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  • 映画『ベニスに死す』 映画、映像の極致、美への探求に死す

    映画『ベニスに死す』 映画、映像の極致、美への探求に死す

    映画『ベニスに死す』 MORTE A VENEZIA

    morte-a-venezia

    ルキノ・ヴィスコンティの生涯についてはこちらから

    ルキノ・ヴィスコンティ -作品と演出- はこちら

    私が最も愛する作品、映画として映像としての極致にある

    これ程、感覚的な映画が有るだろうか?そんな問いを投げたくなるような作品。
    映像と音楽がストーリーを語っている。
    マーラーの音楽に心酔してしまう。
    映像はヴィスコンティの他の作品に比べると、色彩という点では趣が違う。
    全体的に白を基調としたもの、他の作品は赤や黒、黄金と言った色が基調。
    それだけに主人公のアッシェンバッハの醜さとタッジョの美しさが際立つ。

    この作品は“美”とは?“芸術”とは?と言う問いを投げかけ、究極の美という物をテーマに置いている。
    “美”の象徴がタッジョであり、アッシェンバッハの老醜が描かれている。
    ここで描かれる“美”は、“知性”に依って生み出される物ではなく“自然”が生み出す物...甘美な物(欲望の現れ?)として描かれる。
    それは才能が生み出す奇跡だと...

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    タッジョを観ていると恐ろしい物を感じる。
    “美”を生み出す才能を手に入れるために悪魔と手を握る必要が有るのでは...タッジョこそが悪魔の使いなのか?そんな幻想を思い起こさせる。
    アッシェンバッハはタッジョを追い回す。
    タッジョ(悪魔の使い)の気を引くために(死に)化粧までほどこす。
    タッジョもアッシェンバッハにつけられているのを知り、振り返っては、(“美”と言う欲望の世界に)誘惑していく。
    アッシェンバッハはタッジョに向かって独り言を言う...「愛している」と、それは、悪魔に心を売っても“美”を手に入れたいという誓いの言葉なのかもしれない。
    またアッシェンバッハは、タッジョが一人で『エリーゼのために』をピアノで弾いているのを見て、娼婦との交わりを思い起こし頭の中でタッジョ肉体的に犯している...悪魔の誘い(美)に溺れるのである。
    そして海に向かってダビデ像のポーズを取るダッジョに“美”を見て(手に入れて)、引き替えに魂(命)を悪魔に奪われる。

    morte-a-venezia

    余りに、美しい数々のシーン、そして言葉以上に語る音楽、この2つが美しすぎるだけに、その残酷さが際立つ。
    ラストのアッシェンバッハの死体が、運び出されるシーンのなんという怖さ!
    屍は、この美しく甘美な世界からは放り出されなければならないのか?

    ヴィスコンティは、この作品で“美”と言う物を映像と音楽で見せつけ、神(知性)と悪魔(欲望)の世界を描き挙げている。
    彼は長年暖めていたこの作品の企画を、ビヨルン・アンドレセンと言う完璧な美少年(好みは有るが)を手に入れたことにより実現にこぎ着けた。
    余りにも甘美で倒錯した美しい世界である...それだけに残酷である。

     

    映画『ベニスに死す』のデータ

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    LA MORTE A VENEZIA
    DEATH IN VENICE [米] 131分 1971年 イタリア=フランス

    監督■ルキノ・ヴィスコンティ
    製作■ルキノ・ヴィスコンティ
    製作総指揮■マリオ・ガッロ
    原作■トーマス・マン
    脚本■ルキノ・ヴィスコンティ/ニコラ・バダルッコ
    撮影■パスクァリーノ・デ・サンティス
    音楽■グスタフ・マーラー『交響曲第三番ニ短調第四楽章』、『第五番嬰八短調第四楽章』
    指揮■フランコ・マンニーノ
    演奏■サンタ・チェチリア国立音楽院管弦楽団
    編集■ルッジェーロ・マストロヤンニ
    美術■フェルディナンド・スカルフィオッティ
    衣装■ピエロ・トージ
    助監督■アルビーノ・コッコ
    製作会社■アルファ・チネマトグラフィ/ラ・プロデュクション
    備考■テクニカラー、パナヴィジョン
    日本公開■1971年
    出演■ダーク・ボガード/ビョルン・アンドレセン/シルヴァーナ・マンガーノ/ロモロ・ヴァリ/マーク・バーンズ/ノラ・リッチ/マリサ・ベレンソン/キャロル・アンドレ/レスリー・フレンチ/セルジオ・カラファノーロ/チロ・クリストフォレッティ/アントニオ・アピチェッラ/ブルーノ・ボスケッティ/フランコ・ファブリツィ/ドミニク・ダレル/マーシャ・ブレディット

    1971年カンヌ国際映画祭
    25周年記念賞授賞 ルキノ・ヴィスコンティ
    (ルキノ・ヴィスコンティ自身の功績も共に表彰された)

    【解説】
     掛け値なしに美しい映画だ。T・マンの原作ではギリシア神にも喩えられる少年タジオが現実にもいたせいだ。そのB・アンドレセンの美少年には主人公ならずとも、ヘテロの男性をも“その気”にさせる妖しさがあり、彼に出会えたことを“奇跡”と呼んだヴィスコンティの驚喜はよく分かる。彼とそして、全篇に流れる感傷的なマーラーの五番の第四楽章のお蔭で、この作品は耽美の極みに観る者を浸らせる。理想の美を少年に見出した作曲家アッセンバッハは、浜に続く回廊を少年を求めてさまよう。疫病に罹ってもなお、化粧をその顔に施させ、ヴェニスの町を徘徊し、やがて疲れた体を海辺のデッキチェアに横たえる。波光がきらめく。満足の笑みを浮かべつつ涙し、化粧は醜く落ちていく……。痛切な幕切れは同時にひたすら甘美だ。(映画データベース – allcinema より)

    この作品、最初に観た時は、他のヴィスコンティ作品よりも自分の好みではなかった。
    何度か見ているうちに、一番好きな作品の一つとなった。
    トーマス・マンの原作(原作は音楽家ではなく作家)だが、実は同じマン原作「ファウスト博士」の”悪魔との契約”と言うテーマが大きなベースとなっている。
    マンのファウストは、20世紀初頭のナチズムの台頭に合わせて書かれている。
    そして、その基になったゲーテの「ファウスト」をベースしたと思われるのが、宮﨑駿監督の最後の作品『風立ちぬ』。
    そう言う意味では『ベニスに死す』と『風立ちぬ』には大きな共通性を感じ、共にファシズムの台頭と言う時代を感じさせるものになっている。

  • 映画『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』 人生の選択をする時に見たい傑作

    映画『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』 人生の選択をする時に見たい傑作

    映画『 グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』

    GOOD WILL HUNTING

    GOOD WILL HUNTING 127分 アメリカ 1997年

    あなたに会えて、 ほんとうによかった。

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    脚本の素晴らしさが圧倒的!

    自分がこの先、どこへ向ったら良いか迷っている人に、人生の選択に必要なものは?と言うのを気付かせてくれる作品です、青春映画の傑作。

    当時、未だ無名な二人の若者、ベン・アフレックとマット・デイモンが脚本を書いて(しかも初めての映画化!)、『ドラッグストア・カウボーイ』で長編映画デビューしたガス・ヴァン・サント監督が映画化、主演は脚本を書いたマット・デイモン自ら演じ、助演には今は亡きロビン・ウィリアムズ(2014年没)が出ています。
    ロビン・ウィリアムズはこの作品でアカデミー賞助演男優賞を受賞しています。

    アメリカから良質の青春映画が生まれた、なんと言ってもベン・アフレックとマット・デイモンの脚本が素晴らしいし、ガス・ヴァン・サント監督の演出も良い、若手のマット・デイモンの演技を受け止めたロビン・ウィリアムズの演技も素晴らしかった。

    物語は、貧乏な青年が肩肘を張って周りの人を拒絶して、幼なじみたちとだけつるむ、一見、どこにでも有りそうな内容で、また彼には暗い過去も存在する、これもありきたりな気がする。
    しかしその主人公は天才的な数学的才能を持ち、その才能を見つけた教授も手に負えず、彼を救うべく人間味溢れた精神科医が現れる。
    テーマやモチーフも優れているし、こんな物語を思いついたのも凄いと。

    これだけ面白く感じられたのは、本物の若者(出演者でも有るマット・デイモンとベン・アフレック)が脚本を書いたからであろう。
    彼らの才能はもちろんだが、等身大の若者がそこに描かれているからこそ、変な飾り気が無くて良い。
    もちろん、主人公のウィルを過去のトラウマから解き放つ大人達の悩みも描かれている。
    しかし、その話自体とは良い距離を置いて描かれている、そこにしつこく感動を求める節もない。

    この脚本の凄さは伏線の張り方が素晴らしい点、そしてちゃんと回収している。
    セリフが素晴らしいのも有る、だからこんなに感動で泣ける、そして笑える。

    患者のマット・デイモンと医師のロビン・ウィリアムズが、過去に虐待の過去があるマット・デイモンに、常に同じ目線で「君が悪いんじゃない」と言い続けるロビン・ウィリアムズの姿が印象的、離れていた2つの心が静かに近づいていくシーンが感動的!

    この映画の一番の成功は、そこに出てくる人々全ての成長を描いている点。
    当然、主人公のウィルを中心にしていることには間違いないが、それを取り巻く人々が見事に描き出されている。

    ラストは、ウィルが旅立って行く。
    オープニングに、本を読むウィルを親友が迎えに行くと大学構内の清掃の仕事へと繋がる。
    これが後半「なぜ彼は敢えて大学の清掃員になったのか?」と繋がっていく。
    そこで難問を解いて、幼なじみたちとリトルリーグを見るのも、後半への伏線と共に、彼の今の人生を象徴してる。
    オープニングの毎朝迎えに行く日常が、後半「毎日、今日こそはお前がいなくなってるのでは?と楽しみにしている」と言うセリフに繋がっている。
    ラスト近くでベン・アフレックが迎えに行くと、マット・デイモンが旅立った後でいなくなっていると言うシーンに繋がる・・・
    そこには彼が何か目的を見つけた訳ではない、数学の道を捨てて彼女のもとに向かう、と言うエンディングだけど、彼自身、まだまだ若いから彼女を迎えに行ってかも、無限の可能性がそこには有る。
    未来や未知の世界に一歩踏み出す勇気が大切であることを訴えかけてくる。

    ウィルの彼女役のミニー・ドライヴァーは、決して美人とは言えないが、映画の中での彼女の成長ぶりと、次第に可愛らしい女性に変わっていくさまも楽しい。

    アメリカの作品らしい、前向きで清々しい作品になっている。

    私的『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』

    テーマが有るか?共感できるか?

    人生に迷った時に青年は何を思うのか、人は何を目指して生きるのか?それを実感できる。

    またこの頃のアメリカの中流白人層が崩壊していることが判る。
    それでも、アメリカにはまだ可能性があるということを暗示して終わる。

    作り手の強い意思を感じるか?

    今やハリウッドにはなくてはならない二人、マット・デイモンとベン・アフレックの実質的なデビュー作にして、脚本でその才能を開花させた作品。
    二人の強い絆=友情を作品から感じ取れる。

    俳優の意思や演技力が伝わるか?

    俳優が作り手でもあり、マット・デイモン、ベン・アフレックが素晴らしい。
    それ以上に演技と言う点で、コメディだけではなくシリアスな役に徹したロビン・ウィリアムズの演技は秀逸。

    映画らしい楽しさが備わっているか?

    一つの街、狭い世界から最後に旅立つシーンを観るだけで映画としての素晴らしさを感じる。

    エンターテイメント性

    天才が実は・・・と言う展開から青春映画として成立している。

    青年の青春だけではなく、成長して心を開いていくのと同様に、カウンセリングしている側も自分の過去の妻の死を乗り越えていく姿と重層的に描いている。

    2時間の枠に織り込んだ物語が素晴らしい。

    演出が素晴らしいか?

    ガス・ヴァン・サント監督の最高傑作の一つ、ナイーブな若者の心情を描かせるとこの監督以上の演出ができる人は少ない。

    この映画の中盤(2時間の作品ちょうど1時間を経過したあたり)に、劇的な心情の変化がある。
    ロビン・ウィリアムズ演じるマクガイヤ先生がウィルを診察するシーン。
    それまでお互いに押し黙っていたが、ウィルが話し始めると、呼応するようにマクガイヤ先生は、亡くなった妻の思い出話をする。
    その時に、カメラがマクガイヤ先生とウィルの表情を交互に写すが、イマジナリーラインを超える。
    「妻が寝ていると自分のオナラで目を覚ます」と言うとウィルが心から笑い始める。

    イマジナリーラインを超えることで、二人の関係が大きく変わったことを映像的に表現している素晴らしい1シーン。

    脚本が素晴らしいか?

    若者二人が書いた脚本が素晴らしい、テーマが一貫していて、しかもモチーフ(天才の青年と精神科医)もユニークで、しかも話が互いに傷つきながらも再生していく、2つのドラマが絡み合っている。
    前半の伏線が見事に後半につながっている。

    この物語の着想は、インドの天才数学者・ラマヌジャンにあるようだ。
    (ラマヌジャンを描いた映画『奇蹟がくれた数式』 『グッド・ウィル・ハンティング』の基になった物語はこちら)
    前半で、手に負えないウィルのカウンセリングを、ランボー博士がマクガイヤ先生に、レストランで依頼をすると言うシーンがある。
    そのシーンで、ウィルを表して彼の天才ぶりは「ラマヌジャン以上だ」と言う。

    前半、ベン・アフレックがマット・デイモンを毎朝迎えに行くが、ラストは迎えに行ってもいない、それは彼が人生の選択をして旅立って行くことの伏線になっている。

    何度も見たくなるか?

    爽やかな青春映画を繊細に描いている、前向きにさせてくれて心に残るものを感じさせてくれる。
    そして、なんと言っても、映画としての演出も脚本も楽しませてくれて、見る度に新しい発見のある映画。

    映画『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』のデータ

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    監督■ガス・ヴァン・サント
    製作■ローレンス・ベンダー
    脚本■ベン・アフレック/マット・デイモン
    撮影■ジャン=イヴ・エスコフィエ
    コスチュームデザイン■ベアトリックス・アルーナ・パストール
    美術■メリッサ・スチュワート
    編集■ピエトロ・スカリア
    音楽■ダニー・エルフマン
    主題歌■エリオット・スミス
    出演■ロビン・ウィリアムズ/マット・デイモン/ベン・アフレック/ステラン・スカルスガルド/ミニー・ドライヴァー/ケイシー・アフレック/コール・ハウザー/スコット・ウィリアム・ウィンタース

    ■アカデミー賞1997年
    作品賞ノミネート
    主演男優賞ノミネート マット・デイモン
    助演男優賞授賞 ロビン・ウィリアムズ
    助演女優賞ノミネート ミニー・ドライヴァー
    監督賞ノミネート ガス・ヴァン・サント
    脚本賞授賞 マット・デイモン/ベン・アフレック
    主題歌賞ノミネート エリオット・スミス “Miss Misery”
    音楽賞(オリジナルドラマ)ノミネート ダニー・エルフマン
    音楽賞(オリジナル・ミュージカル/コメディ)ノミネート ハンス・ジマー
    編集賞ノミネート ピエトロ・スカリア
    ■ベルリン国際映画祭1998年
    銀熊賞(貢献賞)授賞 マット・デイモン 脚本と演技において
    ■ゴールデン・グローブ1997年
    作品賞(ドラマ) ノミネート
    男優賞(ドラマ)ノミネート マット・デイモン
    助演男優賞ノミネート ロビン・ウィリアムズ
    脚本賞授賞 マット・デイモン/ベン・アフレック
    ■放送映画批評家協会賞1997年
    作品賞ノミネート
    オリジナル脚本賞授賞 マット・デイモン/ベン・アフレック
    ブレイクスルー賞授賞 マット・デイモン

    【解説】
     深い心の傷を負った天才青年と、同じく失意の中にいた精神分析医がお互いにあらたな旅立ちを自覚して成長してゆく姿を描く感動のヒューマン・ドラマ。
     ボストンに住む青年ウィルは、幼い頃から天才ゆえに周囲から孤立していた。だが、彼の才能に気付いた数学教授のランボーは、ウィルに精神分析医のショーンを紹介する。ウィルはショーンにしだいに心を開いてゆくが、彼の才能に気付いた政府機関や大企業が接近してくる。(映画データベース – allcinema より)

  • 映画『リンカーン』 リーダーの孤独と資質を描いたスピルバーグの最高傑作!

    映画『リンカーン』 リーダーの孤独と資質を描いたスピルバーグの最高傑作!

    映画『リンカーン』

    LINCOLN 150分 アメリカ 2012年

    リンカーン

    世界を変えた英雄の<28日間>の物語―

    2013年に映画館で観た映画の中で圧倒的なNo.1でした

    監督はスティーヴン・スピルバーグです、私が周りの人に勧めたら、早速見に行ってくれた人がいましたが、その人の感想は「退屈」でした、確かにスピルバーグ監督作品なのに戦闘シーンもほとんどなく、議会での会話のやり取りばかりです。

    スピルバーグ監督と言えば、今も『JAWS/ジョーズ』を一番の作品に挙げる人もいますし、もちろん大ヒット作『E.T.』も有りますし、その他にも好きな作品がたくさんあります。
    いずれ、監督としてここで取り上げたいと思います。

    スピルバーグ監督の最新作『 ブリッジ・オブ・スパイ』が公開中(2016年1月9日から)です。

    スピルバーグ監督からのアメリカへのメッセージ

    スピルバーグがリンカーン大統領を描くと言えば「人類の平等を訴えた博愛主義的な作品」と思いきや良い意味で予想を裏切ってくれた。
    それは今のアメリカへのスピルバーグ監督からのメッセージだったと思う。

    アメリカには、三権分立の上に成り立つ民主主義が存在する国家、それを成り立たせているのは、国民から選ばれた議員の信条と誠実さの上に成り立っている。
    大統領は行政の長であり、議会に立つことは出来ない、だからこそ大統領としての発する言葉に魂が有る。
    リンカーンが喩え話が好きな人物とは初めて知ったが、政治家の資質である言葉を大切にする事を丁寧に描いている、時にはそれが冗長に感じるのだが。

    人類における正義とは何か!それを成り立たせる仕組みがアメリカには有る、それがアメリカの尊厳で有ると訴えかけてくる。
    史実がそうだったのか?スピルバーグの演出なのかは、私の知識では知るよしも無いのだけど、奴隷解放の議決は、一人ずつ名前を呼ばれて賛否を回答する。
    これはアメリカだけでは無く日本の政治家にも心して欲しいが、後世に政治家が成したことは名前とともに残る。

    当時の政治家は、黒人の男性に参政権を与えると、ゆくゆくは女性にも参政権を与えることになる、そんな事は有り得ないとまで言う。
    今、アメリカでは民主主義の根幹が試されている。
    国民の多数が望んでいる、国民皆保険や銃規制が、党利党略・企業のロビィ活動によって否決されている。
    民主主義の崩壊こそが、アメリカの崩壊なのだから。
    そんな切実なメッセージがスピルバーグから届いたような気がした。

    ダニエル・デイ=ルイスの静かな佇まいと共に、力強さがリンカーンの信念の強さを見事に表現していた。
    ここに政治家に必要な資質を映し出しているようなだった。
    そしてその「言葉」=演説の一つ一つが心に焼き付いた・・・

    面白かったのは、意外と当時は大統領の警護と言うのがほとんど無い。
    リンカーンも気軽に人の家を訪問したりしている。
    まぁ~リンカーンが暗殺されたから、その後は警護ともしっかりするようになったのかもしれない。

    何に感動したのか?聞かれたので、こう答えた。
    政治の世界で、高い目標を達成するために汚いことでも率先して行う姿、だからこその理想の神々しさが有ると。
    そして、その高みに上がるためには孤独がつきまとう、大統領というトップに立つものの孤独の姿をダニエル・デイ=ルイスが見事に演じていた。
    これは、大統領だけではなくても、会社のトップや映画製作のトップに立つ者、何にでもその孤独と日々の積み重ね、それを達成するための高い目標と理想、これが必要だと気づかせてくれる作品。

    リンカーン

    私的『リンカーン』

    テーマが有るか?共感できるか?

    日本ではなかなか理解されづらい部分はあるが、民主主義とは何か?と言う大きなテーマ。
    そしてリーダーの資質とは何か?そこにある孤独に立ち向かうリンカーンを描くことは、真リーダー像が見えてきて心が震える。

    作り手の強い意思を感じるか?

    スピルバーグ監督は、あきらかにオバマ政権への応援歌としてリンカーンを描いた節がある。
    そこには民主主義への危機感があったんだと僕は感じました。
    スピルバーグ監督はメッセージ性の強い作品が意外と多い監督だと判る。

    俳優の意思や演技力が伝わるか?

    ダニエル・デイ=ルイスの演技が圧巻!リーダー像を見事に演じきっていた。
    もちろんリンカーンの実像を知る訳ではないが、魂を感じる演技だった。

    映画らしい楽しさが備わっているか?

    議会の駆け引きが中心の人間ドラマ、それでもリアリティにこだわった映像、強いメッセージ性を感じる作品。

    エンターテイメント性

    個人的には地味とは思わない、人と人との駆け引きが面白い。
    そしてアメリカの民主主義がこれほど解りやすい形で描かれた作品は無かった。

    演出が素晴らしいか?

    スピルバーグ監督はどの作品でもその演出に隙はない。
    このあたりは、クリント・イーストウッド監督など、ベテランの域の仕事だと思う。
    なんと言っても俳優たちの素晴らしい演技を引き出している。

    脚本が素晴らしいか?

    雄弁さと背中から感じさせる部分、脚本と演出の素晴らしさが光る。
    リンカーンの有名な演説「人民の人民による・・・」は出て来ない、それでもリンカーンの話す言葉にメッセージを感じる。

    何度も見たくなるか?

    感動的な物語、リーダーとしての志・姿勢を確認する意味でも、時折に観たい作品。

    映画『リンカーン』のデータ

    リンカーン

    監督■スティーヴン・スピルバーグ
    製作■スティーヴン・スピルバーグ/キャスリーン・ケネディ
    製作総指揮■ダニエル・ルピ/ジェフ・スコール/ジョナサン・キング
    原作■ドリス・カーンズ・グッドウィン 『リンカーン』(中央公論新社刊)
    脚本■トニー・クシュナー
    撮影■ヤヌス・カミンスキー
    プロダクションデザイン■リック・カーター
    衣装デザイン■ジョアンナ・ジョンストン
    編集■マイケル・カーン
    音楽■ジョン・ウィリアムズ
    出演■ダニエル・デイ=ルイス/サリー・フィールド/デヴィッド・ストラザーン/ジョセフ・ゴードン=レヴィット―/ジェームズ・スペイダー/ハル・ホルブルック/トミー・リー・ジョーンズ

    ■アカデミー賞 2012年
    主演男優賞 ダニエル・デイ=ルイス
    美術賞 リック・カーター
    ■全米批評家協会賞 2012年
    主演男優賞 ダニエル・デイ=ルイス
    脚本賞 トニー・クシュナー
    ■NY批評家協会賞 2012年
    男優賞 ダニエル・デイ=ルイス
    助演女優賞 サリー・フィールド
    脚本賞 トニー・クシュナー
    ■ゴールデン・グローブ 2012年
    男優賞(ドラマ) ダニエル・デイ=ルイス
    ■英国アカデミー賞 2012年
    主演男優賞 ダニエル・デイ=ルイス
    ■放送映画批評家協会賞 2012年
    主演男優賞 ダニエル・デイ=ルイス
    脚色賞 トニー・クシュナー
    音楽賞 ジョン・ウィリアムズ

    映画『リンカーン』 ダニエル・デイ=ルイス,スティーヴン・スピルバーグ(監督、製作)

    映画「リンカーン」オフィシャルサイト

    【解説】
     「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」の巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が、“アメリカ史上最も愛された大統領”エイブラハム・リンカーンの偉大な足跡を映画化した感動の伝記ドラマ。
    国が大きく分断された過酷な状況において、リンカーンはいかにして奴隷解放という大いなる目的を達成するに至ったのか、その知られざる政治の舞台裏を、理想のリーダー像という視点から丁寧に描き出していく。
    主演は本作の演技で「マイ・レフトフット」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」に続いて、みごと3度目のアカデミー主演男優賞に輝いた名優ダニエル・デイ=ルイス。
    共演はサリー・フィールド、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、トミー・リー・ジョーンズ。
     南北戦争末期。国を二分した激しい戦いは既に4年目に入り、戦況は北軍に傾きつつあったが、いまだ多くの若者の血が流れ続けていた。
    再選を果たし、任期2期目を迎えた大統領エイブラハム・リンカーンは、奴隷制度の撤廃を定めた合衆国憲法修正第13条の成立に向け、いよいよ本格的な多数派工作に乗り出す。
    しかし修正案の成立にこだわれば、戦争の終結は先延ばししなければならなくなってしまう。
    一方家庭でも、子どもの死などで心に傷を抱える妻メアリーとの口論は絶えず、正義感あふれる長男ロバートの北軍入隊を、自らの願いとは裏腹に黙って見届けることしかできない歯がゆさにも苦悩を深めていく。そんな中、あらゆる手を尽くして反対派議員の切り崩しに奔走するリンカーンだったが…。(映画データベース –allcinema より)

  • 映画『インビクタス/負けざる者たち』 ラグビーの臨場感が凄い!

    映画『インビクタス/負けざる者たち』 ラグビーの臨場感が凄い!

    インビクタス/負けざる者たち

    INVICTUS 134分 2009年 アメリカ

    インビクタス/負けざる者たち

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    ひとつの願いが、 ほんとうに世界を変えた物語。

    南アフリカがラグビーでワールド開催をした意味とは

    今年(2015年)は、ラクビーワールドカップで日本中が湧いた年でした。

    日本が大金星を挙げた相手が南アフリカでした。
    南アフリカはラグビーの強豪国でしたが、アパルトヘイトのために当初はワールドカップに参加が出来ませんでした。
    1994年にアパルトヘイトがネルソン・マンデラによって廃止されて、初めてワールドカップに参加、それも自国開催に踏み切った・・・この作品はそんな背景の話です。

    この作品は本当に本当に立派な映画です。
    クリント・イーストウッド監督は『グラン・トリノ』で俳優の生涯を終えて(引退→その後出演してますが)、監督一本にと言っても、もう既にアカデミー賞も数々の賞も授賞して、今は本当に撮りたい作品だけを撮れる偉大な監督の一人だと思う。
    何故、アメリカ人の彼がこの作品を撮りたかったのか?本当にそこが知りたいところ。
    アカデミー賞にもノミネートされず、アメリカでは興行的に成功では無かった作品。
    理由は簡単で、ストーリー自体がアメリカ人には理解出来ないから・・・ 顕著なのは『硫黄島からの手紙』だった。
    アメリカでは興行は散々、評価も殆どされなかったが、個人的にはイーストウッド監督の最高傑作だと思っている。

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    さてこちらに話を戻すと、アメフトの国アメリカ、でラグビーの話しなんて誰も理解出来ないと思う。
    アメリカでは、3大スポーツ(アメフト、バスケ、野球)の下にアイスホッケーやオリンピック?その下にサッカー、更に下の下位にラグビーが有ると言っても良いかも。
    日本でもラグビーの位置付けは、アメリカ程低くは無いと思うが(実際は知らない)、ある程度ラグビーを知っている、少なくともラグビーのワールドカップを見たことが無いと判らない部分が多いと思う。
    私はと言うと、それ程ラグビーに造詣が深い訳では無いが、高校の授業でラグビーをやらされたせいか、ワールドカップは毎回見ている。
    もちろん今回の舞台になった’95年の大会も決勝戦はTV観戦している。
    そう言う視点で見ると、もうホント、映画としてイーストウッド監督が立派に撮っていると言う点、政治とスポーツの関係(その中にある理念や信念)も立派なのだが、それ以上にスポーツ映画なのだ!!
    ここは強調したいが、立派なラグビー映画に仕上がっている。
    ある意味、『炎のランナー』はオリンピックの100m走を知らない(そんな人はいないと思うが)と理解出来ないし、サッカーを知らないと『ベルンの奇蹟』や『GOAL!』を見ても感動出来ないかもしれない。
    日本人には、アメリカのアメフト映画が理解出来ないのと同様だ。

    もう臨場感溢れる立派なラグビー映画、もちろんニュージーランド・オール・ブラックスのハカも出てくる。
    そんな立派なスポーツ映画、ラグビー映画だからこそ、スポーツ・ラグビーの素晴らしさが伝わり、それこそが人々の心を一つにする共通の言語だと伝えてくれる。
    映画と言う共通言語、スポーツと言う共通言語、そのことが国民を一つにして、差別の壁を取り去っていく。。。不可能を可能に!(インビクタスとはラテン語で「不屈」を意味します)

    そしてまた立ち戻るが・・・アメリカ人のイーストウッド監督が何故、ラグビー映画を撮ったのか?しかもこんなに立派に。
    エンディングには、ホルストの「惑星」第4曲「Jupiter」が流れるが、日本では平原綾香が歌った曲が有名だが、これはラグビーのワールドカップのテーマ・ソング「ワールド・イン・ユニオン」(1991~)として歌われている。

    Rugby World Cup Official Song “World in Union” from 95’s Ver
    There’s a dream I feel, so rare, so real: All the world in union, the world as one gathering together, one mind, one heart, Every creed, every colour, once joined never apart. Searching for the best in me, I will find what I can be, If I win, lose or draw, there’s a winner in us all, It’s the world in union, the world as one, as we climb to reach our destiny, Our New Age has begun! We face high mountains, must cross rough seas, We must take our place in history, and live with dignity, Just to be the best I can Sets the goal for every man, If I win, lose or draw, it’s a victory for all, It’s the world in union, the world as one, as we climb to reach our destiny, Our New Age has begun. Build the world in the union, Our New Age has begun!!

    (私には、夢がある―― とっても貴重で、とっても誠実な夢 全ての世界は繋がっている、そう、世界は1つ 全人類が共に集まり、一つの精神、一つの心を共有する―― 全ての主義、全ての肌の色―― 一度一緒になれば、それは二度と離れ離れになることはない 自分の中の“ベスト”を捜して、自分が出来る事はきっと見つかる 例え勝っても、負けても、引き分けでも、全てが“勝利”なのだから! 世界は一つの共同体(=ラグビーの事)、一つになった世界 自信の運命に手を伸ばし、登りつめて行く時―― 私たちの新しい時代が始まる!)

    もう、独りで劇場で涙しながら観ちゃいました(汗)

    マンデラ大統領とピナール

    私的『インビクタス/負けざる者たち』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    映画が世界で見られる訳、そしてラグビーと言ったスポーツが愛される訳、言葉が通じなくても感動は通じる共通言語。ラグビーと言う共通言語のスポーツを通して人種差別のない世界を望む強い意思を感じることができる。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    原作映画でもあり、イーストウッド監督は共感を持って作ったのが感じられる。
    そして、本当に臨場感があるラクビーの試合シーンを再現している。
    黒人のマンデラ大統領と白人のキャプテン・ピナールの友情も、人種の融和を表現していて見事。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    モーガン・フリーマンのネルソン・マンデラは見事!
    似ているかどうかはともかく、偉大な人物に共通のもの、意志が強くそして柔和な外見、そんな人柄を表現している。
    マット・デイモンは、体重を大幅に増やしてラグビー選手体型になって臨んだ作品だけに気合十分、モーガン・フリーマンとのバランスも良かった。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    ラクビーの決勝戦がクライマックスに来るこの作品、大迫力。
    スタジアムにいる臨場感が感じられる!

    ⑤ エンターテイメント性

    立派な映画で政治的な映画でもある、しかしスポーツ映画で有り、感動的でしかも爽快感も味わうことができる作品。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    イーストウッド監督は、どんなテーマの作品を撮っても、一級の作品に仕上げてくる。
    特に今回は、ラグビーと言うスポーツであり、ここまで臨場感のある試合シーンを演出仕上げている点は驚き。
    もちろん作品全般としても、流石の演出で友情という人間性も表現していた。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    原作のある作品である以上、半分は原作の面白さとも言えるが、政治的な繊細な部分を友情で乗り越えていくリンクぶりが脚本の上手いところか。

    ⑧何度も見たくなるか?

    人に勇気を与えてくれる、そして何事も乗り越えられると言うことを教えてくれる。
    それでいてエンターテインメントとしても十分に楽しめると言う点で優れている。

    映画『インビクタス/負けざる者たち』のデータ

    インビクタス/負けざる者たち(初回生産限定スペシャル・パッケージ) Blu-ray — Amazonで見る

    監督■クリント・イーストウッド
    製作■ロリー・マクレアリー/ロバート・ロレンツ/メイス・ニューフェルド/クリント・イーストウッド
    製作総指揮■モーガン・フリーマン/ティム・ムーア
    原作■ジョン・カーリン
    脚本■アンソニー・ペッカム
    撮影■トム・スターン
    衣装デザイン■デボラ・ホッパー
    編集■ジョエル・コックス/ゲイリー・D・ローチ
    音楽■カイル・イーストウッド/マイケル・スティーヴンス
    出演■モーガン・フリーマン/マット・デイモン/トニー・キゴロギ/パトリック・モフォケン/マット・スターン/ジュリアン・ルイス・ジョーンズ/アッジョア・アンドー/マルグリット・ウィートリー/レレティ・クマロ/パトリック・リスター/ペニー・ダウニー

     「チェンジリング」、「グラン・トリノ」の巨匠クリント・イーストウッド監督が、アパルトヘイト(人種隔離政策)後の南アフリカで開催されたラグビーワールドカップを巡る感動の実話を映画化したヒューマン・ドラマ。
    アパルトヘイト撤廃後も人種間対立が残る中、国民が一つにまとまる大きな転機となった自国開催のラグビーW杯での奇跡の初優勝までの道のりを、ネルソン・マンデラ大統領と代表チーム・キャプテンを務めたフランソワ・ピナール選手との間に芽生える絆を軸に描き出す。
    主演はモーガン・フリーマンとマット・デイモン。
     1990年、アパルトヘイトに反対し27年間も投獄されていたネルソン・マンデラがついに釈放される。
    そして1994年、初めて全国民が参加した総選挙が実施され、ネルソン・マンデラは南アフリカ初の黒人大統領に就任する。
    しかしアパルトヘイト撤廃後も、白人と黒人の人種対立と経済格差は依然として解消されず、国家はいまだ分断状態にあった。
    マンデラ大統領にとって国民の統合こそが悲願であり、自ら寛容の精神で範を示し、国民に和解と融和を呼びかける。
    そして、翌’95年に南アフリカで初開催されるラグビーW杯を国民融和の絶好のチャンスと捉える。
    彼は、長らく国際試合から閉め出され弱小化していた代表チームのキャプテン、フランソワを官邸に招き、国を一つにまとめるためにW杯での優勝が欠かせないと訴えかける。
    戸惑いつつも、大統領の不屈の信念に心打たれたフランソワは、やがて誰もが不可能と考えた優勝目指してチームを引っ張っていくのだが…。(映画データベース – allcinema より)

  • 映画『ニュー・シネマ・パラダイス』 感動!映画好きが泣ける映画No.1

    映画『ニュー・シネマ・パラダイス』 感動!映画好きが泣ける映画No.1

    ニュー・シネマ・パラダイス

    NUOVO CINEMA PARADISO/CINEMA PARADISO 124分 1989年 イタリア=フランス

    ニュー・シネマ・パラダイス
    ニュー・シネマ・パラダイス

    映画を愛するということ

    この映画の感想を言う時は、自分の立場を明確にしなくてはいけないのかもしれない。
    それは、映画を観る者、映画を愛する者を描いた映画で有るからだ。

    もちろん僕は、こうして映画のサイトを立ち上げている以上、映画を愛している一人である。
    従って、この映画に対しても、映画を愛する一観客として観てしまう、しょうがないが... 果たして、映画を娯楽として時々しか映画を見ない人、
    そう言う人にはこの映画はどういう風に映るのであろう?

    娯楽と言えば、映画しかなかった時代に、子供が故の純粋さに、勉強よりも映画に興味を持つのは、ある種自然の成り行き。
    そんな少年が、たまたま映写室のおじさんと仲良くなって、次第に映画の世界にのめり込んでいく。
    そして、自らが映画の映写技師になっていく。
    しかし、映写室のおじさんアルフレードは、少年から青年に成長したサルヴァトーレに、街を出るように言う。
    数十年後、サルヴァトーレはローマで有名な映画監督になり、アルフレードの訃報を聞き、故郷に戻ってくる。
    サルヴァトーレの少年時代のアルフレードとのやり取り、また、街の人々が映画観る姿が微笑ましい。

    そう、この映画観ている観客達がそうであるかのように...。 もちろん、映画の中の彼らの方がもっと純粋である、それはこの映画を観ている我々の願望でも有るのかもしれない。
    そして、サルヴァトーレは成長して恋をする。
    徐々に、映画だけではない人生が彼の前に現れてくる。
    しかし、サルヴァトーレは街を出ても、映画監督になっているのである。

    ここでふと、自分を振り返る。
    人生は、映画のような作られたものではない。
    いや、映画にも素晴らしい点が沢山ある。
    しかし、アルフレードは、「街を出ろ!絶対に戻ってくるな」と言う。
    その言葉の中に、人生にはいろいろな生き方が有ることを言っているように思えて ならない。

    アルフレードの人生は、映画だけに生き、読み書きも出来ずに人生を過ごしてきた事への後悔の有った人生なのかもしれない。
    彼の素晴らしい想い出は、サルヴァトーレとの出会いだったのかもしれない。
    サルヴァトーレは、映画から離れるために街を出たが、映画の道を選び、そう人生のいろいろな生き方の中から、映画を選んだのだ。
    いろいろな人生の選択肢から、またいろいろな経験から、サルヴァトーレは映画を選んだのである。

    僕はこの映画を、決して映画こそが人生である...と言ってる訳ではないと思う。
    人生に起こるいろいろな事は、映画以上に素晴らしい事なのだ、そして、その傍らに映画を置いておくともっと豊かに素晴らしい人生が送 れるのではないか?そんな思いを抱く。
    街に戻ってきたサルヴァトーレは、映画館の取り壊しを見る。
    そしてアルフレードが残したフィルム、かつて切り取られたキス・シーンばかりを集めたフィルム、それは郷愁と共に、人生として映画を 選んだアルフレードの魂を、サルヴァトーレは感じ取ったに違いない。

    街を出たからこそ、人生が豊かに感じられるからこそ、映画の素晴らしさを感じ取れるのであろう。
    この映画は、映画そのものを描いた映画...私には涙と歓びを持ってしか観ることの出来ない、大事な映画なのである。

    私的『ニュー・シネマ・パラダイス』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    映画が好きな人なら共感できない人はいないだろう、でも映画が好きな人以外でも、自分の青春に思い入れがあるなら、何か共感できることがある筈。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    この作品が出来てから25年以上が経過するが、監督の故郷に対する思い入れの深さは今でも変わらない。最近(2015年)テレビで、トルナトーレ監督がシチリアを訪れて、映画の想い出を語ってくれたのは、印象的だった。
    映画(の内容)自体が、監督の青春そのものだったらしい。

    (2020.07.07. 追記)

    トルナトーレ監督は、地元の人々を映画に実際に出演させました。
    2015年でも、当時、映画の撮影エピソードやエキストラ出演した人々がトルナトーレ監督に話かけます。
    青春はある意味、美化されて思い出となりますが、それをそのままパッケージにしたような話であり、これはファンタジーとも言えるかもしれない。
    知り合いのプロデューサーが、この作品は「最低」という評価をしています。
    それも理解できる部分なのです、あまりに映画へのオマージュにあふれ過ぎていて、問題提起や時代性という映画の本来の力を使っていないというのも判ります。

    トルナトーレ監督は『マレーナ』や『海の上のピアニスト』でも同様に、正確な事実を描くのではなく、彼の創造した世界=ファンタジーとして、その時代をとらえている気がしてなりません。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    少年トトは実際に街に住んでいた一般の男の子の中から選ばれたカシオ少年。
    フィリップ・ノワレの名演も、カシオ少年の可愛らしさ・表現力には敵わない。
    逆に、街の人々が多くエキストラとして参加し、映画を愛していたからこそ成立した作品だと思う。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    映画のキス・シーンをカットするところとか、映画館の情景が生き生きと描かれている。
    そして、映写機からの光を反射させて、建物の外に映画を投影させるところは、映画館の素晴らしさを感じさせてくれる演出と言える。

    ⑤ エンターテイメント性

    笑って、泣いて、感動して~深く考えなくても、自分の青春へのオマージュを感じることが出来るだろう。

    (2020.07.07. 追記)

    昨日、エンニオ・モリコーネが91歳で亡くなった(合掌)。

    セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』などのマカロニ・ウエスタンで多くの音楽を提供、と同時にジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品にも多く関わっている。
    この映画のスコアも印象的であり、ロマンチックで素敵な楽曲になっています。

    映画にとっては、音楽も重要な要素だと感じさせてくれる作品です。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    何か素晴らしいテクニックを感じることはないが、映画好きな監督らしいツボを押さえた演出になっていると思う。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    実は普遍的なテーマを正統派の語り口で描いている。これを映画ではなくてサッカーや何か青春の1ページに置き換えてみても成り立つ物語。
    出てくるアイテムも素敵で、ラストの映写シーンは、涙無くして見れない筈。

    ⑧何度も見たくなるか?

    人を前向きにさせてくれて、人生を思い返すことが出来る、と言う点で、何度も見てしまう。
    何度見ても、泣いてしまう、そんな作品。

    映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のデータ

    監督■ジュゼッペ・トルナトーレ
    製作■フランコ・クリスタルディ
    脚本■ジュゼッペ・トルナトーレ
    撮影■ブラスコ・ジュラート
    音楽■エンニオ・モリコーネ
    編集■マリオ・モッラ
    美術■アンドレア・クリザンティ
    出演■フィリップ・ノワレ/サルヴァトーレ・“トト”・カシオ/ジャック・ペラン/アニェーゼ・ナーノ/マリオ・レオナルディ/イザ・ダニエリ/レオポルド・トリエステ/ブリジット・フォッセー 『ニュー・シネマ・パラダイス』オフィシャルサイト

    アカデミー賞 1989年 外国語映画賞授賞
    カンヌ国際映画祭 1989年  審査員特別賞授賞 ジュゼッペ・トルナトーレ
    ゴールデン・グローブ 1989年  外国映画賞授賞

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    映画『ニュー・シネマ・パラダイス』

    【解説】
    シチリアの小さな村にある映画館パラダイス座。
    そこで青春時代を過ごした映画監督サルヴァトーレが、当時、慕っていた映写技師アルフレード(フィリップ・ノワレ)の訃報を聞き、故郷に帰ってくる。
    そして、少年時代、青年時代の思い出に浸っていたサルヴァトーレが受け取ったアルフレードの形見には、映画への愛とアルフレードの想いがぎっしり詰まっていた・・・。
    弱冠29歳のトルナトーレ監督が、映画を愛する全ての人に送る感動編。
    劇場とフィルムにまつわるエピソードはどれも楽しく、その中で展開される悲喜こもごもの人生模様。
    エンニオ・モリコーネの切なくも美しいメロディに包まれて迎える、映画の持つ“力”が具現化されたクライマックスは、涙なくして観られまい。

    かなり印象を異にする3時間完全オリジナル版もあるが、はっきりいってこちらだけで十二分である。(映画データベース – allcinema より)