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  • 映画『クリミナル 2人の記憶を持つ男』悪役のケヴィン・コスナーが渋い!

    映画『クリミナル 2人の記憶を持つ男』悪役のケヴィン・コスナーが渋い!

    映画『クリミナル 2人の記憶を持つ男』 CRIMINAL

    囚人に埋め込まれた、殺されたCIAの記憶
    世界を救うタイムリミットは記憶が消えるまでの48時間

    公開情報■2017年2月25日 新宿バルト9他、全国ロードショー

    新しいバイオレンス・アクション・ムービーの登場

    『フェイス/オフ』や『ボーン・シリーズ』などのテロリストから世界を救う物語。
    007に始まったこの手のバイオレンス・アクションの作品群は、入り口にどういう設定を持ってくるか?と言う点が見どころの一つになってくる。

    『フェイス/オフ』では顔を入れ替えられ、『ボーン・シリーズ』では記憶を書き換えられる。
    この作品では、死んだCIA捜査官の記憶を犯罪者の脳に注力するというもの。
    アクションものではないが、SF映画では『トライセンデンス』が脳の機能をコンピュータに移植する、『ペイチェック 消された記憶』では記憶を消される、古くはフィリップ・K・ディック原作の『トータル・リコール』まで遡れる。

    なんとなく近いうちに記憶の一部は移植できる時代が来そう~という気にはなってきます。
    IPS細胞とかでもそうですが、人自身のコピーとか記憶のコピーができた時に、人格や人権とかどうなっていくのか?という命題にぶち当たります。

    この作品は、ハリウッドの大スター、ケヴィン・コスナーがサイコパスの犯罪者、サイコパスは脳自体に欠陥があるので、(映画ではそこに記憶を注入できるような設定のお話になっています)記憶の移植先の脳適合者となります。

    犯罪を解いていていく、そして戦うアクション・シーンと男っぽい映画であると同時に、それまで善悪や笑いや悲しみと言う共感性を持たなかった人間に、他人の記憶と共に感情が入ってくる姿が入ってくる、そこがこの作品の見どころになります。

    そこでぶち当たるのが上記の命題で、記憶の持ち主が愛した女性を愛せるのか?また愛されていた女性は、外見の違う愛した人の記憶(共有した経験)を持つ人を愛せるのか?
    というところに向かっていきます。

    アクションだけではない、見事なラブ・ストーリーになっている作品です。

    私的『タイトル』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    二つの記憶を持たされてしまった主人公、サイコパスで正義心や愛といった感情を持つことが無かった人生に、強制的にそれが記憶と共に入ってくる。

    記憶を挿入されて男は、徐々に死んだCIA捜査官の妻との愛の記憶を思い出し、彼女に好意を感じ始める。
    そして彼女は・・・

    作品では答えは出ませんが方向性を持って終わります、それが正しいかどうかは判りませんが、これからの時代はそういうことも考える時代がくるということかもしれません。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    バイオレンス・アクションに新しい工夫をしようとする意気込みを感じることができる。
    また、愛というものがどこに存在するのか?

    一方で近未来的な物語として、脳移植や記憶の保存ということに対する倫理観がどうなるのか?
    この作品の先には興味深い世界がある気がする。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    変わろうとしない男と内面から変わっていく姿をケヴィン・コスナーが見事に演じている。
    基本、正義の味方を演じてきた彼が、久々に悪役を演じているが、この役も前回同様に善悪が折り重なった役柄になっている。

    そして個人的にはなんと言っても、ガル・ガドットの存在、亡くなったCIA捜査官の妻で、元犯罪者の中にその夫の姿を見るという難しい役どころと、そして”反則”と思わせるくらいの美しさで「そりゃぁ~サイコパスでも惚れるでしょ!?」と思ってしまうくらい。

    脇にゲイリー・オールドマンとトミー・リー・ジョーンズを配しているところは豪華、ゲイリー・オールドマンは今回は正義の味方。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    やはりアクションものは大画面で見ると迫力があります。

    それになんと言っても映画ならではの豪華俳優陣、ケヴィン・コスナー、ゲイリー・オールドマン、トミー・リー・ジョーンズはもちろんのこと、ガル・ガドットは『ワイルド・スピード・シリーズ』の活躍が認められて『ワンダーウーマン』では主演デビュー、冒頭で殺されるCIA捜査官役にライアン・レイノルズは『デッドプール』で主演と新旧の主役級が勢揃い。
    脇でもジョルディ・モリャという悪役は、いつもどこかで観た気がする人(笑)

    ⑤ エンターテイメント性

    アクションあり、人間ドラマあり、そして恋愛ありの楽しめる作品です。
    もちろん使われているVFXもなかなか、車、ヘリコプター、軍用輸送機も使った迫力のシーンも見もの。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    ノンストップ・アクション映画として取りまとめている点も良いが、個人的には主人公の変化してく様子を、ケヴィン・コスナーから演技として引き出している点と、やはりガル・がドットの魅力を引き出したことにより、冒頭に亡くなったライアン・レイノルズ演じる捜査官の愛の深さが伝わり、主人公の人格の変化にリアリティを持たせている。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    アクション映画の傑作『ザ・ロック』(マイケル・ベイ監督、ニコラス・ケイジ主演)のデヴィッド・ワイズバーグ。
    最近は脳科学や神経生物学、A.I.といった研究の進歩で、記憶の移植と言うものも可能になる日も近いと言われている。
    そのアイディアを基に壮大なアクション作品を作り上げている。

    と同時に、上にも書いたように亡くなった夫を愛する妻、その夫の記憶を持つ凶悪犯との人間関係というもの織り交ぜながら描いている。

    ⑧何度も見たくなるか?

    作品としての展開の面白さという点もあるが、個人的にはガル・ガドットの魅力が大きい。
    けっこう、そこの価値は大きいと思っている。
    でも、この手の作品が好きな人には何度でも楽しめる作品。

    映画『タイトル』のデータ

    監督■アリエル・ヴロメン『THE ICEMAN 氷の処刑人』
    脚本■ダグラス・S・クック、デヴィッド・ワイズバーグ『ザ・ロック』
    出演■ケヴィン・コスナー/ゲイリー・オールドマン/トミー・リー・ジョーンズ/ガル・ガドット/ライアン・レイノルズ
    公開情報■2017年2月25日 新宿バルト9他、全国ロードショー
    配給■KADOKAWA

    (C)2015 CRIMINAL PRODUCTIONS, INC. All Rights Reserved.

    公式サイトはこちら

    国際秩序を崩壊させかねない重大なテロを阻止しようとしていたCIAのスパイが、任務中に非業の死を遂げた。
    オープニングから圧倒的な緊迫感がみなぎる本作は、殉死したスパイの“記憶”を脳に移植された死刑囚の運命を壮大なスケールで映像化したアクション・エンターテインメント。
    CIAとテロリストの熾烈な駆け引きを背景に、凶悪犯でありながら世界を救う“最後の希望”となった男の孤独な闘いを描き出す。
    記憶が失われるまでの48時間以内にテロを防がなくてはならない設定が濃密なスリルを呼び起こすとともに、未知の感情に目覚めた主人公が新たなアイデンティティーを探し求めるドラマが、観る者の胸を熱く揺さぶってやまない。

    ハリウッドのスーパースターから円熟の演技派へと転身したケヴィン・コスナーが主演を務め、ゲイリー・オールドマン、トミー・リー・ジョーンズ、さらには『デッドプール』で大ヒットを飛ばしたライアン・レイノルズ、『ワンダーウーマン』に主演するハリウッドの新ミューズ、ガル・ガドットという新旧の豪華キャスト共演が実現。“記憶”というエモーショナルなモチーフと極限のタイムリミット・サスペンスが想像を絶する形で融合し、まさに予測不可能な驚きに満ちた快作がここに誕生した!(C)2015 CRIMINAL PRODUCTIONS, INC. All Rights Reserved.

  • 映画『海賊とよばれた男』  モデルは出光佐三、ビジネスの成功の秘訣

    映画『海賊とよばれた男』 モデルは出光佐三、ビジネスの成功の秘訣

    映画『海賊とよばれた男』

    戦う理由は、未来にある――。

    事業は「いっちょやってやろうやないか」の精神が大事!

    「いっちょやってやろうやないか」は主人公・国岡鐡造の言葉。

    この作品は、最近(2016年12月)、昭和シェル石油との合併話で創業家と経営陣が対立している出光興産の創業者・出光佐三の逸話をベースに、百田尚樹が小説化、山崎貴監督が映像化したものだ。

    これは『永遠の0』のトリオ、原作・百田尚樹、監督・山崎貴、主演・岡田准一が再度タッグを組んだ形、まぁ~柳の下のどじょうは何匹いるか?だけど。

    この作品は、山崎貴監督が脚本・演出・VFXを担当しているだけあって、作品の質も高く戦禍で廃墟と化した東京の街も見事に映像化されている。
    大画面で観るだけの価値のある作品でもある、そしてこの作品を見て改めて2つのことに気付くことができた。

    その一つ目は、百田尚樹と言う作家としての才能に驚かされる、主人公の経営者としての描写が素晴らしく日本人に勇気を与えてくれることだ。
    日本が敗戦から立ち直って、石油メジャーに戦いを挑み生き残ってきたことは、主人公の精神、自ら先頭に立って汗を流し、社員と運命を共にして、リスクを背負って事業を推し進めていく姿にある。
    そこには理想のリーダー像が描かれている。

    現代の日本でも成功しているベンチャーの社長たちの精神も「まずやってやろう」と言う精神があると思う。
    自分でまず行動をとって、出口を決めてそこまで徹底的に突き進むことがビジネスの成功の秘訣。
    成功のための手法はないが、秘訣としたら”行動すること”しかない。
    行動するためには”高い理想”が重要、高い理想に突き進む人を見ると人は付いてくる。

    ビジネスマンには原作は必読の書・この作品は必見の映画と言える。

    国威発揚の物語として

    たびだひ「戦場にいたことに比べれば、こんなこと大したことありません!」的なセリフや戦場で亡くなった人への敬礼と言った部分が多数出てくる。

    海賊というのも”武士の精神”の延長の言葉として使われていたし、戦前に有った日本人の精神性は素晴らしい、日本が戦後復興したのはそう言った精神性の延長上にある、と言った節が散見される。

    個々のエピソードが感動的であり、自分も日本人である以上、日本の独立性も含めて共感できる部分が有ったが、私にとっての違和感は「第二次世界大戦の敗戦をいつまで引きずるのか?」と言う点であることが判った。

    『永遠の0』に対して、宮崎駿監督が苦言を呈したのは、この部分だったということに気付いた。
    私は戦争を仕掛けた日本人はその”業”を背負っていくべきと考えている、だからと言って後ろ向きになる必要はない。

    戦没者に対して哀悼を持つことも、日本のために戦った一兵士たちの命に敬意を表することも必要だと思う、と同時に戦争を起こしたことの”業”を背負うべきと考えている。
    『風立ちぬ』や『この世界の片隅に』に有って、『永遠の0』や『海賊とよばれた男』には無いものだった。

    イギリスのフリーゲート艦に一歩引かない堤真一演じる艦長の姿を見て感動するのと、ハリウッド映画『エアフォースワン』のハリソン・フォード演じる大統領が活躍するのを見て拍手喝采するのは、ある意味同じで気持ち良いものであるが、日本人としては常に背負っているものがあるという想いは持ち続けたい。

    私的『海賊とよばれた男』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    上記の2つのテーマについて考えさせられて、ある意味、非常に見て良かった作品。

    ビジネス成功の秘訣と言う意味では、非常によく出来た作品で勇気がもらえる。

    私個人は敗戦を否定するつもりは無く、最近再見した東野圭吾原作の『手紙』でも、強盗殺人犯の家族(作品では弟)はその罪を背負いつつ、前向きに生きていく姿が描かれていた。
    一方的な戦前を賛美するような表現には違和感を感じた、それを気付けた意味は大きい。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    映画『永遠の0』よりも、より百田尚樹の原作の意図が鮮明に出ている分、非常に作り手の強い意志を感じるが、それは映画の監督や製作者の意図なのかは不明。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    岡田准一は『永遠の0』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した、それ以上に老けた時の演技に力が入っていた、今回もアカデミー賞あるかな?と思わせてくれたけど、2度目は流石にハードルが上がってる気もする、熱い男は感じるけど、ある意味大仰な演技とも言える。

    染谷将太演じる主人公の右腕役だが、他が老けていくのに彼だけ若いままだったのは何か意図が有るのかな?

    それにしても、綾瀬はるかが、ゲスト出演のような扱いなのがもったいない。
    家族的な経営を支えた女性と言う立ち位置だと思うが、登場シーンが少なく判りにくい。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    戦前・戦中・戦後と言う時代の荒波を映像化すると言う壮大な事業は、映画ならでは。
    白組のVFXは流石で、陳腐さを感じさせない映像。

    ⑤ エンターテイメント性

    映画を観た人に「勇気」や「自信」を与えてくれる、魂が揺さぶられる感動もある作品。
    物語の展開も大きく、その映像の素晴らしさと共に、エンターテインメントの山崎貴監督!と言える作品に仕上がっている。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    山崎貴監督は蛇足が好きな監督なんだと思う、『永遠の0』でもラストの回想的に登場人物が次から次へと出てきて零戦が現代を飛び去るシーンとか、今回はラストに門司沖に船で乗り出すシーンは余韻を残すためにやっているのか、個人的には要らない気がする。

    またこれは個人的な思想の問題でもあるけど、船員にバンザイをさせるシーンが有るが、より感動的にするためなのか、国威高揚のためにあるのか、やり過ぎ感が有った。
    逆に、それが意図的なものかもしれないが。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    残念ながら原作は読んでいないが、ダイジェスト版のような気がする。
    主人公の人物像の深掘りがされていない点が気になる。

    主人公にしても予告で「なぜ男は”海賊”とよばれたのか-」と強調しているが、海賊としての描写が少なく、違法スレスレの商売から日本国のために商売をすることになった心の変化が良く判らなかった。

    描かれ方が少なかった綾瀬はるか演じる最初の妻が、またラストに話として出て来るが、主人公の妻への想いが判りづらい、何故なら、2番目?の妻との間には子供も作って幸せな家庭を作っている。
    逆にここを削ってでも、他の駆け足の部分を丁寧に描いても良かった気がする。

    ⑧何度も見たくなるか?

    ビジネスをやる上で勇気そしてやる気をもらえる作品、ビジネスマンは必見!
    起業論の本を読む、高い起業セミナーに出るなら、この作品を観るほうがためになると思う。

    でも、今話題になりつつある『この世界の片隅に』の真逆の作品。

    映画『海賊とよばれた男』のデータ

    上映時間■145分
    製作国■日本
    公開情報■劇場公開(東宝)
    初公開年月■2016/12/10
    監督■山崎貴
    原作■百田尚樹 『海賊とよばれた男』(講談社刊)

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    脚本■山崎貴
    撮影■柴崎幸三
    特殊メイク■吉田茂正
    美術■上條安里
    衣裳■水島愛子
    出演■岡田准一/吉岡秀隆/染谷将太/鈴木亮平/野間口徹/ピエール瀧/光石研/綾瀬はるか/堤真一/近藤正臣(特別出演)/國村隼/小林薫

    (C)2016「海賊とよばれた男」製作委員会 (C)百田尚樹/講談社

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    【解説】

     百田尚樹の一大ベストセラーを「永遠の0」に続いて山崎貴監督、岡田准一主演で映画化した大作ドラマ。若くして石油業に乗り出し、欧米石油メジャーに果敢に立ち向かって激動の時代を駆け抜けた男の一代記を吉岡秀隆、染谷将太、鈴木亮平、堤真一、綾瀬はるか、小林薫をはじめとする豪華キャストの共演で描き出す。
     石油の将来性に目を付け、石油販売業を始めた青年、国岡鐡造。彼は“店員(従業員)は家族と同然”と店員との絆を大切にし、既得権益が強固な石油業界を相手に、破天荒な発想と行動力で販路を拡大していく。やがてその存在は石油メジャーも無視できないほど大きくなり、ついには石油の輸入ルートをすべて封鎖されるという絶体絶命の窮地に陥る鐡造だったが…。(allcinemaより)

  • 映画『この世界の片隅に』  能年玲奈が「のん」に変わる時

    映画『この世界の片隅に』 能年玲奈が「のん」に変わる時

    映画『この世界の片隅に』

    この世界の片隅に

    昭和20年、広島・呉。
    わたしは ここで 生きている。

    戦争と共に生きるということ

    きっとこの映画を見て涙するのは、ある程度年配の人たち、私のような50代とかそれ以上なんだと思う。
    私の世代は、やはり子供の頃にマンガ「はだしのゲン」を読んで、戦争の悲惨さ・原爆の怖さを知った。
    そして大人になって、野坂昭如原作のジブリアニメ『火垂るの墓』に涙した。

    でも、この作品は本当に若い人たち、特に小中学生の頃に、自分たちの子供の頃に通過したように、必ず見て欲しいと思った作品。
    だから小中学生のお子さんがいるは親は、一緒に映画を見に行くには良い機会かもしれない。
    戦後70年が経過して、自分たちが語り継げない戦争のことを、家族で話をする良い機会になると思う。

    ドキュメンタリーに近い物語。
    主人公すずは、昭和元年生まれ、昭和史をそのまま生きたと言う設定、それは戦争と共に生きると言うことは何か?と言うことを前半は考えさせられる。
    軍港の街・呉、そこには普通に軍艦が停泊している、大和や武蔵が丘から見えるのが日常の風景。

    今の日本では考えられないが、日常の中に軍隊が存在している。(ちなみに海外でも普通の光景、隣国韓国に行ってみると街中に軍隊がいる)
    昭和20年までの日本はそれが普通の日常だった。

    でも戦争と隣合わせで生きていても、人は笑うし、泣くし、怒るし、そこには淡々とも言える日常があるということ。
    ここでは戦争に行かない人たちを描いている、一見のんびりした生活、苦しいけれど、そこをたくましく生きる主人公を描いている。
    たくましさとのんびりさ、この両方を併せ持つ主人公を超えで演じたのが能年玲奈改めのん。

    相反する「たくましさ」と「のんびりさ」を持つ主人公が、のんそのままのような感じさえする融合ぶり。
    きっと、のんでなければ成立しなかったのでは?と思わせるくらい彼女の演技(声)が良かった。

    小さい頃に祖父や父に聞いた地方都市の風景が見事に描かれていて「こうやって市井の人々が戦争に飲み込まれて行くんだ」と感じる。
    そして戦禍はどんどんと身近に近づき、そして運命の日へと続く。

    これはおそらく、アニメだから見れる、見ることのできる映像だろう、実写だったら目を背けたくなる光景が後半は続く。
    そして、昭和20年8月15日を迎え玉音放送を聞く主人公すずが叫ぶ。

    「なんで止めるんだよ~」

    と。
    止めるんだったら最初から戦争なんてするな、そんな無責任なことで戦争を始めるな!と。
    必要な戦争なんてない、自分たちの生活をどれだけ壊してくれたのか?!と。

    この作品には希望がある、戦争が終わって生活が楽になる保証はない、でも戦争のない日々がやってくると言う希望、そしてまたその新しい日常を淡々と生き抜くしかない。

    戦争に打ちのめされても人は強い、そこから立ち直っていく、日常を生き続けることの芯の強さがこの作品にはある。
    だから若い人に是非、見て欲しい作品でもある。

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    私的『この世界の片隅に』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    戦場とはどこにあるものなのか?最近の日本ではそんな「のん気」な議論がされている。
    いったん戦争になれば、戦場というものは果てしなく拡大していく、そして日常の一風景になってしまう。

    戦争をするということは、全ての人を巻き込み、そして不幸にしていく。

    私は小さい頃に祖父から富山大空襲の話を聞いたことがある。
    祖父の家は、富山市街からは離れていたため被害は無かったが、空が真っ赤になったと言っていた。
    この映画を見ていると、そういう戦争体験者の記憶を一つ一つ積み上げた感覚がある。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    原作のマンガをクラウドファンディングを作って映画化。

    多くの人が「あの大戦を忘れてはいけない」と言う思いがこもった作品。
    戦後が70年以上経過して、主人公・すずが生きていたら90年、広島に原爆を投下した国のプレジデントが訪問もした。

    日本はこの出来事を永遠に語り継いで、戦争をしない国として続いていかなければ、と言う想いを感じる。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で主役を務め、一躍国民的アイドルとなった能年玲奈。
    「あまちゃん」の直前に映画『ひまわり ~沖縄は忘れない、あの日の空を~』でヒロインをしていた彼女に会った時の印象は”本当におとなしい子”という印象で、小泉(今日子)さんの娘役をやるとは、ビックリしたもの。
    いつの間にか、能年玲奈が”のん”に改名していて、のんとしてはデビュー作にあたる。

    10歳くらいから21歳くらいまでのすずを見事に演じたのん(能年玲奈)、彼女があまりにもピッタリだった。
    周りの声優陣は、ベテランの人々で安定感があった。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    なんとも原作の絵をそのままアニメにしたような感じが良い。

    絵がほんわかとした雰囲気を醸しながら、一方でシビアな現実が描かれる。
    上にも書いたが、このギャップが良い、この作品を見て、二度と見たくなくなる作品では駄目だから。

    この世界の片隅に

    ⑤ エンターテイメント性

    淡々とした日常で、綿密な取材やロケハンをして、戦前・戦中を描いているが、一方で少女から大人の女性への成長を描いている。
    すず一人に起きた出来事は、おそらく色んな人の体験を集めて、演じさせているんだとは思うけど、映像や音楽の持つ柔らかさがマッチしている。

    そして戦争・原爆投下という戦争のある日常をオブラートに包んで私たちの前に提供してくれることで、何度も見たいと思わせる作品に仕上がっている。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    原作の持つ良さをそのままアニメーションにした感じ。

    一方でモノローグ(独り言や心の声)が多い、やはり今の私たちに理解できないところを説明する必要があるから、なのかもしれない。
    その点では、ドキュメンタリーっぽい作りになってしまっている。

    ただ、のんの声(やその雰囲気)に随分、助けられていると言う意味では、キャスティングの妙とも言える。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    脚本というか、原作が素晴らしい、本当に戦前・戦中の暮らしが良く描かれている。

    かつての戦前を描いた日本映画の家族の風景が、この作品にも描かれている、それがごく自然。
    彼女は不幸だったのだろうか?最後は前向きに強く生きていくのだから、きっと幸福になっていくんだと思う。

    そんなすずの姿を見ているだけで涙が出てくる。

    ⑧何度も見たくなるか?

    日本人は、毎年のようにこの作品を見て欲しいと思えるくらい。
    戦争の悲惨さも伝わってくる、でもこのほんわかとした雰囲気の絵が、クッションとなってくれる。

    おそらく実写で見てしまったら、数年は見たくなくなる、それでも心に伝わる作品の強さというものは決して変わらない。
    映画の枠で考えると、個人的には『君の名は。』の方が好きだけど、アニメ、マンガ、映画と言う枠を超えたところにある作とも言える一本。

    映画『この世界の片隅に』のデータ

    この世界の片隅に

    上映時間■126分
    製作国■日本
    公開情報■劇場公開(東京テアトル)
    初公開年月■2016/11/12

    監督■片渕須直
    アニメーション制作■MAPPA
    企画■丸山正雄
    プロデューサー■真木太郎
    原作■こうの史代

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    脚本■片渕須直
    キャラクターデザイン■松原秀典
    作画監督■松原秀典
    音楽■コトリンゴ
    主題歌■コトリンゴ  『悲しくてやりきれない』

    声の出演■のん 北條(浦野)すず/細谷佳正 北條周作/稲葉菜月 黒村晴美/尾身美詞 黒村径子/小野大輔 水原哲/潘めぐみ 浦野すみ/澁谷天外

    (C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

    公式サイトはこちら

    【解説】
     戦時下の広島の軍港都市・呉を舞台に、この街に嫁いできたのんびり屋のヒロインが、物がなく苦労が絶えない日々の中でも持ち前の明るさとしなやかさで、つましくも心豊かな生活を送っていくさまと、そんなささやかな幸せが徐々に戦火に呑み込まれていく残酷な現実を、丁寧な日常描写の積み重ねで描ききったこうの史代の傑作漫画を「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直監督が長編アニメ映画化した珠玉の感動作。TV「あまちゃん」で一躍国民的人気女優となった能年玲奈が“のん”名義でアニメ映画に初挑戦し、ヒロインの声を好演。
     1944年(昭和19年)2月。絵を描くことが好きな18歳のすずは、急に縁談話が持ち上がり、あれよあれよという間に広島市から海軍の街・呉に嫁にやってくる。彼女を待っていた夫・北條周作は海軍で働く文官で、幼い頃に出会ったすずのことが忘れられずにいたという一途で優しい人だった。こうして北條家に温かく迎えられたすずは、見知らぬ土地での生活に戸惑いつつも、健気に嫁としての仕事をこなしていく。戦況が悪化し、配給物資が次第に減っていく中でも、すずは様々な工夫を凝らして北條家の暮らしを懸命に守っていく。そんなある日、道に迷っていたところを助けられたのがきっかけで、遊女のリンと仲良くなっていくすずだったが…。(allcinema)

  • 映画『奇蹟がくれた数式』 『グッド・ウィル・ハンティング』の基になった物語

    映画『奇蹟がくれた数式』 『グッド・ウィル・ハンティング』の基になった物語

    映画『奇蹟がくれた数式』 The Man Who Knew Infinity

    私には二つの偉大な“発見”がある-
    彼の才能と、彼との友情

    奇蹟がくれた数式(字幕版) — Amazonで見る

    人種、人間性、世代、それを乗り越えた友情の物語

    あなたが誰にもない優れた才能を持っていたとしたら、しかも天才と言われるほどの才能、でもそれを活かすことができないところで生まれたとしたら、どうしますか?
    1997年製作のハリウッド映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の中に、主人公ウィルが「ラマヌジャン以上」の天才だ!と言う下りがある。
    ウィル自身も、アメリカの貧しい白人層の中で育ち、その才能を生かすことができないところから物語が始まる。(映画『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』 人生の選択をする時 の記事はこちら)

    インドで生まれた天才数学者が、運命も味方してイギリスのケンブリッジ大学に留学できることになる。
    しかしそこに待っていたのは、無関心と差別だった。

    主人公のインド人青年・ラマヌジャン(デヴ・パテル)の才能を認めたケンブリッジ大学のG.H.ハーディ教授(ジェレミー・アイアンズ)は彼をイギリスに呼び寄せ、研究を進めるように師事する。
    しかし、ハーディ教授は、ラマヌジャンの研究には興味を示したが、ラマヌジャン本人には興味がなかった。
    ラマヌジャンは研究に没頭するのと同時に、色々な差別を受けながら、研究をし続けるうちに少しずつ病魔に蝕まれていく。

    20世紀初頭のイギリスを舞台に描かれる物語。
    イギリスが7つの海を支配した時代、インドを植民地としていた時代の話、ちょうど第一次世界大戦の頃。
    イギリス人は植民地にしていた人々を差別していた、白人優位主義とでも言うのかな。
    アメリカでの黒人に対する差別は有名だけど、当然のようにイギリス人の有色人種への差別も強い。
    昔、聞いた話では、ヨーロッパでは差別ではなく区別とも言うと、人間ではなくペットと同様に扱うのが有色人種だとも言われいる、そんな時代の話。

    考えてみると、日本人も20世紀初頭は、アメリカやイギリスの帝国主義に向こうを張って、アジアに対して大東亜共栄圏と称して、植民地化を進めていた。
    当然の事ながら、朝鮮や台湾、そして中国、東南アジアの人々を下に見る傾向がある。
    それは、今でもとても感じることである。

    インド人に無関心だったイギリスの教授が、その才能だけではなく、少しずつその人間性にも興味を持ち、そしてその才能はどこから来るのか?と興味を持ち始める。
    そしてそこに友情が芽生え人種間、年代を越えて判り合っていく。

    奇蹟がくれた数式

    私的『奇蹟がくれた数式』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    天才が持つ才能とは何がもたらすのだろうか?神からもらうもの?
    例え天才であったとしても、それを認めてくれる人がいなければ、人は幸福になれない。

    誰にでも自分の才能が何かある、それを見つけて努力して、それを認められるところで発揮することで人は幸せになる。
    主人公・ラマヌジャンは、果たして幸せだったのだろうか?観客は彼の人生に涙する。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    数学という難しいテーマを、人にスポットを当てて判りやすく見せてくれる。
    天才でありながら、生まれた場所だけで差別されて無視された半生、そして認められた後半生に自分の認められるべき場所の重要性を感じる。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    イギリスの紳士を演じたジェレミー・アイアンズは流石、彼もまた天才学者であるが故に対人関係に関しては不器用、そんな繊細な人間性を見事に表現。
    また、デヴ・パテルは『スラムドッグ$ミリオネア』で映画メジャーデビューしたインド人俳優、彼でなければ難しかった役どころ、そして神と接する気持ちが伝わってくる。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    インドとイギリスと言う全く異なる国民性や文化の国を繋ぐことができるのは映像の素晴らしさ。

    ケンブリッジ大学の最高峰トリニティ・カレッジでの撮影が実現、ニュートンの書物が展示されたレン図書館、ニュートンが重力を発見したリンゴの木のある中庭などを映像化、これは映画ならでは。

    奇蹟がくれた数式

    ⑤ エンターテイメント性

    原作が「数学の知識がなくても楽しめる」と絶賛された、それを見事に映像化し、飽きることがない。
    決して派手な作品ではないが、アメリカやイギリスでも、ミニシアターからヒットを記録した作品。

    好奇心とそして感動・最後に涙する、そんな楽しみを与えてくれる。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    ジェレミー・アイアンズらイギリス人のベテラン俳優陣と、デヴ・パテルの若手の演技を見事に引き出している。
    また、イギリスとインドの文化の違い、そして差別の構図を、細かい所作で表現している。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    脚本なのか原作なのか、実は主人公の親子関係、そしてインドの習慣が夫婦の間に微妙な影を落とす。
    これが、インド人としてのアイデンティティがもたらす微妙な人間性を見事に描いている。

    ⑧何度も見たくなるか?

    インド人の若者とイギリス人の老教授との友情、インド人の親子関係・夫婦関係を絶妙に描いている、人が生きるには色々な愛が必要だと感じさせる。
    そして、人生において自分の才能をどう発揮するかで幸せを得ることができる、そんなことをふと考えたい時にまた見たい、人間ドラマとして素晴らしい。

    映画『奇蹟がくれた数式』のデータ

    監督・脚本■マシュー・ブラウン 
    原作■ロバート・カニーゲル著「夭逝の数学者・ラマヌジャン無限の天才」(工作舎)
    出演■デヴ・パテル/ジェレミー・アイアンズ/デヴィカ・ビセ/トビー・ジョーンズ/スティーヴ
    ン・フライ
    2016年/イギリス/英語/カラー/スコープ/5.1ch/108分/字幕翻訳:松浦美奈
    公開情報■10/22(土)角川シネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、角川シネマ新宿他全国ロードショー

    奇蹟がくれた数式 Blu-ray — Amazonで見る

    公式サイトはこちら

    【作品紹介】
    イギリス、アメリカ、世界がふたりの友情に涙した──
    国籍も身分も違う、正反対の天才が証明した「奇蹟」と「友情」
    歴史的数式証明の知られざる実話を描いた感動作。

    1914年、英国ケンブリッジ大学G.H.ハーディ教授のもとに、遠くインドから一通の手紙が届く。差出人はマドラス港の事務員ラマヌジャン。手紙には驚くべき“発見”が記されていた。生まれも境遇も全く違う二人の天才が出会い、世界を変える<奇蹟の数式>を証明した実話が映画化。独学で数学を学び、“アインシュタイン並みの天才”と称えられたラマヌジャンと、ケンブリッジの最高峰トリニティ・カレッジで共同研究に人生を懸けた、もうひとりの天才が発見した、人生で最も素晴らしいものとは?その答えが待つ胸を揺さぶる感動のラストに涙と喝采が止まらない──。
    2015 INFINITY COMMISSIONING AND DISTRIBUTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

  • 『君の名は。』  聖地巡礼 東京編

    『君の名は。』 聖地巡礼 東京編

    映画『君の名は。』  your name. のロケ地に行きたい!

    君の名は。

    聖地巡礼(ロケ地巡り)の事前準備に計画書を作成、後日、行ったらInstagramに記録予定(笑)

    (追記)
    東京に関しては、随時、行って写真を撮ってきました。
    平日でも、グループやカップルで聖地巡礼をしている人たちがたくさんいました。
    また外国の人(東南アジアの人)も聖地巡礼をしてました~とても国際的、少しお話もしました!

    東京都と岐阜県飛騨市が中心になるようです。

    映画『君の名は。』の感想はこちらから

    参考文献:もちろん映画!とこちらのビジュアルガイド

    新海誠監督作品『君の名は。』公式ビジュアルガイド

    それと注意ですが、ポケモンGOではありませんが、私有地への勝手な侵入や撮影はNGです。
    撮影する場合は、必ずお店や所有者の人の許可をもらってください。
    早朝・深夜に行くのは止めましょう~周辺の迷惑になります、こちらは責任は負いませんので。

    公式サイトからもアナウンスが出ています、ご確認ください。

    『君の名は。』関連場所訪問(聖地巡礼)についてのお願い

    『君の名は。』関連場所訪問(聖地巡礼)についてのお願い

    拝啓 平素より格別のご愛顧をいただき、厚く御礼申し上げます。
    さて、『君の名は。』公開後、本編中に登場する、または関連のある場所へ、多くのファンの皆様にお越しいただいておりますが、近隣の方々より騒音や早朝深夜の訪問に関する苦情を多数いただきました。関連場所への訪問を予定されている皆様におかれましては、節度のある行動、及びマナーに十分心掛けていただきますようお願い申し上げます。

    敬具
    「君の名は。」製作委員会

    映画『君の名は。』Blu-rayスペシャル・エディション3枚組

    東京編

    Google Map にまとめてみました。

    主人公・瀧くんの自宅マンション以外の撮影ポイントは、かなり正確にマッピングしました。
    瀧くんの自宅マンションと思われる場所は、かなり閑静な住宅街でしたので、正確な場所は載せていませんが、近くに行かれても周りに迷惑をかけないようにお願いします。

    四ツ谷駅周辺

    JR四ツ谷駅から上智大学の背景
    JR四ツ谷駅から上智大学の背景

    君の名は。

    四ツ谷駅赤坂口
    四ツ谷駅赤坂口

    四ツ谷駅赤坂口
    四ツ谷駅赤坂口

    四ツ谷駅で、瀧くんと奥寺先輩が待ち合わせをするシーンなど、何度か出てきます。
    どのシーンも、赤坂口になります。

    紀之国坂から四ツ谷駅方面

    君の名は。

    君の名は。

  • 映画『聲の形』 ストレートに伝わらない心の声

    映画『聲の形』 ストレートに伝わらない心の声

    映画『聲の形』

    聲の形

    伝えたい“こえ”がある。聞きたい“こえ”がある。

    (36人のお亡くなりになった夢を持った人々のご冥福をお祈りします、私は京都アニメーションを応援しています。)

    声=言葉ほど伝わらないものはない

    加害者、被害者、傍観者、第三者、そして親友、友達ってなんだろう?どこからが友達でどこからが知り合い、他人?
    この夏、同じアニメ、青春映画、ハッピー・エンドと共通項があるのに、『君の名は。』が”陽”の作品だとすると、こちらは”陰”の作品。
    『君の名は。』の圧倒的な映像と音楽と共に怒涛のような展開があるが、こちらは静かだけど人の強さ・弱さ・繋がりが複雑に絡み合い流れていく。

    原作は「このマンガがすごい!2015」オトコ編第1位、第19回「手塚治虫文化賞」新生賞受賞!を受賞した大今良時の漫画「聲の形」、少年少女時代のいじめを描きつつ青春の1ページを綴って共感と感動を呼んだ作品。

    このベストセラーコミックを、『映画 けいおん!』(’11年)など、多くの作品を輩出している京都アニメーションにるアニメーション映画化!
    監督はTVアニメ「けいおん!」で監督を務めた京都アニメーションに所属する山田尚子。
    また、脚本も「けいおん!」でも山田監督とコンビを組んだ吉田玲子。
    主題歌には本作に共感したaikoの新曲「恋をしたのは」、個人的には雰囲気とは合ってなかったと思う。

    聲の形

    小学生の頃に、身障者の人を見ると異物を見たと思い自己防衛本能が働くのは子どもの素直な反応だと思う。
    そして、周りに煽られて調子に乗ってしまうのも、そんなクラスの仲間からハシゴを外されて仲間外れにされることも日常だと思う。
    そんな時に「自殺」なんていう心の闇を抱えることもあると思う。
    でもどこかで、自分の心の中に抱えている想いを伝えないと伝わらない。

    それは「聲」なのか?声に形ってあるのだろうか?
    いじめられるのが聴覚障害者ということで、何か特別なこと?と言う誤解を招きそうだけど、誰にでも少しは経験がある苦い青春の一部だと思う。

    今、この作品の登場人物と同性代の人も、かつて通過してきた青春時代(よりちょっと前)を思いを馳せる人も、色々な思いがこみ上げてくる作品。
    私は、後半は涙があふれて止まらなかった・・・

    聲の形

    私的『聲の形』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    子供の頃に「自分の異物」を排除する行為として”いじめ”と言う表現をとることが多いけど、それが引き金になって、クラスの中に波紋が広がっていく。
    どの子供も、私の中では「あるある」なので、主人公のクラスメートの女の子・植野は一番本音に近い部分にいて、面倒見の良い姉御的な立ち位置だけど、そこの距離感を間違えるといじめを主導する悪役になってしまう。
    でもどちらもあるし、第三者的に良い子でいようとする川井みきみたいな女の子も一番いるタイプな気がする。

    子供だって、大人だって、どこかで一歩を踏み出して本音を言える、そんなことが無い限り相手には通じない。
    それが、どんなに大変なことなのか?だから青春ってほろ苦く、人生って辛い長い道のり。

    見ていて涙が止まらなくなる、喪失感から自殺、そこで立ち止まる、留まる、そして再生していく姿に感動する。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    いじめってなんだろう、自殺ってなんだろう、根本的なに今も40年前(私の子供時代)も何も変わってない。
    昭和の後半も、この映画と同じような感じだった。

    この作品では主人公が一歩踏み出すことで、周りも少しずつ前に進んでいく。
    結局人生は、自分の意志と力で一歩ずつ進むしかない。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    この作品はヒロインの女の子が聴覚障害者でしかも可愛い、と言う特殊な状況だから起きるあり得ない話、という意見もネットとかで見かける。
    そこは、原作マンガそしてアニメーションと言う(しかも「けいおん!」の京都アニメーション)ことを考えると、そこは符号として女の子は可愛いのは当たり前、と言う前提が必要だろうと。
    そこに変なリアリティを持ってこなくても良いのでは?と。

    逆にこれを実写でリアルにやったらどうなるのか?とかも考えてしまうけど。
    やっぱり、このくらい重いテーマの青春映画はアニメでやるのも、少し距離を置くことができて見れるのではないのかな?と思う。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    この時期だから、どうしても『君の名は。』と比べたくなってしまう。
    こちらの映像もとっても良くて、日本のアニメーションの質の高さは改めて凄いと思う。

    映画はリアリティでも有ると同時に、虚像でもあるので、アニメと言うところで判りやすく虚像に入り込んで行ける、映画でありアニメでしか表現できないギリギリのところだと思う。
    だから成立しているところかな・・・ヒロインの妹の撮る写真が実写だとちょっとキツイね。

    聲の形

    ⑤ エンターテインメント性

    共感できる、逆に全く共感できない、でも誰でも通過してきた・している真っ最中の物語。
    美しい映像で表現しているところで成功していると思う。

    あっ、全然関係ないけど、大垣市が舞台なんだよね、なんとなく都会と田舎が混在していて、現在とちょっと昔のような雰囲気も有って、『君の名は。』とは違う良さが有った。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    アニメはトリックが使いやすい、男女の性別とかね。
    それと「人の顔を見ることが出来ない」表現をアニメなら簡単にできる。
    (今回の顔に×マークって、何かのアニメで見た記憶があるんだよなぁ~)

    映像としても演出としても、水の表現が素晴らしかった・・・それは涙で有ったり、川で有ったり。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    自分が身障者じゃないので、身障者側の気持ちが判らない。
    でも、人間って身体だけではなく、能力や心の部分にも傷があったりするから、結局、そこを突かれると痛いんじゃないかな?
    聴覚障害者というのも、アニメでヒロインが可愛いと言うのも、一つの符号としてとらえている。
    それ以外の部分に関しては、とっても本音の部分だと思う。

    あえて言うと、親子の仲が良すぎること、ここが一番気持ちが伝わりづらい部分だからね。
    子供が自殺未遂をしたら、こういう反応になるのかな?
    でも、キャラクターの心が近づいたり離れたり、原作が有るから・・・だけど、展開の面白さを感じたし、色んなことを思い起こさせてくれた。

    ⑧何度も見たくなるか?

    重いテーマだけど、ラストはハッピー・エンドで、色んなことを考えさせてくれる。
    作品のどこかに何か答えが有るのか?少し勇気をもらいたい時に見たい映画。

    映画『聲の形』のデータ

    聲の形

    原作■「聲の形」大今良時(講談社コミックス刊)
    監督■山田尚子
    脚本■吉田玲子
    キャラクターデザイン■西屋太志
    美術監督■篠原睦雄
    色彩設計■石田奈央美
    設定■秋竹斉一
    撮影監督■高尾一也
    音響監督■鶴岡陽太
    音楽■牛尾憲輔
    音楽制作■ポニーキャニオン
    アニメーション制作■京都アニメーション 
    製作■映画聲の形製作委員会
    配給■松竹
    声の出演■
    石田将也役:入野自由/西宮硝子役:早見沙織/西宮結絃役:悠木碧/永束友宏役:小野賢章/植野直花役:金子有希/佐原みよこ役:石川由依/川井みき役:潘めぐみ/真柴智役:豊永利行/石田将也(小学生)役:松岡茉優
    公開日■2016年9月17日

    公式サイトはこちら

    映画『聲の形』

    ガキ大将だった小学6年生の石田将也は、転校生の少女、西宮硝子へ無邪気な好奇心を持つ。
    「いい奴ぶってんじゃねーよ。」自分の想いを伝えられないふたりはすれ違い、分かり合えないまま、ある日硝子は転校してしまう。
    やがて五年の時を経て、別々の場所で高校生へと成長したふたり。
    あの日以来、伝えたい想いを内に抱えていた将也は硝子のもとを訪れる。
    「俺と西宮、友達になれるかな?」再会したふたりは、今まで距離を置いていた同級生たちに会いに行く。
    止まっていた時間が少しずつ動きだし、ふたりの世界は変わっていったように見えたが――。
    (c)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

  • 映画『君の名は。』  オッサンでも感動できる青春映画の傑作登場!

    映画『君の名は。』 オッサンでも感動できる青春映画の傑作登場!

    映画『君の名は。』  your name.

    君の名は。

    まだ会ったことのない君を、探している

    『君の名は。』  聖地巡礼 東京編計画書 はこちらへ

    遂にBlu-ray&DVDが発売!

    【Amazon.co.jp限定】「君の名は。」Blu-rayコレクターズ・エディション 4K Ultra HD Blu-ray同梱5枚組 (初回生産限定)(早期購入特典:特製フィルムしおり付き)(オリジナル特典:描き下ろしA4特製フレーム高画質印刷+特殊加工ポストカード2枚組付き) — Amazonで見る

    予想外の展開が待っている!これから映画を観る人へ

    新海誠監督+川村元気プロデューサー(企画・プロデュース)作品。
    決して新海誠ファンではないけど凄かった!

    もちろん日本映画は沢山見るし、ジブリ作品も見る、50のオッサンだからヤマトやガンダム、999を通過した世代、アニメ大好き世代でもあるけど、単なるラヴコメ・アニメを見たいとも思わない。

    それらを全部、見事に良い意味で予想を裏切ってくれる作品。

    『秒速5センチメートル』(07年)、『言の葉の庭』(13年)など意欲的な作品を数多く作り出してきた気鋭のアニメーション映画監督・新海誠、と言う前説はあるものの、私は見たこともなかった。
    世界的に既に有名なアニメーター(演出家?)で、精密な風景描写や色彩の豊かさも評判になってるのは知ってるくらい。
    夢の中で、少年少女が入れ替わる、と言うどこかで聞いたことの有るような話。
    まぁ~ハッキリ言ってオジサン世代にとっては大林宣彦監督の『転校生』へのオマージュを感じずにはいられないし、途中でどこかで『時をかける少女』になるのでは?とも想像してしまう。

    印刷用_君の名は。_サブ01【7月5日差替】

    この作品、映画館で見る、と言う価値がある美しい映像が広がる、日本のアニメーションの品質の高さとも言えるけど、この映画は単なるラヴコメではない壮大な物語を展開していく、それにふさわしい映像が展開されていく。
    そして・・・
    予告に流れるお話はほんの序章に過ぎず『時をかける少女』への展開も想像できるけど、そこからが予想外の展開が待っている!

    高校生の心情が見事に描かれていて、そこは友情だったり、先輩への淡い想いだったり・・・
    そこから青春の1ページに収まらない物語が展開していく。
    若い人たちには、きっと壮大なSFチックな恋愛青春映画に映るんだと思う。
    でも、オッサンにしてみると「そう青春ってこういうもんだった」と思い返しながら、それは続いていつかまた青春に出会うのかも?と思わせてくれる、そんな不思議な青春映画になっている。

    この夏!(もう残暑だけど)絶対見たほうが良い青春映画、いや若者だけじゃなくて、どんな年代でも人との出会いの大切さを感じることができる作品!

    ちなみに宣伝的に、詳しい情報を書いとくと・・・
    作画監督を務めるのは『千と千尋の神隠し』(01年)など数多くのスタジオジブリ作品を手掛けた、アニメーション界のレジェンド・安藤雅司。
    また『心が叫びたがってるんだ。』(15年)などで新時代を代表するアニメーターとなった田中将賀をキャラクターデザインに迎えるなど、日本最高峰のスタッフがスタジオに集結。
    あっ、田中将賀さんのファンも多いらしい。
    そして主題歌を含む音楽は、その唯一無二の世界観と旋律で熱狂的な支持を集めるロックバンド・RADWIMPSが担当する。

    夏休みの劇場は、高校生・学生であふれかえっていた。

    君の名は。

    私的『君の名は。』 ここからは思いっきりネタバレ!要注意!!

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    ここからはネタバレで行くので、見てない人は見てから読んでください。

    「運命の出会い」=赤い糸を、さかのぼって物語にするとこうなるんだろう、と言う想像からできた気がする。
    だからラスト・シーンの「君の名前は?」に運命を感じるんだと思う。

    そう観客の一人ひとりの運命の出会いの裏側には実は壮大な物語があるのかもしれない。
    それくらい人との出会いって意味があって、意義のあるものと言うのを感じさせてくれる。

    だから歳を取っても、運命の出会いはあるかもしれないし、逆に歳を取っている分、もっと壮大なストーリーが人との出会いにはあるのかもしれない、と思いたい、そう思える作品。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    企画・プロデュースの川村元気Pは「世界から猫が消えたなら」の原作者でも有り、この物語が新海誠監督主導だったのか、どうなのか興味深いところ。
    後半は怒涛の展開なんだけどディテールが丁寧で、赤い糸の使い方が上手い!

    アラフォー世代が作ってる作品だけど、未だ青春ど真ん中だと思って生きてる人たちの熱意を感じまくった!

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    今回はアニメなので、さてどう表現したらよいのかなぁ~
    神木隆之介はアニメも沢山やってるから、この手の役は上手い。
    むしろキャラクターデザイン的なところなんだと思うけど、CGではない日本のアニメの良さを感じる。

    あっ、でもこの手のアニメってなんで日本でしか描けないのかな?

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    冒頭の数分間は、30分のTVアニメのような始まり方でちょっと焦った。
    何か狙いが有ったのかな?
    逆にその後の映像とかは、ジブリや細田守監督のような広大な世界が広かっていく。

    そして、なんと言っても映像が美しい!
    これは実写じゃできないよなぁ~と思いつつ。

    ⑤ エンターテイメント性

    青春映画であり、恋愛映画でもあるし、でも若者向けだけでもない。
    身体が入れ替わる話から、タイムパラドックスの話に展開していきながら、実は運命の出会いって、自分の忘れた過去の繋がりから来てる、って思わせる展開、ラストのタイトルを見て「君の名前は?」と本当につぶやきたくなる瞬間、うわーっと来てジーンと来るこの展開には脱帽。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    映像が心情を表す、この辺が素晴らしい。
    後半をたたみ掛ける展開になるが、前半の丁寧な作りが聞いてくる。
    でも、やっぱりアニメじゃないとできない演出だよね、いつかこれを実写でできる時代が日本にも来るのかな?(興行的に考えたらアニメが良いに決まってるけど)

    君の名は。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    主人公の男の子とバイト先の先輩の素敵な女性との会話とか、細かいところの脚本が丁寧で好き!
    もちろん、女の子が朝になるとおっぱいを揉むところとかも・・・
    あとは、主人公の女の子の髪型が変わる理由が後で判るところとも。

    でも、途中から一切予想外の展開、ラストの「運命」を感じさせてくれる展開は凄かった。

    ⑧何度も見たくなるか?

    いつまでも青春でありたい!と願う若い人、オジサンやあらゆる世代の人、どの年代でも見れるし、だからこそ見たい映画。
    既にカップルの人たちも、記憶にないこんな凄い出会うまでのストーリーがあるのかも?と思わせる。

    また、観ようっと(笑)

    新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド — Amazonで見る

    映画『君の名は。』のデータ

    【声の出演・スタッフ】
    神木隆之介 上白石萌音 
    成田凌 悠木碧 ※島崎信長 石川界人 谷花音
    長澤まさみ 市原悦子

    ※島崎信長さんの「崎」は正しい文字が環境により表示できないため、「崎」を代用文字としています。

    監督・脚本:新海誠
    作画監督:安藤雅司
    キャラクターデザイン:田中将賀
    音楽:RADWIMPS

    2016年8月26日 全国東宝系にてロードショー

    「君の名は。」Blu-rayスタンダード・エディション — Amazonで見る

    公式サイトはこちらから

    【ストーリー】
    千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。
    山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は憂鬱な毎日を過ごしていた。
    町長である父の選挙運動に、家系の神社の古き風習。
    小さく狭い町で、周囲の目が余計に気になる年頃だけに、都会への憧れを強くするばかり。
    「来世は東京のイケメン男子にしてくださ―――い!!!」
    そんなある日、自分が男の子になる夢を見る。
    見覚えのない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。
    念願だった都会での生活を思いっきり満喫する三葉。
    一方、東京で暮らす男子高校生、瀧も、奇妙な夢を見た。
    行ったこともない山奥の町で、自分が女子高校生になっているのだ。
    繰り返される不思議な夢。そして、明らかに抜け落ちている、記憶と時間。
    二人は気付く。
    「私/俺たち、入れ替わってる!?」
    いく度も入れ替わる身体とその生活に戸惑いながらも、現実を少しずつ受け止める瀧と三葉。
    残されたお互いのメモを通して、時にケンカし、時に相手の人生を楽しみながら、状況を乗り切っていく。
    しかし、気持ちが打ち解けてきた矢先、突然入れ替わりが途切れてしまう。
    入れ替わりながら、同時に自分たちが特別に繋がっていたことに気付いた瀧は、三葉に会いに行こうと決心する。
    「まだ会ったことのない君を、これから俺は探しに行く。」
    辿り着いた先には、意外な真実が待ち受けていた……。

    出会うことのない二人の出逢い。運命の歯車が、いま動き出す

    (C)2016「君の名は。」製作委員会


  • 映画『家族の肖像』 個室の中の完璧なドラマ

    映画『家族の肖像』 個室の中の完璧なドラマ

    映画『家族の肖像』 GRUPPO DI FAMIGLIA IN UN INTERNO

    gruppo-di-famiglia-in-un-interno

    2017年2月11日(祝・土)より、岩波ホールほか全国順次ロードショー

    ルキノ・ヴィスコンティの生涯についてはこちらから

    ルキノ・ヴィスコンティ -作品と演出- はこちら

    部屋に閉じこもる老人を描くことで、人間の本質を描いた作品

    私が観た映画の中の最高傑作の一つ。
    演出の素晴らしさ、それに応えた俳優陣も素晴らしい!
    ここで出てくるアイテムとして音楽・絵画が有るが、その使い方も、それに精通しているヴィスコンティならでは。
    この作品では孤独を好む老人の前に、ある日突然、家族というものが現れる。
    そこには欲望というものを隠さず露わにする人種達であった。
    老人の心の中での葛藤とそれを受け入れたものの、また裏切られる経過を部屋というディテイルの中で描ききっている。
    テーマの深さを物の見事に表現していること、一切の無駄を省きながらも語り残したところの無い完璧なストーリー。
    そこにはヨーロッパの芸術、映画の娯楽性までもが醸し出されている。
    時代性は無いものの、人間の普遍的な部分を追求した作品。

    gruppo-di-famiglia-in-un-interno

    映画館で観終わってやはり疲れる、難解な映画である、と同時にヴィスコンティの作品の中でも最も完成された作品だと思う。
    それは他のヴィスコンティ作品は、受け取る側(観客)の感性と言うものに、かなりの部分を委ねているのに対して、この作品では明確にヴィスコンティが描こうとするものが映し出され考えることを要求しているようにも思える。
    その理由の一つに、家の中から出ないと言った閉ざされた空間の中で物語が進行していく事に有ると言っても良い、まるで舞台劇のように話は進んで行く。
    ただヴィスコンティは、舞台劇と映画の明確な違いを意識しており、常に映像の中に奥行きを持たしている。
    この辺の演出に関しては、今更どうこう言う必要は無いだろう、素晴らしいの一言である。
    テーマは世代間ギャップで有り、古い世代の一人の人間の孤独感である。
    ただ、このギャップや孤独感は、主人公の教授の性格に依存するものであり、ある特定の階級等に所属する人々の一般的な話では無い。
    またヴィスコンティの作品の素晴らしい点として、登場人物の奥行きの深さ。
    そう言う意味で教授が妻の事、母親の事を回想するシーンなどは重要な意味を持つ。

    gruppo-di-famiglia-in-un-interno

    この作品は『地獄に堕ちた勇者ども』と同様に、非常に政治的・思想的な意味合いも込められていた。
    ファシズムとしての右派と、共産主義的な過激派が出てくる。
    そこにはヴィスコンティ自身も経験した共産主義的左派の挫折も明確に読みとれる。
    時代から逃避した老人と、現実の中に埋没している人々の悲劇...ただ、この老人が現実には存在しえない人なのだろうか?
    人間の心の中に潜む欲望、それは複数の人々が集えば必ず争いが起きる原因となる。
    それは人の集まりの最小単位である家族であったとしても(ここでは仮想的な、もしくは擬似的な家族では有るが)。
    ならば、それを避けて生きていきたいと願う事も有るのでは。
    確かに、この作品の教授は余りにも象徴的に描かれているが、実際の人々の中に潜む孤独、それを明確に捉えている。
    そうコンラッドやブルモンティ婦人の家族は、現実の世界の人々の象徴として描かれる。
    それは欲望に満ちた人々であり、片やブルジョワ的資産階級であり、片や革命的共産主義者である。
    どちらが良い悪いでは無く、そこには自己矛盾が存在しており、醜いものが潜んでいて、常に争いを起こす。
    それはお互いを愛す事でもそうで有り、仲間の間でもそうで有り、家族の間でもそうなので有る。
    そしてそこから逃避したい...と、考えるのはある意味、人間の弱さであり本質なのかもしれない。
    こうしてヴィスコンティは、この作品で人間の内面を見事に描いて見せた。
    また映画の造形の面からも、2つの側面を描いて見せた。
    教授の部屋は、時代錯誤的なバロック調の部屋であり、コンラッドの間借りした部屋は現代的な部屋に改装されている。
    コンラッドの部屋を見て、観客は初めてこの作品が現代の物語であることに気付かされる。

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    イタリア人でありながら、一時期、アメリカに渡航した老教授をバート・ランカスターが好演。
    ヘルムート・バーガーの妖しさはここでも美しい。
    それ以上に素晴らしかったのは、派手な衣装を装いながらも、品の良さを持った上流階級の貴婦人を演じ、と同時に女性のエゴを丸出しにした演技をしたシルヴァーナ・マンガーノは秀逸である。
    登場人物を限ったことにより、一人一人の人物を深く描き、人間の本質と時代性を描いたヴィスコンティの本当の傑作である。

    映画『家族の肖像』のデータ

    映画『家族の肖像』 デジタル完全修復版【Blu-ray】 [ バート・ランカスター ]

    Conversation Piece(Gruppo di Famiglia in un Interno 121分 1974年 イタリア

    監督■ルキノ・ヴィスコンティ
    製作■ジョヴァンニ・ベルトルッチ
    脚本■ルキノ・ヴィスコンティ/エンリコ・メディオーリ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ
    撮影■パスカリーノ・デ・サンティス
    音楽■フランコ・マンニーノ/モーツァルト『神よ、私の心を、K364』
    編集■ルッジェーロ・マストロヤンニ
    美術■マリオ・ガルブリア
    衣装■ヴェラ・マルツォ/ピエロ・トージ
    助監督■アルビーノ・コッコ
    製作会社■ルスコーニ・フィルム/ゴーモン・インターナショナル
    備考■テクニカラー、トッドAO
    日本公開■1978年
    出演■バート・ランカスター/シルヴァーナ・マンガーノ/ヘルムート・バーガー/クラウディア・マルサーニ/ステファノ・パトリッツィ/エルヴィラ・コルテーゼ/ロモロ・ヴァッリ/クラウディア・カルディナーレ/ドミニク・サンダ

    【解説】
     ローマ市内で静かに暮らす教授のもとに、奇妙な一群がやってきた。母娘とその情夫たちである。彼らは教授の屋敷の2階に住み着き、教授の平穏な生活はかき乱されてしまう。だが、母親の情夫コンラッドとの美術談義だけは、教授に不思議な安息を与えていた。そんなある日、コンラッドが過激派に襲われて負傷してしまう。やがて、その傷がきっかけとなり、コンラッドは彼らの前から姿を消すことになるが……。巨匠ヴィスコンティが、現代における家族の存在理由と定義を問い直す、静かだが力強い作品。B・ランカスターとヨーロッパ映画界を代表するスターの顔合わせも大きな魅力となっている。(映画データベース – allcinema より)

    題名の“家族の肖像”とは、18世紀イギリスで流行した家族の団欒を描いた一連の肖像画の事。
    ローマの広大な邸宅に住む老教授(バート・ランカスター)は、この“家族の肖像”のコレクションが趣味で、それらの絵画に囲まれて孤独に暮らしている。
    そこに、実業家夫人ビアンカ(シルヴァーナ・マンガーノ)が現れ、彼女の愛人コンラッド(ヘルムート・バーガー)の為に、強引に教授の住む邸宅の2階の部屋を借りたことから、教授の生活は一変する。
    孤独に暮らす教授に新しい“家族”が加わったのだ、だが教授はコンラッドを理解できないまま・・・。
    解体され変貌する家族の中の旧世代の孤独感を描いた、ヴィスコンティのレクイエム。

  • 映画『熊座の淡き星影』 姉弟相姦、デカダンはここから始まる

    映画『熊座の淡き星影』 姉弟相姦、デカダンはここから始まる

    映画『熊座の淡き星影』  VAGHE STELLE DELL’ ORSA

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    ルキノ・ヴィスコンティの生涯についてはこちらから

    ルキノ・ヴィスコンティ -作品と演出- はこちら

    ヴィスコンティの後期の作品への転換となる

    人間の果てしない欲望、美しい姉弟の禁断の愛を描いてみせる。
    禁断の愛を巡る、その時点の嫉妬や過去の嫉妬、そして父の思い出に対する思い。
    人間の最も美しい筈の愛の形が、姉弟と言うものの結び付きで表された時、それは周囲の人々からは最も醜悪なものとして映し出される。

    姉サンドラと弟ジャンニにとって、過去においての思いは美しいもので有ったに違いない。
    サンドラにとっては、それは過去の話で、今においては忘れ去りたい思い出になっている。
    しかしジャンニは今においても美しい思いなのである。
    その違いは何か?そこに有るのは人と人との結び付きなのである、人は人との関係の中で生きていく。
    姉弟は、父が母の密告によってアウシュビッツの収容所で死んでいったと言う思い出の中で、人との結び付きを拒絶した。
    そのことが禁断の愛へと二人を走らせる。
    時は経ち、姉は父の思い出をトラウマとしながらも新しい愛を見つけ、それに旅立とうとしている。
    弟はトラウマを断ち切れず思い出として心にしまう、いや思い出の中に生きている。
    そう過去と今が交差する、その時それは耐えきれない破綻を生み、そして弟は自らを滅ぼすしか選択肢はなくなっていく。

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    ヴィスコンティのこれ以降の作品に見られる、過去と現代の悲劇がそこに現れている。
    ここには、一つの夫婦、一つの姉弟、それを取り巻く小さな村の人々の物語である。
    その中に見事なまでに、人間の本質、孤独と欲望、その先に有る破滅を描いてみせる。
    そしてその映像はあくまで美しく、美しいからこそ、そこに映し出される人間の本性の醜さが浮き彫りにされていく。
    クラウディア・カルディナーレが妖しいまでに美しい。
    野性的な美とミステリアスな表情・・・肉体的な妖艶さと幼さを感じさせる表情、大きく猫のような瞳、彼女をこれ程までに魅力的に描いた作品は他にはないだろう。

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    映画『熊座の淡き星影』のデータ

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    VAGHE STELLE DELL’ ORSA (SANDRA: OF A THOUSAND DELIGHTS) 105分 1965年 イタリア

    監督■ルキノ・ヴィスコンティ
    製作■フランコ・クリスタルディ
    プロダクション・オーガナイザー■オスカール・ブラッツィ
    原案■ルキノ・ヴィスコンティ
    脚本■ルキノ・ヴィスコンティ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/エンリコ・メディオーリ
    撮影■アルマンド・ナンヌッツィ
    音楽■セザール・フランク
    演奏■アウグスト・ドッターヴィ
    編集■マリオ・セランドレイ
    美術■アリオ・ガルブリア
    衣装■ビーチェ・ブリケット
    助監督■リナルド・リッチ

    製作会社■ヴィデス
    備考■白黒
    日本公開■1982年11月
    出演■クラウディア・カルディナーレ/ジャン・ソレル/マイケル・クレイグ/マリー・ベル/レンツォ・リッチ/フレッド・ウイリアムズ/アマリア・トロイアーニ

    ◆ヴェネチア国際映画祭 1965年
    サン・マルコ金獅子賞授賞 ルキノ・ヴィスコンティ
    チネマ・ヌオヴォ賞授賞 ルキノ・ヴィスコンティ

    【解説】
     ギリシア悲劇の『エレクトラ』になぞらえた、この中部イタリアの古都が舞台の、貴族階級の孤児院の姉弟の禁断の愛を描いた作品は、ヴィスコンティの絢爛たるデカダン絵巻の後期作風への転回点ともなる重要作。主人公らはまだうら若き男女であり、「イノセント」の醜悪なまでの気高さを持つには至らないが、それでもここに描かれた貴族の滅びの美学は、作者の自らの出自に対する拘りと憐れみを存分に感じさせ興味深い。
     結婚まもない米国人の夫と共に、NYでの新生活を前に、故郷ボルテッラの実家を訪れたサンドラ(C・カルディナーレ)は、幼い時に父をアウシュビッツの収容所で亡くしていた。今や屋敷は再婚後、精神をおかしくした母(M・ベル)と義父(L・リッチ)のものであり、弟ジャンニ(J・ソレル)が肩身の狭い思いで彼らと同居していた。姉と彼との精神的絆は強固で、別々の寄宿学校にやられそうになった際も二人してそれを頑なに拒んだものだった。夫アンドルーは次第にその中に立ち入れないものを感じ始める。彼はまた、不仲の義父と姉弟の間をとりもとうとして失敗。置き手紙を残し、先にNYへと発ってしまった。弟は姉に兄弟愛以上の感情を持ち続け、それは今も変わらない。が、姉は弟の気持ちを振り切ってジャンニは衝撃を受ける。屋敷の一部を図書館として町に寄贈したことの返礼の、父の胸像の除幕式が執り行われ、サンドラが出席する一方、ジャンニは自室で服毒自殺を図り、既に事切れていた…。
     義父と母が密告して父を逮捕させた疑惑が作品を暗くミステリアスに縁取って、幻灯機で天井に映した星座–ちょっとしたプラネタリウムに、二人寝床の中で眺め入る…といった姉弟の幼少期の思い出が甘美に綴られるあたり、大変印象深い。(映画データベース – allcinema より)

  • 映画『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』 人生の選択をする時に見たい傑作

    映画『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』 人生の選択をする時に見たい傑作

    映画『 グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』

    GOOD WILL HUNTING

    GOOD WILL HUNTING 127分 アメリカ 1997年

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    脚本の素晴らしさが圧倒的!

    自分がこの先、どこへ向ったら良いか迷っている人に、人生の選択に必要なものは?と言うのを気付かせてくれる作品です、青春映画の傑作。

    当時、未だ無名な二人の若者、ベン・アフレックとマット・デイモンが脚本を書いて(しかも初めての映画化!)、『ドラッグストア・カウボーイ』で長編映画デビューしたガス・ヴァン・サント監督が映画化、主演は脚本を書いたマット・デイモン自ら演じ、助演には今は亡きロビン・ウィリアムズ(2014年没)が出ています。
    ロビン・ウィリアムズはこの作品でアカデミー賞助演男優賞を受賞しています。

    アメリカから良質の青春映画が生まれた、なんと言ってもベン・アフレックとマット・デイモンの脚本が素晴らしいし、ガス・ヴァン・サント監督の演出も良い、若手のマット・デイモンの演技を受け止めたロビン・ウィリアムズの演技も素晴らしかった。

    物語は、貧乏な青年が肩肘を張って周りの人を拒絶して、幼なじみたちとだけつるむ、一見、どこにでも有りそうな内容で、また彼には暗い過去も存在する、これもありきたりな気がする。
    しかしその主人公は天才的な数学的才能を持ち、その才能を見つけた教授も手に負えず、彼を救うべく人間味溢れた精神科医が現れる。
    テーマやモチーフも優れているし、こんな物語を思いついたのも凄いと。

    これだけ面白く感じられたのは、本物の若者(出演者でも有るマット・デイモンとベン・アフレック)が脚本を書いたからであろう。
    彼らの才能はもちろんだが、等身大の若者がそこに描かれているからこそ、変な飾り気が無くて良い。
    もちろん、主人公のウィルを過去のトラウマから解き放つ大人達の悩みも描かれている。
    しかし、その話自体とは良い距離を置いて描かれている、そこにしつこく感動を求める節もない。

    この脚本の凄さは伏線の張り方が素晴らしい点、そしてちゃんと回収している。
    セリフが素晴らしいのも有る、だからこんなに感動で泣ける、そして笑える。

    患者のマット・デイモンと医師のロビン・ウィリアムズが、過去に虐待の過去があるマット・デイモンに、常に同じ目線で「君が悪いんじゃない」と言い続けるロビン・ウィリアムズの姿が印象的、離れていた2つの心が静かに近づいていくシーンが感動的!

    この映画の一番の成功は、そこに出てくる人々全ての成長を描いている点。
    当然、主人公のウィルを中心にしていることには間違いないが、それを取り巻く人々が見事に描き出されている。

    ラストは、ウィルが旅立って行く。
    オープニングに、本を読むウィルを親友が迎えに行くと大学構内の清掃の仕事へと繋がる。
    これが後半「なぜ彼は敢えて大学の清掃員になったのか?」と繋がっていく。
    そこで難問を解いて、幼なじみたちとリトルリーグを見るのも、後半への伏線と共に、彼の今の人生を象徴してる。
    オープニングの毎朝迎えに行く日常が、後半「毎日、今日こそはお前がいなくなってるのでは?と楽しみにしている」と言うセリフに繋がっている。
    ラスト近くでベン・アフレックが迎えに行くと、マット・デイモンが旅立った後でいなくなっていると言うシーンに繋がる・・・
    そこには彼が何か目的を見つけた訳ではない、数学の道を捨てて彼女のもとに向かう、と言うエンディングだけど、彼自身、まだまだ若いから彼女を迎えに行ってかも、無限の可能性がそこには有る。
    未来や未知の世界に一歩踏み出す勇気が大切であることを訴えかけてくる。

    ウィルの彼女役のミニー・ドライヴァーは、決して美人とは言えないが、映画の中での彼女の成長ぶりと、次第に可愛らしい女性に変わっていくさまも楽しい。

    アメリカの作品らしい、前向きで清々しい作品になっている。

    私的『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』

    テーマが有るか?共感できるか?

    人生に迷った時に青年は何を思うのか、人は何を目指して生きるのか?それを実感できる。

    またこの頃のアメリカの中流白人層が崩壊していることが判る。
    それでも、アメリカにはまだ可能性があるということを暗示して終わる。

    作り手の強い意思を感じるか?

    今やハリウッドにはなくてはならない二人、マット・デイモンとベン・アフレックの実質的なデビュー作にして、脚本でその才能を開花させた作品。
    二人の強い絆=友情を作品から感じ取れる。

    俳優の意思や演技力が伝わるか?

    俳優が作り手でもあり、マット・デイモン、ベン・アフレックが素晴らしい。
    それ以上に演技と言う点で、コメディだけではなくシリアスな役に徹したロビン・ウィリアムズの演技は秀逸。

    映画らしい楽しさが備わっているか?

    一つの街、狭い世界から最後に旅立つシーンを観るだけで映画としての素晴らしさを感じる。

    エンターテイメント性

    天才が実は・・・と言う展開から青春映画として成立している。

    青年の青春だけではなく、成長して心を開いていくのと同様に、カウンセリングしている側も自分の過去の妻の死を乗り越えていく姿と重層的に描いている。

    2時間の枠に織り込んだ物語が素晴らしい。

    演出が素晴らしいか?

    ガス・ヴァン・サント監督の最高傑作の一つ、ナイーブな若者の心情を描かせるとこの監督以上の演出ができる人は少ない。

    この映画の中盤(2時間の作品ちょうど1時間を経過したあたり)に、劇的な心情の変化がある。
    ロビン・ウィリアムズ演じるマクガイヤ先生がウィルを診察するシーン。
    それまでお互いに押し黙っていたが、ウィルが話し始めると、呼応するようにマクガイヤ先生は、亡くなった妻の思い出話をする。
    その時に、カメラがマクガイヤ先生とウィルの表情を交互に写すが、イマジナリーラインを超える。
    「妻が寝ていると自分のオナラで目を覚ます」と言うとウィルが心から笑い始める。

    イマジナリーラインを超えることで、二人の関係が大きく変わったことを映像的に表現している素晴らしい1シーン。

    脚本が素晴らしいか?

    若者二人が書いた脚本が素晴らしい、テーマが一貫していて、しかもモチーフ(天才の青年と精神科医)もユニークで、しかも話が互いに傷つきながらも再生していく、2つのドラマが絡み合っている。
    前半の伏線が見事に後半につながっている。

    この物語の着想は、インドの天才数学者・ラマヌジャンにあるようだ。
    (ラマヌジャンを描いた映画『奇蹟がくれた数式』 『グッド・ウィル・ハンティング』の基になった物語はこちら)
    前半で、手に負えないウィルのカウンセリングを、ランボー博士がマクガイヤ先生に、レストランで依頼をすると言うシーンがある。
    そのシーンで、ウィルを表して彼の天才ぶりは「ラマヌジャン以上だ」と言う。

    前半、ベン・アフレックがマット・デイモンを毎朝迎えに行くが、ラストは迎えに行ってもいない、それは彼が人生の選択をして旅立って行くことの伏線になっている。

    何度も見たくなるか?

    爽やかな青春映画を繊細に描いている、前向きにさせてくれて心に残るものを感じさせてくれる。
    そして、なんと言っても、映画としての演出も脚本も楽しませてくれて、見る度に新しい発見のある映画。

    映画『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』のデータ

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    監督■ガス・ヴァン・サント
    製作■ローレンス・ベンダー
    脚本■ベン・アフレック/マット・デイモン
    撮影■ジャン=イヴ・エスコフィエ
    コスチュームデザイン■ベアトリックス・アルーナ・パストール
    美術■メリッサ・スチュワート
    編集■ピエトロ・スカリア
    音楽■ダニー・エルフマン
    主題歌■エリオット・スミス
    出演■ロビン・ウィリアムズ/マット・デイモン/ベン・アフレック/ステラン・スカルスガルド/ミニー・ドライヴァー/ケイシー・アフレック/コール・ハウザー/スコット・ウィリアム・ウィンタース

    ■アカデミー賞1997年
    作品賞ノミネート
    主演男優賞ノミネート マット・デイモン
    助演男優賞授賞 ロビン・ウィリアムズ
    助演女優賞ノミネート ミニー・ドライヴァー
    監督賞ノミネート ガス・ヴァン・サント
    脚本賞授賞 マット・デイモン/ベン・アフレック
    主題歌賞ノミネート エリオット・スミス “Miss Misery”
    音楽賞(オリジナルドラマ)ノミネート ダニー・エルフマン
    音楽賞(オリジナル・ミュージカル/コメディ)ノミネート ハンス・ジマー
    編集賞ノミネート ピエトロ・スカリア
    ■ベルリン国際映画祭1998年
    銀熊賞(貢献賞)授賞 マット・デイモン 脚本と演技において
    ■ゴールデン・グローブ1997年
    作品賞(ドラマ) ノミネート
    男優賞(ドラマ)ノミネート マット・デイモン
    助演男優賞ノミネート ロビン・ウィリアムズ
    脚本賞授賞 マット・デイモン/ベン・アフレック
    ■放送映画批評家協会賞1997年
    作品賞ノミネート
    オリジナル脚本賞授賞 マット・デイモン/ベン・アフレック
    ブレイクスルー賞授賞 マット・デイモン

    【解説】
     深い心の傷を負った天才青年と、同じく失意の中にいた精神分析医がお互いにあらたな旅立ちを自覚して成長してゆく姿を描く感動のヒューマン・ドラマ。
     ボストンに住む青年ウィルは、幼い頃から天才ゆえに周囲から孤立していた。だが、彼の才能に気付いた数学教授のランボーは、ウィルに精神分析医のショーンを紹介する。ウィルはショーンにしだいに心を開いてゆくが、彼の才能に気付いた政府機関や大企業が接近してくる。(映画データベース – allcinema より)