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  • 映画『ゴッドファーザー』 マフィアを描いた伝説の名作にしてアメリカ映画の最高峰

    映画『ゴッドファーザー』 マフィアを描いた伝説の名作にしてアメリカ映画の最高峰

    映画『ゴッドファーザー』 THE GODFATHER

    ゴッドファーザー 三部作

    映画『ゴッドファーザー』シリーズ・ベストバリューBlu-rayセット

    映画『ゴッドファーザー』(1972年)

    ゴッドファーザー

    コッポラ監督の生涯の傑作であり、映画史上に残る作品、この後、PARTⅡ、PARTⅢとシリーズ化される。
    ここで、コッポラ監督の作品に対するテーマは二つ有ると思われる。
    一つは、アメリカ資本主義に対する批判、二つ目はイタリア系アメリカ人に対する差別。
    マフィアと警察、政治家、芸能人との関わりを、アメリカ資本主義の一つの側面と捉え、権力・金のためには手段を選ばず、プライドも無い人々が描かれる。
    またアメリカの差別社会、アメリカ社会の頂点に立つイングランド系アメリカ人、その下にアイルランド系やイタリア系、そしてユダヤ系、はるか下の方にアジア系、そして黒人がいる。
    白人社会においては、イタリア系は下の存在に見られる。
    アメリカ資本主義に勝ち残るためには、暴力で力を得ることが必要な事を描いている。
    イタリア系アメリカ人の団結心や故郷シチリアでの家族の絆を描くことによって、一般的アメリカ人に支配されるアメリカ資本主義と比較している。
    お祖父さんから孫まで、一緒に食事を取るシーンなどの大家族主義、絢爛豪華なパーティー・シーン、また衝撃的な殺人シーンなど、本来のテーマよりイタリア・マフィア一家の一大叙事詩的な部分が強まっている。
    そう言った楽しみ方も十分に出来るが...

    マフィア映画としての醍醐味は、その壮絶なシーンの重量感、またそれぞれのシーンの構成の素晴らしさは、見応えか十分。
    冒頭の“ドン”の存在感の演出はもちろん、病院での緊張感溢れる画面構成。
    ラスト近くの洗礼と暗殺シーンが交互にカットバックする見事な演出。

    3時間近くに及ぶ大作でありながら、シーン一つ一つが印象的で、しかも冗長さも感じられない。
    演出、編集の良さ、脚本の面白さ、どれも秀逸、ニーノ・ロータの音楽は映画史上に残る印象的なもの。

    この後、SFXの発達により、殺人シーン等のリアリティーさで、この作品を上回る作品は有るものの、見せ方の巧さで、この作品を上回る作品は無い。
    続編の『ゴッドファーザーPARTⅡ』も、この作品に負けず素晴らしい出来の作品。
    このシリーズは『ゴッドファーザーPARTⅢ』で完結する。

    Reviewed in 03.1999

    映画『ゴッドファーザー』 PART 1 1972年 [ マーロン・ブランド ]

    映画『ゴッドファーザーPARTⅡ』(1974年)

    なんと前作『ゴッドファーザー』に続いて、アカデミー賞作品賞を授賞するという快挙を成し遂げた作品。
    大きなテーマは、前作と同様にアメリカ資本主義の中のイタリア系アメリカ人を描くこと。

    ビトー・コルレオーネのイタリアでの幼少の頃から、アメリカに渡り“ドン”に成り上がるまでの話と、父親からその地位を受け継いだマイケル・コールレオーネの苦悩を同時に描く。

    映画的な楽しみは、第一作を遙かに凌ぐ演出の上手さ。
    2つの時代の出来事を上手く、交互に見せてくる、しかもそれが二人の主人公、若きビトーとマイケルの成長という点で一致している。
    脚本・編集の巧さは、この作品の醍醐味と言える。
    これによって、話に躍動感が生まれて、より一大叙事詩的な面白みが出ている。
    物語が面白く描かれれば描かれる程、本来のテーマから離れ、壮大な人間ドラマになってしまっている点は否めないが、それでも十分(以上)に楽しめる作品。

    前作同様に俳優陣の充実ぶりは素晴らしい。
    アル・パチーノ、ロバート・デュバル、ダイアン・キートン・・・数え切れない程のスターが出演(と言うか、この作品以後に超一流になっている)している。
    しかも全員が素晴らしい演技を披露。
    個々のキャラクターが、その存在感をきっちりと出している。
    極めつけは、若き日のビトー・コルレオーネを演じたロバート・デニーロの圧倒的な存在感。
    また1977年に『ゴッドファーザー・サガ』や、1981年の『ゴッドファーザー 1901-1959/特別完全版』で、PARTⅠとPARTⅡを時代順に並べ替え、監督自らが、再編集したものが出ている。
    こちらの作品も、一つの作品として非常に楽しめる。
    話自体の構成が変わってくるので、違う作品として見ることも出来る。
    機会が有れば、こちらも是非観て欲しい逸品。

    Reviewed in 03.1999

    映画『ゴッドファーザー PART 2』 1974年 [ アル・パチーノ ]

    映画『ゴッドファーザーPARTⅢ』(1990年)

    ゴッドファーザーPARTⅢ

    1974年に公開された『ゴッドファーザーPARTⅡ』から実に16年ぶりに作られた、シリーズ完結編。
    遂にと言う感が強かった作品。

    決してストーリーとしてもつまらない作品ではない。
    マフィア映画の王道を行く作品として現代化され、銃撃シーンもリアリティーも有り迫力も増している。
    ヘリコプターからの銃撃シーンは圧巻。
    また新しく入った俳優陣、アンディ・ガルシアも、第一作のジェームズ・カーンのやった役の血の気の多い、コルレオーネ家の長男の息子役を好演している。

    ただ残念なのが、時代は’90年代に入り、当初、このシリーズが持っていた、イタリア系アメリカ人と言う位置付けが薄らいでいること。
    この作品でも語られているが、この頃になるとイタリア系もビジネス界で認知され、既に社会の一部に組み込まれた存在になっている事。
    従って差別される位置づけではないことや、結局、このシリーズを上手く終結させるためのストーリーになってしまっている事。

    コッポラの演出・編集等には、いささかの衰えは感じないものの、時代の移り変わりが、テーマの存在感を奪い取ってしまったのが、この作品には不幸だったと言える。

    また美男子のアンディ・ガルシアとの連相手は、当初、ヴィノナ・ライダーが出る予定だったが体調を崩して出れず、コッポラの娘が出演。
    残念ながら、その容姿と演技力には疑問点が付いた。
    ヴィノナ・ライダーのような華のある女優が出ることによって、また違った演出も有ったかもしれないが...。

    『ゴッドファーザー』、『ゴッドファーザーPARTⅡ』の続編という宿命と、時代の移り変わりと言うものに翻弄された作品では有るが、十分に作品としては楽しめる一本になっている。

    Reviewed in 03.1999

    映画『ゴッドファーザー PART 3』 1990年 [ アル・パチーノ ]

  • 映画『この森で、天使はバスを降りた』 切なく泣ける隠れた名作

    映画『この森で、天使はバスを降りた』 切なく泣ける隠れた名作

    映画『この森で、天使はバスを降りた』 THE SPITFIRE GRILL

    この森で、天使はバスを降りた

    誰にも言えない過去を抱えて、 彼女はここにやって来た–。
    凍てついた心を癒せるのは 傷ついた心だけ…。

    Amazonビデオで配信中!

    この森で、天使はバスを降りた(字幕版) — Amazonで見る

    人が背負う過去は、果たして癒されていくのだろうか?

    過去とは、未来が一瞬の現在を通り過ぎて生まれていくもの。
    人々は、その一瞬の中に自分の自身の道筋を決めていく。
    人々の決断は何によって行われるのだろうか?それは、その人がそれまで生きてきた人生、そう過去を引きずって生きている。
    人は過去を捨て去ることは出来ない。
    しかし過去の経験から、自分の未来を変えていくことは出来るはず。

    主人公パーシー(アリソン・エリオット)は、自分の過去に重い傷みを感じながら生きている。
    人生の出直しを考えた時、緑深いギリアドの町を選ぶ。
    町と言うには小さい、村という表現があっているかもしれない。

    そこは緑に囲まれた美しい風景が広がる。
    人は美しい自然を目の当たりにした時、自分の存在の小ささに気付き、そして自分の過去の重さが、どれほどのものか、いや如何に小さいものかを自覚する。彼女は自ら、それを自覚することに依って、自分の未来を変えようとする。

    彼女のか細い身体から、そのオーラが発せられたとき、周りの人々も少しずつ変化を無意識のうちに求めていく。
    スピットファイア・グリルの店主ハナ(エレン・バースティン)、息子を失った悲しみから頑なに心を閉ざす姿が、少しずつなにかが変わっていく。
    料理と洗濯しか出来なかったシェルビーも、彼女との出会いの中で、自分自身を見つめ行動を起こす。

    田舎のぼくとつとした青年ジョーも、この森の中の生活に光明を見いだそうと動き出す。
    そして森の住人ジョニー・Bも・・・

    パーシーが森を抜け小高い丘の上で歌を口ずさむ・・・大自然の中で自分の心を口ずさむ、そこへジョニー・Bが現れる。
    人と人の心が共鳴しあい、変化を生み出す瞬間の輝きがそこに存在する。

    この街を守ろうと、部外者の侵入に心を痛めるイーサンは、パーシーの発するオーラに恐怖する。
    彼も、自分の過去に小さな傷を持っている・・・

    作文コンテストの賞金がなくなった事件を境に、人々の暗い過去が、この自然にあふれた街の中に引きずり出される。
    そしてこの事件で、パーシーが命を落とす・・・

    それ自体は悲しい出来事、この事件がギリアドの人々の中に一つの重い過去と言う十字架を背負わせる。
    しかし、その死と同時にパーシーが残したものは、その過去を背負いながらも、自分自身しか未来を変えることは出来ない、人は自分の過去は変えることは出来なくても、未来を変えることが出来ると言うことを教えてくれた事だった。

    ハナとシェルビーは、作文コンテストを最後までやり遂げ、店を手にした親子を街に向かい入れる。
    人は自分の過去と向かい合い、そして未来を創っていく、人にはそれが出来る。
    パーシーは人々にそれを教えてくれた、だからこそその人の姿に感動し涙することが出来る。

    パーシー役のアリソン・エリオットの美しさ、どこか弱々しさと瑞々しさが混じり合った姿、演技が素晴らしい。

    そしてアメリカと言う国土の広さとその美しさに、改めて驚きを感じる。

    『タイタニック』でアカデミー賞を授賞したジェームズ・ホーナーの音楽は『タイタニック』のそれ以上に感動を与える旋律を持っていた。

    Reviewed in 02.2000

    その後のアリソン・エリオット

    アリソン・エリオット
    アリソン・エリオット

    サンダンス映画祭で観客賞をとって、当時の東京でミニシアター系と呼ばれる作品としてヒットをし、隠れた名作として話題になった作品。
    監督のリー・デヴィッド・ズロートフはTVディレクター出身で、この作品の前後でも映画は作ってないらしい。

    主演を演じたアリソン・エリオットは、この後、話題作『鳩の翼』にヘレナ・ボナム・カーターと共演したり、その他主演作もあるが、2000年以降はたまに小さな役で映画に出演しているのみで日本未公開が多く、TVシリーズへの出演が散見されるのみ。
    久々に『20センチュリー・ウーマン』(2016)で小さな役で出演がある。

    彼女はもっと活躍すると期待してましたが、残念ながら大きな役で見ることはありませんでした。
    この作品から20年が経って、1970年生まれの彼女は大人の女性として今も美しいようです。

    アリソン・エリオット
    最近のアリソン・エリオット

    映画『この森で、天使はバスを降りた』のデータ

    この森で、天使はバスを降りた DVD — Amazonで見る

    THE SPITFIRE GRILL 116分 1996年 アメリカ
    監督■リー・デヴィッド・ズロートフ
    製作■フォレスト・マーレイ
    脚本■リー・デヴィッド・ズロートフ
    撮影■ロブ・ドレイパー
    音楽■ジェームズ・ホーナー
    編集■マージ・グッドスピード
    美術■ハワード・カミングス
    出演■アリソン・エリオット/エレン・バースティン/マルシア・ゲイ・ハーデン/ウィル・パットン/キーラン・マローニー/ゲイラード・サーテイン/ジョン・M・ジャクソン/ルイーズ・デ・コーミア

    サンダンス映画祭 1996年
    観客賞授賞

    <ストーリー>

    ある冬の夜、パーシー(アリソン・エリオット)はたった一人、田舎町ギリアドのバス停に降り立った。
    古ぼけたレストラン“スピットファイアー・グリル”で働き始め た突然の来訪者に、住人たちは好奇の目を向ける。
    一人息子を戦争で失ったグリルの女主人ハナ(エレン・バースティン)。
    家庭に悩みを抱えた主婦シェルビー(マルシア・ゲイ・ハーデン)。
    町を囲む美しい森にすら無関心になった人々。
    そんな傷ついた心を、パーシーはその純粋な優しさで包み込み癒していく。
    しかし彼女自身、誰にも言えない過去を抱えていた・・・。

  • 映画『コックと泥棒、その妻と愛人』 食欲と暴力とエロスの究極の映像

    映画『コックと泥棒、その妻と愛人』 食欲と暴力とエロスの究極の映像

    映画『コックと泥棒、その妻と愛人』 THE COOK, THE THIEF, HIS WIFE & HER LOVER

    コックと泥棒、その妻と愛人

    欲望を召し上がれ。

    ブラック・ユーモアの究極!

    あまりに不気味な作品、あまりにもイギリス的なブラック・ユーモアに満ち溢れている。
    傑作とも言えるし、意味の無い作品とも言える、個人的には両方。

    私には、あまりにも人間の欲望をストレートに描きすぎている点がドラマ性を感じさせない。
    そこに描かれる欲望、食欲と性欲だが、この作品では食事をする場所とセックスをする場所を、一つの場所とすることで、表裏一体で有ることを表現しているよう。

    食事をしてはセックスをして、セックスをしては食事をして。
    唯一、欲望を離れて(愛によって)セックスをする場面が、泥棒の妻とその愛人が愛人宅でセックスをするところ。
    しかし、ここでも食事が運ばれてくる。
    結局、愛も欲望の派生物にしか無いのかもしれない。

    泥棒はその味も判らず、一流のフレンチのシェフに料理を作らせ、マナーを知りながらそれを無視して食べ続ける。
    食欲を満足できないと暴れ、性欲を満足できないと暴れる。
    暴力は欲求が満たされない時のはけ口になっている。
    人間の根本をこの監督なりの表現で魅せている。

    もっと俗的な見方をすれば、イギリス人特有のユーモアとも取れる。
    これだけの料理が出ているにも関わらず、イギリス人である泥棒は味も判らない。
    しかしグルメとしての知識が有る、これを皮肉っているとも言える。

    この監督の独特の表現方法は、一見の価値は有る。
    店内を彩るゴシック調、飾られている絵も中世のゴシック画。
    衣装もまたゴシック調のもので、フランスの奇才デザイナー、ジャン・ポール・ゴルチエのもの。
    泥棒の妻が身につけている下着がゴルチエらしいデザイン。

    また部屋によって色彩が変わる。
    レストラン内のブルー、厨房のグリーン、駐車場の暗いブルー、化粧室の白。
    衣装もそれに合わせて色が変わっていく、まるで人間の心を写すよう。
    泥棒の妻の衣装は、レストラン内では赤い衣装、化粧室に行くと白。
    これは反射によるものではなく、衣装自体の配色を変えている。

    ラストは余りにも怖い。
    なんの意味が有るのか?人間を食する、食の究極の姿か?そして食した人間は殺される。

    日本人には生理的に受け付けない、厨房のシーンと共に腐った食材、これらに生理的な嫌悪感を抱く。
    ヨーロッパ人の強烈な文化、肉食文化を感じさせる。

    マイケル・ナイマンの音楽は、この作品の雰囲気をより一層、盛り上げてくれる、秀逸。

    Reviewed in 03.1999

    ヒロインはヘレン・ミレンが演じる

    今更ながらヒロインがヘレン・ミレンであることに気付く、今や大女優。
    1969年に『としごろ』で映画デビュー、舞台女優としての経験も積みながら話題作にも出演、一方で今作品を含む、問題作に出演。

    若い頃の美しさと共にセクシー系女優としても活躍。
    そして2003年にも『カレンダー・ガールズ』でも、60歳目前でのヌードを披露している。

    ご存知のように2006年には、ダイアナ妃の死を巡って窮地に陥った現在のエリザベス女王を見事に演じて米アカデミー賞主演女優賞を受賞している。
    いくつになっても美しく圧倒的な演技力を持った女優。

    映画『コックと泥棒、その妻と愛人』のデータ

    コックと泥棒、その妻と愛人 DVD — Amazonで見る

    THE COOK,THE THIEF,HIS WIFE & HER LOVER 124分 1989年 イギリス=フランス
    監督■ピーター・グリーナウェイ
    製作■キース・カサンダー
    脚本■ピーター・グリーナウェイ
    撮影■サッシャ・ヴィエルニ
    音楽■マイケル・ナイマン
    衣装■ジャン・ポール・ゴルチエ
    美術■ベン・ヴァン・オス/ジャン・ローエルフス
    編集■ジャン・ウィルソン
    出演■リシャール・ボーランジェ/マイケル・ガンボン/ヘレン・ミレン/アラン・ハワード/ティム・ロス/イアン・デューリー/ゲイリー・オルセン/イワン・スチュアート

    <DATA>

     グリーナウェイの名を一躍メジャーに押し上げた作品。

     夜の闇の中、悠然と輝きを放つ高級フランス料理店“ル・オランデーズ”。
     ここではゴシックの食卓画を思わせる絢爛たる厨房で、腕によりをかけたコック達が作る料理が毎夜テーブルに並べられていた。
     この店の一番の顧客は泥棒のアルバートとその美しい妻ジョージナの一行。
     自分の社会的ステータスを人に認めさせたいが為に、アルバートは盗んだ金で贅沢三昧、所かまわず乱行を働く傍若無人ぶりを発揮していた・・・
     この作品は、グリーナウェイの映画が苦手な人でも比較的入りやすい作品であると同時に、人間の持つあらゆる“欲”といったものがいかに醜いかといったことを、絢爛豪華な美術、独特のユーモアセンスで描いた、彼の作品群の中でも「ベイビー・オブ・マコン」と並んで3本の指に入る傑作だ。(一部略) <allcinema>

  • 映画『恋におちたシェイクスピア』 エンターテインメントとしての面白さ!

    映画『恋におちたシェイクスピア』 エンターテインメントとしての面白さ!

    映画『恋におちたシェイクスピア』 SHAKESPEARE IN LOVE

    恋におちたシェイクスピア

    作品がシェイクスピアの劇中劇と融合する

    丹念に錬られた脚本が、この作品を見事なものにした。

    16世紀のイギリス、エリザベス朝を再現してみせる。
    シェイクスピア自身が実在の人物か?とも、言われた時期も有る。
    登場人物も、実在の人物、そして史実に残る行動も描かれている。
    と、同時に大いにその創造の羽を伸ばして、人間関係や出来事を作っていく。
    その真実と虚構を融合させている物語の見事さに目を見張る。

    劇中劇である「ロミオとジュリエット」は、元々、イタリアの説教くさい話がベースになっているとも。
    それを思い切って、シェイクスピア自身の恋と結びつけたアイディアの良さ!シェイクスピアの作った物語を知り尽くしたスタッフが、その世界を見事に(私のようなそれ程、詳しくない人間にも)分かり易 く作品の中に取り入れている、これこそ脚本の上手さ!

    この作品の最も素晴らしい点がここに有る。
    そうシェイクスピアとその恋人ヴァイオラの話すセリフの素晴らしさ!!
    シェイクスピア劇そのままの独特な言い回し、そして劇の中のセリフのような会話。

    「ロミオとジュリエット」のセリフと映画のセリフが見事に融合する。
    セリフが見事に言霊になる。
    そうロミオのセリフが、ジュリエットのセリフが、シェイクスピアとヴァイオラの恋の会話になる。
    劇中劇の「ロミオとジュリエット」がどうやって出来たか?その言葉一つ一つに込められたシェイクスピアの思い、それが伝わってくる。
    映画そのもの以上に、劇中劇『ロミオとジュリエット』に感動する、涙する。

    かつて映画『アマデウス』が、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの作品(音楽)を見事に魅せた作品になっていた。
    と同様に、この作品ではシェイクスピアの劇(ここでは「ロミオとジュリエット」)を見事に魅せてくれる、いや見方を教えてくれる。

    グウィネス・パルトロウが、アカデミー賞主演女優賞を見事に授賞したが、クィーンズ・イングリッシュを駆使して、表情豊かにヴァイオラを演じているのを見ると相応しいのが判る。
    脇役陣はもう素晴らしいとしか言えない。
    ジュディ・デンチは見事としか言いようがない存在感!ジェフリー・ラッシュの道化ぶりも楽しい。
    ラストのヴァイオラが「十二夜」にひも付くところは、ツボを押さえている!

    蛇足:この作品は公開最終週に劇場に行ったけど、観客が1割もいなかった(泣)お陰で一番観やすいところでゆったり静かに観れたけど。

    Reviewed in 07.1999

    恋におちたシェイクスピア
    Miramax/Photofest/ゲッティイメージズ

    「ロミオとジュリエット」から「十二夜」へ

    ワイド・テレビとDVDプレイヤーを購入したので、再度、DVDビデオでこの作品を再見。

    また観ると新しい発見が!
    それにしてもこの作品、本当に脚本が良くできている、つくづく感心させられる。

    そして脚本だけではなく、演出も素晴らしい。
    脚本の出来に良く応えて、見事な画面構成を見せてくれる。
    映画を娯楽と言うなら、この恋愛劇は見事な映画と言えるだろう。

    「ロミオとジュリエット」の物語が出来るまでを、“ウィル”・シェイクスピアとヴァイオラの恋と絡めて進行させていくところは見事。
    と同時に、映画の後半では徐々に「十二夜」の物語もタブって来る。
    このあたりは、う~ん、と感心させられる。※ ちなみにシェイクスピアは好きで本はかなり読んでいる

    それと(おそらく)「ロミオとジュリエット」の物語を知らなくても、何となくその全体像が見えてくる。
    と言うのは、劇中劇の「ロミオとジュリエット」は、シーンをトピックス的に取り上げているに過ぎないのだが、それまでの映画のストーリーとだぶっているので、その悲劇的な物語が伝わってくる。

    面白いのが、この脚本家たちがメイキングで語っているが、物語を書く仕事をする人間の共通の悩みを、天才シェイクスピアにも投影していること。
    シェイクスピアも、一つの物語を生むために悩み苦しみ、そして自らの体験で綴っていく。

    もう一つ、これは劇の舞台裏も描いている。
    劇の俳優達の姿、飲み屋で飲んだくれたり、台詞の練習をしたり、その苦労する姿も楽しめる。

    この入り乱れるような物語を、映像で絡めて一本のストーリーに見せるあたりは、監督ジョン・マッデンの力量がうかがえる。

    このDVDビデオには、映画からカット編集されたシーンが特典映像として付いている。
    その中で重要なのが、もう一つのラスト。
    ここでヴァイオラの乗った船が難波して、漂流した先が“アメリカ”だと台詞で語られる。
    それと、その前のシェイクスピアとヴァイオラが別れるシーンでは、このカットされた方は、別れを惜しみながら悲しみの中に別れていく。
    もちろんオリジナルはご存じのように、シェイクスピアとヴァイオラの会話がそのまま、「十二夜」の物語へと続いていく。
    実はこれ、オリジナルの方が数段優れているのだけど、ここにもこの映画の良さが伝わってくる。

    シェイクスピアの作った物語が、実は彼の人生の一部であることが判るからだ。
    改めてみると確かに面白いし、グウィネスの男優役も結構面白い。
    お勧めできる一本である。

    Reviewed in 05.2000

    2017年から1999年の公開時を振り返ると

    この作品はこの年のアカデミー賞で、実に13部門にノミネートされ、作品賞・主演女優賞(グウィネス・パルトロウ)を含む7部門で受賞した。
    この年は大激戦だったと思う、他に『エリザベス』『ライフ・イズ・ビューティフル』『プライベート・ライアン』『シン・レッド・ライン』と話題作がノミネートされている。

    今振り返ると『プライベート・ライアン』の評価が一番高いように思うし、私個人的にも、どの作品も好きだが、特に『プライベート・ライアン』が後世に残る名作と言えるかも。

    一方でも、映画のエンターテインメント性とアカデミー賞というお祭り、映画をたくさんの人にもらったことによる功労賞的な意味合いで考えると『恋におちたシェイクスピア』の作品賞受賞も個人的には納得の結果ではある。

    映画『恋におちたシェイクスピア』のデータ

    映画『恋におちたシェイクスピア』

    SHAKESPEARE IN LOVE 123分 1998年 アメリカ

    監督■ジョン・マッデン
    製作■デヴィッド・パーフィット/ドナ・ジグリオッティ/ハーヴェイ・ウェインスタイン/エドワード・ズウィック/マーク・ノーマン
    製作総指揮■ボブ・ウェインスタイン/ジュリー・ゴールドスタイン
    脚本■マーク・ノーマン/トム・ストッパード
    撮影■リチャード・グレートレックス
    美術■マーティン・チャイルズ/ジル・クォーティアー
    衣裳■サンディ・パウエル
    ヘア&メイク■リサ・ウェストコット
    編集■デヴィッド・ギャンブル
    音楽■スティーヴン・ウォーベック
    出演■グウィネス・パルトロウ/ジョセフ・ファインズ/ジェフリー・ラッシュ/コリン・ファース/ルパート・エヴェレット/ベン・アフレック/ジュディ・デンチ/トム・ウィルキンソン/サイモン・カロウ/ジム・カーター/マーチン・クラネス/イメルダ・スタントン

    アカデミー賞 1998年
    作品賞授賞
    主演女優賞授賞 グウィネス・パルトロウ
    助演男優賞ノミネート ジェフリー・ラッシュ
    助演女優賞授賞 ジュディ・デンチ
    監督賞ノミネート ジョン・マッデン
    脚本賞授賞 トム・ストッパード/マーク・ノーマン
    撮影賞ノミネート リチャード・グレートレックス 音楽賞(オリジナル・ミュージカル/コメディ)授賞 スティーヴン・ウォーベック
    美術賞授賞 マーティン・チャイルズ/ジル・クォーティアー
    衣裳デザイン賞授賞 サンディ・パウエル
    メイクアップ賞ノミネート ヴェロニカ・ブレブナー/リサ・ウェストコット
    音響賞ノミネート ドミニク・レスター/ロビン・オドノヒュー/ピーター・グロサップ
    編集賞ノミネート デヴィッド・ギャンブル

    ベルリン国際映画祭 1999年
    功労賞授賞 トム・ストッパード/マーク・ノーマン

    NY批評家協会賞 1998年
    脚本賞授賞 マーク・ノーマン/トム・ストッパード

    ゴールデン・グローブ 1998年
    作品賞(コメディ/ミュージカル)授賞
    女優賞(コメディ/ミュージカル) 授賞グウィネス・パルトロウ
    脚本賞授賞 トム・ストッパード/マーク・ノーマン

    <DATA>

     芝居熱が過熱する16世紀終わりのロンドンで、新進気鋭の劇作家シェイクスピア(ジョセフ・ファインズ)が恋におちた。
     一人の女性ヴァイオラ(グウィネス・パルトロウ)を愛して、愛して、愛して・・・その狂おしさから、あの華麗なる悲劇“ロミオとジュリエット”は生まれた。
     不朽のラブストーリー誕生の陰に存在した本物の恋。

     天才劇作家シェイクスピアが、今、歴史の壁をくぐり抜け、ひとりの“恋する男”になる。
     若き日のシェイクスピアに扮しているのは、「魅せられて」のジョセス・ファインズ。
     射すくめるような瞳で、シェイクスピアの才気と情熱を強烈に演じている。
     一方、運命の女性ヴァイオラには、「エマ」、「スライディング・ドア」で魅力全開のグウィネス・パルトロウ。

  • 映画『紅の豚』 飛ばねぇ~豚はただの豚だ、これこそ男のロマン!

    映画『紅の豚』 飛ばねぇ~豚はただの豚だ、これこそ男のロマン!

    映画『紅の豚』 Porco Rosso

    紅の豚
    © 1992 Studio Ghibli・NN

    カッコイイとは、こういうことさ。

    大人向けの宮崎アニメ

    宮崎駿アニメの一作品。
    彼の作品には数多くの名作が有る、いやいや出す作品全てが傑作と言えるくらい素晴らしい。
    でも個人的にはこの作品、彼の作品の中でもっとも好きな作品の一つだ。
    理由は簡単、(誤解を恐れずに言えば)男のための作品だから。

    『もののけ姫』も『風の谷のナウシカ』も素晴らしい。
    作品の出来と言う点では、そっちの方が上かもしれない。
    あと郷愁を誘うというか、心にしみる作品というと『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』などが有る。
    でも、男のロマンを描いた作品は、この作品と『ルパン三世 カリオストロの城』くらいのものである。

    宮崎アニメの醍醐味は、やっぱりその人間描写。
    宮崎アニメの登場人物は超人的な動きをする、人間らしい動きをデフォルメしているからだ。
    そのデフォルメの巧さは、宮崎アニメの神髄だろう。
    それを始めて見せられたのは「未来少年コナン」で有る。

    さてさて話がどんどんそれていくから、元に戻してと、宮崎アニメに特有の小道具や大道具、そう今回は飛行艇だけど、彼の近未来の乗り物や武器や生物?の描写も面白いけど、前時代的な乗り物の描写がとっても私は好きなのである。

    『ルパン三世 カリオストロの城』ならスバル380とか、ワルサーP38とかね。
    そんな飛行艇(おもちゃ?)に乗って動き回る男(ここでは豚だけど)観ている男ども(あっ!私)は憧れを胸に抱く。
    飛行機や船、そして車にはどこまでも自分の手で行きたいところに行けると言う自由さが有る。
    これが男の心、私の心をくすぐるのだ。

    でもその一方で、飛行艇を作るのが(戦時と言うことも有って)女性ばかりと言うのは、実はそんな男たちを自由に飛び回らせているのは、私たち女性よ!と言う主張も見えたりして!う~ん。

    男のロマンを思いっきり描きながらも、それを支える女性、それを愛する女性を描く、なんてロマンチックでカッコイイ映画なんだろう!

    それと今回のこの作品、声優さんの配役が素晴らしい。
    ポルコの声に森山周一郎の低い声が何とも、である。
    そしてマダム・ジーナに加藤登紀子を持ってきて、しかもしっかりと歌声まで聞かせてくれる。
    やっぱりこの映画は男のロマンだぁ~って。

    Reviewed in 06.2000

    2017年、宮崎駿監督は復活するのか?

    どうやら2019年に新作を作ることで話は進んでいるらしい。

    NHKスペシャル「終わらない人・宮崎駿」での放送で【企画書・覚書】を鈴木敏夫プロデューサーに渡して「お金を集めて」と言うところで終わっている。
    で、何を作るか?についていは明らかにされていないので、鈴木敏夫プロデューサーがヒットさせるタイミングを図って発表するんだろうなぁ~と思う。

    どちらにしても、今度は家族で楽しめる作品になるんだろうなぁ~と予想している。
    逆にいうと宮崎駿作品は、子供向け・子供と大人が一緒に楽しめる作品ということが本人も言っていることだけど、この『紅の豚』と『風立ちぬ』に関しては大人に向けた映画のような気がする(一応、ジブリの前の『ルバン三世 カリオストロの城』も大人向けだけど)。
    共通するのは、戦争で亡くなった人々が空に飛びだっていくシーンがある。

    映画『紅の豚』のデータ

    紅の豚 Blu-ray — Amazonで見る

    Porco Rosso 93分18秒19コマ 1992年 日本

    監督■宮崎駿
    原作■宮崎駿
    脚本■宮崎駿
    作画監督■賀川愛/川口俊夫
    美術■久村佳津
    色彩チーフ■保田道世
    音楽■久石譲
    主題歌■「さくらんぼの実る頃」 歌:加藤登紀子(J.B.Clement-A.Renard)
    挿入歌■「時には昔の話を」 作詞・作曲・歌:加藤登紀子
    音楽制作■徳間ジャパン
    録音演出■浅梨なおこ
    プロデューサー■鈴木俊夫
    制作■スタジオジブリ
    公開■1992.7.18
    作画枚数■58,443枚
    使用色数■476

    コピー■「カッコイイとは、こういうことさ。」 (糸井重里)

    キャスト(声)■ポルコ・ロッソ 森山周一郎/マダム・ジーナ 加藤登紀子/ピッコロおやじ 桂三枝/マンマユート・ボス 上條恒彦/フィオ・ ピッコロ 岡村明美 /ミスター・カーチス 大塚明夫/バアちゃん 関弘子

    <DATA>

     宮崎駿の短編漫画を映画化した長編アニメーション。
     ファシスト党の台頭する1920年代のイタリアを背景に、呪いを受けて“豚”となった中年パイロットの活躍を描く。
     森山周一郎がシブい声で扮する主人公・ポルコ・ロッソのダンディズムが光る秀作。
     飛行艇同士によるダイナミックな空中戦や、宮崎自身ファンである各機の細やかな設定も見どころ。 飛行艇を操る空賊が横行していた、第一次大戦後のイタリアはアドリア海。
     賞金稼ぎの飛行艇乗りであるポルコ・ロッソは、空賊たちには天敵の存在。
     自分の顔を魔法で豚に変えてしまったポルコを何とかやっつけたいと一計を案じた空賊たちは、アメリカからスゴ腕の飛行艇乗りを呼び寄せ、彼に一騎打ちを迫る。 <allcinema>

     第一次世界大戦を控えたイタリアのアドリア海。
     空賊と呼ばれる飛行艇をつかって船を襲う賊の一団、それを撃退するために金で雇われる賞金稼ぎ。
     賞金稼ぎの一人、ポルコはかつて人間だったものの今は豚になって、赤い飛行艇に乗ることから“紅の豚”と言われていた。
     ある日、空賊は、いつもポルコに邪魔をされることから、アメリカ人のカーチスに用心棒を頼む。
     ポルコの飛行艇が調子が悪いときに、カーチスに発見されて、ついには撃墜させられるポルコ。
     ミラノで飛行艇工場を営むピッコロおやじの元に行き、修理を依頼するが男手は無く、設計するのも孫のフィオという少女。
     しかしフィオの腕は確かで、ポルコの飛行艇は以前にも増して、素晴らしい操作性を示す。
     そしてその飛行艇を持って、再度、ポルコはカーチスと勝負することとなるが・・・

  • 映画『CUBE』 好奇心と恐怖心、そして絶望、現代社会の縮図を描く傑作スリラー

    映画『CUBE』 好奇心と恐怖心、そして絶望、現代社会の縮図を描く傑作スリラー

    映画『CUBE』 CUBE

    CUBEキューブ

    世界を犯す、騒がしい絶望。
    カナダの恐るべき新鋭がおくる、20世紀の言葉では語れないオーヴァー・ジャンル・ゲーム・ムーヴィー。

    キューブ (字幕版) — Amazonで見る

    既に20年前の作品、VFXがもたらした新しいジャンルのスリラー

    この作品、“オーヴァージャンル・ゲームムービー”と言うらしい。
    そうスリラー、SF、サスペンス、犯罪、脱獄、そしてスプラッタの要素が入り組んでいる。

    まずは、相当怖いスリラー&スプラッタ作品であることが判る。
    いきなり視覚的に、キューブの内部に罠が仕掛けられていることを見せる。
    従って、一つの扉の向こうに何が有るか?観ているものを恐怖に陥れる。

    この作品、映画館で観たら、よっぽど怖かったに違いない、到底、私には怖くて挑戦する気にはなれないけど(汗)

    キューブ内部のデザインは、幾何学的な模様が描かれ、四角い部屋の閉塞感、そして部屋毎に違う過激な色調で、観ているものの感情を不安定にさせる。
    それは内部にいる人間においては尚更だろう。

    この映画の素晴らしい点は、以下の2つの点で楽しめることだろう。
    一つはサスペンス的な要素と言うか、キューブからの脱出劇であろう。
    数学を駆使したトリックは、なかなかユニークで面白い。

    ネタバレになるが(これから観る人は読まないで!)、キューブが移動していること、実は一部屋だけ、26×26×26の部屋の外に一つだけ部屋が余計に有ること...そしてスタートの部屋がゴールで有ること...この意外性、決して新しくはないが、よく考えられている。

    実際、数学的な素数や因数の計算は、知り合いの大学院生が、色々解いているところをみると、発想としてもよく考えられていて面白い。
    この謎解きの面白さ、しかもそれがいつ死ぬか判らないぎりぎりの緊迫感の中で行われている点も、より一層、観るものを楽しませる。
    結果として、キューブの罠に掛かり死ぬのは、冒頭の2人だけ。
    この2人の死が、最後まで恐怖感を煽り続けるのは、その扇情的なキューブ内部の造形に有るのだろう。

    そこでは、無機質さがキーになる。
    この無機質さこそが、2つ目のポイントなる。
    もう一つの楽しみは、人間内部の感情とそれに関わる社会を、この数人の登場人物と限られた空間の中だけで、描いている点である。
    キューブ自体の存在を言及する際、目的が有って作られたものではないこと。
    作った人間は、その一部しか、その存在を知ることがないこと。
    そして、誰が作らせたのか?自分たちが何故、その内部に居るのか?それ自体、何も意味がなく、社会と同じく既にそこに存在し、その中で生きていかなければならないこと(ここでは無事脱出する事)。

    出口が見つかった際に、一人の男が出ることを拒む。
    それは実社会に戻る意味がないと。
    そうキューブ自体が社会を切り取っている、それも見事なまで無機質な部分だけを。

    全員の服装は作業着のみとされ、指輪も外されている。
    ただ(キューブ内での)生活に必要な眼鏡だけが残されていた。
    究極な無機質な状態に人が追い込まれることによって、実社会では隠されていた人間の本質(あるいは本性)が如実に現れてくる。
    模範的な人間だと思われていた男が、殺人鬼に変貌していく。
    それは人間が社会の歯車でしかないと知った時に、自分自身を見つめ直し、そこに残った本質が行動となって現れているようだ。

    ラストの光の中に脱出していく様は、脱出の喜びやある種の希望よりも、むしろ、これからの実社会という新たな迷路への恐ろしい前兆を感じさせる。
    単なる“オーヴァージャンル・ゲームムービー”と言うだけではなく、見事に人間性までも描いた作品と言え『ガタカ』等と並ぶ新しい感覚の近未来SF作品である。

    監督はカナダ人のヴィンチェンゾ・ナタリと言う人で、今までは短編映画でその才能を発揮し、SF映画『JM』で絵コンテを担当した人らしい。
    今回、キューブ内のデザインの一部も彼が行ったらしい。
    セットのキューブは、1つ半が作られ、キャストは7名、残りはCGを駆使、製作費も日本円にして約5,000万円という超低制作費。

    短編『エレヴェイテッド』

    Elevated 1997年 カナダ
    監督■Vincenzo Natali Genre
    出演■Vicki Papavs….Ellen/Bruce McFee….Ben/David Hewlett….Hank Country

    付録として?ビデオには、ナタリ監督のデビュー前の短編作品が収められていました。
    エレベータと言う限られた空間内で、見知らぬ人たちが、お互いを疑う『CUBE』にも見られた、人間の本質をここでも描こうとしているのが見える。

    但し、短編と言うことや試行錯誤の部分が見られるので『CUBE』程の完成度は見られない。
    サスペンス映画を試行した作品としては面白い。
    『ゾンビ』を思い出してしまう展開は、やはりメジャー・デビューをする監督としては、通り道的な作品。
    デビッド・ヒューレットは、この後『CUBE』にも出演。

    Reviewed in 06.1999

    映画『CUBE』のデータ

    CUBEキューブ Blu-ray — Amazonで見る

    CUBE 91分 1997年 カナダ

    監督■ヴィンチェンゾ・ナタリ
    製作■メーラ・メー/ベティ・オアー
    製作総指揮■コリン・ブラントン
    脚本■ヴィンチェンゾ・ナタリ/アンドレ・ビジェリク/グレーム・マンソン
    撮影■デレク・ロジャース/スコット・スミス
    音楽■マーク・コーヴェン
    編集■ジョン・サンダース
    美術■ダイアナ・マグナス
    SFX監督■ボブ・マンロー/ジョン・マリエラ
    特殊メイク■カリガリ・スタジオ
    SFX■C.O.R.E.デジタル・ピクチャーズ
    出演■モーリス・ディーン・ウィン/ニコール・デボア/デヴィッド・ヒューレット/ニッキー・ガーダグニー/アンドリュー・ミラー/ウェイン・ロブソン/ジュリアン・リッチングス

    <DATA>

     奇抜なストーリー、斬新なビジュアル・センスで話題となったカナダ産異色サスペンス。
     謎の立方体(=CUBE)に閉じこめられた男女6人の脱出劇を、緊迫感漲る演出で描く。
     ゲーム感覚の謎めいた物語やシュールな美術・SFX等を駆使し、人間の闇部を抉った秀作。

     ある日突然、密室に閉じこめられた6人の男女。
     それは正方形の巨大な立方体だった。
     いったい何のために作られたものなのか、なぜ自分たちが閉じこめられたのかは誰も知らない。
     脱出方法は6つあるハッチのいずれかを選び、同じ立方体でつながっている隣に移動しながら出口を探す以外ないが、いくつかの部屋には殺人トラップが仕掛けられていた。
     そんな中、やがて彼らは安全な部屋を示す“暗号”に気づくが・・・。 <allcinema>

     目が覚めると、四角い部屋の中。
     そこは一辺が約5メートルで、6つの壁面にはそれぞれ隣の部屋に通じるハッチがある。
     そんなキューブの中で偶然に出会った6人、刑事のクエンティン(モーリス・ディーン・ウィント)、数学が得意な女学生レブン (ニコール・デボアー)、女医のハロウェイ(ニッキー・ガーダグニー)、謎の男ワース(デビット・ヒューレット)、精神病者のカザ ン(アンドリュー・ミラー)、脱獄囚のレン(ウェイン・ロブソン)、ここは一体どこなのか、いつから何のためにここにいるのか、外に出ることは出来ないのか、密室に閉じこめられた彼らは葛藤の中で、体力と知力を振り絞りキューブからの脱出を試みるが・・・。

  • 映画『奇跡の海』 キリスト教とセックスの関係についての妄想的考察

    映画『奇跡の海』 キリスト教とセックスの関係についての妄想的考察

    映画『奇跡の海』 BREAKING THE WAVES

    奇跡の海

    宗教を無垢に信じる恐怖

    なんて怖い映画なのだろう~、それが第一印象。
    信仰の描き方がベルイマン的である。

    観ていてまず気付くのが、ハンディのキャメラで撮った映像。
    常に上下に揺れていたり、画面がピンボケしたりする。
    編集も面白い、主人公ベスから他の登場人物にキャメラが移動する時は、そのまま映像を繋ぐが、他の人からベスにキャメラが移動する時は、途中でカットしてスパッと切り替わる。

    全体として映像が寒々として冷たい印象がする。
    それは、そこに写されるスコットランドの風景なのかもしれない(個人的には、デビッド・リーンの『ライアンの娘』のアイルランドを想像した)。
    ベルイマンのスウェーデン等の北欧のそれに近い雰囲気が感じられる(監督さんがデンマークの人ですね...)。
    そう言ったインパクトの有る映像と共に、出だしは俗物的なドラマが展開されるかのように始まる。

    しかし、この作品のテーマは、ラストのシーンが示すように“神の啓示”に有る。
    そのテーマにぐいぐい引き込まれていく。

    怖いというのは、大きく2つの点に関して。
    プロテスタントの非常に厳格な宗派(実際の宗派は私には判らないが)の中で、その人間の取る行動の恐ろしさ。
    主人公のベスは、その中で純粋培養された人間。
    この町に住む人々の宗教観には神の不在を感じずにはいられない。
    そこには形骸化した、伝統しか感じられない。
    神は主人公ベスに啓示を与えるが、それはラストまで、狂気なのか啓示なのか、判らない。
    しかしあれが啓示だとすれば、彼女を生んだこの街の、この戒律や宗教観の肯定になるような気がしてならない。

    確かに主人公のベスは、その純粋さの上、教会の戒律に背き、破門され“(神を愛することは出来ても、神の)言葉(だけ)を愛することは出来ない!”と叫ぶが。
    ベスが娼婦になり、教会から破門になり精神病院に送られそうになるが、脱走して自分の街、自分の実家に戻るシーンが有る。
    しかし街の子供達は、ベスに石を投げつける。
    追いかけては来ては投げつける。
    キリストの教えに、隣人を愛せって有るのに...。

    この街の人々の宗教観が生み出した、伝統や習慣(のようなもの)には恐ろしいものを感じるが、これが絵空事ではないのは、(日本の)オウム(真理教)等を見れば判ること。
    宗教とはある種の洗脳も有るのだから...

    もう一点のこの映画の恐ろしさ...主人公ベス。
    彼女を純真な女性と感じるか?それても知能の低い人間と捉えるか?は有るが、彼女はこの街の宗教観の中で純粋培養されてきた女性。
    結婚によって、男性との初めての行為におよび、その喜びを知る。
    しかし、その後の行動と言ったら、私の目からは常軌を逸しているとしか言えないもの。
    キリスト教って人に与えることでしょ?と言いたくなるような場面が続く。
    愛するものから何でも奪い取ろうとする。
    また純粋上の事なのか?神の言葉を自分で作り上げて語り出す。
    愛をせがむ表情や自分の望みが受け入れられず叫び泣く姿は、私にはどうしても怖く写る。
    彼女の笑いの表情には、何かに取り憑かれたものを感じるのは私だけだろうか?

    主人公ベスの夫は、下半身不随になる怪我をするが、ベスの死と共に歩けるようになっている。
    しかもなんの前触れもなく、突然に!そして鐘が鳴る。
    全て神の“啓示”なのだろうか? セックスレスになった男性のセックスを感じたいがために、妻に他の男との関係を求める、極限の愛の形と言うより、神との関わりを描いた作品として考えさせる。

    でもベスと言う女性像には、嫌悪を感じずにはいられない。
    決して好きな作品ではないが、凄い作品では有る!

    Reviewed in 03.1999

    2017年のラース・フォン・トリアー

    この作品が私とラース・フォン・トリアー監督の出会い、と言っても初めて見た作品という話だけですが。
    ラース・フォン・トリアー監督の初期の傑作で、実はこれが一番判りやすい作品かもしれない。

    この作品はモチーフがイングマール・ベルイマン監督の『処女の泉』に近いが、主人公が死んだ後に聖人(神に祝福される)となるか、異教徒?に葬られるか、の違いがある。
    このあたりが、その後のラース・フォン・トリアー監督の独特な世界観へと突き進む予感だったのかもしれないが。

    ベルイマンが神と人間の関係を日常の中に描いたのに対して、ラース・フォン・トリアーは自由な発想で映像化することにチャレンジしている。
    「天国」「煉獄」「地獄」を描いた『アンチクライスト』や性に縛られる女性を描いた『ニンフォマニアック』など。

    カンヌ国際映画祭で色々な賞を受賞・ノミネートされていることを考えると、ヨーロッパ文化とキリスト教やその他の宗教との関係については複雑な関係で、人々の生活に影響を与えていることが判る。
    宗教観とベルイマン、ラース・フォン・トリアーを考察するのは楽しそうだが、キリスト教ではない私がキリスト教について知っている知識が少なすぎるかもしれない。

    主演のエミリー・ワトソンはこの作品で最高の演技をして見せて、逆にイメージがついてしまったところがある。
    現在も名脇役として活躍しているイギリスの名女優。

    そう言えば、主人公の夫役はステラン・スカルスガルドだったなぁ~
    スウェーデン出身のスカルスガルドはそれまでも脇役として少しずつハリウッド作品にも出ていたが、この作品で一気に有名になり、その後もラース・フォン・トリアー作品に出続けている。
    もちろん、ハリウッドの大作にも出続ける名脇役。

    映画『奇跡の海』のデータ

    奇跡の海【無修正 HDニューマスター版】(Blu-ray) — Amazonで見る

    BREAKING THE WAVES 158分 1996年 デンマーク
    監督■ラース・フォン・トリアー
    製作■ヴィベク・ウィンドレフ/ピーター・オルベク・イェンセン
    脚本■ラース・フォン・トリアー
    撮影■ロビー・ミューラー
    美術■カール・ユリウスン
    音楽■レイ・ウィリアムズ/マーク・ウォーリック
    編集■アナス・レフン
    衣装■マノン・ラスムッセン
    製作総指揮■ラース・ヨーンソン
    出演■エミリー・ワトソン/ステラン・スカースガード/カトリン・カートリッジ/ジャン=マルク・バール/ジョナサン・ハケット/エイドリアン・ローリンズ/ジョナサン・ハケット/サンドラ・ヴォー/ウド・キアー/ミケル・ゴープ/ローフ・ラガス/フィル・マッコール/サラ・グジョン

    1996年アカデミー賞
    主演女優賞ノミネート エミリー・ワトソン

    1996年カンヌ国際映画祭
    審査員特別賞授賞 ラース・フォン・トリアー

    1996年N.Y.批評家協会賞
    女優賞授賞 エミリー・ワトソン
    監督賞授賞 ラース・フォン・トリアー
    撮影賞授賞 ロビー・ミューラー

    1996年L.A.批評家協会賞
    ニュー・ジェネレーション賞授賞 エミリー・ワトソン

    <DATA>

     プロテスタント信仰が強い、70年代のスコットランドの村が舞台。
     ベスは、油田工場で働くヤンと結婚した。
     彼女は、仕事のために家に戻れない彼を愛するあまり、早く帰ってくるよう神に祈る。
     するとヤンは工場で事故にあい、願い通りに早く戻ってきた。
     だが回復しても寝たきりの上に、不能になっていた・・・。
     やがてヤンは、妻を愛する気持ちから他の男と寝るよう勧め、ベスもまた、夫を愛するがゆえに男たちを誘惑してゆく。

     映像派ラース・フォン・トリアー監督は、1996年カンヌ国際映画祭で大絶賛されグランプリを受賞、この作品がデビュー作となる、主人公ベスを演じたイギリス人女優、エミリー・ワトソンは、アカデミー賞主演女優賞にノミネート。
     全8章、2時間38分からなる、濃密な愛の物語。 <allcinema>

  • 映画『風と共に去りぬ』 ハリウッド映画史に残る不朽名作を語ってみる

    映画『風と共に去りぬ』 ハリウッド映画史に残る不朽名作を語ってみる

    映画『風と共に去りぬ』 GONE WITH THE WIND

    風と共に去りぬ

    雄大なスケールの中に燃え上がる炎の恋!映画史に輝く不朽の名作(リバイバル時)

    映画史上、燦然と輝く愛の金字塔!!
    炎のごとく燃え上がる世紀のロマンを雄大、華麗に描いた永遠・不朽の名作(リバイバル時)

    主人公スカーレットとヴィヴィアン・リーの奇跡の出会い

    一番最初にこの作品を観たときは、その良さが全く判らなかった!余りにも幼すぎて・・・
    その後、観たときに感動と共に大きなショックを受けた作品。
    アカデミー賞の監督賞を取ったフレミング監督と共に、映画の後半はジョージ・キューカー監督がメガホンをとった。

    作品としては、その影響もあり2部構成のような作りになっている。
    フレミングはあくまで大河ドラマとしてこの作品を撮り続け、キューカーは人間ドラマとして撮った。
    それでも、この作品が成功したのはプロデューサー・セルズニックの執念の現れだろう。

    当時、最新のカラー技術を用いて、映像的な美しさを演出したのはもちろん、セットも豪華に組まれた。
    俳優陣も、これ以上はないと言っても間違いないだろう。
    レット・バトラー役は、当時はクラーク・ゲイブル以外考えられなかったし、スカーレット・オハラ役はヴィヴィアン・リーを発見することが出来た。
    彼女にとっては、この作品に出たことによって一気にスターダムにのし上がった。
    これだけのスターが出演しながら、それぞれの配役がピッタリとマッチしている点も、今後はなしえないことだろう。

    ヴィヴィアン・リーの発見には逸話が残るぐらい有名。
    数多くの有名な女優がカメラテストを受けたが、恋人でありイギリスの名優ローレンス・オリビエと共にハリウッドを訪れた彼女に、白羽の矢が立ったのは有名な話。

    原作も、ミッチェル女史が南北戦争の話を伝え聞いたことを書き綴った部分と、彼女自身の体験を盛り込んだ話として書かれ、当時の大ベストセラーでもあった。
    ミッチェル女史自身が、かなりの美貌の持ち主であり資産家の娘だったことを考えると、スカーレットはミッチェル自身とも言える。

    この作品の素晴らしい点は、そのテーマにあった。
    確かに最高の俳優に恵まれ、湯水の如くお金を使い、原作にも恵まれた。
    やはりスカーレットの生き様を、南北戦争という大河ドラマをしっかり描きつつ、それに負けない力強さを持って描いていたことだ。
    それは上にも書いたとおり、いくつかの偶然(原作が既に持っていたスカーレット像と、それを演じきれるヴィヴィアン・リーという女優の存在)によってなされた。

    アトランタからタラに戻るシーンで、枯れ果てた木の傍らで力強く立ち上がるスカーレット、レッド・バトラーが去った後でもくじけない、スカーレットの精神的な強さ。
    そこには、アメリカン・スピリットと言う言葉では片づけられない、人間として逞しさ勇気を感じることが出来た。
    このテーマを見事に描き切り、傑作として映画史を語る上で、忘れることの出来ない作品となった。

    Reviewed in 11.1998

    風と共に去りぬ

    人間のドラマの全てが詰まった作品

    久しぶりにこの作品を観た。
    前回観たのは5,6年前でビデオ、映画館で観るのは十数年ぶり。
    今回の上映は、60年前のテクニカラーを再現する事を一番に考え処理したもの。
    今年でちょうど60周年記念と言うこと。

    映像自体は明らかにビデオに比べると美しく、映画館で聞く音楽はまた一段と良い。
    但し、今回の上映館、有楽町スバル座は音響設備が余り良くなかったのが残念。

    それはさておき、何度目か(十数度目か?)の鑑賞になるこの作品。
    何度観ても素晴らしさを実感せずにはいられない作品。
    今回はその素晴らしい点を色々発見する事も出来た。

    まずその最初がドラマとしての素晴らしさ。
    とにかく物語が面白い、それは原作者マーガレット・ミッチェルの功績で有る事は間違いない。
    四人の主人公(レット、スカーレット、アシュレーにメラニー)が魅力的であること。
    理想の男性像としてはレットであり、理想の女性像としてはメラニーなのだろう。
    が、優柔不断さと優しさが混在するアシュレーもまた一つの男性像だし、気が強くわがままで利己的なスカーレットもまた一つの女性像の憧れの姿だと思える。
    その四人の主人公が、アメリカ最大の内乱、南北戦争を舞台にして波瀾万丈の人生を送る。
    大河ドラマと人間ドラマが混在する。
    色々な愛の形を描きながらも、家族の絆や友情、そして奴隷制度や南部の文化も描いている。

    そしてこの劇的なドラマ性を持った小説を、見事に映像化したことの素晴らしさ。
    それは破綻のない演出もしかり、お金をふんだんに掛けたセットもしかり、で有る。

    ここに描かれるテーマは人間の本当の強さとは何か?人間が生き残るには何が必要か?と言うことだと思う。
    だからこそ、今でも人々の心を強く打つのだろう。

    この映画にはおそらく、これからも起こり得ない偶然がいくつも重なって、奇跡が生まれたと言った方が良いのかもしれない。
    それは60年前と言う映画の一番良い時代、ハリウッドの映画製作のシステムが完成した時期で有り、未だ初期の映画作りの純粋さを残していた時期でも有った。
    そして意欲的でバイタリティあふれるプロデューサー、デビッド・O・セルズニックの手元に、この小説が渡ったこと。
    更にクラーク・ゲイブルとヴィヴィアン・リーと言う二人の俳優が存在したこと。
    最後の偶然は、この時期、本格的にカラー映画が出てきたこと(この映画ができたのは第二次世界大戦前である!)。

    小学生の頃、この作品を観たときに、レットの男らしさを理解できず、スカーレットの魅力も理解できなかった。
    ただ壮大なドラマだけに感心したに過ぎなかった。
    それが少しずつ時間が経つにつれて、男女の愛に感動するようになった。

    そして今回は親子の愛情、それに涙する事が出来る年齢になった。
    オハラ親子の愛、レットの娘への溺愛、家族の大切さ...それらもこの作品、開拓精神旺盛なアメリカ人の心のより処、それが家族であることが、今、 この年齢になって理解できる。

    良い映画を何度も観ることの素晴らしさ!それができることが映画の素晴らしさである。
    そしてそう言う映画に出会えることこそが、(一つの)人生の喜びでもある。

    今回、60年前のテクニカラーの美しさ、音楽にのって冒頭のタイトルが出るシーンから心揺さぶられる。
    そして、スカーレットは言う「明日は明日の風が吹く」と。
    その姿こそが、人を強くして生きる道標をとなることを、人々の心に植え付けていく...永遠に!

    Reviewed in 11.1999

  • 映画『カサブランカ』 ボギーを生かすためのバーグマンの美しさ

    映画『カサブランカ』 ボギーを生かすためのバーグマンの美しさ

    映画『カサブランカ』 CASABLANCA

    カサブランカ

    アカデミー賞他世界映画賞に輝く 映画史上最高の《愛》の名篇! あなたの胸に すばらしい感動を捧げます
    激動のカサブランカに 激しくも哀しく燃え上がる 恋の炎–(リバイバル時)

    プロパカンダと甘いメロドラマ

    恋愛映画の良い要素を詰め込むだけ詰め込んで作った、甘い甘いメロドラマ。
    この作品がアカデミー作品賞を取るとは(゚o゜;)ウオオッ(ホント、この作品の演出はなってない・・・)
    とはいえ、この作品にどっぷりと浸かって楽しむのも一つの手。

    話は良くできているし、なんと言ってもボギーとバーグマンの主演の2人の恋愛劇は、観ていて感動もの。
    ボギーは他の作品でも格好良いが、この作品での徹底した二枚目ぶりには脱帽もの。
    またバーグマンは、この作品以外に数々の名演の有る本当の名女優だが、この作品での美しさは絶品!脇役のレインズも良い味を出している。

    対独ムードを盛り上げるプロパガンダの部分も盛り込んで、話を盛り上げているのは少しやり過ぎか?
    それでも、あくまでロマンチックな映像とセリフ、そして音楽と恋愛気分にどっぷり酔いたい時は良いかも・・・。

    Reviewed in 01.1999

    結局のところボギーがカッコイイ

    DVDビデオで、久々にこの名作を鑑賞。
    やはりこの映画、どう見ても国策映画のように感じてしまう。
    と言うのは、この映画のできる少し前、2年前まではアメリカではドイツとの参戦に関して、中立を保つべきか?戦うべきか?で国論が二分されていた。
    結局、この映画が製作された時には、アメリカは参戦する訳だが、そういった時代背景を反映してか、反ナチ色があからさまである。
    仏領モロッコは、フランスの植民地で有り、本来ならフランスも帝国主義の名の下にモロッコを略奪した事も史実である。

    それが第二次世界大戦からフランスの首都パリが、ナチスドイツ軍に占領されると、モロッコもあたかもドイツ領のごとくである。
    フランス人の警視総監ルノーが、ヴィシー産のミネラルウォーターをゴミ箱に捨てるシーンは、粋と感じるか、はたまたやりすぎると感じる か・・・少し複雑なところでもある。

    しかしこの映画をそういった視点で、今、観ることは少し不公平かもしれない。
    この作品は歴史的な映画と言うよりも、はやりラヴ・ロマンスの名品として捉えるのが正しいだろう。

    私がこの映画を愛して止まないのは、男女の心情そして男女の信条が見事に描かれているからだ。
    特にパリでのリック(ボギー)とイルザ(バーグマン)の心の揺れ、心情と信条の葛藤が見事なまでに表現されている。

    マイケル・カーティス監督の演出の上手さは、ボギーに有ると思う。
    きっとバーグマンは、もっと美しく撮れたと思う。
    しかしボギーは、これ以上ないくらい見事なキャラクターになっている。
    ボギーの持つ独特な男らしさを逆に利用して男の弱さを時折見せる、それが効果的なのである。
    だからこそ、リックは映画史上最も男らしい主人公と言えるのかもしれない。

    キザなまでな徹底したセリフ、しかしボギーとバーグマンの二人に掛かると、それが心地よいメロディーに聞こえる。

    今回見たDVDビデオには、ローレン・バコールをナレーションにした30分以上ものドキュメンタリーが挿入されている。
    この作品のできた背景や関係者の貴重な証言も聞くことができるもの。
    画像も美しくリニューアルしているのでお薦めの逸品。

    ※ 最新のBlu-ray版も豪華特典あり

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    Reviewed in 06.2000

    古典として

    また戦後のナチの残党の話として、イングリッド・バーグマンとクロード・レインズが共演しているヒッチコック監督の『汚名』も似たような味わいがある。
    『汚名』はイングリッド・バーグマンを引き立たせるために作られた作品ではあるが。

    2017年日本公開作品にブラッド・ピットとマリオン・コティヤールの競演で『マリアンヌ』(ロバート・ゼメキス監督)があるが、1942年のモロッコを舞台にした諜報員の男女の話で、非常にモチーフが似ている。
    美男美女の悲恋ということで、古きハリウッド映画の雰囲気がよく出ている。

    映画『カサブランカ』のデータ

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    CASABLANCA 103分 1942年 アメリカ
    監督■マイケル・カーティス
    製作■ハル・B・ウォリス
    原作■マーレイ・バーネット/ジョアン・アリソン
    脚本■ジュリアス・J・エプスタイン/フィリップ・G・エプスタイン/ハワード・コッチ
    撮影■アーサー・エディソン
    音楽■マックス・スタイナー
    出演■ハンフリー・ボガート/イングリッド・バーグマン/ポール・ヘンリード/クロード・レインズ/コンラート・ファイト/ピーター・ローレ/シドニー・グリーンストリート/ドゥーリイ・ウィルソン

    ◆1943年アカデミー賞
    作品賞授賞
    主演男優賞ノミネート ハンフリー・ボガート
    助演男優賞ノミネート クロード・レインズ
    監督賞授賞 マイケル・カーティス
    脚色賞授賞 ハワード・コッチ/フィリップ・G・エプスタイン/ジュリアス・J・エプスタイン
    撮影賞(白黒)ノミネート アーサー・エディソン
    作曲賞ノミネート マックス・スタイナー
    劇・喜劇映画音楽賞ノミネート マックス・スタイナー

    <DATA>

     戦火近づく’40年の仏領モロッコ、カサブランカは、自由を求めて渡米しようとする人々で溢れていた。
     ナイトクラブを経営するリック(ハンフリー・ボガート)の元へ、ナチの手を逃れてここまでやって来た抵抗運動の指導者ラズロ(ポール・ヘンリード)が現れる。
     だがその人物の妻は、かつてパリでリックと恋に落ちたイルザ(イングリッド・バーグマン)だった・・・。

     ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、そしてカサブランカの警察署長に扮しイイ味を醸し出すクロード・レインズ。
     激動の時代、別れた恋人、再燃する愛--これでもかと注ぎ込まれたロマンティックな要素。
     そして、『君の瞳に乾杯』、『アズ・タイム・ゴーズ・バイ』など心くすぐるキーワード。
     言わずと知れたアメリカ映画の古典的作品で、アカデミーの作品・監督・脚色賞を受賞。
     だが、リアルタイムで観ていない限り、この作品に“よくできたメロドラマ”という以上の価値を見出す事は困難である。 <allcinema>

  • 映画『影武者』 コッポラとルーカスが認めた黒澤明作品

    映画『影武者』 コッポラとルーカスが認めた黒澤明作品

    映画『影武者』 THE SHADOW WARRIOR

    影武者

    動乱の戦国を巨大なる幻が行く--

    晩年の歴史絵巻、戦記ものというより人間ドラマ

    黒澤明監督晩年の作品と言って良いのだろう。
    黒澤監督は、やはりダイナミックな映像がその最大の持ち味だと思う。
    それこそは映画であり、また人々がダイナミックに躍動することで、一人一人のキャラクターが浮かび上がってくる。

    この作品では、歴史と言うものが大前提にある。
    影武者を捜し出すエピソード自体はオリジナルになるが、武田信玄の「喪を三年秘す」のは歴史的な事実。
    また弟・信廉が一時期、信玄の影武者になっていたのは、これまた歴史的な通説。

    信玄の偉大さが、影武者になった泥棒と武田勝頼を通して描かれている。
    そしてそこにあるのは、戦争の無情さで有る。
    武田信玄ほどの武将になると、戦国時代という時代であったとしても、人命の尊さを知っているのである。
    その事が人の上に立つものの資質なのかもしれない。

    それ以上にこの映画の醍醐味は、武田の騎馬隊を再現した数々の戦闘シーン。
    これだけの規模の人間達を操り、見事に合戦シーンを再現してみせた。
    これこそが映画なのである、黒澤監督にしか出来ないこだわりと完全主義。

    武田信玄と泥棒(影武者)、人格者と卑しい者、この相反する人間性の二役を見事に仲代達也が演じている。
    当初は勝新太郎が演じていたが、勝も黒澤監督も完全主義者で強情、意見が分かれて互いに折れず、勝が役を降りたという。
    そこには黒澤監督の、また勝新太郎の映画への執念が感じ取れる。
    この作品自体、執念の固まりのような凄味が有る。

    Reviewed in 12.1999

    2017年に改めて振り返って見ると

    黒澤明監督は1965年(私が生まれた年)までに作った映画が一番良い時期だったように思う。
    1999年頃はまだ私も日本映画をそれほど見ておらず、黒澤明監督の映画もそれほど見ていなかった。

    この『影武者』にしても続く『乱』にしても、黒澤明時代劇として十分に楽しめる作品だし、VFXを使わずに戦闘シーンを再現できるのは、黒澤明の名前がなければできないことだと思う。

    大規模戦闘シーンを再現できるだけの巨匠になったことは、それを作る資格を意味するが、ダイナミズムがそれで達成できるものではないことも事実と判った。
    『野良犬』『羅生門』から『天国と地獄』『赤ひげ』までのダイナミズムを超えることはもうなかった気がする。

    映画『影武者』のデータ

    影武者 — Amazonで見る

    THE SHADOW WARRIOR 179分 1980年 日本

    監督■黒澤明
    製作■黒澤明/田中友幸
    外国版製作■フランシス・コッポラ/ジョージ・ルーカス
    脚本■黒澤明/井手雅人
    撮影■斎藤孝雄/上田正治
    撮影協力■中井朝一/宮川一夫
    美術■村木与四郎/桜木晶(助手)
    音楽■池辺晋一郎
    録音■矢野口文雄
    監督部チーフ■本多猪四郎
    アドバイザー■橋本忍
    照明■佐野武治
    編集■黒澤明
    出演■仲代達也/山崎努/隆大介/萩原健一/根津甚八/大滝秀治/油井昌由樹/桃井かおり/倍賞美津子/室田日出男/志村喬

    カンヌ国際映画祭 1980年
    パルム・ドール(グランプリ)授賞

    英国アカデミー賞
    監督賞授賞 黒澤明
    衣装デザイン賞

    フランス・セザール賞
    最優秀外国映画賞授賞

    <DATA>

     巨匠・黒澤明監督が「デルス・ウザーラ」以来5年ぶり(日本映画としては「どですかでん」以来10年ぶり)に製作した、戦国スペクタクル巨編。
     武田信玄の影武者として生きた男の悲喜劇を荘厳にして絢爛な映像で描く。
     戦国時代。
     家康の野田城攻めの折り、鉄砲で撃たれこの世を去った武田信玄。
     弟信廉は信玄死すの報を打ち消すため信玄の影武者を立てる。男は盗みの罪から処刑されるところを信玄と瓜二つだったことから助けられたのだった。
     だが男にとって戦国の雄・信玄として生きることはあまりにも過酷だった……。
     製作費の高騰で計画が頓挫しかかったり、当初主役だった勝新太郎が監督との意見の相違から途中降板するなどの話題にも事欠かなかった。
     カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。 <allcinema>

    全国統一の気運が高まる戦国時代、その雄“武田信玄”は敵を欺くため、影武者を使ったと言われている。
    死刑執行寸前だった泥棒(仲代達也)が、実は武田信玄に瓜二つだったことからこの物語は始まる。
    そして、京に進軍の途中、信玄が死にその遺言で、三年の間信玄の死を隠すことに...
    海外版製作を、黒澤監督を師と仰ぐフランシス・コッポラ、ジョージ・ルーカスが引 き受けることで、製作が実現化した。