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  • 広瀬すずをアイコンにした岩井俊二の傑作! 映画『ラストレター』

    広瀬すずをアイコンにした岩井俊二の傑作! 映画『ラストレター』

    映画『ラストレター』

    ラストレター

    君にまだずっと
     恋してるって言ったら
      信じますか?

    堂々のロリコン映画の傑作!

    21歳(1998年生まれ)の広瀬すずと18歳の森七菜(2001年生まれ)が高校生役に!

    本当の岩井俊二監督作品が帰ってきた!という興奮が冷めない、広瀬すずの高校生役が『海街diary』と被ります。
    岩井俊二監督のかつての傑作『Love Letter』と同様に一人二役で、現在と過去を絡めていきます。

    広瀬すずは、作品によって見え方が大きく変わる女優ですが、この作品では彼女の魅力が光ります。
    一方、森七菜の清々しさと広瀬すずとの立ち位置が、映像的にも絶妙で、流石!ロリコン監督岩井俊二の面目躍如といったところです。

    一方で、珍しい『花とアリス』以来の東宝作品、プロデュースは『悪人』『君の名は。』『怒り』『天気の子』の川村元気。
    当初の岩井俊二の持っていた企画を、川村元気Pが大幅に変更を依頼して、今作品に至ったとのこと・・・不倫に近い関係を匂わせた物語や衝撃的な結末も、川村元気の鬱(うつ)の部分がよく現れているような気がします。
    (『世界から猫が消えたなら』は余命宣告をされた若者が鬱になり妄想を見て、『億男』では億万長者になった妄想にとりつかれた鬱男の話でもあり・・・世界が崩壊しようが二人の愛が大切な『君の名は。』等、川村元気Pの作品群はどこか、ズレた若者像が存在します)

    だからこそ、映像で広瀬すずと森七菜の若さが光ると思います。
    そして、今まで岩井俊二監督作品を愛してきた人には、やっとこの立ち位置に戻ってきてくれた、そんな感想を抱く作品になっています。

    タイトルも似ている『Love Letter』との共通性

    『Love Letter』『スワロウテイル』『花とアリス』『リップヴァンウィンクルの花嫁』と数々の名作を世に送り出してきた映画監督・岩井俊二。
    初めて出身地である宮城(や地元仙台)を舞台に、手紙の行き違いをきっかけに始まったふたつの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の再生と成長を描く。

    初期の名作『Love Letter』と通じる世界観があります、その大きな要因は、まず、物語の前半と後半が大きく変わっていきます。
    今作品では、前半は松たか子が演じる裕里を中心に物語が進み、後半は福山雅治演じる鏡史郎、そして広瀬すずが演じる一人二役へと繋がっていきます。

    『Love Letter』は中山美穂が一人二役を演じていたのと同様に、今作品ではより複雑に、一人二役、二人一役と物語が紡がれて行きます。

    そして『Love Letter』とは直接関係はないものの、『Love Letter』の主人公二人、中山美穂と豊川悦司が、夫婦役(内縁)で出てきます。
    但し、『Love Letter』と『ラストレター』では直接、物語のつながりもなく、共通の登場人物や場所もありません。
    ただ、『Love Letter』が撮影された当時は、日本にもまだまだ成長し続け希望もある明るい時代ですが、『ラストレター』ではその後の四半世紀で大きく、挫折や絶望にあふれる時代になったのかもしれません。

    また面白いのは、少し話はズレますが、もう一人の日本の映画界の第一人者・是枝裕和監督との作品との関連性。
    前述の『海街diary』では広瀬すずを高校生役に瑞々しく、一方で縁や血の繋がりを演じさせることでそのキャラクターを輝かせていました。
    この作品では、男に翻弄されて人生を誤った女性と、一人のおじさんのオマージュの対象の少女という二面性に処女性と女性の欲深さを感じさせるところが面白い。

    合わせて、『そして父になる』のエリートビジネスマンでありながら、駄目な父親像とも被る、うだつの上がらない小説家役が、二枚目の福山雅治が演じることで、過去とのギャップという点で、上手く演出している。
    その点で、岩井俊二の中の『Love Letter』と『ラストレター』の時代の流れ、是枝裕和監督との現代の見え方という点で興味深い。

    他に『エヴァンゲリオン』の庵野秀明や神木隆之介が出演という東宝ならではの豪華キャスト。
    私には、岩井俊二監督の過去作品と比べても最も好きな作品となりました。

    映画『ラストレター』

  • エロさだけじゃない!傑作・官能映画トップ5+10(洋画編)

    エロさだけじゃない!傑作・官能映画トップ5+10(洋画編)

    LAST TANGO IN PARIS

    エロい映画?セクシーな映画?

    エロい、セクシーな映画と言えば、なにを想像するのでしょうか?

    アダルト・ビデオが存在するので、そこは今回は捨てておいて(笑)、日本なら日活ロマンポルノもありましたが・・・
    洋画では、私の鮮烈な記憶にあるのは、シルヴィア・クリステル主演の『エマニエル夫人』(1974)でしょうか。
    ただ、シルヴィア・クリステルの裸体の美しさやソフトコア・ポルノと呼ばれる、数々のセックス・シーンは話題になったものの、物語としては退屈なものでした。

    『エマニエル夫人』の監督のジュスト・ジャカンが撮った『O嬢の物語』(1975)もコリンヌ・クレリーの美しさとマゾ的な世界観を持ち込んだことで話題になったものの、こちらも女性を性的な支配するといったもので、映像意外に見どころは少ない。

    イタリア映画もエロチックな映画が数多く・・・その中でも”初体験映画”の代表作として『青い体験』(1973)がありました。
    主演のラウラ・アントネッリの可愛らしい妖艶さが良かったのと、少年が初体験を通して大人に成長していく過程を描き、その後の類似作品を世に多く出すきっかけとなった作品。

    映画『青い体験』『続・青い体験』 Blu-ray セット<無修正版>

    『ニュー・シネマ・パラダイス』の監督ジュゼッペ・トルナトーレの『マレーナ』(2000)も同系統の作品で、主演のモニカ・ベルッチの妖艶さが、子供の憧れと妄想、そして現実を交差させながら描いていた。
    第二次世界大戦の敗戦国イタリアの凄惨さと共に子供の希望が描かれ、好きな作品でもあります。

    映画『マレーナ』 [モニカ・ベルッチ]

    イタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督が、主演にマーロン・ブランドを据えて描いた『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972)は、パリのアパートの一室で情欲に身を任せる男女の姿を描いた問題作。
    ただただマーロン・ブランドとマリア・シュナイダーが絡み合っているシーンが続くが、内容的には哲学的な部分もあり、セックス・シーンが映画の屋台骨となっている。
    当時は過激なシーンとされていたが、現在ではそれほどでもない、日本ではアナルセックスが話題に、ヨーロッパでは聖書を否定する表現が話題に、このあたりは国民性でしょうか。

    映画『ラストタンゴ・イン・パリ』 オリジナル無修正版 [Blu-ray]

    ハリウッドでは、シャロン・ストーンの登場が衝撃的でした(笑)
    『氷の微笑』(1992年)での彼女の大胆演技とサスペンスのストーリーで大ヒット。
    シャロン・ストーンの完璧なスタイル(顔も美形という意味では完璧)が初めて見ることができた作品。
    また演出に関しても、ヒッチコック風で音楽も煽るようなもので、今見ても、シャロン・ストーンの美しさと共に楽しめる作品ではあります。
    それにしてもマイケル・ダグラスは『危険な情事』(グレン・クローズ)といい、『ディスクロージャー』(デミ・ムーア)、今作品と女優との絡みが多い。

    映画『氷の微笑』 [シャロン・ストーン/マイケル・ダグラス ]

    セクシー路線の映画を撮る監督の一人として、エイドリアン・ラインがいますが、話題になった『ナイン・ハーフ』『危険な情事』といった作品がありますが、個人的には(大好きな)ダイアン・レインが主婦役で、年下の美青年とのセックスに溺れていく『運命の女』(2002)が好きな作品です。
    子役から天才的な演技をしていた彼女だけど、意外にグラマーなボディの持ち主で、映画でも時々そのヌードを披露しています。
    この作品では、もう若くない主婦でありながら、一般世間では美しい部類に入る女性が不倫に走りる情感をダイアン・レインが見事に演じていますが、彼女のセクシーな肢体も一役買っています。

    映画『運命の女』 [ダイアン・レイン主演]

    中国映画界の巨匠チェン・カイコー監督が、初めてハリウッドで撮った英語作品『キリング・ミー・ソフトリー』(2001)は、衝撃的な出会いから結婚した相手に、不審感を持つが、夫との特殊なセックスに溺れていく女性を描いています。
    少女っぽい表情が印象的なヘザー・グラハムが大胆で美しいセックスシーンを演じています。

    映画『キリング・ミー・ソフトリー』 [ヘザー・グラハム]

    巨匠スタンリー・キューブリックが夫婦の愛を描き、遺作となったのが『アイズ ワイド シャット』(1999)です。
    当時、結婚していたトム・クルーズとニコール・キッドマンが出演したこと、そしてニコール・キッドマンのスラッとした肢体とセクシーさの表現は秀逸でした。
    詳しくは、映画『アイズ ワイド シャット』 夫婦の形とセックスについてを読んで頂けると嬉しいです。

    映画『アイズ ワイド シャット』 [ トム・クルーズ /ニコール・キッドマン]

    少女チックなセックスへの憧れ、キレイなセックスシーンをふんだんに盛り込んだ作品としては、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(2015)があります。
    大富豪だが特殊なセックスの趣味がある美男子と、女子大学生とのセックスの日々。
    ダコタ・ジョンソンのあどけない表情に反するような美しい肢体をいじめ尽くすところが見どころです。
    原作の人気と共にシリーズ化されていて、いずれも主演はダコタ・ジョンソンが演じています。

    映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』

    フランスの名匠フランソワ・オゾン監督が描いた名門の女子高の生徒がSNSを通じた売春に走る衝撃作が『17歳』(2013)でした。
    17歳の少女の複雑な心理とアンバランスなまでに美しい肢体を見せたマリーヌ・ヴァクトでした。
    当時20代前半でしたが、今は結婚出産を経て、シャネルなどのモデル中心で活躍しているみたいです。

    映画『17歳』 (R-18バージョン)

    ちなみに映画ではなく、テレビシリーズでアメリカでは大ヒットした『ゲーム・オブ・スローンズ』では大胆なセックスシーンが、描かれています。
    特にこの作品をきっかけに『世界一キライなあなたに』(2016)や『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』でも活躍しているエミリア・クラークが大胆なセックスシーンを演じています。
    これは中世的な世界観の中で、男と力が世界を支配する象徴として、男性が女性をセックスで支配するといった関係性を描いています。
    作品自体は、権謀術数で国を支配していく魔法と剣の世界の物語で、裏切り者が生き残るという、アンチ・ヒーロー的な部分が面白い作品でもあります。

    テレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」

    紹介した作品の中で、映画の物語の進行上の必要性や意図としてセックスシーンやエロい方向に進んでいくものが多いですが、その必然性と物語性のバランスと演出と奇抜性という意味では、以下の5作品が私の中ではベストな作品となります。

    それでは、早速・・・

  • 映画『恋におちたシェイクスピア』 エンターテインメントとしての面白さ!

    映画『恋におちたシェイクスピア』 エンターテインメントとしての面白さ!

    映画『恋におちたシェイクスピア』 SHAKESPEARE IN LOVE

    恋におちたシェイクスピア

    作品がシェイクスピアの劇中劇と融合する

    丹念に錬られた脚本が、この作品を見事なものにした。

    16世紀のイギリス、エリザベス朝を再現してみせる。
    シェイクスピア自身が実在の人物か?とも、言われた時期も有る。
    登場人物も、実在の人物、そして史実に残る行動も描かれている。
    と、同時に大いにその創造の羽を伸ばして、人間関係や出来事を作っていく。
    その真実と虚構を融合させている物語の見事さに目を見張る。

    劇中劇である「ロミオとジュリエット」は、元々、イタリアの説教くさい話がベースになっているとも。
    それを思い切って、シェイクスピア自身の恋と結びつけたアイディアの良さ!シェイクスピアの作った物語を知り尽くしたスタッフが、その世界を見事に(私のようなそれ程、詳しくない人間にも)分かり易 く作品の中に取り入れている、これこそ脚本の上手さ!

    この作品の最も素晴らしい点がここに有る。
    そうシェイクスピアとその恋人ヴァイオラの話すセリフの素晴らしさ!!
    シェイクスピア劇そのままの独特な言い回し、そして劇の中のセリフのような会話。

    「ロミオとジュリエット」のセリフと映画のセリフが見事に融合する。
    セリフが見事に言霊になる。
    そうロミオのセリフが、ジュリエットのセリフが、シェイクスピアとヴァイオラの恋の会話になる。
    劇中劇の「ロミオとジュリエット」がどうやって出来たか?その言葉一つ一つに込められたシェイクスピアの思い、それが伝わってくる。
    映画そのもの以上に、劇中劇『ロミオとジュリエット』に感動する、涙する。

    かつて映画『アマデウス』が、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの作品(音楽)を見事に魅せた作品になっていた。
    と同様に、この作品ではシェイクスピアの劇(ここでは「ロミオとジュリエット」)を見事に魅せてくれる、いや見方を教えてくれる。

    グウィネス・パルトロウが、アカデミー賞主演女優賞を見事に授賞したが、クィーンズ・イングリッシュを駆使して、表情豊かにヴァイオラを演じているのを見ると相応しいのが判る。
    脇役陣はもう素晴らしいとしか言えない。
    ジュディ・デンチは見事としか言いようがない存在感!ジェフリー・ラッシュの道化ぶりも楽しい。
    ラストのヴァイオラが「十二夜」にひも付くところは、ツボを押さえている!

    蛇足:この作品は公開最終週に劇場に行ったけど、観客が1割もいなかった(泣)お陰で一番観やすいところでゆったり静かに観れたけど。

    Reviewed in 07.1999

    恋におちたシェイクスピア
    Miramax/Photofest/ゲッティイメージズ

    「ロミオとジュリエット」から「十二夜」へ

    ワイド・テレビとDVDプレイヤーを購入したので、再度、DVDビデオでこの作品を再見。

    また観ると新しい発見が!
    それにしてもこの作品、本当に脚本が良くできている、つくづく感心させられる。

    そして脚本だけではなく、演出も素晴らしい。
    脚本の出来に良く応えて、見事な画面構成を見せてくれる。
    映画を娯楽と言うなら、この恋愛劇は見事な映画と言えるだろう。

    「ロミオとジュリエット」の物語が出来るまでを、“ウィル”・シェイクスピアとヴァイオラの恋と絡めて進行させていくところは見事。
    と同時に、映画の後半では徐々に「十二夜」の物語もタブって来る。
    このあたりは、う~ん、と感心させられる。※ ちなみにシェイクスピアは好きで本はかなり読んでいる

    それと(おそらく)「ロミオとジュリエット」の物語を知らなくても、何となくその全体像が見えてくる。
    と言うのは、劇中劇の「ロミオとジュリエット」は、シーンをトピックス的に取り上げているに過ぎないのだが、それまでの映画のストーリーとだぶっているので、その悲劇的な物語が伝わってくる。

    面白いのが、この脚本家たちがメイキングで語っているが、物語を書く仕事をする人間の共通の悩みを、天才シェイクスピアにも投影していること。
    シェイクスピアも、一つの物語を生むために悩み苦しみ、そして自らの体験で綴っていく。

    もう一つ、これは劇の舞台裏も描いている。
    劇の俳優達の姿、飲み屋で飲んだくれたり、台詞の練習をしたり、その苦労する姿も楽しめる。

    この入り乱れるような物語を、映像で絡めて一本のストーリーに見せるあたりは、監督ジョン・マッデンの力量がうかがえる。

    このDVDビデオには、映画からカット編集されたシーンが特典映像として付いている。
    その中で重要なのが、もう一つのラスト。
    ここでヴァイオラの乗った船が難波して、漂流した先が“アメリカ”だと台詞で語られる。
    それと、その前のシェイクスピアとヴァイオラが別れるシーンでは、このカットされた方は、別れを惜しみながら悲しみの中に別れていく。
    もちろんオリジナルはご存じのように、シェイクスピアとヴァイオラの会話がそのまま、「十二夜」の物語へと続いていく。
    実はこれ、オリジナルの方が数段優れているのだけど、ここにもこの映画の良さが伝わってくる。

    シェイクスピアの作った物語が、実は彼の人生の一部であることが判るからだ。
    改めてみると確かに面白いし、グウィネスの男優役も結構面白い。
    お勧めできる一本である。

    Reviewed in 05.2000

    2017年から1999年の公開時を振り返ると

    この作品はこの年のアカデミー賞で、実に13部門にノミネートされ、作品賞・主演女優賞(グウィネス・パルトロウ)を含む7部門で受賞した。
    この年は大激戦だったと思う、他に『エリザベス』『ライフ・イズ・ビューティフル』『プライベート・ライアン』『シン・レッド・ライン』と話題作がノミネートされている。

    今振り返ると『プライベート・ライアン』の評価が一番高いように思うし、私個人的にも、どの作品も好きだが、特に『プライベート・ライアン』が後世に残る名作と言えるかも。

    一方でも、映画のエンターテインメント性とアカデミー賞というお祭り、映画をたくさんの人にもらったことによる功労賞的な意味合いで考えると『恋におちたシェイクスピア』の作品賞受賞も個人的には納得の結果ではある。

    映画『恋におちたシェイクスピア』のデータ

    映画『恋におちたシェイクスピア』

    SHAKESPEARE IN LOVE 123分 1998年 アメリカ

    監督■ジョン・マッデン
    製作■デヴィッド・パーフィット/ドナ・ジグリオッティ/ハーヴェイ・ウェインスタイン/エドワード・ズウィック/マーク・ノーマン
    製作総指揮■ボブ・ウェインスタイン/ジュリー・ゴールドスタイン
    脚本■マーク・ノーマン/トム・ストッパード
    撮影■リチャード・グレートレックス
    美術■マーティン・チャイルズ/ジル・クォーティアー
    衣裳■サンディ・パウエル
    ヘア&メイク■リサ・ウェストコット
    編集■デヴィッド・ギャンブル
    音楽■スティーヴン・ウォーベック
    出演■グウィネス・パルトロウ/ジョセフ・ファインズ/ジェフリー・ラッシュ/コリン・ファース/ルパート・エヴェレット/ベン・アフレック/ジュディ・デンチ/トム・ウィルキンソン/サイモン・カロウ/ジム・カーター/マーチン・クラネス/イメルダ・スタントン

    アカデミー賞 1998年
    作品賞授賞
    主演女優賞授賞 グウィネス・パルトロウ
    助演男優賞ノミネート ジェフリー・ラッシュ
    助演女優賞授賞 ジュディ・デンチ
    監督賞ノミネート ジョン・マッデン
    脚本賞授賞 トム・ストッパード/マーク・ノーマン
    撮影賞ノミネート リチャード・グレートレックス 音楽賞(オリジナル・ミュージカル/コメディ)授賞 スティーヴン・ウォーベック
    美術賞授賞 マーティン・チャイルズ/ジル・クォーティアー
    衣裳デザイン賞授賞 サンディ・パウエル
    メイクアップ賞ノミネート ヴェロニカ・ブレブナー/リサ・ウェストコット
    音響賞ノミネート ドミニク・レスター/ロビン・オドノヒュー/ピーター・グロサップ
    編集賞ノミネート デヴィッド・ギャンブル

    ベルリン国際映画祭 1999年
    功労賞授賞 トム・ストッパード/マーク・ノーマン

    NY批評家協会賞 1998年
    脚本賞授賞 マーク・ノーマン/トム・ストッパード

    ゴールデン・グローブ 1998年
    作品賞(コメディ/ミュージカル)授賞
    女優賞(コメディ/ミュージカル) 授賞グウィネス・パルトロウ
    脚本賞授賞 トム・ストッパード/マーク・ノーマン

    <DATA>

     芝居熱が過熱する16世紀終わりのロンドンで、新進気鋭の劇作家シェイクスピア(ジョセフ・ファインズ)が恋におちた。
     一人の女性ヴァイオラ(グウィネス・パルトロウ)を愛して、愛して、愛して・・・その狂おしさから、あの華麗なる悲劇“ロミオとジュリエット”は生まれた。
     不朽のラブストーリー誕生の陰に存在した本物の恋。

     天才劇作家シェイクスピアが、今、歴史の壁をくぐり抜け、ひとりの“恋する男”になる。
     若き日のシェイクスピアに扮しているのは、「魅せられて」のジョセス・ファインズ。
     射すくめるような瞳で、シェイクスピアの才気と情熱を強烈に演じている。
     一方、運命の女性ヴァイオラには、「エマ」、「スライディング・ドア」で魅力全開のグウィネス・パルトロウ。

  • 映画『紅の豚』 飛ばねぇ~豚はただの豚だ、これこそ男のロマン!

    映画『紅の豚』 飛ばねぇ~豚はただの豚だ、これこそ男のロマン!

    映画『紅の豚』 Porco Rosso

    紅の豚
    © 1992 Studio Ghibli・NN

    カッコイイとは、こういうことさ。

    大人向けの宮崎アニメ

    宮崎駿アニメの一作品。
    彼の作品には数多くの名作が有る、いやいや出す作品全てが傑作と言えるくらい素晴らしい。
    でも個人的にはこの作品、彼の作品の中でもっとも好きな作品の一つだ。
    理由は簡単、(誤解を恐れずに言えば)男のための作品だから。

    『もののけ姫』も『風の谷のナウシカ』も素晴らしい。
    作品の出来と言う点では、そっちの方が上かもしれない。
    あと郷愁を誘うというか、心にしみる作品というと『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』などが有る。
    でも、男のロマンを描いた作品は、この作品と『ルパン三世 カリオストロの城』くらいのものである。

    宮崎アニメの醍醐味は、やっぱりその人間描写。
    宮崎アニメの登場人物は超人的な動きをする、人間らしい動きをデフォルメしているからだ。
    そのデフォルメの巧さは、宮崎アニメの神髄だろう。
    それを始めて見せられたのは「未来少年コナン」で有る。

    さてさて話がどんどんそれていくから、元に戻してと、宮崎アニメに特有の小道具や大道具、そう今回は飛行艇だけど、彼の近未来の乗り物や武器や生物?の描写も面白いけど、前時代的な乗り物の描写がとっても私は好きなのである。

    『ルパン三世 カリオストロの城』ならスバル380とか、ワルサーP38とかね。
    そんな飛行艇(おもちゃ?)に乗って動き回る男(ここでは豚だけど)観ている男ども(あっ!私)は憧れを胸に抱く。
    飛行機や船、そして車にはどこまでも自分の手で行きたいところに行けると言う自由さが有る。
    これが男の心、私の心をくすぐるのだ。

    でもその一方で、飛行艇を作るのが(戦時と言うことも有って)女性ばかりと言うのは、実はそんな男たちを自由に飛び回らせているのは、私たち女性よ!と言う主張も見えたりして!う~ん。

    男のロマンを思いっきり描きながらも、それを支える女性、それを愛する女性を描く、なんてロマンチックでカッコイイ映画なんだろう!

    それと今回のこの作品、声優さんの配役が素晴らしい。
    ポルコの声に森山周一郎の低い声が何とも、である。
    そしてマダム・ジーナに加藤登紀子を持ってきて、しかもしっかりと歌声まで聞かせてくれる。
    やっぱりこの映画は男のロマンだぁ~って。

    Reviewed in 06.2000

    2017年、宮崎駿監督は復活するのか?

    どうやら2019年に新作を作ることで話は進んでいるらしい。

    NHKスペシャル「終わらない人・宮崎駿」での放送で【企画書・覚書】を鈴木敏夫プロデューサーに渡して「お金を集めて」と言うところで終わっている。
    で、何を作るか?についていは明らかにされていないので、鈴木敏夫プロデューサーがヒットさせるタイミングを図って発表するんだろうなぁ~と思う。

    どちらにしても、今度は家族で楽しめる作品になるんだろうなぁ~と予想している。
    逆にいうと宮崎駿作品は、子供向け・子供と大人が一緒に楽しめる作品ということが本人も言っていることだけど、この『紅の豚』と『風立ちぬ』に関しては大人に向けた映画のような気がする(一応、ジブリの前の『ルバン三世 カリオストロの城』も大人向けだけど)。
    共通するのは、戦争で亡くなった人々が空に飛びだっていくシーンがある。

    映画『紅の豚』のデータ

    紅の豚 Blu-ray — Amazonで見る

    Porco Rosso 93分18秒19コマ 1992年 日本

    監督■宮崎駿
    原作■宮崎駿
    脚本■宮崎駿
    作画監督■賀川愛/川口俊夫
    美術■久村佳津
    色彩チーフ■保田道世
    音楽■久石譲
    主題歌■「さくらんぼの実る頃」 歌:加藤登紀子(J.B.Clement-A.Renard)
    挿入歌■「時には昔の話を」 作詞・作曲・歌:加藤登紀子
    音楽制作■徳間ジャパン
    録音演出■浅梨なおこ
    プロデューサー■鈴木俊夫
    制作■スタジオジブリ
    公開■1992.7.18
    作画枚数■58,443枚
    使用色数■476

    コピー■「カッコイイとは、こういうことさ。」 (糸井重里)

    キャスト(声)■ポルコ・ロッソ 森山周一郎/マダム・ジーナ 加藤登紀子/ピッコロおやじ 桂三枝/マンマユート・ボス 上條恒彦/フィオ・ ピッコロ 岡村明美 /ミスター・カーチス 大塚明夫/バアちゃん 関弘子

    <DATA>

     宮崎駿の短編漫画を映画化した長編アニメーション。
     ファシスト党の台頭する1920年代のイタリアを背景に、呪いを受けて“豚”となった中年パイロットの活躍を描く。
     森山周一郎がシブい声で扮する主人公・ポルコ・ロッソのダンディズムが光る秀作。
     飛行艇同士によるダイナミックな空中戦や、宮崎自身ファンである各機の細やかな設定も見どころ。 飛行艇を操る空賊が横行していた、第一次大戦後のイタリアはアドリア海。
     賞金稼ぎの飛行艇乗りであるポルコ・ロッソは、空賊たちには天敵の存在。
     自分の顔を魔法で豚に変えてしまったポルコを何とかやっつけたいと一計を案じた空賊たちは、アメリカからスゴ腕の飛行艇乗りを呼び寄せ、彼に一騎打ちを迫る。 <allcinema>

     第一次世界大戦を控えたイタリアのアドリア海。
     空賊と呼ばれる飛行艇をつかって船を襲う賊の一団、それを撃退するために金で雇われる賞金稼ぎ。
     賞金稼ぎの一人、ポルコはかつて人間だったものの今は豚になって、赤い飛行艇に乗ることから“紅の豚”と言われていた。
     ある日、空賊は、いつもポルコに邪魔をされることから、アメリカ人のカーチスに用心棒を頼む。
     ポルコの飛行艇が調子が悪いときに、カーチスに発見されて、ついには撃墜させられるポルコ。
     ミラノで飛行艇工場を営むピッコロおやじの元に行き、修理を依頼するが男手は無く、設計するのも孫のフィオという少女。
     しかしフィオの腕は確かで、ポルコの飛行艇は以前にも増して、素晴らしい操作性を示す。
     そしてその飛行艇を持って、再度、ポルコはカーチスと勝負することとなるが・・・

  • 映画『奇跡の海』 キリスト教とセックスの関係についての妄想的考察

    映画『奇跡の海』 キリスト教とセックスの関係についての妄想的考察

    映画『奇跡の海』 BREAKING THE WAVES

    奇跡の海

    宗教を無垢に信じる恐怖

    なんて怖い映画なのだろう~、それが第一印象。
    信仰の描き方がベルイマン的である。

    観ていてまず気付くのが、ハンディのキャメラで撮った映像。
    常に上下に揺れていたり、画面がピンボケしたりする。
    編集も面白い、主人公ベスから他の登場人物にキャメラが移動する時は、そのまま映像を繋ぐが、他の人からベスにキャメラが移動する時は、途中でカットしてスパッと切り替わる。

    全体として映像が寒々として冷たい印象がする。
    それは、そこに写されるスコットランドの風景なのかもしれない(個人的には、デビッド・リーンの『ライアンの娘』のアイルランドを想像した)。
    ベルイマンのスウェーデン等の北欧のそれに近い雰囲気が感じられる(監督さんがデンマークの人ですね...)。
    そう言ったインパクトの有る映像と共に、出だしは俗物的なドラマが展開されるかのように始まる。

    しかし、この作品のテーマは、ラストのシーンが示すように“神の啓示”に有る。
    そのテーマにぐいぐい引き込まれていく。

    怖いというのは、大きく2つの点に関して。
    プロテスタントの非常に厳格な宗派(実際の宗派は私には判らないが)の中で、その人間の取る行動の恐ろしさ。
    主人公のベスは、その中で純粋培養された人間。
    この町に住む人々の宗教観には神の不在を感じずにはいられない。
    そこには形骸化した、伝統しか感じられない。
    神は主人公ベスに啓示を与えるが、それはラストまで、狂気なのか啓示なのか、判らない。
    しかしあれが啓示だとすれば、彼女を生んだこの街の、この戒律や宗教観の肯定になるような気がしてならない。

    確かに主人公のベスは、その純粋さの上、教会の戒律に背き、破門され“(神を愛することは出来ても、神の)言葉(だけ)を愛することは出来ない!”と叫ぶが。
    ベスが娼婦になり、教会から破門になり精神病院に送られそうになるが、脱走して自分の街、自分の実家に戻るシーンが有る。
    しかし街の子供達は、ベスに石を投げつける。
    追いかけては来ては投げつける。
    キリストの教えに、隣人を愛せって有るのに...。

    この街の人々の宗教観が生み出した、伝統や習慣(のようなもの)には恐ろしいものを感じるが、これが絵空事ではないのは、(日本の)オウム(真理教)等を見れば判ること。
    宗教とはある種の洗脳も有るのだから...

    もう一点のこの映画の恐ろしさ...主人公ベス。
    彼女を純真な女性と感じるか?それても知能の低い人間と捉えるか?は有るが、彼女はこの街の宗教観の中で純粋培養されてきた女性。
    結婚によって、男性との初めての行為におよび、その喜びを知る。
    しかし、その後の行動と言ったら、私の目からは常軌を逸しているとしか言えないもの。
    キリスト教って人に与えることでしょ?と言いたくなるような場面が続く。
    愛するものから何でも奪い取ろうとする。
    また純粋上の事なのか?神の言葉を自分で作り上げて語り出す。
    愛をせがむ表情や自分の望みが受け入れられず叫び泣く姿は、私にはどうしても怖く写る。
    彼女の笑いの表情には、何かに取り憑かれたものを感じるのは私だけだろうか?

    主人公ベスの夫は、下半身不随になる怪我をするが、ベスの死と共に歩けるようになっている。
    しかもなんの前触れもなく、突然に!そして鐘が鳴る。
    全て神の“啓示”なのだろうか? セックスレスになった男性のセックスを感じたいがために、妻に他の男との関係を求める、極限の愛の形と言うより、神との関わりを描いた作品として考えさせる。

    でもベスと言う女性像には、嫌悪を感じずにはいられない。
    決して好きな作品ではないが、凄い作品では有る!

    Reviewed in 03.1999

    2017年のラース・フォン・トリアー

    この作品が私とラース・フォン・トリアー監督の出会い、と言っても初めて見た作品という話だけですが。
    ラース・フォン・トリアー監督の初期の傑作で、実はこれが一番判りやすい作品かもしれない。

    この作品はモチーフがイングマール・ベルイマン監督の『処女の泉』に近いが、主人公が死んだ後に聖人(神に祝福される)となるか、異教徒?に葬られるか、の違いがある。
    このあたりが、その後のラース・フォン・トリアー監督の独特な世界観へと突き進む予感だったのかもしれないが。

    ベルイマンが神と人間の関係を日常の中に描いたのに対して、ラース・フォン・トリアーは自由な発想で映像化することにチャレンジしている。
    「天国」「煉獄」「地獄」を描いた『アンチクライスト』や性に縛られる女性を描いた『ニンフォマニアック』など。

    カンヌ国際映画祭で色々な賞を受賞・ノミネートされていることを考えると、ヨーロッパ文化とキリスト教やその他の宗教との関係については複雑な関係で、人々の生活に影響を与えていることが判る。
    宗教観とベルイマン、ラース・フォン・トリアーを考察するのは楽しそうだが、キリスト教ではない私がキリスト教について知っている知識が少なすぎるかもしれない。

    主演のエミリー・ワトソンはこの作品で最高の演技をして見せて、逆にイメージがついてしまったところがある。
    現在も名脇役として活躍しているイギリスの名女優。

    そう言えば、主人公の夫役はステラン・スカルスガルドだったなぁ~
    スウェーデン出身のスカルスガルドはそれまでも脇役として少しずつハリウッド作品にも出ていたが、この作品で一気に有名になり、その後もラース・フォン・トリアー作品に出続けている。
    もちろん、ハリウッドの大作にも出続ける名脇役。

    映画『奇跡の海』のデータ

    奇跡の海【無修正 HDニューマスター版】(Blu-ray) — Amazonで見る

    BREAKING THE WAVES 158分 1996年 デンマーク
    監督■ラース・フォン・トリアー
    製作■ヴィベク・ウィンドレフ/ピーター・オルベク・イェンセン
    脚本■ラース・フォン・トリアー
    撮影■ロビー・ミューラー
    美術■カール・ユリウスン
    音楽■レイ・ウィリアムズ/マーク・ウォーリック
    編集■アナス・レフン
    衣装■マノン・ラスムッセン
    製作総指揮■ラース・ヨーンソン
    出演■エミリー・ワトソン/ステラン・スカースガード/カトリン・カートリッジ/ジャン=マルク・バール/ジョナサン・ハケット/エイドリアン・ローリンズ/ジョナサン・ハケット/サンドラ・ヴォー/ウド・キアー/ミケル・ゴープ/ローフ・ラガス/フィル・マッコール/サラ・グジョン

    1996年アカデミー賞
    主演女優賞ノミネート エミリー・ワトソン

    1996年カンヌ国際映画祭
    審査員特別賞授賞 ラース・フォン・トリアー

    1996年N.Y.批評家協会賞
    女優賞授賞 エミリー・ワトソン
    監督賞授賞 ラース・フォン・トリアー
    撮影賞授賞 ロビー・ミューラー

    1996年L.A.批評家協会賞
    ニュー・ジェネレーション賞授賞 エミリー・ワトソン

    <DATA>

     プロテスタント信仰が強い、70年代のスコットランドの村が舞台。
     ベスは、油田工場で働くヤンと結婚した。
     彼女は、仕事のために家に戻れない彼を愛するあまり、早く帰ってくるよう神に祈る。
     するとヤンは工場で事故にあい、願い通りに早く戻ってきた。
     だが回復しても寝たきりの上に、不能になっていた・・・。
     やがてヤンは、妻を愛する気持ちから他の男と寝るよう勧め、ベスもまた、夫を愛するがゆえに男たちを誘惑してゆく。

     映像派ラース・フォン・トリアー監督は、1996年カンヌ国際映画祭で大絶賛されグランプリを受賞、この作品がデビュー作となる、主人公ベスを演じたイギリス人女優、エミリー・ワトソンは、アカデミー賞主演女優賞にノミネート。
     全8章、2時間38分からなる、濃密な愛の物語。 <allcinema>

  • 映画『風と共に去りぬ』 ハリウッド映画史に残る不朽名作を語ってみる

    映画『風と共に去りぬ』 ハリウッド映画史に残る不朽名作を語ってみる

    映画『風と共に去りぬ』 GONE WITH THE WIND

    風と共に去りぬ

    雄大なスケールの中に燃え上がる炎の恋!映画史に輝く不朽の名作(リバイバル時)

    映画史上、燦然と輝く愛の金字塔!!
    炎のごとく燃え上がる世紀のロマンを雄大、華麗に描いた永遠・不朽の名作(リバイバル時)

    主人公スカーレットとヴィヴィアン・リーの奇跡の出会い

    一番最初にこの作品を観たときは、その良さが全く判らなかった!余りにも幼すぎて・・・
    その後、観たときに感動と共に大きなショックを受けた作品。
    アカデミー賞の監督賞を取ったフレミング監督と共に、映画の後半はジョージ・キューカー監督がメガホンをとった。

    作品としては、その影響もあり2部構成のような作りになっている。
    フレミングはあくまで大河ドラマとしてこの作品を撮り続け、キューカーは人間ドラマとして撮った。
    それでも、この作品が成功したのはプロデューサー・セルズニックの執念の現れだろう。

    当時、最新のカラー技術を用いて、映像的な美しさを演出したのはもちろん、セットも豪華に組まれた。
    俳優陣も、これ以上はないと言っても間違いないだろう。
    レット・バトラー役は、当時はクラーク・ゲイブル以外考えられなかったし、スカーレット・オハラ役はヴィヴィアン・リーを発見することが出来た。
    彼女にとっては、この作品に出たことによって一気にスターダムにのし上がった。
    これだけのスターが出演しながら、それぞれの配役がピッタリとマッチしている点も、今後はなしえないことだろう。

    ヴィヴィアン・リーの発見には逸話が残るぐらい有名。
    数多くの有名な女優がカメラテストを受けたが、恋人でありイギリスの名優ローレンス・オリビエと共にハリウッドを訪れた彼女に、白羽の矢が立ったのは有名な話。

    原作も、ミッチェル女史が南北戦争の話を伝え聞いたことを書き綴った部分と、彼女自身の体験を盛り込んだ話として書かれ、当時の大ベストセラーでもあった。
    ミッチェル女史自身が、かなりの美貌の持ち主であり資産家の娘だったことを考えると、スカーレットはミッチェル自身とも言える。

    この作品の素晴らしい点は、そのテーマにあった。
    確かに最高の俳優に恵まれ、湯水の如くお金を使い、原作にも恵まれた。
    やはりスカーレットの生き様を、南北戦争という大河ドラマをしっかり描きつつ、それに負けない力強さを持って描いていたことだ。
    それは上にも書いたとおり、いくつかの偶然(原作が既に持っていたスカーレット像と、それを演じきれるヴィヴィアン・リーという女優の存在)によってなされた。

    アトランタからタラに戻るシーンで、枯れ果てた木の傍らで力強く立ち上がるスカーレット、レッド・バトラーが去った後でもくじけない、スカーレットの精神的な強さ。
    そこには、アメリカン・スピリットと言う言葉では片づけられない、人間として逞しさ勇気を感じることが出来た。
    このテーマを見事に描き切り、傑作として映画史を語る上で、忘れることの出来ない作品となった。

    Reviewed in 11.1998

    風と共に去りぬ

    人間のドラマの全てが詰まった作品

    久しぶりにこの作品を観た。
    前回観たのは5,6年前でビデオ、映画館で観るのは十数年ぶり。
    今回の上映は、60年前のテクニカラーを再現する事を一番に考え処理したもの。
    今年でちょうど60周年記念と言うこと。

    映像自体は明らかにビデオに比べると美しく、映画館で聞く音楽はまた一段と良い。
    但し、今回の上映館、有楽町スバル座は音響設備が余り良くなかったのが残念。

    それはさておき、何度目か(十数度目か?)の鑑賞になるこの作品。
    何度観ても素晴らしさを実感せずにはいられない作品。
    今回はその素晴らしい点を色々発見する事も出来た。

    まずその最初がドラマとしての素晴らしさ。
    とにかく物語が面白い、それは原作者マーガレット・ミッチェルの功績で有る事は間違いない。
    四人の主人公(レット、スカーレット、アシュレーにメラニー)が魅力的であること。
    理想の男性像としてはレットであり、理想の女性像としてはメラニーなのだろう。
    が、優柔不断さと優しさが混在するアシュレーもまた一つの男性像だし、気が強くわがままで利己的なスカーレットもまた一つの女性像の憧れの姿だと思える。
    その四人の主人公が、アメリカ最大の内乱、南北戦争を舞台にして波瀾万丈の人生を送る。
    大河ドラマと人間ドラマが混在する。
    色々な愛の形を描きながらも、家族の絆や友情、そして奴隷制度や南部の文化も描いている。

    そしてこの劇的なドラマ性を持った小説を、見事に映像化したことの素晴らしさ。
    それは破綻のない演出もしかり、お金をふんだんに掛けたセットもしかり、で有る。

    ここに描かれるテーマは人間の本当の強さとは何か?人間が生き残るには何が必要か?と言うことだと思う。
    だからこそ、今でも人々の心を強く打つのだろう。

    この映画にはおそらく、これからも起こり得ない偶然がいくつも重なって、奇跡が生まれたと言った方が良いのかもしれない。
    それは60年前と言う映画の一番良い時代、ハリウッドの映画製作のシステムが完成した時期で有り、未だ初期の映画作りの純粋さを残していた時期でも有った。
    そして意欲的でバイタリティあふれるプロデューサー、デビッド・O・セルズニックの手元に、この小説が渡ったこと。
    更にクラーク・ゲイブルとヴィヴィアン・リーと言う二人の俳優が存在したこと。
    最後の偶然は、この時期、本格的にカラー映画が出てきたこと(この映画ができたのは第二次世界大戦前である!)。

    小学生の頃、この作品を観たときに、レットの男らしさを理解できず、スカーレットの魅力も理解できなかった。
    ただ壮大なドラマだけに感心したに過ぎなかった。
    それが少しずつ時間が経つにつれて、男女の愛に感動するようになった。

    そして今回は親子の愛情、それに涙する事が出来る年齢になった。
    オハラ親子の愛、レットの娘への溺愛、家族の大切さ...それらもこの作品、開拓精神旺盛なアメリカ人の心のより処、それが家族であることが、今、 この年齢になって理解できる。

    良い映画を何度も観ることの素晴らしさ!それができることが映画の素晴らしさである。
    そしてそう言う映画に出会えることこそが、(一つの)人生の喜びでもある。

    今回、60年前のテクニカラーの美しさ、音楽にのって冒頭のタイトルが出るシーンから心揺さぶられる。
    そして、スカーレットは言う「明日は明日の風が吹く」と。
    その姿こそが、人を強くして生きる道標をとなることを、人々の心に植え付けていく...永遠に!

    Reviewed in 11.1999

  • 映画『カサブランカ』 ボギーを生かすためのバーグマンの美しさ

    映画『カサブランカ』 ボギーを生かすためのバーグマンの美しさ

    映画『カサブランカ』 CASABLANCA

    カサブランカ

    アカデミー賞他世界映画賞に輝く 映画史上最高の《愛》の名篇! あなたの胸に すばらしい感動を捧げます
    激動のカサブランカに 激しくも哀しく燃え上がる 恋の炎–(リバイバル時)

    プロパカンダと甘いメロドラマ

    恋愛映画の良い要素を詰め込むだけ詰め込んで作った、甘い甘いメロドラマ。
    この作品がアカデミー作品賞を取るとは(゚o゜;)ウオオッ(ホント、この作品の演出はなってない・・・)
    とはいえ、この作品にどっぷりと浸かって楽しむのも一つの手。

    話は良くできているし、なんと言ってもボギーとバーグマンの主演の2人の恋愛劇は、観ていて感動もの。
    ボギーは他の作品でも格好良いが、この作品での徹底した二枚目ぶりには脱帽もの。
    またバーグマンは、この作品以外に数々の名演の有る本当の名女優だが、この作品での美しさは絶品!脇役のレインズも良い味を出している。

    対独ムードを盛り上げるプロパガンダの部分も盛り込んで、話を盛り上げているのは少しやり過ぎか?
    それでも、あくまでロマンチックな映像とセリフ、そして音楽と恋愛気分にどっぷり酔いたい時は良いかも・・・。

    Reviewed in 01.1999

    結局のところボギーがカッコイイ

    DVDビデオで、久々にこの名作を鑑賞。
    やはりこの映画、どう見ても国策映画のように感じてしまう。
    と言うのは、この映画のできる少し前、2年前まではアメリカではドイツとの参戦に関して、中立を保つべきか?戦うべきか?で国論が二分されていた。
    結局、この映画が製作された時には、アメリカは参戦する訳だが、そういった時代背景を反映してか、反ナチ色があからさまである。
    仏領モロッコは、フランスの植民地で有り、本来ならフランスも帝国主義の名の下にモロッコを略奪した事も史実である。

    それが第二次世界大戦からフランスの首都パリが、ナチスドイツ軍に占領されると、モロッコもあたかもドイツ領のごとくである。
    フランス人の警視総監ルノーが、ヴィシー産のミネラルウォーターをゴミ箱に捨てるシーンは、粋と感じるか、はたまたやりすぎると感じる か・・・少し複雑なところでもある。

    しかしこの映画をそういった視点で、今、観ることは少し不公平かもしれない。
    この作品は歴史的な映画と言うよりも、はやりラヴ・ロマンスの名品として捉えるのが正しいだろう。

    私がこの映画を愛して止まないのは、男女の心情そして男女の信条が見事に描かれているからだ。
    特にパリでのリック(ボギー)とイルザ(バーグマン)の心の揺れ、心情と信条の葛藤が見事なまでに表現されている。

    マイケル・カーティス監督の演出の上手さは、ボギーに有ると思う。
    きっとバーグマンは、もっと美しく撮れたと思う。
    しかしボギーは、これ以上ないくらい見事なキャラクターになっている。
    ボギーの持つ独特な男らしさを逆に利用して男の弱さを時折見せる、それが効果的なのである。
    だからこそ、リックは映画史上最も男らしい主人公と言えるのかもしれない。

    キザなまでな徹底したセリフ、しかしボギーとバーグマンの二人に掛かると、それが心地よいメロディーに聞こえる。

    今回見たDVDビデオには、ローレン・バコールをナレーションにした30分以上ものドキュメンタリーが挿入されている。
    この作品のできた背景や関係者の貴重な証言も聞くことができるもの。
    画像も美しくリニューアルしているのでお薦めの逸品。

    ※ 最新のBlu-ray版も豪華特典あり

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    Reviewed in 06.2000

    古典として

    また戦後のナチの残党の話として、イングリッド・バーグマンとクロード・レインズが共演しているヒッチコック監督の『汚名』も似たような味わいがある。
    『汚名』はイングリッド・バーグマンを引き立たせるために作られた作品ではあるが。

    2017年日本公開作品にブラッド・ピットとマリオン・コティヤールの競演で『マリアンヌ』(ロバート・ゼメキス監督)があるが、1942年のモロッコを舞台にした諜報員の男女の話で、非常にモチーフが似ている。
    美男美女の悲恋ということで、古きハリウッド映画の雰囲気がよく出ている。

    映画『カサブランカ』のデータ

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    CASABLANCA 103分 1942年 アメリカ
    監督■マイケル・カーティス
    製作■ハル・B・ウォリス
    原作■マーレイ・バーネット/ジョアン・アリソン
    脚本■ジュリアス・J・エプスタイン/フィリップ・G・エプスタイン/ハワード・コッチ
    撮影■アーサー・エディソン
    音楽■マックス・スタイナー
    出演■ハンフリー・ボガート/イングリッド・バーグマン/ポール・ヘンリード/クロード・レインズ/コンラート・ファイト/ピーター・ローレ/シドニー・グリーンストリート/ドゥーリイ・ウィルソン

    ◆1943年アカデミー賞
    作品賞授賞
    主演男優賞ノミネート ハンフリー・ボガート
    助演男優賞ノミネート クロード・レインズ
    監督賞授賞 マイケル・カーティス
    脚色賞授賞 ハワード・コッチ/フィリップ・G・エプスタイン/ジュリアス・J・エプスタイン
    撮影賞(白黒)ノミネート アーサー・エディソン
    作曲賞ノミネート マックス・スタイナー
    劇・喜劇映画音楽賞ノミネート マックス・スタイナー

    <DATA>

     戦火近づく’40年の仏領モロッコ、カサブランカは、自由を求めて渡米しようとする人々で溢れていた。
     ナイトクラブを経営するリック(ハンフリー・ボガート)の元へ、ナチの手を逃れてここまでやって来た抵抗運動の指導者ラズロ(ポール・ヘンリード)が現れる。
     だがその人物の妻は、かつてパリでリックと恋に落ちたイルザ(イングリッド・バーグマン)だった・・・。

     ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、そしてカサブランカの警察署長に扮しイイ味を醸し出すクロード・レインズ。
     激動の時代、別れた恋人、再燃する愛--これでもかと注ぎ込まれたロマンティックな要素。
     そして、『君の瞳に乾杯』、『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』など心くすぐるキーワード。
     言わずと知れたアメリカ映画の古典的作品で、アカデミーの作品・監督・脚色賞を受賞。
     だが、リアルタイムで観ていない限り、この作品に“よくできたメロドラマ”という以上の価値を見出す事は困難である。 <allcinema>

  • 映画『汚名』 イングリッド・バーグマンの美しさが罪

    映画『汚名』 イングリッド・バーグマンの美しさが罪

    映画『汚名』 NOTORIOUS

    汚名

    イングリッド・バーグマンの美しさに酔う

    ヒッチコック作品か?それともイングリッド・バーグマンの作品か?それ程、この作品のバーグマンは美しい。
    とは言え、そのバーグマンの美しさを引き出したのは、間違いなくヒッチコックである。

    サスペンスとしての見せ方は、やはり一級。
    作品の細かい背景を全て省き、シンプルな構成に、しかしその中に複雑に張り巡らさせた伏線が、観客をいつの間にか、登場人物に同化させる作用となっている。

    アリシア(イングリッド・バーグマン)とデブリン(ケイリー・グランド)、二人の愛情が、セバスチャン(クロード・レインズ)の嫉妬を生み、それが物語のあらゆる伏線に。
    ブラジルでのセバスチャンと仲間たちの会話で、仲間の一人のミスを責め、暗殺する相談をする。
    この事がセバスチャン自身のミスの隠蔽へとつながる。
    セバスチャンと仲間達の強い絆と共に、そこにある真実は相互不信に他ならない。
    またアリシアが、アメリカでアル中であったことが、毒を飲まされた彼女を見たデブリンに誤解を生ませる。

    相変わらずカット割りの上手さで、見せ方が良い。
    それ以上にバーグマンの美しさが光る、酔いしれる。
    バーグマンは背が高いが、彼女の一番美しいアングルは、上向き加減に目を閉じてキスをする表情。
    これを背の高いケイリー・グラントと組み合わせて、存分に魅せてくれる。

    逆に背の低いセバスチャン役のクロード・レインズの立場が強調されてくる。
    そう彼のコンプレックス、一つは背が低いこと。
    もう一つはマザコンで有ること、この事が大きな伏線になる。
    彼はアリシアのような美しく、大きな女性にモテるはずが無い、受け入れられるはずが無いと考えてい た。
    だからこそ、アリシアが近づいてきた時に、それを有頂天になって何の疑いもなく受け入れてしまっている。
    これは、ヒッチコック自身の、母親に対する愛情の深さと、自分の体型に対するコンプレックスの裏返しだろう。

    また重要なのは、アリシアの中の二つの観念。
    一つは愛国心という道徳観と、もう一つは愛情というもの。
    愛国心のため、またデブリンに対する愛情のために、アリシアは敵のスパイであるセバスチャンと結婚までしてしまう。
    この板挟み、同時にそれはデブリンにも言えること(好きな女性を、他人の妻に送り込む)で、この事が、観客の心情に迷 いを生じさせ同情を生む。
    完璧なまでに作り込まれた脚本(ベン・ヘクト)と、ヒッチコックの見事な演出、そしてバーグマン、グラント、レインズの見事な演技が醸し出す、サスペンスとラブ・ロマンス。

    ヒッチコック作品の中でも秀逸な一本で有る。

    Reviewed in 09.1999 

    映画『汚名』のデータ

    汚名 DVD FRT-036 — Amazonで見る

    NOTORIOUS 101分 1946年 アメリカ

    監督■アルフレッド・ヒッチコック
    製作■アルフレッド・ヒッチコック
    共同製作■バーバラ・ケオン
    助監督■ウィリアム・ドーフマン
    原案■アルフレッド・ヒッチコック
    脚本■ベン・ヘクト
    撮影■テッド・テツラフ
    特殊効果■ヴァーレン・L・ウォーカー/ポール・イーグラー
    美術■アルバート・S・ダゴスティーノ/キャロル・クラーク/ダレル・シルヴェラ/クロード・カーペンター
    音楽■ロイ・ウェッブ
    衣装■イディス・ヘツド
    録音■ジョン・トリビー/クレム・ポートマン
    編集■テロン・ウォース
    製作会社■RKO
    備考■白黒
    日本公開■1948年、1968年、1983年
    出演■ケイリー・グラント/イングリッド・バーグマン/クロード・レインズ/ルイス・カルハーン/レオポルディン・コンスタンティン/ラインホルト・シュンツェル/マローニ・オルセン/イヴァン・トリーソルト/アレクシス・ミノティス/エバーハルト・クルンシュミット/フェイ・ベイカー

    アカデミー賞 1946年
    助演男優賞ノミネート クロード・レインズ
    脚本賞ノミネート ベン・ヘクト

    <DATA>

     父親にドイツのスパイ容疑がかけられ、売国奴の娘と呼ばれたアリシア(イングリッド・バーグマン)にFBIの捜査官デブリン(ケイリー・グラント)が接近してきた。
     ナチの残党と思しき人物セバスチャン(クロード・レインズ)が父の友人であったことから、アリシアにその内情を探って欲しいという依頼だった。
     舞台は、マイアミからリオ・デ・ジャネイロに移り、アリシアはそこでセバスチャンの求婚に応じるが、デブリンとの連絡も引き続き行われていた。
     やがて、彼女は屋敷の酒蔵で組織の秘密を突き止めるが、その事に気づいたセバスチャンは・・・。

     ヒッチコック作品の中では、スリラーの要素よりもメロドラマの色を濃くした作品で、バーグマンとグラントが見せた熱烈なラブ・シーンは公開当時かなりの話題となった。
     登場人物の設定と行動について、いささか説明不足の感もあり、ドラマの中にすんなり入って行けるとは言い難いが、さすが、個々のサスペンス醸造は見事。 <allcinema>

  • 映画『美女と野獣』 美しくなったエマ・ワトソンを楽しむ恋愛映画の王道!

    映画『美女と野獣』 美しくなったエマ・ワトソンを楽しむ恋愛映画の王道!

    映画『美女と野獣』 BEAUTY AND THE BEAST

    美女と野獣

    彼は探していた。かけがえのない自分を。
    彼女は信じていた。かけがえのない自分を。

    大ヒット上映中!

    エマ・ワトソンが美しい、純愛映画!

    フランスの民話から1991年にディズニーがアニメ化して大ヒットした名作を実写化。
    アニメ版と同様にミュージカルで、冒頭からエマ・ワトソンが歌いまくる!

    恋愛映画としても完成度が高く、カップルからファミリーまで楽しめる作品。
    デート映画としては最強かもしれない!

    フランスを舞台にした物語で、古くは詩人で監督のジャン・コクトーの手でも映画化、近年でも「なぜ、王子は野獣にされたのか?」にスポットを当てて映画化されている。

    今回は1991年のディズニー・アニメを忠実に実写化、物語も音楽も、しかもカメラワーク、衣裳までもかなり忠実に再現している。
    アニメが大ヒットしただけに、そのアニメ版のファンを失望させない作りにしたという。

    では、なぜ実写化したのか?そして実写版の方がなぜ面白いのか?
    もちろん、ストーリーや音楽や素晴らしい映像を楽しむだけでも十分な価値がある。

    エマ・ワトソンのベルに意味がある

    エマ・ワトソンといえば『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニー。
    その可愛らしさがずば抜けていたし、10歳から20歳までの10年間をハーマイオニーとして演じていたが、子役にありがちなイメージが変わってしまうことなく、美しい女性に成長していった。

    そこで今回のベル役。
    ディズニー・アニメを基にした物語としては、とても現代的な女性として描かれていて、結婚もしないで本ばかり読んで村の外の大きな世界に夢見る女性として描かれる。

    そんな現代的な女性が純愛として描かれる物語のヒロインとして、変化していく姿、それは夢見る少女から恋愛する女性への変化を、実際の女優が演じることで非常に豊かさや表現力で見せてくれている。

    アニメは非現実な世界を受け入れやすいバックボーンを作るのに適しているが、今回は恋愛物語という部分に焦点を当てて、野獣や映像のVFXを駆使しすることで実写としての違和感をなくし、ベルの心の変化を見せる映画として変わっている。

    簡単に言えば、ベル=エマ・ワトソンを楽しむ映画となっている!

    美女と野獣

    私的『美女と野獣』

    テーマが有るか?共感できるか?

    正統派の恋愛映画としてミュージカル化された1991年のアニメ版そのままに、恋愛の本質は相手の人間性を認めることにあることを感じさせてくれる。
    ガストンのような判りやすい、体格がよくハンサムで力が強い反面教師的な役を出し、それに全く興味を示さないベルが、知識があり繊細さを持ち合わせる野獣に惹かれていく。

    そして真実の愛とは自由!お互いを束縛せずに尊重するところにある、という点に関しては、一貫してあるテーマである。

    今回、保守的なディズニーが、白人と黒人といった人種間の恋愛、ゲイのカップルを登場させたことも、愛の色々な形を肯定的に描いていて、作品の良さという以外にもエポックメイキング的な作品と思う。

    作り手の強い意思を感じるか?

    ディズニーの勇気が凄い!アニメ版でこれだけ不朽の名作として確立した作品を、あえて全く同じストーリーで実写化したこと、そしてアニメ版以上の内容にしてきたこと。

    それはキャスティングにあると思う、かつてディズニーが『メリー・ポピンズ』を映画化する時にジュリー・アンドリュースがいなかったら実現しなかったと思う。

    今回は、醜いものを愛する美しい女性、そして現代的でいながらクラシックな美女、この条件を備えた女優がエマ・ワトソンだったということだろう。

    俳優の意思や演技力が伝わるか?

    この作品を冒頭から見た時に、しばらくはアニメ版と何も変わらなかったので、なぜあえて実写化したのか?判らなかった、アニメ版同様の楽しいミュージカルという趣だった。
    それが中盤からガストンのナルシシズムや虚栄心、野獣とベルの心の交流が表現されるようになってから一気に動き出した感じ。

    俳優がドラマを演じてる、という実感が湧いてくる。
    それまでCGIを駆使したような映画だったのが、エマ・ワトソンを中心に俳優が表情で演じる映画となっていった。
    そしてラストシーン近くで、野獣が王子に戻った後に、ベルが王子の瞳を見て同じ愛した人であることを確認した時のエマ・ワトソンの表情が素敵だった!

    面白いのは、CGで見事に描かれた時計のコグスワースとロウソク立てのルミエール、イアン・マッケランとユアン・マクレガーが、セリフだけにもかかわらず表情豊か?に演じていたこと。

    今回、ハリウッドそしてディズニー製作の映画でフランスが舞台にもかかわらず、ほぼメインのキャストは(ベルの父親役のケヴィン・クライン以外)イギリスの俳優ばかりというところも面白い。

    もちろんエマ・ワトソンもイギリス出身の女優であり、ハリウッドのジュリア・ロバーツやキャメロン・ディアスとはタイプが異なり、フランスを舞台とした本作品ではエマ・ワトソンの品があって茶目っ気も感じさせる、可愛らしい美しさが合っているのかもしれない。
    もちろん、アメリカ本国以外・特に日本でのヒットの要因は、エマ・ワトソンのアメリカナイズされていないところが良かったと思っている。

    映画らしい楽しさが備わっているか?

    VFXがここまでできるのか!と。
    既にピクサー、マーベル・コミック、ルーカスフィルムといった映像の最先端技術を持っているディズニー、逆に言うと前半はアニメ版をそのままCGI化したような映像だった。

    これだけ絢爛豪華で、しかもミュージカルとして成立している作品、是非、できるだけ大きな画面、良い音響で見て欲しい。
    私は、TCXとDOLBY ATMOSで見ることができた。

    今回、3D版もあるが、通常の2D版も映像が素晴らしく奥行きを感じさせるものだった。

    エンターテインメント性

    ミュージカルは音楽である!という私の勝手な持論(笑)
    やっぱり『美女と野獣』の音楽はどれとっても素晴らしい!ディズニーの歴代のミュージカルを見てきても、音楽の素晴らしい映画がヒットしてきている。

    『アナと雪の女王』でも映像と音楽の一体化がヒットへとつながっているが、野獣とベルの舞踏会のシーンは、ディズニー映画史上でも最も美しいシーンだと思う。

    今回は主題歌をアリアナ・グランデ&ジョン・レジェンド(『ラ・ラ・ランド』にも出演)が歌っている。
    1991年のセリーヌ・ディオン&ピーボ・ブライソンにも勝るとも劣らない歌声を披露している。

    演出が素晴らしいか?

    今回は意識して、アニメ版と同じカメラワークを駆使したという。
    一方で、ベル=エマ・ワトソンの表情のとらえ方がとても良かった。

    やっぱりまだCGでは、人間表情は表現できないところもあると思う、特に歌いながらの表情は独特なものがあると思う。

    脚本が素晴らしいか?

    1991年とほぼ同じである。
    ベルが少し現代的になった気もする、よりいっそう自分らしさを持った知的な女性になっていると思う。

    それにしても、オープニングからしばらくは、まるで『サウンド・オブ・ミュージック』を見ているようだった。
    ちょっと順番は違うけど、変わった女性のベルのことを村人たちが歌い上げ、ベルが見晴らしの良い丘で歌い上げるシーンは『サウンド・オブ・ミュージック』のオーストリアの山々と教会のシーンに酷似していた。

    何度も見たくなるか?

    誰もがハーマイオニーが主役になった映画と感じたはず(笑)
    エマ・ワトソンが美しく可愛い!それだけでも価値があると思う。

    オリジナル版(字幕スーパー)と日本語吹替版は、私はオリジナル版を見た。
    オリジナルのエマ・ワトソンやダン・スティーヴンスやルーク・エヴァンスまで、どれも歌は素晴らしかった。
    上にも書いたが、ユアン・マクレガーも流石といったところ。

    日本語版は劇団四季版をベースにしたと聞いているが、映像を見るとこちらも魅力的な歌声。
    機会があれば、日本語版も見てみたい。

    これぞハッピー・エンド!という恋愛物語、そして素晴らしい歌と映像に彩られている作品。
    ディズニー作品が繰り返し見られ愛されているが、個人的にはディズニー史上でもトップクラスの作品だと思う。

    私が寄稿したデート映画としての『美女と野獣』の記事は下のリンクでどうぞ!

    映画『美女と野獣』 2017年にオススメする最強のデート映画!

    映画『美女と野獣』のデータ

    美女と野獣

    上映時間■130分
    製作国■アメリカ
    公開情報■劇場公開(ディズニー)
    初公開年月■2017/04/21

    監督■ビル・コンドン
    製作■デビッド・ホバーマン, p.g.a AND トッド・リーバーマン, p.g.a
    脚本■ステファン・チボスキー AND エヴァン・スピリオトプロス
    製作総指揮■ジェフリー・シルバー/トーマス・シューマッハ/ドン・ハーン
    撮影■トビアス・シュリッスラー, ASC
    プロダクション・デザイン■サラ・グリーンウッド
    編集■バージニア・カッツ, ACE
    衣裳■ジャクリーヌ・デュラン
    スコア■アラン・メンケン
    歌曲・作曲■アラン・メンケン
    作詞■ハワード・アシュマンAND ティム・ライス
    音楽プロデューサー■マット・サリヴァン
    スコアアレンジ■クリストファー・ベンステッド
    歌曲アレンジ and 指揮■マイケル・コザリン

    出演■エマ・ワトソン(ベル)/ダン・スティーヴンス(野獣)/ルーク・エヴァンス(ガストン)/ケヴィン・クライン(モーリス)/ジョシュ・ギャッド(ル・フウ)/ユアン・マクレガー(ルミエール)/スタンリー・トゥッチ(カデンツァ)/ネイサン・マック(チップ)/ググ・ンバータ=ロー(プリュメット)/オードラ・マクドナルド(マダム・ド・ガルドローブ)/イアン・マッケラン(コグスワース)/エマ・トンプソン(ポット夫人)

    ©Disney

    公式サイトはこちら

    【ストーリー】

    ひとりの美しい王子が、呪いによって醜い野獣の姿に変えられてしまう。魔女が残した一輪のバラの花びらがすべて散る前に、誰かを心から愛し、愛されることができなければ、永遠に人間には戻れない。呪われた城の中で、希望を失いかけていた野獣と城の住人たちの孤独な日々に変化をもたらしたのは、美しい村の娘ベル。聡明で進歩的な考えを持つ彼女は、閉鎖的な村人たちになじめず、傷つくこともあった。それでも、“人と違う”ことを受け入れ、かけがえのない自分を信じるベルと、“人と違う”外見に縛られ、本当の自分の価値を見出せずにいる野獣──その出会いは、はたして奇跡を生むのだろうか…?

    『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニー役で世界を魅了した愛らしい少女は、いまや強い意志を持った聡明で美しい大人の女性として、カリスマ的存在となっている。そのエマが「4歳のころから夢中」と語るベルを演じるとき、ベルはおとぎの国の住人であることをやめ、現代を生きる私たちにエールを贈る21世紀最高のヒロインに生まれ変わる。
    また、野獣にはダン・スティーヴンス、ガストンにルーク・エヴァンス、ルミエールにユアン・マクレガーなど、絢爛豪華な実力派スターが結集!

    監督と脚本を務めたのは、大ヒットミュージカルを映画化した『シカゴ』(02/脚本)や『ドリームガールズ』(06/監督・脚本)などで知られるビル・コンドン。

    そして、なんといってもディズニーの『美女と野獣』の魅力は、アカデミー賞/ゴールデングローブ賞/グラミー賞を総なめにした極上のミュージカルナンバー。アラン・メンケン(作曲)とハワード・アシュマン(作詞)によるアニメーション版からの楽曲に、メンケンが新たにティム・ライス(作詞)と組んで作り上げた3曲の新曲が加わり、より華やかさと深みを増した音楽が、世紀の映像体験を約束してくれる。

    ©Disney

  • 映画『海の上のピアニスト』 モリコーネの音楽が人生の素晴らしさを奏でる

    映画『海の上のピアニスト』 モリコーネの音楽が人生の素晴らしさを奏でる

    映画『海の上のピアニスト』 THE LEGEND OF 1900

    海の上のピアニスト

    人生、捨てたもんじゃない

    なんて美しい映画なのだろう。
    監督はあの『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督である。
    再び、この映画でも観客の心をつかんで離さない。

    生まれながらにして天才ピアニストの主人公ナインティーン・ハンドレッドが奏でる音楽も美しく聞き応えもたっぷり。
    この物語自体、トランペッターのマックスの作り話か?果たして本当の話か?判らない。
    だからこそ、神秘的で美しい語り口が許されるのだ。

    これは元々、戯曲として書かれた原作が有る物語だからしょうがないのかもしれないが、非常に映画的な語り口が、ラスト4分の1くらいから、説明的になってくる。
    そう現代(1946年)に豪華客船ヴァージニアン号が爆破される訳だけど、ここで現れるナインティーン・ハンドレッドとマックスの会話・・・大切な会話だけど、それまでが映像によって語られてきたのに、ここにあるのは言葉のみ。
    そして映像としてあるのは、絶対に存在し得ないで有ろうシチュエーションに現れたナインティーン・ハンドレッドなのだ。
    それまでが、存在するのか?しないのか?という狭間に存在していた人物に、いきなりリアリティが与えられてしまう。

    個人的にはこのラスト、夢のままの映像的な展開をして欲しかった。
    ここまで余りに素晴らしい作品だっただけに残念で仕方がない、人それぞれの感じ方だと思うけど。

    と言っても、この映画は素晴らしい。
    トルナトーレ監督は、映画というものを非常にロマンティックな語り口で、いつも私達に映し出してくれる。
    映画によって伝えられるもの、それはリアリティとかと言ったものではなく、作り話(=ファンタジー)であったとしても、その中に心が込められている事が重要なのであると。
    そしてその表現は非常に映像的なのである。

    この作品でも数々の美しいシーンが連続する。
    冒頭の沢山の移民を乗せた船の前に自由の女神が現れ「アメリカ!」と人々が叫ぶシーンと言い、生まれたばかりのナインティーン・ハンドレッドが蒸気機関に揺られながらじょうろでミルクを飲むシーン、大きくなったナインティーン・ハンドレッドが一等船客のダンス・ホールに初めて足を踏み入れるシーンなど。
    船の上に降り積もる雪、そしてナインティーン・ハンドレッドとトランペットの男マックスが出会う嵐の夜シーン。
    時化(しけ)で大揺れの船の一等船客では、靴磨きのために廊下に出された靴が揺れに併せて左右に滑っている。
    マックスはとてもじゃないけどまっすぐ歩けず、船酔いで花瓶に吐いていると、そこに何事も無いように真っ直ぐに立ったナインティーン・ハンドレッドが現れ、ピアノを弾くという。
    床に固定させるストッパーを外させて、まるでピアノ自身がワルツを踊るようにダンス・ホールを動き出す。なんて、素晴らしいシーンなんだろう!
    またジャズの創始者ジェリー・ロール・モートンが音楽での決闘を挑んでくるが、このシーンも見応えが有る。

    更に好きなシーンが、ナインティーン・ハンドレッドは、その人を見て思い浮かんだ音楽を奏でると言う才能を持っているが、ある日、船室の窓の外に見える少女を見て、ピアノによる演奏をするシーン。
    彼女の魅力と共に奏でられる音楽とナインティーン・ハンドレッドの表情。
    映画とは映像を見るもの、そう数々の素晴らしいシーンの積み重ねが、素晴らしい映画を作る。

    そして少女との出逢いと、少女の父親の言った言葉「陸から海を眺めていたら、海が語りかけてきた」で、海が自分の人生の方向性を決めてくれるなら、船を下りてみたいと。
    ただ、結局、自ら下りることは無かった、そう自分には陸地に広がる無限を受け入れることは出来ないと。

    映画では、一つの答えを出していると思う。
    それは友情であり、恋であり、人と人の結び付きが有れば、陸地でも人が生きていくことが出来ると、ただナインティーン・ハンドレッドには、その結び付きが無かっただけなのだと。
    ナインティーン・ハンドレッドの前をいくつもの人生が通り過ぎていく。
    しかし、それは通り過ぎていくだけで、彼の人生とは別のものだった。

    そこには『ニュー・シネマ・パラダイス』と同様に、映画を観る人々に対して、映画も人生の素晴らしさを教えてくれるが、実際の生活にこそ人生の素晴らしさが有るのだと!
    そうトルナトーレ監督は語りかけてくるかのようだ。

    ナインティーン・ハンドレッド役のティム・ロスは、今までの彼の役柄とは違い、普通の人(他の映画ではちょっと危ない役が多い)を演じて見せた。
    その中に人の孤独や優しさを見事に表現していたと思う。
    マックス役のプルート・テイラー・ヴィンスは一世一代の演技だった。

    この映像的な素晴らしい映画、物語の語り口も見事、そして更に素晴らしかったのがエンニオ・モリコーネのスコア=音楽。
    船で出会った人々の人生から音楽を作る、それを見事に旋律に換えていった彼の素晴らしさ。
    この音楽の素晴らしさ、これ無くしては、この映画は生まれなかったであろう。

    「いい物語があって、それを語る人がいるかぎり、人生、捨てたもんじゃない」

    Reviewed in 12.1999

    映画『海の上のピアニスト』のデータ

    THE LEGEND OF 1900 125分 1999年 アメリカ=イタリア

    監督■ジュゼッペ・トルナトーレ
    製作■フランチェスコ・トルナトーレ
    製作総指揮■ローラ・ファットーリ
    脚本■ジュゼッペ・トルナトーレ
    原作■アレッサンドロ・バリッコ
    撮影■ラヨシュ・コルタイ
    音楽■エンニオ・モリコーネ
    プロダクション・デザイン■マウリツィオ・ミレノッティ
    アート・ディレクター■ドメニコ・シーカ
    編集■マッシモ・カグリア
    キャスティング■ファブリツィオ・セルジェンティ・カステラーニ/ヴァレリー・マッキャフリィ/ジェレミー・ジマーマン
    特殊効果スーパーヴァイザー■デイヴィッド・ブッシュ
    出演■ティム・ロス/プルート・テイラー・ヴィンス/メラニー・ティエリー/クラレンス・ウィリアムズ三世/ビル・ナン/ピーター・ヴォーン/ナイオール・オブライアン/ガブリエレ・ラヴィア/アルベルト・ヴァスケス/ハリー・ディッスン/イーストン・ゲイジ/コリー・バック

    映画『海の上のピアニスト』
    ワーナーホームビデオ

    <DATA>

     1946年、トランペッターのマックス(ブルート・テイラー・ヴィンス)は中古楽器屋で甘美なピアノ曲が収録されている1枚の古びたレコードを発見する。
     そ してマックスはこの曲を演奏した「この世に存在しない伝説のピアニスト」の 物語を語り始めた。
     大西洋を果てしなく往復する豪華客船ヴァージニアン号に置き去りにされた小さな命。
     彼の名はナイ ンティーン・ハンドレッド=1900(大人になってからはティム・ロス)。
     時が世紀の変わり目を告げる1900年に、この船で拾われた彼はこ う名付けられた。
     船を下りることなく成長するナインティーン・ハンドレッドは、やがて88のピアノの鍵盤の上で信じが たい才能を発揮する。
     自らの研ぎ澄まされた感性でのみ奏でられるメロディ。
     楽譜は一切読まず、旋律は乗客達の表情や仕草に合わせて紡ぎ出されていく。
     優しく、しかも力強い。
     かつて聞いたこともないその素晴らしい音色は、あらゆる人を感動の渦に巻き込んでいった。
     そしてその噂は海を渡り陸地にまで広がっていくのだった。
     即興の音楽を通し、様々な人々と出会う中、ナインティーン・ハンドレッドはふと「陸地から見る海はどうなのだろう」と思いを巡らす。
     そんな時、舷窓越しに美しい少女を見る。
     その瞬間、彼はやさしいメ ロディを弾き、かつてないほど感動的な音楽を奏でた。
     その少女の姿を船中探し回り、やっと三等船室で見つけるが、ごった返す群衆の渦に引き離され、彼女は消えていってしまう。
     しかし想いを断ち 切れないナインティーン・ハンドレッドは、これまで一度も下りる事のなかった船のタラップに、その足を 掛けるのだった...。