんな時に人は「死にたい」と思うのだろう

    ベルリン・天使の詩

    死とはなに?

    自分が「生きる」ことへの執着心が低いせいか、よく「死ぬ」ことを考えます。
    考え始めると、こんな怖いことはなくて、死ぬことが怖くなります。

    死の定義が難しいのですが、決して脳死がどうのとかと言う医学的なお話ではありません。
    どちらかと言うと宗教観に近い輪廻転生のようなものでしょうか?
    人は死んだら、輪廻転生するのか?それとも天国(や地獄)に行くのか?人が絶望しないためには、輪廻転生や天国に行けることを考えることは、その苦痛の大きさからは当然かもしれません。

    80歳になる母親は「死にたくない」と言います、長生きしたいと。
    歳を取ると覚悟ができるのかな?と思ったりするのですが、どうやらそうでもないようです。
    母は会う度に「自然に死にたい、癌になっても告知をして欲しくない」と言っています。
    自分はどうなんだろう~とそんな時にふと思います。

    もし人間が不死だったら?
    それは願望であり、だから吸血鬼のような不老不死の怪物を想像してみたり、クローン人間を想像?創造?してみたりするのだと思う。
    でもそれって、A.I.化されたアンドロイドとなにが違うんだろう~と。
    このあたりは、スティーヴン・スピルバーグ監督の『A.I.』は一つの回答で、人間が不老不死になることはないし、人の生きがいは、限りある人生だからとも言える。

    確実なことは、今の段階では肉体が滅びることが死なのは間違いないということです。

    映画『永遠の僕たち』 RESTLESS

    ガス・ヴァン・サント監督の『永遠の僕たち』は、主人公が自らの臨死体験から霊が見えるようになり、死にとらわれるようになり、見ず知らずの故人の葬式に参列することを繰り返す少年。
    ある葬式で余命3ヶ月の少女と出会うことで、少年は死を違うとらえ方をし始める。

    決して死というものを後ろ向きにとらえず、いつかは訪れるもの。
    でも一つ一つの命には価値があることを教えてくれる作品です。

    監督■ガス・ヴァン・サント
    製作■2011年/90分/アメリカ
    出演■ヘンリー・ホッパー/ミア・ワシコウスカ/加瀬亮

    映画『永遠の僕たち』

    死にたい

    何度か思ったことがある、でも具体的な行動に出たことはない、そこまでの勇気はなかったと言うべきか、それともそれ程強い願望ではなかったのかもしれない。

    若い頃の死にたいは、生きることが「辛い」の思い。

    それはいじめであったり、家庭での親子関係が上手くいかなかったり、勉強が思うようにならなかったりだった気がする。
    やはり大きいのはいじめの問題かな?
    単純にいじめと言うと、友だちから仲間外れにされたり、嫌がらせされたり、暴力を振るわれたりだけど、もっと精神的な孤立感も有るのかなと。

    映画 アニメ『聲の形』 The shape of voice

    小学生の時、聾唖の少女が転校してきて思わずいじめてしまった。
    友人の裏切りで、いじめの責任を一人に負わされてしまった主人公は、5年後、周囲から孤立して自殺を決意した主人公の少年は、かつていじめた少女に会いに行く。

    いじめという問題に向かい合い、少しずつ家族や友人に触れながら一歩前進する少年の姿を感動的に描いた作品。

    詳しくは「映画『聲の形』 ストレートに伝わらない心の声」をどうぞ

    監督■山田尚子
    アニメーション制作■京都アニメーション
    原作■大今良時
    脚本■吉田玲子
    キャラクターデザイン■西屋太志
    製作■2016/129分/日本
    声の出演■入野自由/早見沙織/悠木碧

    映画『聲の形』

    自分の場合はなかったけど、社会人の自殺は仕事に追い詰められてと言うケースが多いように思える。
    最近はそうでもないけど、仕事量とその責任に押しつぶされて自殺するサラリーマンは何人かいた。

    これはちょっと想像がつかないけど、借金苦からなのか・・・でも今の日本で死ぬほどお金に困ることはあるのかな?
    自己破産と言う手段もあるし、逆に良心の呵責から自殺してしまうのかもと。
    でも、お金に困るということは人を追い詰めていく・・・少しでも働く意欲があればよいけど。

  • 映画『この世界の片隅に』  能年玲奈が「のん」に変わる時

    映画『この世界の片隅に』 能年玲奈が「のん」に変わる時

    映画『この世界の片隅に』

    この世界の片隅に

    昭和20年、広島・呉。
    わたしは ここで 生きている。

    戦争と共に生きるということ

    きっとこの映画を見て涙するのは、ある程度年配の人たち、私のような50代とかそれ以上なんだと思う。
    私の世代は、やはり子供の頃にマンガ「はだしのゲン」を読んで、戦争の悲惨さ・原爆の怖さを知った。
    そして大人になって、野坂昭如原作のジブリアニメ『火垂るの墓』に涙した。

    でも、この作品は本当に若い人たち、特に小中学生の頃に、自分たちの子供の頃に通過したように、必ず見て欲しいと思った作品。
    だから小中学生のお子さんがいるは親は、一緒に映画を見に行くには良い機会かもしれない。
    戦後70年が経過して、自分たちが語り継げない戦争のことを、家族で話をする良い機会になると思う。

    ドキュメンタリーに近い物語。
    主人公すずは、昭和元年生まれ、昭和史をそのまま生きたと言う設定、それは戦争と共に生きると言うことは何か?と言うことを前半は考えさせられる。
    軍港の街・呉、そこには普通に軍艦が停泊している、大和や武蔵が丘から見えるのが日常の風景。

    今の日本では考えられないが、日常の中に軍隊が存在している。(ちなみに海外でも普通の光景、隣国韓国に行ってみると街中に軍隊がいる)
    昭和20年までの日本はそれが普通の日常だった。

    でも戦争と隣合わせで生きていても、人は笑うし、泣くし、怒るし、そこには淡々とも言える日常があるということ。
    ここでは戦争に行かない人たちを描いている、一見のんびりした生活、苦しいけれど、そこをたくましく生きる主人公を描いている。
    たくましさとのんびりさ、この両方を併せ持つ主人公を超えで演じたのが能年玲奈改めのん。

    相反する「たくましさ」と「のんびりさ」を持つ主人公が、のんそのままのような感じさえする融合ぶり。
    きっと、のんでなければ成立しなかったのでは?と思わせるくらい彼女の演技(声)が良かった。

    小さい頃に祖父や父に聞いた地方都市の風景が見事に描かれていて「こうやって市井の人々が戦争に飲み込まれて行くんだ」と感じる。
    そして戦禍はどんどんと身近に近づき、そして運命の日へと続く。

    これはおそらく、アニメだから見れる、見ることのできる映像だろう、実写だったら目を背けたくなる光景が後半は続く。
    そして、昭和20年8月15日を迎え玉音放送を聞く主人公すずが叫ぶ。

    「なんで止めるんだよ~」

    と。
    止めるんだったら最初から戦争なんてするな、そんな無責任なことで戦争を始めるな!と。
    必要な戦争なんてない、自分たちの生活をどれだけ壊してくれたのか?!と。

    この作品には希望がある、戦争が終わって生活が楽になる保証はない、でも戦争のない日々がやってくると言う希望、そしてまたその新しい日常を淡々と生き抜くしかない。

    戦争に打ちのめされても人は強い、そこから立ち直っていく、日常を生き続けることの芯の強さがこの作品にはある。
    だから若い人に是非、見て欲しい作品でもある。

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    私的『この世界の片隅に』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    戦場とはどこにあるものなのか?最近の日本ではそんな「のん気」な議論がされている。
    いったん戦争になれば、戦場というものは果てしなく拡大していく、そして日常の一風景になってしまう。

    戦争をするということは、全ての人を巻き込み、そして不幸にしていく。

    私は小さい頃に祖父から富山大空襲の話を聞いたことがある。
    祖父の家は、富山市街からは離れていたため被害は無かったが、空が真っ赤になったと言っていた。
    この映画を見ていると、そういう戦争体験者の記憶を一つ一つ積み上げた感覚がある。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    原作のマンガをクラウドファンディングを作って映画化。

    多くの人が「あの大戦を忘れてはいけない」と言う思いがこもった作品。
    戦後が70年以上経過して、主人公・すずが生きていたら90年、広島に原爆を投下した国のプレジデントが訪問もした。

    日本はこの出来事を永遠に語り継いで、戦争をしない国として続いていかなければ、と言う想いを感じる。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で主役を務め、一躍国民的アイドルとなった能年玲奈。
    「あまちゃん」の直前に映画『ひまわり ~沖縄は忘れない、あの日の空を~』でヒロインをしていた彼女に会った時の印象は”本当におとなしい子”という印象で、小泉(今日子)さんの娘役をやるとは、ビックリしたもの。
    いつの間にか、能年玲奈が”のん”に改名していて、のんとしてはデビュー作にあたる。

    10歳くらいから21歳くらいまでのすずを見事に演じたのん(能年玲奈)、彼女があまりにもピッタリだった。
    周りの声優陣は、ベテランの人々で安定感があった。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    なんとも原作の絵をそのままアニメにしたような感じが良い。

    絵がほんわかとした雰囲気を醸しながら、一方でシビアな現実が描かれる。
    上にも書いたが、このギャップが良い、この作品を見て、二度と見たくなくなる作品では駄目だから。

    この世界の片隅に

    ⑤ エンターテイメント性

    淡々とした日常で、綿密な取材やロケハンをして、戦前・戦中を描いているが、一方で少女から大人の女性への成長を描いている。
    すず一人に起きた出来事は、おそらく色んな人の体験を集めて、演じさせているんだとは思うけど、映像や音楽の持つ柔らかさがマッチしている。

    そして戦争・原爆投下という戦争のある日常をオブラートに包んで私たちの前に提供してくれることで、何度も見たいと思わせる作品に仕上がっている。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    原作の持つ良さをそのままアニメーションにした感じ。

    一方でモノローグ(独り言や心の声)が多い、やはり今の私たちに理解できないところを説明する必要があるから、なのかもしれない。
    その点では、ドキュメンタリーっぽい作りになってしまっている。

    ただ、のんの声(やその雰囲気)に随分、助けられていると言う意味では、キャスティングの妙とも言える。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    脚本というか、原作が素晴らしい、本当に戦前・戦中の暮らしが良く描かれている。

    かつての戦前を描いた日本映画の家族の風景が、この作品にも描かれている、それがごく自然。
    彼女は不幸だったのだろうか?最後は前向きに強く生きていくのだから、きっと幸福になっていくんだと思う。

    そんなすずの姿を見ているだけで涙が出てくる。

    ⑧何度も見たくなるか?

    日本人は、毎年のようにこの作品を見て欲しいと思えるくらい。
    戦争の悲惨さも伝わってくる、でもこのほんわかとした雰囲気の絵が、クッションとなってくれる。

    おそらく実写で見てしまったら、数年は見たくなくなる、それでも心に伝わる作品の強さというものは決して変わらない。
    映画の枠で考えると、個人的には『君の名は。』の方が好きだけど、アニメ、マンガ、映画と言う枠を超えたところにある作とも言える一本。

    映画『この世界の片隅に』のデータ

    この世界の片隅に

    上映時間■126分
    製作国■日本
    公開情報■劇場公開(東京テアトル)
    初公開年月■2016/11/12

    監督■片渕須直
    アニメーション制作■MAPPA
    企画■丸山正雄
    プロデューサー■真木太郎
    原作■こうの史代

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    脚本■片渕須直
    キャラクターデザイン■松原秀典
    作画監督■松原秀典
    音楽■コトリンゴ
    主題歌■コトリンゴ  『悲しくてやりきれない』

    声の出演■のん 北條(浦野)すず/細谷佳正 北條周作/稲葉菜月 黒村晴美/尾身美詞 黒村径子/小野大輔 水原哲/潘めぐみ 浦野すみ/澁谷天外

    (C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

    公式サイトはこちら

    【解説】
     戦時下の広島の軍港都市・呉を舞台に、この街に嫁いできたのんびり屋のヒロインが、物がなく苦労が絶えない日々の中でも持ち前の明るさとしなやかさで、つましくも心豊かな生活を送っていくさまと、そんなささやかな幸せが徐々に戦火に呑み込まれていく残酷な現実を、丁寧な日常描写の積み重ねで描ききったこうの史代の傑作漫画を「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直監督が長編アニメ映画化した珠玉の感動作。TV「あまちゃん」で一躍国民的人気女優となった能年玲奈が“のん”名義でアニメ映画に初挑戦し、ヒロインの声を好演。
     1944年(昭和19年)2月。絵を描くことが好きな18歳のすずは、急に縁談話が持ち上がり、あれよあれよという間に広島市から海軍の街・呉に嫁にやってくる。彼女を待っていた夫・北條周作は海軍で働く文官で、幼い頃に出会ったすずのことが忘れられずにいたという一途で優しい人だった。こうして北條家に温かく迎えられたすずは、見知らぬ土地での生活に戸惑いつつも、健気に嫁としての仕事をこなしていく。戦況が悪化し、配給物資が次第に減っていく中でも、すずは様々な工夫を凝らして北條家の暮らしを懸命に守っていく。そんなある日、道に迷っていたところを助けられたのがきっかけで、遊女のリンと仲良くなっていくすずだったが…。(allcinema)

  • 映画『奇蹟がくれた数式』 『グッド・ウィル・ハンティング』の基になった物語

    映画『奇蹟がくれた数式』 『グッド・ウィル・ハンティング』の基になった物語

    映画『奇蹟がくれた数式』 The Man Who Knew Infinity

    私には二つの偉大な“発見”がある-
    彼の才能と、彼との友情

    奇蹟がくれた数式(字幕版) — Amazonで見る

    人種、人間性、世代、それを乗り越えた友情の物語

    あなたが誰にもない優れた才能を持っていたとしたら、しかも天才と言われるほどの才能、でもそれを活かすことができないところで生まれたとしたら、どうしますか?
    1997年製作のハリウッド映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の中に、主人公ウィルが「ラマヌジャン以上」の天才だ!と言う下りがある。
    ウィル自身も、アメリカの貧しい白人層の中で育ち、その才能を生かすことができないところから物語が始まる。(映画『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』 人生の選択をする時 の記事はこちら)

    インドで生まれた天才数学者が、運命も味方してイギリスのケンブリッジ大学に留学できることになる。
    しかしそこに待っていたのは、無関心と差別だった。

    主人公のインド人青年・ラマヌジャン(デヴ・パテル)の才能を認めたケンブリッジ大学のG.H.ハーディ教授(ジェレミー・アイアンズ)は彼をイギリスに呼び寄せ、研究を進めるように師事する。
    しかし、ハーディ教授は、ラマヌジャンの研究には興味を示したが、ラマヌジャン本人には興味がなかった。
    ラマヌジャンは研究に没頭するのと同時に、色々な差別を受けながら、研究をし続けるうちに少しずつ病魔に蝕まれていく。

    20世紀初頭のイギリスを舞台に描かれる物語。
    イギリスが7つの海を支配した時代、インドを植民地としていた時代の話、ちょうど第一次世界大戦の頃。
    イギリス人は植民地にしていた人々を差別していた、白人優位主義とでも言うのかな。
    アメリカでの黒人に対する差別は有名だけど、当然のようにイギリス人の有色人種への差別も強い。
    昔、聞いた話では、ヨーロッパでは差別ではなく区別とも言うと、人間ではなくペットと同様に扱うのが有色人種だとも言われいる、そんな時代の話。

    考えてみると、日本人も20世紀初頭は、アメリカやイギリスの帝国主義に向こうを張って、アジアに対して大東亜共栄圏と称して、植民地化を進めていた。
    当然の事ながら、朝鮮や台湾、そして中国、東南アジアの人々を下に見る傾向がある。
    それは、今でもとても感じることである。

    インド人に無関心だったイギリスの教授が、その才能だけではなく、少しずつその人間性にも興味を持ち、そしてその才能はどこから来るのか?と興味を持ち始める。
    そしてそこに友情が芽生え人種間、年代を越えて判り合っていく。

    奇蹟がくれた数式

    私的『奇蹟がくれた数式』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    天才が持つ才能とは何がもたらすのだろうか?神からもらうもの?
    例え天才であったとしても、それを認めてくれる人がいなければ、人は幸福になれない。

    誰にでも自分の才能が何かある、それを見つけて努力して、それを認められるところで発揮することで人は幸せになる。
    主人公・ラマヌジャンは、果たして幸せだったのだろうか?観客は彼の人生に涙する。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    数学という難しいテーマを、人にスポットを当てて判りやすく見せてくれる。
    天才でありながら、生まれた場所だけで差別されて無視された半生、そして認められた後半生に自分の認められるべき場所の重要性を感じる。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    イギリスの紳士を演じたジェレミー・アイアンズは流石、彼もまた天才学者であるが故に対人関係に関しては不器用、そんな繊細な人間性を見事に表現。
    また、デヴ・パテルは『スラムドッグ$ミリオネア』で映画メジャーデビューしたインド人俳優、彼でなければ難しかった役どころ、そして神と接する気持ちが伝わってくる。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    インドとイギリスと言う全く異なる国民性や文化の国を繋ぐことができるのは映像の素晴らしさ。

    ケンブリッジ大学の最高峰トリニティ・カレッジでの撮影が実現、ニュートンの書物が展示されたレン図書館、ニュートンが重力を発見したリンゴの木のある中庭などを映像化、これは映画ならでは。

    奇蹟がくれた数式

    ⑤ エンターテイメント性

    原作が「数学の知識がなくても楽しめる」と絶賛された、それを見事に映像化し、飽きることがない。
    決して派手な作品ではないが、アメリカやイギリスでも、ミニシアターからヒットを記録した作品。

    好奇心とそして感動・最後に涙する、そんな楽しみを与えてくれる。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    ジェレミー・アイアンズらイギリス人のベテラン俳優陣と、デヴ・パテルの若手の演技を見事に引き出している。
    また、イギリスとインドの文化の違い、そして差別の構図を、細かい所作で表現している。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    脚本なのか原作なのか、実は主人公の親子関係、そしてインドの習慣が夫婦の間に微妙な影を落とす。
    これが、インド人としてのアイデンティティがもたらす微妙な人間性を見事に描いている。

    ⑧何度も見たくなるか?

    インド人の若者とイギリス人の老教授との友情、インド人の親子関係・夫婦関係を絶妙に描いている、人が生きるには色々な愛が必要だと感じさせる。
    そして、人生において自分の才能をどう発揮するかで幸せを得ることができる、そんなことをふと考えたい時にまた見たい、人間ドラマとして素晴らしい。

    映画『奇蹟がくれた数式』のデータ

    監督・脚本■マシュー・ブラウン 
    原作■ロバート・カニーゲル著「夭逝の数学者・ラマヌジャン無限の天才」(工作舎)
    出演■デヴ・パテル/ジェレミー・アイアンズ/デヴィカ・ビセ/トビー・ジョーンズ/スティーヴ
    ン・フライ
    2016年/イギリス/英語/カラー/スコープ/5.1ch/108分/字幕翻訳:松浦美奈
    公開情報■10/22(土)角川シネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、角川シネマ新宿他全国ロードショー

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    公式サイトはこちら

    【作品紹介】
    イギリス、アメリカ、世界がふたりの友情に涙した──
    国籍も身分も違う、正反対の天才が証明した「奇蹟」と「友情」
    歴史的数式証明の知られざる実話を描いた感動作。

    1914年、英国ケンブリッジ大学G.H.ハーディ教授のもとに、遠くインドから一通の手紙が届く。差出人はマドラス港の事務員ラマヌジャン。手紙には驚くべき“発見”が記されていた。生まれも境遇も全く違う二人の天才が出会い、世界を変える<奇蹟の数式>を証明した実話が映画化。独学で数学を学び、“アインシュタイン並みの天才”と称えられたラマヌジャンと、ケンブリッジの最高峰トリニティ・カレッジで共同研究に人生を懸けた、もうひとりの天才が発見した、人生で最も素晴らしいものとは?その答えが待つ胸を揺さぶる感動のラストに涙と喝采が止まらない──。
    2015 INFINITY COMMISSIONING AND DISTRIBUTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

  • 映画『聲の形』 ストレートに伝わらない心の声

    映画『聲の形』 ストレートに伝わらない心の声

    映画『聲の形』

    聲の形

    伝えたい“こえ”がある。聞きたい“こえ”がある。

    (36人のお亡くなりになった夢を持った人々のご冥福をお祈りします、私は京都アニメーションを応援しています。)

    声=言葉ほど伝わらないものはない

    加害者、被害者、傍観者、第三者、そして親友、友達ってなんだろう?どこからが友達でどこからが知り合い、他人?
    この夏、同じアニメ、青春映画、ハッピー・エンドと共通項があるのに、『君の名は。』が”陽”の作品だとすると、こちらは”陰”の作品。
    『君の名は。』の圧倒的な映像と音楽と共に怒涛のような展開があるが、こちらは静かだけど人の強さ・弱さ・繋がりが複雑に絡み合い流れていく。

    原作は「このマンガがすごい!2015」オトコ編第1位、第19回「手塚治虫文化賞」新生賞受賞!を受賞した大今良時の漫画「聲の形」、少年少女時代のいじめを描きつつ青春の1ページを綴って共感と感動を呼んだ作品。

    このベストセラーコミックを、『映画 けいおん!』(’11年)など、多くの作品を輩出している京都アニメーションにるアニメーション映画化!
    監督はTVアニメ「けいおん!」で監督を務めた京都アニメーションに所属する山田尚子。
    また、脚本も「けいおん!」でも山田監督とコンビを組んだ吉田玲子。
    主題歌には本作に共感したaikoの新曲「恋をしたのは」、個人的には雰囲気とは合ってなかったと思う。

    聲の形

    小学生の頃に、身障者の人を見ると異物を見たと思い自己防衛本能が働くのは子どもの素直な反応だと思う。
    そして、周りに煽られて調子に乗ってしまうのも、そんなクラスの仲間からハシゴを外されて仲間外れにされることも日常だと思う。
    そんな時に「自殺」なんていう心の闇を抱えることもあると思う。
    でもどこかで、自分の心の中に抱えている想いを伝えないと伝わらない。

    それは「聲」なのか?声に形ってあるのだろうか?
    いじめられるのが聴覚障害者ということで、何か特別なこと?と言う誤解を招きそうだけど、誰にでも少しは経験がある苦い青春の一部だと思う。

    今、この作品の登場人物と同性代の人も、かつて通過してきた青春時代(よりちょっと前)を思いを馳せる人も、色々な思いがこみ上げてくる作品。
    私は、後半は涙があふれて止まらなかった・・・

    聲の形

    私的『聲の形』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    子供の頃に「自分の異物」を排除する行為として”いじめ”と言う表現をとることが多いけど、それが引き金になって、クラスの中に波紋が広がっていく。
    どの子供も、私の中では「あるある」なので、主人公のクラスメートの女の子・植野は一番本音に近い部分にいて、面倒見の良い姉御的な立ち位置だけど、そこの距離感を間違えるといじめを主導する悪役になってしまう。
    でもどちらもあるし、第三者的に良い子でいようとする川井みきみたいな女の子も一番いるタイプな気がする。

    子供だって、大人だって、どこかで一歩を踏み出して本音を言える、そんなことが無い限り相手には通じない。
    それが、どんなに大変なことなのか?だから青春ってほろ苦く、人生って辛い長い道のり。

    見ていて涙が止まらなくなる、喪失感から自殺、そこで立ち止まる、留まる、そして再生していく姿に感動する。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    いじめってなんだろう、自殺ってなんだろう、根本的なに今も40年前(私の子供時代)も何も変わってない。
    昭和の後半も、この映画と同じような感じだった。

    この作品では主人公が一歩踏み出すことで、周りも少しずつ前に進んでいく。
    結局人生は、自分の意志と力で一歩ずつ進むしかない。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    この作品はヒロインの女の子が聴覚障害者でしかも可愛い、と言う特殊な状況だから起きるあり得ない話、という意見もネットとかで見かける。
    そこは、原作マンガそしてアニメーションと言う(しかも「けいおん!」の京都アニメーション)ことを考えると、そこは符号として女の子は可愛いのは当たり前、と言う前提が必要だろうと。
    そこに変なリアリティを持ってこなくても良いのでは?と。

    逆にこれを実写でリアルにやったらどうなるのか?とかも考えてしまうけど。
    やっぱり、このくらい重いテーマの青春映画はアニメでやるのも、少し距離を置くことができて見れるのではないのかな?と思う。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    この時期だから、どうしても『君の名は。』と比べたくなってしまう。
    こちらの映像もとっても良くて、日本のアニメーションの質の高さは改めて凄いと思う。

    映画はリアリティでも有ると同時に、虚像でもあるので、アニメと言うところで判りやすく虚像に入り込んで行ける、映画でありアニメでしか表現できないギリギリのところだと思う。
    だから成立しているところかな・・・ヒロインの妹の撮る写真が実写だとちょっとキツイね。

    聲の形

    ⑤ エンターテインメント性

    共感できる、逆に全く共感できない、でも誰でも通過してきた・している真っ最中の物語。
    美しい映像で表現しているところで成功していると思う。

    あっ、全然関係ないけど、大垣市が舞台なんだよね、なんとなく都会と田舎が混在していて、現在とちょっと昔のような雰囲気も有って、『君の名は。』とは違う良さが有った。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    アニメはトリックが使いやすい、男女の性別とかね。
    それと「人の顔を見ることが出来ない」表現をアニメなら簡単にできる。
    (今回の顔に×マークって、何かのアニメで見た記憶があるんだよなぁ~)

    映像としても演出としても、水の表現が素晴らしかった・・・それは涙で有ったり、川で有ったり。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    自分が身障者じゃないので、身障者側の気持ちが判らない。
    でも、人間って身体だけではなく、能力や心の部分にも傷があったりするから、結局、そこを突かれると痛いんじゃないかな?
    聴覚障害者というのも、アニメでヒロインが可愛いと言うのも、一つの符号としてとらえている。
    それ以外の部分に関しては、とっても本音の部分だと思う。

    あえて言うと、親子の仲が良すぎること、ここが一番気持ちが伝わりづらい部分だからね。
    子供が自殺未遂をしたら、こういう反応になるのかな?
    でも、キャラクターの心が近づいたり離れたり、原作が有るから・・・だけど、展開の面白さを感じたし、色んなことを思い起こさせてくれた。

    ⑧何度も見たくなるか?

    重いテーマだけど、ラストはハッピー・エンドで、色んなことを考えさせてくれる。
    作品のどこかに何か答えが有るのか?少し勇気をもらいたい時に見たい映画。

    映画『聲の形』のデータ

    聲の形

    原作■「聲の形」大今良時(講談社コミックス刊)
    監督■山田尚子
    脚本■吉田玲子
    キャラクターデザイン■西屋太志
    美術監督■篠原睦雄
    色彩設計■石田奈央美
    設定■秋竹斉一
    撮影監督■高尾一也
    音響監督■鶴岡陽太
    音楽■牛尾憲輔
    音楽制作■ポニーキャニオン
    アニメーション制作■京都アニメーション 
    製作■映画聲の形製作委員会
    配給■松竹
    声の出演■
    石田将也役:入野自由/西宮硝子役:早見沙織/西宮結絃役:悠木碧/永束友宏役:小野賢章/植野直花役:金子有希/佐原みよこ役:石川由依/川井みき役:潘めぐみ/真柴智役:豊永利行/石田将也(小学生)役:松岡茉優
    公開日■2016年9月17日

    公式サイトはこちら

    映画『聲の形』

    ガキ大将だった小学6年生の石田将也は、転校生の少女、西宮硝子へ無邪気な好奇心を持つ。
    「いい奴ぶってんじゃねーよ。」自分の想いを伝えられないふたりはすれ違い、分かり合えないまま、ある日硝子は転校してしまう。
    やがて五年の時を経て、別々の場所で高校生へと成長したふたり。
    あの日以来、伝えたい想いを内に抱えていた将也は硝子のもとを訪れる。
    「俺と西宮、友達になれるかな?」再会したふたりは、今まで距離を置いていた同級生たちに会いに行く。
    止まっていた時間が少しずつ動きだし、ふたりの世界は変わっていったように見えたが――。
    (c)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

  • 映画『怒り』  レイプとゲイのラブ・シーンだけではない!

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    怒り

    あなたは殺人犯ですか?

    映画『怒り』 Blu-ray豪華版 [渡辺謙]

    とにかく俳優たちの演技がイイ!

    大人のための大人の映画。
    今年は『シン・ゴジラ』が大人のための童心に帰る映画、『君の名は。』は全ての世代に送る青春映画なら、この作品は大人がじっくりと見れる作品。

    ただとっても暗い作品だから、これだけの俳優陣じゃないと単なる地味な作品になっちゃったかも。
    個人的には、女優陣全員が素晴らしかった!と思う。

    この作品は、完全な謎解き映画では無いんですが、一応、サスペンスなのでネタバレになるかもしれないので、後半は映画を観てから読んで下さいm(__)m

    怒り

    イントロダクション

    『悪人』(’10)の李相日監督×吉田修一原作のコンピが再びタッグを組んだ作品。
    『悪人』で日本アカデミー賞をはじめ、国内の映画賞を総ナメにしてから6年、音楽に坂本龍一を迎え、原作者・吉田修一が「物語の登場人物には、映画『オーシャンズ11』のようなオールスターキャストを配してほしい。」と言う希望にそって、日本を代表する7人の豪華俳優陣が集結!

    この配役も絶妙、もちろんその迫真の演技が素晴らしい。
    「愛した人は、殺人犯なのか?」
    “人を信じる”と言う人間の本質を問いかける感動作、予備知識はこのへんにして是非見て欲しい作品。

    これ以下はネタバレになるかもしれないので、映画を観てからお読みください~

    怒り

    私的『怒り』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    タイトルの「怒り」は何だったのか?を考える作品。
    犯人の怒りは見事なまでに意味がなく、殺人の動機すら存在しない。
    テーマとしては「人を信じる」ことを問われる、人を信じると裏切られ、人を疑うと亀裂が生まれ、人間は純粋に人を信じることはできないのだろうか?と。
    今の世の中は複雑になり過ぎて、人を簡単に信じることが出来ない世の中なのかもしれない、それに対する大いなる「怒り」がある。

    社会が複雑になり「根拠のない怒り」が人間不信を呼び、改めて人を信じることを思い出すことに、ラストの大きな感動が有った。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    『悪人』では一つの犯罪を、それぞれの立場の視点から見た場合に、その真実とはどこにあるのか?と言う物語だった。
    今の世の中に 「人を簡単に信じてしまうこと」の怖さ、「人を信じることができなかったこと」の不幸を問いかける、李相日監督と吉田修一原作に込められた強い時代性を感じる。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    とにかく全ての俳優たちが素晴らしかった。
    特に女優陣、ヒロインの宮崎あおい、広瀬すずが迫真の演技、ここまでするか?!と言う体当たりの演技。
    また出演時間は短いが、高畑充希、池脇千鶴の存在感も良かった。
    それにしても広瀬すず、彼女の天才性は監督によって磨かれる、もちろん他の主演作品での可愛らしい(だけの)役柄も良いけど、『海街Diary』とは別に意味で素晴らしい演技をしていた。
    今回は体当たりで、米兵にレイプされるシーンを演じている、もちろん広瀬すずの表情だけで表現している訳だが、それでも生々しいのは、彼女の処女性の裏返しを上手く利用している。
    そして宮崎あおい、彼女はあるゾーンに入ると物凄い演技をする、今回はで出しからラスト近くの一点を見つめるシーンまで狂気すら感じる演技だった。
    冒頭の風俗嬢の姿で、ノーメイク(用のメイク)でボーッとしているところから、この作品に対する入れ込みようが感じられる。

    最後に妻夫木聡、『悪人』で李相日監督にその才能を開花させられた俳優だが、この作品でも見事なツボを押さえていてゲイ役を見事に演じてみせていた(相手役の綾野剛のカメレオン俳優ぶりも良いけど)。
    妻夫木聡もエリートサラリーマンでゲイらしい嫌らしさを感じさせてくれたし、受けのゲイぶりの綾野剛も良かった。

    怒り

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    百聞は一見にしかず、と言うのは映画には重要な点だと思う。
    最後(近く)まで犯人の顔を映さずに(3人の顔を合成したものだと思うけど)公開写真だけが見せられる。
    映像から想像をふくらませる。

    そして3ヶ所の場所ごとの映像が美しく、俳優たちの演技を映えさせている。

    ⑤ エンターテインメント性

    大人のためのエンターテインメントであり、決して明るい話ではない。
    理不尽な怒りによる慟哭が描かれる。

    一方でそれを見事に演じた俳優たちと背景となる舞台の映像の美しさのコントラストが見事で、これは映画ならではエンターテインメント性と言える。
    久々に好きな絵(映像)の作品でもあった。

    にしても、前半の新宿?のゲイの世界を丹念に見せるところも生々しい、特に白い肌の綾野剛(これも隠れて逃げ回る犯人を予感される)に対して、黒光りしている妻夫木聡の肌がコントラストを醸し出してイヤラシイ、それも楽しいと取るか?個人的には苦手なんだけど。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    142分と言う長尺な作品でありながら、その長さを感じさせない。
    編集を最初から頭に入れた演出がなされている点、そしてあまりに役にハマった役者を選んでいるが、実は少しずつ今までの演技と外している。

    渡辺謙の抑えた演技、少女的な宮崎あおいにはスッピンでの演技、可愛らしさだけではなく悲しみ演じた広瀬すず、いつもの泣きの演技だけではなく見事なゲイを演じきった妻夫木聡。

    そして3ヶ所を同時進行で話を進める上で、安易に性風俗に走る女性、ゲイの実態描写、米軍基地と米兵による暴行問題などをバランス良く配置している。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    3つの同時進行の話を、場面(場所)が変わる時に似たようなアイテムを挿入して違和感なく繋いで見せる、と言った手法も入れている。
    3つの場所で進行する物語の繋ぎが上手く、しかもテンポが良くなっている。
    それがこの尺でも、ダレることなく緊迫感もありつつ見続けることができる。

    ⑧何度も見たくなるか?

    重く辛いテーマの作品、流石に繰り返し見たいか?と言われると。
    でも犯人の「怒り」は何だったのか?それは時代で変わるものかも?また観て確認してみたい。
    そして、なんと言っても演技を見るだけでも価値がある、それは何度でも。

    原作者としての吉田修一は、犯人は3人のうちの誰か?と言うサスペンスを求めていた。
    しかし映画の観客としては、ホクロの話から素性まで、実は3人が同一人物で映画のトリックで別の時間を同時進行として見せられているのかな?とも思わせる。
    いや、逆に一連の怒りと考えると、犯人の怒りの意味もひも解けるのかも?

    映画『怒り』のデータ

    怒り

    監督・脚本■李 相日
    原作■吉田修一(「怒り」中央公論新社刊)
    企画・プロデュース■川村元気
    撮影■笠松則通
    音楽■坂本龍一
    出演■渡辺謙/森山未來/松山ケンイチ/綾野剛/広瀬すず/宮崎あおい/妻夫木聡
    公開情報■2016年9月17日 全国東宝系にてロードショー

    映画『怒り』 [ 渡辺謙 ]

    【作品紹介】
    ある夏の暑い日に八王子で夫婦殺人事件が起こった。
    窓は閉め切られ、蒸し風呂状態の現場には、『怒』の血文字が残されていた。

    犯人は顔を整形し、全国に逃亡を続ける。その行方はいまだ知れず。
    事件から一年後。千葉と東京と沖縄に、素性の知れない3人の男が現れた。

    いったい誰が犯人なのか?
    あなたを信じたい。
    そう願う私に信じたくない結末が突きつけられる―――。
    (C)2016映画「怒り」製作委員会