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  • エロさだけじゃない!傑作・官能映画トップ5+10(洋画編)

    エロさだけじゃない!傑作・官能映画トップ5+10(洋画編)

    LAST TANGO IN PARIS

    エロい映画?セクシーな映画?

    エロい、セクシーな映画と言えば、なにを想像するのでしょうか?

    アダルト・ビデオが存在するので、そこは今回は捨てておいて(笑)、日本なら日活ロマンポルノもありましたが・・・
    洋画では、私の鮮烈な記憶にあるのは、シルヴィア・クリステル主演の『エマニエル夫人』(1974)でしょうか。
    ただ、シルヴィア・クリステルの裸体の美しさやソフトコア・ポルノと呼ばれる、数々のセックス・シーンは話題になったものの、物語としては退屈なものでした。

    『エマニエル夫人』の監督のジュスト・ジャカンが撮った『O嬢の物語』(1975)もコリンヌ・クレリーの美しさとマゾ的な世界観を持ち込んだことで話題になったものの、こちらも女性を性的な支配するといったもので、映像意外に見どころは少ない。

    イタリア映画もエロチックな映画が数多く・・・その中でも”初体験映画”の代表作として『青い体験』(1973)がありました。
    主演のラウラ・アントネッリの可愛らしい妖艶さが良かったのと、少年が初体験を通して大人に成長していく過程を描き、その後の類似作品を世に多く出すきっかけとなった作品。

    映画『青い体験』『続・青い体験』 Blu-ray セット<無修正版>

    『ニュー・シネマ・パラダイス』の監督ジュゼッペ・トルナトーレの『マレーナ』(2000)も同系統の作品で、主演のモニカ・ベルッチの妖艶さが、子供の憧れと妄想、そして現実を交差させながら描いていた。
    第二次世界大戦の敗戦国イタリアの凄惨さと共に子供の希望が描かれ、好きな作品でもあります。

    映画『マレーナ』 [モニカ・ベルッチ]

    イタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督が、主演にマーロン・ブランドを据えて描いた『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972)は、パリのアパートの一室で情欲に身を任せる男女の姿を描いた問題作。
    ただただマーロン・ブランドとマリア・シュナイダーが絡み合っているシーンが続くが、内容的には哲学的な部分もあり、セックス・シーンが映画の屋台骨となっている。
    当時は過激なシーンとされていたが、現在ではそれほどでもない、日本ではアナルセックスが話題に、ヨーロッパでは聖書を否定する表現が話題に、このあたりは国民性でしょうか。

    映画『ラストタンゴ・イン・パリ』 オリジナル無修正版 [Blu-ray]

    ハリウッドでは、シャロン・ストーンの登場が衝撃的でした(笑)
    『氷の微笑』(1992年)での彼女の大胆演技とサスペンスのストーリーで大ヒット。
    シャロン・ストーンの完璧なスタイル(顔も美形という意味では完璧)が初めて見ることができた作品。
    また演出に関しても、ヒッチコック風で音楽も煽るようなもので、今見ても、シャロン・ストーンの美しさと共に楽しめる作品ではあります。
    それにしてもマイケル・ダグラスは『危険な情事』(グレン・クローズ)といい、『ディスクロージャー』(デミ・ムーア)、今作品と女優との絡みが多い。

    映画『氷の微笑』 [シャロン・ストーン/マイケル・ダグラス ]

    セクシー路線の映画を撮る監督の一人として、エイドリアン・ラインがいますが、話題になった『ナイン・ハーフ』『危険な情事』といった作品がありますが、個人的には(大好きな)ダイアン・レインが主婦役で、年下の美青年とのセックスに溺れていく『運命の女』(2002)が好きな作品です。
    子役から天才的な演技をしていた彼女だけど、意外にグラマーなボディの持ち主で、映画でも時々そのヌードを披露しています。
    この作品では、もう若くない主婦でありながら、一般世間では美しい部類に入る女性が不倫に走りる情感をダイアン・レインが見事に演じていますが、彼女のセクシーな肢体も一役買っています。

    映画『運命の女』 [ダイアン・レイン主演]

    中国映画界の巨匠チェン・カイコー監督が、初めてハリウッドで撮った英語作品『キリング・ミー・ソフトリー』(2001)は、衝撃的な出会いから結婚した相手に、不審感を持つが、夫との特殊なセックスに溺れていく女性を描いています。
    少女っぽい表情が印象的なヘザー・グラハムが大胆で美しいセックスシーンを演じています。

    映画『キリング・ミー・ソフトリー』 [ヘザー・グラハム]

    巨匠スタンリー・キューブリックが夫婦の愛を描き、遺作となったのが『アイズ ワイド シャット』(1999)です。
    当時、結婚していたトム・クルーズとニコール・キッドマンが出演したこと、そしてニコール・キッドマンのスラッとした肢体とセクシーさの表現は秀逸でした。
    詳しくは、映画『アイズ ワイド シャット』 夫婦の形とセックスについてを読んで頂けると嬉しいです。

    映画『アイズ ワイド シャット』 [ トム・クルーズ /ニコール・キッドマン]

    少女チックなセックスへの憧れ、キレイなセックスシーンをふんだんに盛り込んだ作品としては、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(2015)があります。
    大富豪だが特殊なセックスの趣味がある美男子と、女子大学生とのセックスの日々。
    ダコタ・ジョンソンのあどけない表情に反するような美しい肢体をいじめ尽くすところが見どころです。
    原作の人気と共にシリーズ化されていて、いずれも主演はダコタ・ジョンソンが演じています。

    映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』

    フランスの名匠フランソワ・オゾン監督が描いた名門の女子高の生徒がSNSを通じた売春に走る衝撃作が『17歳』(2013)でした。
    17歳の少女の複雑な心理とアンバランスなまでに美しい肢体を見せたマリーヌ・ヴァクトでした。
    当時20代前半でしたが、今は結婚出産を経て、シャネルなどのモデル中心で活躍しているみたいです。

    映画『17歳』 (R-18バージョン)

    ちなみに映画ではなく、テレビシリーズでアメリカでは大ヒットした『ゲーム・オブ・スローンズ』では大胆なセックスシーンが、描かれています。
    特にこの作品をきっかけに『世界一キライなあなたに』(2016)や『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』でも活躍しているエミリア・クラークが大胆なセックスシーンを演じています。
    これは中世的な世界観の中で、男と力が世界を支配する象徴として、男性が女性をセックスで支配するといった関係性を描いています。
    作品自体は、権謀術数で国を支配していく魔法と剣の世界の物語で、裏切り者が生き残るという、アンチ・ヒーロー的な部分が面白い作品でもあります。

    テレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」

    紹介した作品の中で、映画の物語の進行上の必要性や意図としてセックスシーンやエロい方向に進んでいくものが多いですが、その必然性と物語性のバランスと演出と奇抜性という意味では、以下の5作品が私の中ではベストな作品となります。

    それでは、早速・・・

  • 映画『CUBE』 好奇心と恐怖心、そして絶望、現代社会の縮図を描く傑作スリラー

    映画『CUBE』 好奇心と恐怖心、そして絶望、現代社会の縮図を描く傑作スリラー

    映画『CUBE』 CUBE

    CUBEキューブ

    世界を犯す、騒がしい絶望。
    カナダの恐るべき新鋭がおくる、20世紀の言葉では語れないオーヴァー・ジャンル・ゲーム・ムーヴィー。

    キューブ (字幕版) — Amazonで見る

    既に20年前の作品、VFXがもたらした新しいジャンルのスリラー

    この作品、“オーヴァージャンル・ゲームムービー”と言うらしい。
    そうスリラー、SF、サスペンス、犯罪、脱獄、そしてスプラッタの要素が入り組んでいる。

    まずは、相当怖いスリラー&スプラッタ作品であることが判る。
    いきなり視覚的に、キューブの内部に罠が仕掛けられていることを見せる。
    従って、一つの扉の向こうに何が有るか?観ているものを恐怖に陥れる。

    この作品、映画館で観たら、よっぽど怖かったに違いない、到底、私には怖くて挑戦する気にはなれないけど(汗)

    キューブ内部のデザインは、幾何学的な模様が描かれ、四角い部屋の閉塞感、そして部屋毎に違う過激な色調で、観ているものの感情を不安定にさせる。
    それは内部にいる人間においては尚更だろう。

    この映画の素晴らしい点は、以下の2つの点で楽しめることだろう。
    一つはサスペンス的な要素と言うか、キューブからの脱出劇であろう。
    数学を駆使したトリックは、なかなかユニークで面白い。

    ネタバレになるが(これから観る人は読まないで!)、キューブが移動していること、実は一部屋だけ、26×26×26の部屋の外に一つだけ部屋が余計に有ること...そしてスタートの部屋がゴールで有ること...この意外性、決して新しくはないが、よく考えられている。

    実際、数学的な素数や因数の計算は、知り合いの大学院生が、色々解いているところをみると、発想としてもよく考えられていて面白い。
    この謎解きの面白さ、しかもそれがいつ死ぬか判らないぎりぎりの緊迫感の中で行われている点も、より一層、観るものを楽しませる。
    結果として、キューブの罠に掛かり死ぬのは、冒頭の2人だけ。
    この2人の死が、最後まで恐怖感を煽り続けるのは、その扇情的なキューブ内部の造形に有るのだろう。

    そこでは、無機質さがキーになる。
    この無機質さこそが、2つ目のポイントなる。
    もう一つの楽しみは、人間内部の感情とそれに関わる社会を、この数人の登場人物と限られた空間の中だけで、描いている点である。
    キューブ自体の存在を言及する際、目的が有って作られたものではないこと。
    作った人間は、その一部しか、その存在を知ることがないこと。
    そして、誰が作らせたのか?自分たちが何故、その内部に居るのか?それ自体、何も意味がなく、社会と同じく既にそこに存在し、その中で生きていかなければならないこと(ここでは無事脱出する事)。

    出口が見つかった際に、一人の男が出ることを拒む。
    それは実社会に戻る意味がないと。
    そうキューブ自体が社会を切り取っている、それも見事なまで無機質な部分だけを。

    全員の服装は作業着のみとされ、指輪も外されている。
    ただ(キューブ内での)生活に必要な眼鏡だけが残されていた。
    究極な無機質な状態に人が追い込まれることによって、実社会では隠されていた人間の本質(あるいは本性)が如実に現れてくる。
    模範的な人間だと思われていた男が、殺人鬼に変貌していく。
    それは人間が社会の歯車でしかないと知った時に、自分自身を見つめ直し、そこに残った本質が行動となって現れているようだ。

    ラストの光の中に脱出していく様は、脱出の喜びやある種の希望よりも、むしろ、これからの実社会という新たな迷路への恐ろしい前兆を感じさせる。
    単なる“オーヴァージャンル・ゲームムービー”と言うだけではなく、見事に人間性までも描いた作品と言え『ガタカ』等と並ぶ新しい感覚の近未来SF作品である。

    監督はカナダ人のヴィンチェンゾ・ナタリと言う人で、今までは短編映画でその才能を発揮し、SF映画『JM』で絵コンテを担当した人らしい。
    今回、キューブ内のデザインの一部も彼が行ったらしい。
    セットのキューブは、1つ半が作られ、キャストは7名、残りはCGを駆使、製作費も日本円にして約5,000万円という超低制作費。

    短編『エレヴェイテッド』

    Elevated 1997年 カナダ
    監督■Vincenzo Natali Genre
    出演■Vicki Papavs….Ellen/Bruce McFee….Ben/David Hewlett….Hank Country

    付録として?ビデオには、ナタリ監督のデビュー前の短編作品が収められていました。
    エレベータと言う限られた空間内で、見知らぬ人たちが、お互いを疑う『CUBE』にも見られた、人間の本質をここでも描こうとしているのが見える。

    但し、短編と言うことや試行錯誤の部分が見られるので『CUBE』程の完成度は見られない。
    サスペンス映画を試行した作品としては面白い。
    『ゾンビ』を思い出してしまう展開は、やはりメジャー・デビューをする監督としては、通り道的な作品。
    デビッド・ヒューレットは、この後『CUBE』にも出演。

    Reviewed in 06.1999

    映画『CUBE』のデータ

    CUBEキューブ Blu-ray — Amazonで見る

    CUBE 91分 1997年 カナダ

    監督■ヴィンチェンゾ・ナタリ
    製作■メーラ・メー/ベティ・オアー
    製作総指揮■コリン・ブラントン
    脚本■ヴィンチェンゾ・ナタリ/アンドレ・ビジェリク/グレーム・マンソン
    撮影■デレク・ロジャース/スコット・スミス
    音楽■マーク・コーヴェン
    編集■ジョン・サンダース
    美術■ダイアナ・マグナス
    SFX監督■ボブ・マンロー/ジョン・マリエラ
    特殊メイク■カリガリ・スタジオ
    SFX■C.O.R.E.デジタル・ピクチャーズ
    出演■モーリス・ディーン・ウィン/ニコール・デボア/デヴィッド・ヒューレット/ニッキー・ガーダグニー/アンドリュー・ミラー/ウェイン・ロブソン/ジュリアン・リッチングス

    <DATA>

     奇抜なストーリー、斬新なビジュアル・センスで話題となったカナダ産異色サスペンス。
     謎の立方体(=CUBE)に閉じこめられた男女6人の脱出劇を、緊迫感漲る演出で描く。
     ゲーム感覚の謎めいた物語やシュールな美術・SFX等を駆使し、人間の闇部を抉った秀作。

     ある日突然、密室に閉じこめられた6人の男女。
     それは正方形の巨大な立方体だった。
     いったい何のために作られたものなのか、なぜ自分たちが閉じこめられたのかは誰も知らない。
     脱出方法は6つあるハッチのいずれかを選び、同じ立方体でつながっている隣に移動しながら出口を探す以外ないが、いくつかの部屋には殺人トラップが仕掛けられていた。
     そんな中、やがて彼らは安全な部屋を示す“暗号”に気づくが・・・。 <allcinema>

     目が覚めると、四角い部屋の中。
     そこは一辺が約5メートルで、6つの壁面にはそれぞれ隣の部屋に通じるハッチがある。
     そんなキューブの中で偶然に出会った6人、刑事のクエンティン(モーリス・ディーン・ウィント)、数学が得意な女学生レブン (ニコール・デボアー)、女医のハロウェイ(ニッキー・ガーダグニー)、謎の男ワース(デビット・ヒューレット)、精神病者のカザ ン(アンドリュー・ミラー)、脱獄囚のレン(ウェイン・ロブソン)、ここは一体どこなのか、いつから何のためにここにいるのか、外に出ることは出来ないのか、密室に閉じこめられた彼らは葛藤の中で、体力と知力を振り絞りキューブからの脱出を試みるが・・・。

  • 映画『汚名』 イングリッド・バーグマンの美しさが罪

    映画『汚名』 イングリッド・バーグマンの美しさが罪

    映画『汚名』 NOTORIOUS

    汚名

    イングリッド・バーグマンの美しさに酔う

    ヒッチコック作品か?それともイングリッド・バーグマンの作品か?それ程、この作品のバーグマンは美しい。
    とは言え、そのバーグマンの美しさを引き出したのは、間違いなくヒッチコックである。

    サスペンスとしての見せ方は、やはり一級。
    作品の細かい背景を全て省き、シンプルな構成に、しかしその中に複雑に張り巡らさせた伏線が、観客をいつの間にか、登場人物に同化させる作用となっている。

    アリシア(イングリッド・バーグマン)とデブリン(ケイリー・グランド)、二人の愛情が、セバスチャン(クロード・レインズ)の嫉妬を生み、それが物語のあらゆる伏線に。
    ブラジルでのセバスチャンと仲間たちの会話で、仲間の一人のミスを責め、暗殺する相談をする。
    この事がセバスチャン自身のミスの隠蔽へとつながる。
    セバスチャンと仲間達の強い絆と共に、そこにある真実は相互不信に他ならない。
    またアリシアが、アメリカでアル中であったことが、毒を飲まされた彼女を見たデブリンに誤解を生ませる。

    相変わらずカット割りの上手さで、見せ方が良い。
    それ以上にバーグマンの美しさが光る、酔いしれる。
    バーグマンは背が高いが、彼女の一番美しいアングルは、上向き加減に目を閉じてキスをする表情。
    これを背の高いケイリー・グラントと組み合わせて、存分に魅せてくれる。

    逆に背の低いセバスチャン役のクロード・レインズの立場が強調されてくる。
    そう彼のコンプレックス、一つは背が低いこと。
    もう一つはマザコンで有ること、この事が大きな伏線になる。
    彼はアリシアのような美しく、大きな女性にモテるはずが無い、受け入れられるはずが無いと考えてい た。
    だからこそ、アリシアが近づいてきた時に、それを有頂天になって何の疑いもなく受け入れてしまっている。
    これは、ヒッチコック自身の、母親に対する愛情の深さと、自分の体型に対するコンプレックスの裏返しだろう。

    また重要なのは、アリシアの中の二つの観念。
    一つは愛国心という道徳観と、もう一つは愛情というもの。
    愛国心のため、またデブリンに対する愛情のために、アリシアは敵のスパイであるセバスチャンと結婚までしてしまう。
    この板挟み、同時にそれはデブリンにも言えること(好きな女性を、他人の妻に送り込む)で、この事が、観客の心情に迷 いを生じさせ同情を生む。
    完璧なまでに作り込まれた脚本(ベン・ヘクト)と、ヒッチコックの見事な演出、そしてバーグマン、グラント、レインズの見事な演技が醸し出す、サスペンスとラブ・ロマンス。

    ヒッチコック作品の中でも秀逸な一本で有る。

    Reviewed in 09.1999 

    映画『汚名』のデータ

    汚名 DVD FRT-036 — Amazonで見る

    NOTORIOUS 101分 1946年 アメリカ

    監督■アルフレッド・ヒッチコック
    製作■アルフレッド・ヒッチコック
    共同製作■バーバラ・ケオン
    助監督■ウィリアム・ドーフマン
    原案■アルフレッド・ヒッチコック
    脚本■ベン・ヘクト
    撮影■テッド・テツラフ
    特殊効果■ヴァーレン・L・ウォーカー/ポール・イーグラー
    美術■アルバート・S・ダゴスティーノ/キャロル・クラーク/ダレル・シルヴェラ/クロード・カーペンター
    音楽■ロイ・ウェッブ
    衣装■イディス・ヘツド
    録音■ジョン・トリビー/クレム・ポートマン
    編集■テロン・ウォース
    製作会社■RKO
    備考■白黒
    日本公開■1948年、1968年、1983年
    出演■ケイリー・グラント/イングリッド・バーグマン/クロード・レインズ/ルイス・カルハーン/レオポルディン・コンスタンティン/ラインホルト・シュンツェル/マローニ・オルセン/イヴァン・トリーソルト/アレクシス・ミノティス/エバーハルト・クルンシュミット/フェイ・ベイカー

    アカデミー賞 1946年
    助演男優賞ノミネート クロード・レインズ
    脚本賞ノミネート ベン・ヘクト

    <DATA>

     父親にドイツのスパイ容疑がかけられ、売国奴の娘と呼ばれたアリシア(イングリッド・バーグマン)にFBIの捜査官デブリン(ケイリー・グラント)が接近してきた。
     ナチの残党と思しき人物セバスチャン(クロード・レインズ)が父の友人であったことから、アリシアにその内情を探って欲しいという依頼だった。
     舞台は、マイアミからリオ・デ・ジャネイロに移り、アリシアはそこでセバスチャンの求婚に応じるが、デブリンとの連絡も引き続き行われていた。
     やがて、彼女は屋敷の酒蔵で組織の秘密を突き止めるが、その事に気づいたセバスチャンは・・・。

     ヒッチコック作品の中では、スリラーの要素よりもメロドラマの色を濃くした作品で、バーグマンとグラントが見せた熱烈なラブ・シーンは公開当時かなりの話題となった。
     登場人物の設定と行動について、いささか説明不足の感もあり、ドラマの中にすんなり入って行けるとは言い難いが、さすが、個々のサスペンス醸造は見事。 <allcinema>

  • 映画『メッセージ』 見終わった後に語り合いたくなる作品(ネタバレあり感想)

    映画『メッセージ』 見終わった後に語り合いたくなる作品(ネタバレあり感想)

    映画『メッセージ』 Arrival

    メッセージ

    ある日突然、巨大飛行体が地球に。
    その目的は不明--

    2017年5月19日(金)全国公開予定

    静かで深淵なSF映画、派手さはない

    突如世界各地に現れた物体、それは宇宙船だったが、彼らの発するメッセージを解読することに時間がかかっていた。
    そこにエイミー・アダムス演じる主人公ルイーズが指名されて、宇宙人とコンタクトをとることになるという物語。

    俗にいうファーストコンタクトもので、『2001年宇宙の旅』やスピルバーグ監督の『未知との遭遇』『E.T.』などもこのジャンルに入る。
    『インデペンデンス・デイ』のような宇宙人と地球人の戦いを描いたものも、コンタクトものの一つの形であり、『宇宙戦争』などこちらもたくさん生まれてきた。

    この作品は、どちらかというと『2001年宇宙の旅』や天文学者カール・セーガンのベストセラーを映画化した『コンタクト』に近く、作品の物語の進め方は『2001年宇宙の旅』に近い。

    この作品を見終わった時にいろんなことを考えさせられる、またいろんな解釈もできる作品となっている。
    作品的には低予算だからという訳ではないだろうが、派手な演出がなく、90%以上にエイミー・アダムスが登場する人間ドラマになっている。

    宇宙人が一体何を伝えたいのか?むしろそれを地球の人々はどう解釈をしたいのか?という点でサスペンス・タッチで話が進み、ラストは思ってもいなかった事実が明かされて行く。

    映画を見た後に議論をしたくなる映画だが、この解釈の自由さを好むかどうかは賛否が分かれるところ。
    ちなみに私は、この手の作品が大好きだから、いろんな人に大きなスクリーンで見て欲しい作品と思っている。

    SFなのに見た人の人生観を問いかける作品

    監督は『プリズナーズ』や『ボーダーライン』で手堅い演出をし、次回作では『ブレードランナー2049』を監督するドゥニ・ヴィルヌーヴ。
    現在、注目の監督で『ブレードランナー』の続編の後には『砂の惑星デューン』の続編(リメイク?)も待っている。

    今年のアカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚色賞など8部門にノミネートされ、音響編集賞を受賞している。
    意外なのは、ゴールデン・グローブ賞、他でノミネートされている主演女優のエイミー・アダムスがアカデミー賞ではノミネートされなかったこと。
    個人的には『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンは努力賞も含めて受賞に相応しいとは思うけど、この作品のエイミー・アダムスは勝るとも劣らないくらい素晴らしい演技をしている点も見どころ。

    この作品は中国人のテッド・チャンの原作があるので、物語の構成は原作そのものだとは思うが、ラストでアッと驚かされるのは、編集の上手さがあると思う。

    SF映画であり、巨大宇宙船は出て来るが、決して派手なVFXもなく、むしろ静かで印象的な音楽をベースに人間ドラマが展開されていき、見ている人の人生観や死生観といったものが試される映画でもある気がする。

    2017年のベストの中の1本と言える。

    メッセージ

    私的『メッセージ』 ここからはネタバレがあります(鑑賞後にどうぞ)

    テーマが有るか?共感できるか?

    この作品は見終わった時点で、テーマは何か?それ以前に宇宙人はなぜ地球に来たのか?など、そこから語らないといけない作品。

    この作品の中では運命が明示されているにもかかわらず、自分で運命を選択することを繰り返している。
    運命は存在すが、運命を選択していくのはあなた自身だ!冒頭に「これはあなたの人生の物語です」というセリフから始まるが、これがラストへの作品のメッセージとなっている。

    作り手の強い意思を感じるか?

    原作者の意図を、ヴィルヌーヴ監督が汲み取って丁寧に演出している。
    上映後にヴィルヌーヴ監督の話を直接聞くことができて、感じることができた。

    タコのような七本脚の宇宙人ヘプタポッドが出て来るが、これは原作に出てくるもので、この宇宙人が表す文字が非常に重要な意味を持っている。
    このあたりを忠実に映像化している点も重要。

    輪のような文字は、中国語や日本語の漢字のような表意文字であり、文章でもある。
    一つの円の中に、形から読み取れる文章がある、しかも円なので始まりも終わりもない文章。

    カナダ人(英語・フランス語圏)の監督にとっては、表意文字は新鮮であり興味深いところだと思う。

    俳優の意思や演技力が伝わるか?

    主人公ルイーズは宇宙人と対峙するが、時折、娘のハンナとの日常のやり取りが脳裏に浮かぶ、その映像に写る娘ハンナは、年齢がバラバラでルイーズが宇宙人とコンタクトしている今現在には存在しないらしい、ということが判る。

    作品を見終わった時に判ることだが、ルイーズを演じたエイミー・アダムスはハンナを演じた子役とどういう立ち位置で向き合ったら良いか、非常に繊細な演技を求められていたと思う。

    映画を見続けていくと、ルイーズの行動に違和感や一貫性のなさを感じたりする、そこをエイミー・アダムスが演じ分けをしている点で秀逸だった。

    映画らしい楽しさが備わっているか?

    明確なテーマと観客への投げかけを持っている作品は、映画でしかできないと私は思っている。
    TVシリーズで冗長的に投げかけることはできないし、基が小説ではあるが時間軸の構成に関しては、やはり映像による表現力の高さは素晴らしいと思う。

    時間の概念に関しては『インターステラー』よりも優れていると思う。
    これは映像化というより物語の持つ力と編集の上手さによるものだと思う。

    エンターテインメント性

    人間ドラマとSFとの融合のしかたが面白い。
    宇宙人が来襲して、地球ではパニックが起きながら、宇宙船の周りでは整然と作業が行われている。

    映像の美しさや宇宙船の内部構造の巧みさはなかなか面白い。
    基本的にはモノリスと同じで、物体そのものが何なのか?は判明しないが、そこがまたサスペンス要素を盛り上げている。

    そして宇宙船という密室の中で、濃密なエイミー・アダムスの演技が行われている点も面白い。

    演出が素晴らしいか?

    今回は観客をどこまで騙しきるか!が重要で、その点に関しては見事だった。
    作品が投げかけてくる疑問点は観客にボールが投げられているが、ストーリーとしての流れとしては、見終わった時に「なるほど!」と唸ってしまう。

    脚本が素晴らしいか?

    原作の持つ過去・現在・未来といった時間軸を持たない生物とのコンタクト、それがサスペンスのようにラストで解き明かされて、何となく感じていた矛盾が一気に一つの線になるところは、脚本の素晴らしさに尽きる。

    何度も見たくなるか?

    主人公のルイーズは宇宙人とコンタクトをしてるうちに、自分の体験していることに時間の前後ないことに気付いていく。
    そして、それでも彼女は未来に不幸なことが待っていたとしても、それを選択する決断をする。

    再度、この時間軸の部分を意識しながら見てみたいという点もあるが、その時点でのルイーズの決断が、その時の彼女の心理的な心の表れであり、そのベースにあるのが善意や愛であることには間違いないと思うが、心の機微を確認したいところ。

    これも私の想像だけど、例えばルイーズは子供を育てる母親の無償の愛を選択することになるが、その後に待ち受ける悲劇も受け入れることになる。
    地球を救うことになる彼女の行動も、人と人との善意があって成り立つことでもあった。

    この作品を見て最大の疑問であり結論が出ないのは、中国のシャン将軍の妻が何を言ったのか?だ。

    「非ゼロ和」についての解釈(2017年5月30日追記)

    私にとっては聞きなれない言葉だったけど、英語に直すと non zero sum なるほどとなる。
    英語を見れば判るように、普段は逆の言葉の zero sum game とかよく使うが、ゼロサム=ゼロ和は一人が得をすると必ず誰かが損をするという考え方、全員の利得の総和がゼロになると言う考え方。

    ゼロサムはサイコパスが得意な分野で、最近は脳科学者の中野信子さんも書籍で書かれているが、サイコパスは会社社長や弁護士など社会的成功者に多いと言われている。
    それは資本主義が、冷静に人から奪う能力が高いほど成功することと一致している。

    「非ゼロ和」とはその逆であり、資源の蓄積していく過程で、誰かが利益を得たとしても他の誰も損失にはならないことである。
    時間がサークルすること共に、宇宙から来たと思われる生物(もしくは未来の人間)には非ゼロ和の考え方が、そのサークル文字から感じられる。
    人の生死にも時間軸がないから、+-ではなく存在している時間と存在していない時間があるだけと考えられる。

    宇宙人はルイーズに助けを求めるが、このサークル文字を解析することが彼らを助けることになる。
    ルイーズがシャン将軍を説得して世界を救ったのと同じ意味を持っている。

    非ゼロ和という言葉を一番近い英語にすると、Win-Win である。
    人類はゼロサムゲームから脱却しないと滅びるというメッセージだったのかもしれない。

    映画『メッセージ』のデータ

    メッセージ

    監督■ドゥニ・ヴィルヌーヴ
    脚本■リック・ハイセラー
    原作■テッド・チャン(「あなたの人生の物語」ハヤカワ文庫刊)
    撮影監督■ブラッドフォード・ヤング
    プロダクション・デザイン■パトリス・ヴァーメット
    音楽■ヨハン・ヨハンソン
    製作■2016年アメリカ映画/スコープ・サイズ/116分
    配給■ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
    出演■エイミー・アダムス(ルイーズ・バンクス)/ジェレミー・レナー(イアン・ドネリー)/フォレスト・ウィテカー(ウェバー大佐)/マイケル・スタールバーグ(ハルペーン)

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    © 2016 XENOLINGUISTICS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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    【イントロダクション】

    突如出現した未知なる飛行体―。
    “彼ら”は人類に<何>を伝えようとしているのか?
    『ブレードランナー』続編の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴが贈るすべての人の胸を打つ感動のSFドラマ。

    【ストーリー】

    突如地上に降り立った、巨大な球体型宇宙船。謎の知的生命体と意志の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は、“彼ら”が人類に<何>を伝えようとしているのかを探っていく。
    その謎を知ったルイーズを待ち受ける、美しくそして残酷な切なさを秘めた人類へのラストメッセージとは―。

  • 映画『暗殺の森』 ドミニク・サンダに魅了される、悪の華

    映画『暗殺の森』 ドミニク・サンダに魅了される、悪の華

    映画『暗殺の森』 IL CONFORMISTA

    暗殺の森

    輝かしい栄光が青年を裏切る、 孤独を脱れる虚無と愛欲の日々- 彼は暗殺者となる–
    現代文学の旗手モラビアが描いた《孤独な青年》の愛と挫折!

    イタリア人にとってのファシズム、その悪

    ベルナルド・ベルトルッチ監督の作品というと『ラストエンペラー』以降の大作くらいしか観たことが無かった自分。
    改めて、この作品を観てベルトルッチ監督の手腕には驚かされる。

    1930年代から第二次世界大戦の終焉までのイタリアを背景に、ローマとパリで物語は展開する。
    ベルトルッチは、イタリア出身。
    イタリア出身の監督と言えば、私の敬愛するルキノ・ヴィスコンティ監督がいるが、どうもこの二人には共通するものを感じずにはいられ ない。

    この作品が製作されたのは1970年、イタリアのファシズムを描いた作品である。
    ヴィスコンティは前年の1969年、ドイツのファシズムを描いた『地獄に堕ちた勇者ども』を撮っている。
    ベルトルッチ自身は、ヴィスコンティよりもフェリーニやロッセリーニの影響を受けたと言われる。
    逆にヴィスコンティは、ベルトルッチに自分に近いものを感じていたらしい。

    ヴィスコンティは、よりヨーロッパ的な退廃としたドロドロとした人間の欲望の中に、ナチスのファシズムを描いて見せた。
    それに対してベルトルッチは、あくまでイタリア人としての視点のファシズムで有る。
    それは後年の『1900年』でも明確である。
    彼はイタリアのファシズムが、借り物であることを知っている上で、イタリア人の心の揺れを描いて見せた。

    ヴィスコンティの演出は精緻で有る。
    ディテールにまでこだわり、あくまで本物を映し出すことに専念する。
    ベルトルッチは映像的な美しさを表現する。
    ここでは悪臭漂う美しさなのだ。
    ドミニク・サンダやステファニア・サンドレッリが美しく有れば有るほど、そこには醜悪さが映し出されていく。
    逆説的でも有る、それはやはりベルトルッチはヴィスコンティよりも、フェリーニに近い存在無いのかもしれない。

    この作品は、全編を通して美しい映像が印象的だ。
    あまりにも美しすぎることが、人々の心とその背景を遊離させていく。
    主人公が借り物のファシズムと言うものに気付いたとき、群衆が現れる。群衆の力・・・その向かう新しい方向を暗示して終わる。

    この作品で最も印象的なのは、(作品としても、その映像美も印象的だが・・・)やはりドミニク・サンダの存在だろう。
    彼女ほど女性の妖しさを持ち、それでいて中性的な女優は私の知る限り存在しない。
    それはファシズムの反対に有るもの、最も忌み嫌う存在の象徴のように思えてならない。

    ファシズムの美への固執と憎悪、男色的な運命共同体的体質とその排除の歴史・・・。
    サンダは中性的な・・・ある種、男色的な意味も含め・・・魅力と、美しさが存在した。

    だからこそ彼女は殺されなくてはならず、また主人公マルチェロ(トランティニャン)は彼女に惹かれたのだと。

    Reviewed in 06.2000 

    映画『暗殺の森』のデータ

    暗殺の森 Blu-ray — Amazonで見る

    THE CONFORMIST/IL CONFORMISTA 110分 1970年 イタリア=フランス=西ドイツ

    監督■ベルナルド・ベルトルッチ
    製作■ジョヴァンニ・ベルトルッチ/マウリツィオ・ローディ・フィエ
    原作■アルベルト・モラヴィア 『孤独な少年』
    脚本■ベルナルド・ベルトルッチ
    撮影■ヴィットリオ・ストラーロ
    音楽■ジョルジュ・ドルリュー
    出演■ジャン=ルイ・トランティニャン/ドミニク・サンダ/ステファニア・サンドレッリ/ピエール・クレマンティ/エンツォ・タラショガストーネ/・モスキン

    ◆アカデミー賞 1971年
    脚色賞ノミネート ベルナルド・ベルトルッチ

    <DATA>
     ファシズムに席巻された欧州の退廃を描く映画として、ヴィスコンティの「地獄に堕ちた勇者ども」と並んで傑出した作品。以後70年代を通じ、同種の主題を扱った映画が濫作されたが、いずれもこの両作の域には遠く及ばなかった。
     若い哲学講師のマルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は少年の頃、彼を犯そうとした男を射殺した罪悪感に今もさいなまされていた。
     その苦しみから解放されるためファシズムを選択した彼に、パリ亡命中の恩師である教授を調査するよう密命が下る。
     ハネムーンを口実にパリに赴いたマルチェロと妻ジュリア(ステファニア・サンドレッリ)は、快く教授に迎え入れられた。
     だが、恩師の若妻アンナ(ドミニク・サンダ)には目的を悟られてしまい、敵意を抱かれると同時に深い仲にもなってしまう。
     やがて、別荘に向かう教授夫妻は、マルチェロの目前で暗殺されるのだが・・・。

     “体制順応主義者(原題)”のいびつな生き方を、ベルトルッチはなめらかな官能で包み込み、深い余韻を与える。雪の森での暗殺シーンなど映画史に残る美しさだ。 <allcinema>

  • 映画『お嬢さん』 変態なほど卑猥でエロい!パク・チャヌクらしい傑作

    映画『お嬢さん』 変態なほど卑猥でエロい!パク・チャヌクらしい傑作

    映画『お嬢さん』 THE HANDMAIDEN

    幕が上がったら最後、あなたはもう、
    極限の騙し合いから逃げられない――

    絶賛公開中!

    決してカップルで見てはいけない

    こっそりと映画館に行ってください、この作品は決してカップル向きの作品ではありません。

    韓国のパク・チャヌク監督作品、『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』『渇き』『イノセント・ガーデン』の最新作、どの作品もエロとバイオレンスに包まれた作品たち。

    このミステリーがすごい!第1位のサラ・ウォーターズの『荊の城』が原作、今回も原作は読んでませんが、映画では独特の世界観を展開しているという話、確かにここまで、ただただ卑猥な映像になってるのは凄い!

    映画の方は、1938年当時の日本占領下の韓国と後半は日本を舞台にしている。
    主要な俳優陣は全員韓国人、それでも少し変な日本語を駆使して物語が進行していくのは愛嬌ということで。

    バイオレンスとエロさの中に人の本質を描く

    この物語はミステリーであり、サスペンスである、主人公のお嬢さんの莫大な資産を誰が奪うのか?
    サスペンス部分は、3人の視点から徐々に謎が解き明かされて、と言うパターン。

    どうしてパク・チャヌク監督が、官能な世界を物語の中心においたか?というのが面白い。
    逆に書くと、監督の他の作品でも言えることだが、エロいから成り立つ作品でもある。

    私的『お嬢さん』 ※ ここからネタバレもあるかも

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    資産家の令嬢を巡って、物欲と性欲に溺れる男たちの愚かさを描いている。
    男にとって性欲は切っては切れないもの、男が女を操っているつもりで、実は男がもてあそばれる。

    その裏側には、真実の愛とは一体何なんだろう?という監督の投げかけもあるんだろうけど。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    日本の文化の中にある猥褻さを徹底的に描いている。
    うーん、これって日本の韓国を併合したことへの皮肉も含まれてるのかな?ようは、演じるのは韓国人俳優だが、韓国人が日本人に化けて詐欺をしようというのも。

    パク・チャヌク監督は、徹底してバイオレンスとエロさが人間の本質にあると描いている。
    人間は欺き、嫉妬をして騙し、裏切る、最後に残るのは強いもの、そして美しいものが勝つと。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    お嬢さま役のキム・ミニと女中役のキム・テリ(オーディションで選ばれた新人!)の(本当の)体当たりの演技が凄い!

    この本気度が、この作品の肝になっている、ハニー・トラップとそして愛はセックスで計るものだと言うのが良く判る。

    そして、キム・ミニがネット上で松たか子に似ていると話題に、私個人的には知り合いの女優さんに似てるんだけど(笑)

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    この卑猥さは映画でしか表現できない、果たしてこれはテレビで放送できるのだろうか?

    そういう意味では、映画でしか描けない、そして人間の本質を描くという点で優れているし、この世界観を味わうとなんとも言えない楽しさがある。

    ⑤ エンターテイメント性

    サスペンスとしても面白い!
    もちろんアダルトビデオではないので、官能シーンばかりという訳ではない(とも言えないかな)。

    片言でも日本語で演じるところがポイントで、日本の卑猥な文化というものが面白い。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    閉じた空間の使い方が上手い、のぞき穴から見てはいけないものを見せている、そんなシーンが切り取られている。
    しかも美しい映像に、官能シーンがとても工夫がされていて、なるほど~という感じで。

    ⑦ 原作・脚本が素晴らしいか?

    サスペンス部分は原作の通りなんだと思う、ここも見どころ、ただ『ワイルドシングス』とほぼ一緒の展開なんだよなぁ~と終わった後に。

    でもここまでエロティックに描くことで、ラストが本質的にセックスの相性が愛情の大きさに繋がるところがこの映画のキーポイント。

    ⑧何度も見たくなるか?

    この毒々しさがたまらなく癖になる、いつも見たい訳ではないが、時々とても見たくなるタイプの作品。
    そういうところは、パク・チャヌク監督作品に共通するところ。

    人間の本質はバイオレンスとエロにある、という大人のための映画である。

    映画『お嬢さん』のデータ

    上映時間■145分
    製作国■韓国
    公開情報■劇場公開(ファントム・フィルム)
    初公開年月■2017.3.3.

    監督■パク・チャヌク
    原作■サラ・ウォーターズ『荊の城』
    脚本■パク・チャヌク/チョン・ソギョン
    撮影■チョン・ジョンフン
    美術■リュ・ソンヒ
    音楽■チョ・ヨンウク
    出演■キム・ミニ(秀子お嬢様)/キム・テリ(スッキ・珠子)/ハ・ジョンウ(藤原伯爵・詐欺師)/チョ・ジヌン(叔父・上月)

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    映画『お嬢さん』 [パク・チャヌク監督]
    【解説】
     サラ・ウォーターズの傑作ミステリー『荊の城』を「オールド・ボーイ」「イノセント・ガーデン」のパク・チャヌク監督が、舞台をヴィクトリア時代のロンドから日本統治下の朝鮮半島に移して映画化。莫大な遺産を相続する日本人令嬢と、その財産を狙う詐欺師の片棒を担ぎ侍女として令嬢に近づいた孤児の少女が辿る驚愕の運命を、過激な性愛描写を織り交ぜサスペンスフルかつ官能的に描き出す。カンヌ国際映画祭で芸術貢献賞に輝いた華麗な美術も見どころ。出演はハ・ジョンウ、キム・ミニ、チョ・ジヌン、そしてオーディションで選ばれた新人、キム・テリ。
     1939年の朝鮮半島。貧民街で泥棒一家に拾われ、スリの腕を磨いて育った孤児の少女スッキ。ある日、“伯爵”と呼ばれる詐欺師にスカウトされ、彼の計画を手伝うことに。ターゲットは、支配的な叔父・上月のもとで孤独に暮らす華族の令嬢・秀子。彼女は、結婚した暁には莫大な遺産を相続することになっていた。そこで伯爵が秀子を誘惑して結婚し、財産をまるまる奪い取ってしまおうというのだった。スッキの役割は、メイドとして屋敷に入り込み、純真で世間知らずな秀子を巧みに操り、彼女を確実に結婚へと誘導していくというものだったが…。
    <allcinema>

  • 映画『怒り』  レイプとゲイのラブ・シーンだけではない!

    映画『怒り』 レイプとゲイのラブ・シーンだけではない!

    映画『怒り』  怒りのない怒りとは

    怒り

    あなたは殺人犯ですか?

    映画『怒り』 Blu-ray豪華版 [渡辺謙]

    とにかく俳優たちの演技がイイ!

    大人のための大人の映画。
    今年は『シン・ゴジラ』が大人のための童心に帰る映画、『君の名は。』は全ての世代に送る青春映画なら、この作品は大人がじっくりと見れる作品。

    ただとっても暗い作品だから、これだけの俳優陣じゃないと単なる地味な作品になっちゃったかも。
    個人的には、女優陣全員が素晴らしかった!と思う。

    この作品は、完全な謎解き映画では無いんですが、一応、サスペンスなのでネタバレになるかもしれないので、後半は映画を観てから読んで下さいm(__)m

    怒り

    イントロダクション

    『悪人』(’10)の李相日監督×吉田修一原作のコンピが再びタッグを組んだ作品。
    『悪人』で日本アカデミー賞をはじめ、国内の映画賞を総ナメにしてから6年、音楽に坂本龍一を迎え、原作者・吉田修一が「物語の登場人物には、映画『オーシャンズ11』のようなオールスターキャストを配してほしい。」と言う希望にそって、日本を代表する7人の豪華俳優陣が集結!

    この配役も絶妙、もちろんその迫真の演技が素晴らしい。
    「愛した人は、殺人犯なのか?」
    “人を信じる”と言う人間の本質を問いかける感動作、予備知識はこのへんにして是非見て欲しい作品。

    これ以下はネタバレになるかもしれないので、映画を観てからお読みください~

    怒り

    私的『怒り』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    タイトルの「怒り」は何だったのか?を考える作品。
    犯人の怒りは見事なまでに意味がなく、殺人の動機すら存在しない。
    テーマとしては「人を信じる」ことを問われる、人を信じると裏切られ、人を疑うと亀裂が生まれ、人間は純粋に人を信じることはできないのだろうか?と。
    今の世の中は複雑になり過ぎて、人を簡単に信じることが出来ない世の中なのかもしれない、それに対する大いなる「怒り」がある。

    社会が複雑になり「根拠のない怒り」が人間不信を呼び、改めて人を信じることを思い出すことに、ラストの大きな感動が有った。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    『悪人』では一つの犯罪を、それぞれの立場の視点から見た場合に、その真実とはどこにあるのか?と言う物語だった。
    今の世の中に 「人を簡単に信じてしまうこと」の怖さ、「人を信じることができなかったこと」の不幸を問いかける、李相日監督と吉田修一原作に込められた強い時代性を感じる。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    とにかく全ての俳優たちが素晴らしかった。
    特に女優陣、ヒロインの宮崎あおい、広瀬すずが迫真の演技、ここまでするか?!と言う体当たりの演技。
    また出演時間は短いが、高畑充希、池脇千鶴の存在感も良かった。
    それにしても広瀬すず、彼女の天才性は監督によって磨かれる、もちろん他の主演作品での可愛らしい(だけの)役柄も良いけど、『海街Diary』とは別に意味で素晴らしい演技をしていた。
    今回は体当たりで、米兵にレイプされるシーンを演じている、もちろん広瀬すずの表情だけで表現している訳だが、それでも生々しいのは、彼女の処女性の裏返しを上手く利用している。
    そして宮崎あおい、彼女はあるゾーンに入ると物凄い演技をする、今回はで出しからラスト近くの一点を見つめるシーンまで狂気すら感じる演技だった。
    冒頭の風俗嬢の姿で、ノーメイク(用のメイク)でボーッとしているところから、この作品に対する入れ込みようが感じられる。

    最後に妻夫木聡、『悪人』で李相日監督にその才能を開花させられた俳優だが、この作品でも見事なツボを押さえていてゲイ役を見事に演じてみせていた(相手役の綾野剛のカメレオン俳優ぶりも良いけど)。
    妻夫木聡もエリートサラリーマンでゲイらしい嫌らしさを感じさせてくれたし、受けのゲイぶりの綾野剛も良かった。

    怒り

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    百聞は一見にしかず、と言うのは映画には重要な点だと思う。
    最後(近く)まで犯人の顔を映さずに(3人の顔を合成したものだと思うけど)公開写真だけが見せられる。
    映像から想像をふくらませる。

    そして3ヶ所の場所ごとの映像が美しく、俳優たちの演技を映えさせている。

    ⑤ エンターテインメント性

    大人のためのエンターテインメントであり、決して明るい話ではない。
    理不尽な怒りによる慟哭が描かれる。

    一方でそれを見事に演じた俳優たちと背景となる舞台の映像の美しさのコントラストが見事で、これは映画ならではエンターテインメント性と言える。
    久々に好きな絵(映像)の作品でもあった。

    にしても、前半の新宿?のゲイの世界を丹念に見せるところも生々しい、特に白い肌の綾野剛(これも隠れて逃げ回る犯人を予感される)に対して、黒光りしている妻夫木聡の肌がコントラストを醸し出してイヤラシイ、それも楽しいと取るか?個人的には苦手なんだけど。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    142分と言う長尺な作品でありながら、その長さを感じさせない。
    編集を最初から頭に入れた演出がなされている点、そしてあまりに役にハマった役者を選んでいるが、実は少しずつ今までの演技と外している。

    渡辺謙の抑えた演技、少女的な宮崎あおいにはスッピンでの演技、可愛らしさだけではなく悲しみ演じた広瀬すず、いつもの泣きの演技だけではなく見事なゲイを演じきった妻夫木聡。

    そして3ヶ所を同時進行で話を進める上で、安易に性風俗に走る女性、ゲイの実態描写、米軍基地と米兵による暴行問題などをバランス良く配置している。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    3つの同時進行の話を、場面(場所)が変わる時に似たようなアイテムを挿入して違和感なく繋いで見せる、と言った手法も入れている。
    3つの場所で進行する物語の繋ぎが上手く、しかもテンポが良くなっている。
    それがこの尺でも、ダレることなく緊迫感もありつつ見続けることができる。

    ⑧何度も見たくなるか?

    重く辛いテーマの作品、流石に繰り返し見たいか?と言われると。
    でも犯人の「怒り」は何だったのか?それは時代で変わるものかも?また観て確認してみたい。
    そして、なんと言っても演技を見るだけでも価値がある、それは何度でも。

    原作者としての吉田修一は、犯人は3人のうちの誰か?と言うサスペンスを求めていた。
    しかし映画の観客としては、ホクロの話から素性まで、実は3人が同一人物で映画のトリックで別の時間を同時進行として見せられているのかな?とも思わせる。
    いや、逆に一連の怒りと考えると、犯人の怒りの意味もひも解けるのかも?

    映画『怒り』のデータ

    怒り

    監督・脚本■李 相日
    原作■吉田修一(「怒り」中央公論新社刊)
    企画・プロデュース■川村元気
    撮影■笠松則通
    音楽■坂本龍一
    出演■渡辺謙/森山未來/松山ケンイチ/綾野剛/広瀬すず/宮崎あおい/妻夫木聡
    公開情報■2016年9月17日 全国東宝系にてロードショー

    映画『怒り』 [ 渡辺謙 ]

    【作品紹介】
    ある夏の暑い日に八王子で夫婦殺人事件が起こった。
    窓は閉め切られ、蒸し風呂状態の現場には、『怒』の血文字が残されていた。

    犯人は顔を整形し、全国に逃亡を続ける。その行方はいまだ知れず。
    事件から一年後。千葉と東京と沖縄に、素性の知れない3人の男が現れた。

    いったい誰が犯人なのか?
    あなたを信じたい。
    そう願う私に信じたくない結末が突きつけられる―――。
    (C)2016映画「怒り」製作委員会