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  • 映画『恋におちたシェイクスピア』 エンターテインメントとしての面白さ!

    映画『恋におちたシェイクスピア』 エンターテインメントとしての面白さ!

    映画『恋におちたシェイクスピア』 SHAKESPEARE IN LOVE

    恋におちたシェイクスピア

    作品がシェイクスピアの劇中劇と融合する

    丹念に錬られた脚本が、この作品を見事なものにした。

    16世紀のイギリス、エリザベス朝を再現してみせる。
    シェイクスピア自身が実在の人物か?とも、言われた時期も有る。
    登場人物も、実在の人物、そして史実に残る行動も描かれている。
    と、同時に大いにその創造の羽を伸ばして、人間関係や出来事を作っていく。
    その真実と虚構を融合させている物語の見事さに目を見張る。

    劇中劇である「ロミオとジュリエット」は、元々、イタリアの説教くさい話がベースになっているとも。
    それを思い切って、シェイクスピア自身の恋と結びつけたアイディアの良さ!シェイクスピアの作った物語を知り尽くしたスタッフが、その世界を見事に(私のようなそれ程、詳しくない人間にも)分かり易 く作品の中に取り入れている、これこそ脚本の上手さ!

    この作品の最も素晴らしい点がここに有る。
    そうシェイクスピアとその恋人ヴァイオラの話すセリフの素晴らしさ!!
    シェイクスピア劇そのままの独特な言い回し、そして劇の中のセリフのような会話。

    「ロミオとジュリエット」のセリフと映画のセリフが見事に融合する。
    セリフが見事に言霊になる。
    そうロミオのセリフが、ジュリエットのセリフが、シェイクスピアとヴァイオラの恋の会話になる。
    劇中劇の「ロミオとジュリエット」がどうやって出来たか?その言葉一つ一つに込められたシェイクスピアの思い、それが伝わってくる。
    映画そのもの以上に、劇中劇『ロミオとジュリエット』に感動する、涙する。

    かつて映画『アマデウス』が、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの作品(音楽)を見事に魅せた作品になっていた。
    と同様に、この作品ではシェイクスピアの劇(ここでは「ロミオとジュリエット」)を見事に魅せてくれる、いや見方を教えてくれる。

    グウィネス・パルトロウが、アカデミー賞主演女優賞を見事に授賞したが、クィーンズ・イングリッシュを駆使して、表情豊かにヴァイオラを演じているのを見ると相応しいのが判る。
    脇役陣はもう素晴らしいとしか言えない。
    ジュディ・デンチは見事としか言いようがない存在感!ジェフリー・ラッシュの道化ぶりも楽しい。
    ラストのヴァイオラが「十二夜」にひも付くところは、ツボを押さえている!

    蛇足:この作品は公開最終週に劇場に行ったけど、観客が1割もいなかった(泣)お陰で一番観やすいところでゆったり静かに観れたけど。

    Reviewed in 07.1999

    恋におちたシェイクスピア
    Miramax/Photofest/ゲッティイメージズ

    「ロミオとジュリエット」から「十二夜」へ

    ワイド・テレビとDVDプレイヤーを購入したので、再度、DVDビデオでこの作品を再見。

    また観ると新しい発見が!
    それにしてもこの作品、本当に脚本が良くできている、つくづく感心させられる。

    そして脚本だけではなく、演出も素晴らしい。
    脚本の出来に良く応えて、見事な画面構成を見せてくれる。
    映画を娯楽と言うなら、この恋愛劇は見事な映画と言えるだろう。

    「ロミオとジュリエット」の物語が出来るまでを、“ウィル”・シェイクスピアとヴァイオラの恋と絡めて進行させていくところは見事。
    と同時に、映画の後半では徐々に「十二夜」の物語もタブって来る。
    このあたりは、う~ん、と感心させられる。※ ちなみにシェイクスピアは好きで本はかなり読んでいる

    それと(おそらく)「ロミオとジュリエット」の物語を知らなくても、何となくその全体像が見えてくる。
    と言うのは、劇中劇の「ロミオとジュリエット」は、シーンをトピックス的に取り上げているに過ぎないのだが、それまでの映画のストーリーとだぶっているので、その悲劇的な物語が伝わってくる。

    面白いのが、この脚本家たちがメイキングで語っているが、物語を書く仕事をする人間の共通の悩みを、天才シェイクスピアにも投影していること。
    シェイクスピアも、一つの物語を生むために悩み苦しみ、そして自らの体験で綴っていく。

    もう一つ、これは劇の舞台裏も描いている。
    劇の俳優達の姿、飲み屋で飲んだくれたり、台詞の練習をしたり、その苦労する姿も楽しめる。

    この入り乱れるような物語を、映像で絡めて一本のストーリーに見せるあたりは、監督ジョン・マッデンの力量がうかがえる。

    このDVDビデオには、映画からカット編集されたシーンが特典映像として付いている。
    その中で重要なのが、もう一つのラスト。
    ここでヴァイオラの乗った船が難波して、漂流した先が“アメリカ”だと台詞で語られる。
    それと、その前のシェイクスピアとヴァイオラが別れるシーンでは、このカットされた方は、別れを惜しみながら悲しみの中に別れていく。
    もちろんオリジナルはご存じのように、シェイクスピアとヴァイオラの会話がそのまま、「十二夜」の物語へと続いていく。
    実はこれ、オリジナルの方が数段優れているのだけど、ここにもこの映画の良さが伝わってくる。

    シェイクスピアの作った物語が、実は彼の人生の一部であることが判るからだ。
    改めてみると確かに面白いし、グウィネスの男優役も結構面白い。
    お勧めできる一本である。

    Reviewed in 05.2000

    2017年から1999年の公開時を振り返ると

    この作品はこの年のアカデミー賞で、実に13部門にノミネートされ、作品賞・主演女優賞(グウィネス・パルトロウ)を含む7部門で受賞した。
    この年は大激戦だったと思う、他に『エリザベス』『ライフ・イズ・ビューティフル』『プライベート・ライアン』『シン・レッド・ライン』と話題作がノミネートされている。

    今振り返ると『プライベート・ライアン』の評価が一番高いように思うし、私個人的にも、どの作品も好きだが、特に『プライベート・ライアン』が後世に残る名作と言えるかも。

    一方でも、映画のエンターテインメント性とアカデミー賞というお祭り、映画をたくさんの人にもらったことによる功労賞的な意味合いで考えると『恋におちたシェイクスピア』の作品賞受賞も個人的には納得の結果ではある。

    映画『恋におちたシェイクスピア』のデータ

    映画『恋におちたシェイクスピア』

    SHAKESPEARE IN LOVE 123分 1998年 アメリカ

    監督■ジョン・マッデン
    製作■デヴィッド・パーフィット/ドナ・ジグリオッティ/ハーヴェイ・ウェインスタイン/エドワード・ズウィック/マーク・ノーマン
    製作総指揮■ボブ・ウェインスタイン/ジュリー・ゴールドスタイン
    脚本■マーク・ノーマン/トム・ストッパード
    撮影■リチャード・グレートレックス
    美術■マーティン・チャイルズ/ジル・クォーティアー
    衣裳■サンディ・パウエル
    ヘア&メイク■リサ・ウェストコット
    編集■デヴィッド・ギャンブル
    音楽■スティーヴン・ウォーベック
    出演■グウィネス・パルトロウ/ジョセフ・ファインズ/ジェフリー・ラッシュ/コリン・ファース/ルパート・エヴェレット/ベン・アフレック/ジュディ・デンチ/トム・ウィルキンソン/サイモン・カロウ/ジム・カーター/マーチン・クラネス/イメルダ・スタントン

    アカデミー賞 1998年
    作品賞授賞
    主演女優賞授賞 グウィネス・パルトロウ
    助演男優賞ノミネート ジェフリー・ラッシュ
    助演女優賞授賞 ジュディ・デンチ
    監督賞ノミネート ジョン・マッデン
    脚本賞授賞 トム・ストッパード/マーク・ノーマン
    撮影賞ノミネート リチャード・グレートレックス 音楽賞(オリジナル・ミュージカル/コメディ)授賞 スティーヴン・ウォーベック
    美術賞授賞 マーティン・チャイルズ/ジル・クォーティアー
    衣裳デザイン賞授賞 サンディ・パウエル
    メイクアップ賞ノミネート ヴェロニカ・ブレブナー/リサ・ウェストコット
    音響賞ノミネート ドミニク・レスター/ロビン・オドノヒュー/ピーター・グロサップ
    編集賞ノミネート デヴィッド・ギャンブル

    ベルリン国際映画祭 1999年
    功労賞授賞 トム・ストッパード/マーク・ノーマン

    NY批評家協会賞 1998年
    脚本賞授賞 マーク・ノーマン/トム・ストッパード

    ゴールデン・グローブ 1998年
    作品賞(コメディ/ミュージカル)授賞
    女優賞(コメディ/ミュージカル) 授賞グウィネス・パルトロウ
    脚本賞授賞 トム・ストッパード/マーク・ノーマン

    <DATA>

     芝居熱が過熱する16世紀終わりのロンドンで、新進気鋭の劇作家シェイクスピア(ジョセフ・ファインズ)が恋におちた。
     一人の女性ヴァイオラ(グウィネス・パルトロウ)を愛して、愛して、愛して・・・その狂おしさから、あの華麗なる悲劇“ロミオとジュリエット”は生まれた。
     不朽のラブストーリー誕生の陰に存在した本物の恋。

     天才劇作家シェイクスピアが、今、歴史の壁をくぐり抜け、ひとりの“恋する男”になる。
     若き日のシェイクスピアに扮しているのは、「魅せられて」のジョセス・ファインズ。
     射すくめるような瞳で、シェイクスピアの才気と情熱を強烈に演じている。
     一方、運命の女性ヴァイオラには、「エマ」、「スライディング・ドア」で魅力全開のグウィネス・パルトロウ。

  • 映画『ウェイクアップ!ネッド』 アイルランドの美しい情景と人間賛歌!

    映画『ウェイクアップ!ネッド』 アイルランドの美しい情景と人間賛歌!

    映画『ウェイクアップ!ネッド』 Waking Ned

    ウェイクアップ!ネッド

    ネコばばる?

    人間に一番大切なものは、人生を楽しむこと!

    アイルランドの寒村で12億円の宝くじが当たったことが判る、小さな村で誰が当選者か?村中が大騒動となるが、当選者は喜びのあまり心臓発作で昇天していた!
    村の人々は代役を立てて賞金を手に入れようと右往左往する。

    この映画を見終わった時、ふと自分を振り返る。
    人間ってなんだろう?って。
    人間って欲の皮が突っ張った存在?そしてそれは人々が住んでいる地上・・・自然から見ればちっぽけなものなんだろうなぁ~と。

    ここに出てくる人々は、本当に小さな村の人々。
    その人々が、一枚の宝くじを巡って右往左往する。
    なんでそんな事になるのか?それは人間の持つ欲。
    決して大きな欲ではない、それでも大金が手に入るかも!?でも、そのお金の使い道は、結婚資金だったり、飲み代だったりとつつましい。

    結局、自分が生きてきた世界の枠からはみ出ることは出来ない人々。
    だから彼らの欲張りな行動も、結局は微笑ましく感じてしまうに違いない。
    彼らにとっては、普段のそれまで続けてきた生活、それをほんのちょっと良くなれば、それだけで満足。
    大金が入ったからと言って、結局はそのちょっとの満足で納得してしまうに違いない。
    だから、彼らはお金にこだわっているのではなく、そのお金で手に入れられる、ほんのちょっとの幸せを求めているのだと思う。

    余りにも緑(自然)が美しい!彼らは既に自然という一番の宝物を持った人々。
    だから、きっと心が豊かでほんのちょっとの幸せで満足してしまうのだろう。

    自分を振り返ると(汗)そう、いつしか自然からは遠く離れたところに生きている。
    だから必要以上に欲張り、そのためにあくせく働いているのかもしれない。

    人間にとって一番必要なものは何か?大切なものは?この作品はそんな事を語りかけてくる。
    そして彼らは、宝くじを手に入れたことを、自然に向かって酒を持って感謝する(笑)

    アイルランドを舞台にした、本当に緑が美しい映像。
    撮影は、あの『スカートの翼ひろげて』のヘンリー・ブラハムという人。
    緑はアイルランドのナショナル・カラーでもある、その色を見事に表現した映像は、この作品をより際立たせてくれた。

    そしてショーン・デイヴィの手による音楽、イーリアン・パイプやフィドルといったアイルランド伝統の楽器を使っての演奏が印象的。

    主役の二人、それを囲む村の人々を演じた俳優達も味わいが有り、一層、作品を引き立たせた。
    こんなに美しい作品、映画館で観ることが出来なかったのが、唯一残念なことだった。

    Reviewed in 12.2000 

    映画『ウェイクアップ!ネッド』のデータ

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    WAKING NED DIVINE 92分 1998年 イギリス

    監督■カーク・ジョーンズ
    製作■グリニス・ミュレイ/リチャード・ホルムズ/ニール・ペプロー(共同)
    脚本■カーク・ジョーンズ
    撮影■ヘンリー・ブラハム/B.S.C.
    プロダクション・デザイナー■ジョン・エブデン
    音楽■ショーン・デイヴィ
    編集■アラン・ストラチャン
    出演■イアン・バネン/デヴィッド・ケリー/スーザン・リンチ/ジェームズ・ネスビット/フィオヌラ・フラナガン/モーラ・オマリー/ロバート・ヒッキー

    <DATA>

     アイルランドの小さな村で12億円の宝くじが当たったことから村中を巻き込んだ大騒動となるさまを描いたほのぼのコメディ。
     南アイルランドに浮かぶ小島の村タリーモア。
     のどかなこの村に住む老人ジャッキー(イアン・バネン)は、地方紙を見て村の誰かが宝くじに当た ったことを発見する。
     おこぼれにあずかろうと考えたジャッキーは、親友のマイケル(デヴィッド・ケリー)を誘って当選者探しを始める。
     が、やっと見 つけ出した当選者は笑みを浮かべ、当たりくじを握りしめたまま昇天していて・・・。<allcinema>

     監督はコマーシャルの世界で活躍してきたカーク・ジョーンズ。
     ある小さな田舎町で宝くじを当てた婦人郵便局長の新聞記事をヒントに ジョーンズは脚本を執筆、4年間に渡り推敲を重ね、’97年夏マン島で6週間に渡る撮影に臨んだ。
     プロデューサーは『シューティング・フィッシュ』(97)の成功で、一躍注目を集めたグリニス・ミュレイとリチャード・ホルムズ。
     本作が全米 で2400万ドルを越えるヒットとなり、今やイギリスで最も期待を集めるプロデューサーである。
     映画・テレビ音楽を手がけるショーン・デイ ヴィが、アイルランドで活躍するミュージシャンを集め、イーリアン・パイプやフィドルといったアイルランド伝統の楽器を使って印象的なオ リジナル・サウンドトラックを提供している。

  • 映画『犬の生活』 チャップリン初期の転換期となった短編

    映画『犬の生活』 チャップリン初期の転換期となった短編

    映画『犬の生活』 A DOG’S LIFE

    犬の生活

    チャップリン・スタイルが確立した作品

    チャップリンの映画が本当に初期の頃から、少しずつ変わり始めた作品。
    それまでドタバタ振りを見せて観客を楽しませる・・・だけの作品から、チャップリンらしい笑いに、貧しさや人間の夢や強さを表現し始めた作品。

    そう、この作品には人の生活というものが描かれ始めている。
    むしろ、人の生活を一匹の犬に投影することで、おもしろおかしく、実はそこに人間の悲哀を感じさせてくれる。
    この映画では、その後の チャップリンの作品に色濃く出てくる特徴が、ふんだんに見ることが出来る。

    チャップリン作品の集大成(と言っても、いつの作品もチャップリンは存分に見せてくれるけど)のような芸の数々。
    映画は見せるもの、観客に動きを見せることで笑いや哀しみを感じさせる、そんな彼の芸がこの作品にも有ります。

    有名な犬のしっぽでミルクをなめさせるシーン、笑いと共にそこには本当の貧しさ、最後の一滴まで大切にする知恵、そこがチャップリンらしい。
    笑いの中に人間の生活が見えてくる。
    食事もままならず、盗んだソーセージを自分がお腹が空いているのに、しっぽを振る犬にあげてしまう。そこに見るチャップリンの優しさ、彼の根底には強き者を挫き弱き者を助ける、本当の優しさがそこには存在します。
    この作品には、既に彼のその後の作品『独裁者』や『殺人狂時代』の根底に流れるものが有るのです。

    今回のこの作品、パイオニアから発売されているDVDでの鑑賞。
    最初に公開されたものに、後にチャップリン自ら音楽を付けたもの。
    チャップリンの才能は、サイレントからトーキーの移行の中で、音というものまで見事に演出している。 ドラマチックな迄の音楽、これもチャップリン自身が作曲、本当に多彩な芸術家である。

    Reviewed in 09.2000

    ちょっと補足

    テレビで見た外国映画で、意識して見たのはチャップリンが初めてである、ちょうど小学生低学年の頃。
    何故か?というと同級生のお兄さんが聴覚障害者で、よくチャップリンを一緒に見たからだ。
    セリフがないのに誰でも笑うことのできる映像、現代の日本のテレビ界を見れば考えられないことだと思うし、当時としても驚きがあった。

    チャールズ・チャップリンは映画の創世記に現れた天才児(本来は努力の人だが)で、映画の本質を理解して最後までトーキー化(セリフを喋る映画)に抵抗し続けた映画人である。

    この作品はそんな初期のドタバタ喜劇で笑わせるだけではなく、悲哀もセリフを語らせることなく映像だけで表現してしまった作品。

    映画『犬の生活』のデータ

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    A DOG’S LIFE 30分 1918年 アメリカ

    監督■チャールズ・チャップリン
    製作■チャールズ・チャップリン
    脚本■チャールズ・チャップリン
    撮影■ローランド・トサロー
    助監督■チャック・ライズナー
    出演■チャールズ・チャップリン/エドナ・パーヴィアンス/トム・ウィルソン/シドニー・チャップリン/ビリー・ホワイト/アルバート・オースチン/ジェームズ・T・ケリー/チャック・ライズナー/ヘンリー・バーグマン

    <DATA>

     浮浪者チャーリー(チャールズ・チャップリン)は生活のため職安に出かけるが、周りの連中との競走に敗れ、職は決まらずじまい。
     ふて腐れる彼の前にやがて野良犬同志のケンカが始まる。
     その中でやられそうになっている一匹の犬に自分と同じ姿を見出したチャーリーは、矢も楯もたまらずその犬を助け出し、以後彼と犬との共同生活が始まって行く・・・。

     比較的初期のチャップリン映画だが、ドタバタ喜劇の中に貧窮のつらさをにじみ込ませる辺りなど、笑いにペーソスを織り込む独自の作風はこの作品で誕生したと言われている。
     その意味で、後年の諸名作の原典と言っても差し支えはないだろう。
     後に音楽(勿論作曲は彼自身)を付け加えたサウンド版が作られているが、ここでもオープニングを悲劇的に盛り上げたり、又犬を助け出すシーンでの効果的な使い方などに、“音楽とアクションがコミックです”という彼の信条が伺え、興味深い。 <allcinema>

  • 映画『甘い生活』 イタリア人のローマ、そしてイタリア人そのものを描いた傑作

    映画『甘い生活』 イタリア人のローマ、そしてイタリア人そのものを描いた傑作

    映画『甘い生活』 LA DOLCE VITA

    甘い生活

    フェリーニの映画は楽しい、でも苦手

    この作品もフェリーニらしい作品、とにかくフェリーニの映画の本質は、“サーカス”なので有る!そしてパレード...

    この作品には、印象的なシーンが多い、オープニングのキリスト像が、空をヘリコプターに宙吊りにされて運ばれていくシーン、アニタ・エクバーグ演じる女優が、レストラン(?)でそこにいる人々を連れて踊り回るシーン、またその女優が酔ってトレビの泉に入るシーン、主人公マルチェロ(マルチェロ・マストロヤンニ)が、父親を連れて行ったクラブで芸人のラッパを聞くシーン、マリアが現れたと言い人々が集まるシーン等々。
    それは常に“サーカス”に人が集い、喜び、悲しむシーン。

    この作品は、公開当時は大きな反響を持って迎えられたらしい。
    フランスではヌーヴェルバーグが始まった頃、反体制的であり反宗教的で有ること。
    それらが、反響の元で有るようだ。(フェリーニ本人は、反体制でも反宗教でも無く、形骸化したものへの反発心が有るだけだと思うのだが)
    でも、今、これを観ても、それ程、おぞましく感じることは出来ない。
    時代は変わってしまったのだ。

    甘い生活、退廃的な生活で有り、目的も無く無軌道な生活。
    しかし、そこには文明がもたらした甘美な世界が有る。
    主人公マルチェロの友人スタイナーが、子供2人を道連れに自殺してしまうところは、この世の救済にも絶望感が感じられる。
    ラストでは、唯一の望みで有る少女バロラの存在が有るが、結局、彼女とはどこで出会ったかも判らず、元の仲間の所へ戻ってしまうマルチェロ。

    当時、その世界を見事に描いてみせたフェリーニの冷徹さ、その表現力の素晴らしさは伝わるが、残念ながら、ここの描かれたテーマ自体が古くなってしまったと思う。
    今は、もっと退廃的な世の中になってしまったと思えるのだ。

    主演のマストロヤンニが若い!彼はこの作品で見事な俳優になったと聞く。
    確かにイタリア人の良さと嫌らしさを見事に表現していた。

    またフェリーニの女性の趣味もアニタ・エクバーグを通して見ることが出来る。
    そう、グラマラスで健康的な女性、と同時にアヌーク・エーメのような女性の描き方も上手い。

    ニーノ・ロータの音楽も軽妙で、この作品をより際立たせる。
    美術を担当したゲラルディのローマの繁華街“ヴェネト通り”は雰囲気を伝える。

    フェリーニの独特な甘美な世界、見事な表現力を持った作品で有ると同時に、その時代を描く事により、時代の移り変わりに取り残されてしまった傑作とも言える。

    Reviewed in 05.1999

    甘い生活

    映画『甘い生活』のデータ

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    LA DOLCE VITA
    LA DOUCEUR DO VIVRE [仏] 185分 1959年 イタリア=フランス
    監督■フェデリコ・フェリーニ
    製作■ジュゼッペ・アマート/アンジェロ・リッツォーリ
    原案■フェデリコ・フェリーニ
    脚本■フェデリコ・フェリーニ/エンニオ・フライアーノ/トゥリオ・ピネッリ/ブルネッロ・ロンディ
    撮影■オテッロ・マルテッリ
    音楽■ニーノ・ロータ
    美術■ピエロ・ゲラルディ
    編集■レオ・カトッツォ
    製作会社■リアマ・フィルム/パテ・コンソルティウム・シネマ
    備考■白黒
    日本公開■1960年
    出演■マルチェロ・マストロヤンニ/アニタ・エクバーグ/アヌーク・エーメ/ワルテル・サンテッソ/レックス・バーカー/アラン・キュニー/アンニバーレ・ニンキ/ポリドール/バーバラ・スティール/ナディア・グレイ/ラウラ・ベッティ/イヴォンヌ・フルノー/マガリ・ノエル/ヴァレリア・チァンゴッティーニ/アラン・ディジョン

    1961年アカデミー賞
    監督賞ノミネート フェデリコ・フェリーニ
    脚本賞ノミネート フェデリコ・フェリーニ/エンニオ・フライアーノ/トゥリオ・ピネッリ/ブルネッロ・ロンディ

    1960年カンヌ国際映画祭
    パルム・ドール授賞 フェデリコ・フェリーニ

    1961年N.Y.批評家協会賞
    外国映画賞授賞

    <DATA>

     強烈な通俗性の中に、豊潤な映像美学を開花させ、一つの大都市をこれだけ魅力的に捉えた作品は他にない。
     この映画の主役は間違いなくローマそのものだ。
    無論、M・マストロヤンニという最適の語り部を用意してはいるが。

     作家志望の夢破れて、今はしがないゴシップ記者のマルチェロ(マルチェロ・マストロヤンニ)は豪華なナイトクラブで富豪の娘マッダレーナ(アヌーク・エーメ)と出会い、安ホテルで一夜を明かす。
     ハリウッドのグラマー女優(アニタ・エクバーグ)を取材すれば、野外で狂騒し、トレビの泉で戯れる。
     乱痴気と頽廃に支配された街ローマ。
     同棲中のエンマ(イヴォンヌ・フルノー)は彼の言動を嘆く。
     二人で訪れた友人スタイナー(アラン・キュニー)一家の知的で落ち着いた暮らしぶりを羨むマルチェロだが、彼らも子連れの無理心中で突如死に、残るは絶望の実感のみ。
     いよいよ狂乱の生活に没入するマルチェロは海に近い別荘で仲間と淫らに遊び耽る。
     彼らが享楽に疲れ果てた体を海風にさらす朝、マルチェロは波打ち際に打ち上げられた怪魚の、悪臭を放って腐り果てるさまを凝視した。
     彼方で顔見知りの可憐な少女バロラ(ヴァレリア・チァンゴッティーニ)が声をかけるが、波音に消されて聞こえない。かくて純粋な青春の時は終わったのか・・・。

     素晴らしいラストシーンを持った、フェリーニにしか描けない都市のデカダンスが弾ける。N・ロータの音楽も多様な変奏を聴かせ、映画と完全に溶け合って見事。 <allcinema>

  • 映画『アンダーグラウンド』 国を失う悲劇をコミカルに描いたファンタジー

    映画『アンダーグラウンド』 国を失う悲劇をコミカルに描いたファンタジー

    映画『アンダーグラウンド』UNDERGROUND

    アンダーグラウンド

    昔、ある所に国があった。

    地上と地下、それは支配するものとされるものを描いていた

    久々の怪作を観た。
    ユーゴスラビアの近代史を紐解く作品とも言える。

    冒頭から騒々しい音楽と共にユーゴスラビアに生きる人々が、生き生きと映し出される。
    と、同時に第二次世界大戦に突入。
    東欧の映画らしい、洗練はされていないが、人間味有る独特の雰囲気に溢れる。

    映画としては少し冗長なとこも確かにあるが、それ以上に素晴らしいテーマを持つ、一つ一つのシーンが美しい。

    前半はひたすら人々の暮らしや人間の愛憎が描かれる。
    マルコとクロと女優のナタリアの三角関係が軸になる。
    戦争の激化、ゲリラ化に伴い、人々は地下に潜る。
    マルコとナタリアだけが地上で生活をし、地下の人々に生活物資を送る。
    地下の人々はその中で、希望を失うこと無しに自分たちの生活を続ける。

    画面には滑稽な風景が映し出される。
    しかしそこにはユーゴスラビアの人々の生きる事への力強さ、国を取り戻す事への強い意志が現れている。

    地上では戦争が終わり、共産党のチトーが政権を執る。
    映画の中盤から、実写も織り込みながら歴史を語り始める。
    と同時にマルコとナタリアの苦悩が描かれる、地下の人々を裏切り続ける事、騙し続ける事への...

    地下の人々は、地上の戦争が終わったことを知らない。
    マルコのとった行動は、地下の人々を殺すことだった。
    クロとその息子は地上に脱出する。
    クロの息子が初めて見る太陽のシーンは感動的ですらある。
    映画史上の最も美しい1シーンと言える。

    それから20年が過ぎ、ユーゴスラビアは内戦に突入する。
    そこには民族の対立、ユーゴスラビアの崩壊が有った。

    結局、クロは自分を裏切ったマルコとナタリーを間接的に殺すことに...。
    そして自らも命を落とす。

    生き生きとした人々、その生活を描きながら、その人々が住む故郷・ユーゴスラビアと言う国が存在しない事への底知れぬ、悲しみ、怒りが描かれている。

    ラストのイヴァン(マルコの弟で、チンパンジーを連れた動物園の元飼育係)の言葉に心が痛む。
    それでも人々は生き続ける、踊り続ける!そこに自分の土地が無くても。
    映画のテーマに、底知れぬ痛みと感動を憶える、大作であり、傑作である。

    Reviewed in 03.1999 

    映画『アンダーグラウンド』のデータ

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    UNDERGROUND 171分 1995年 フランス=ドイツ=ハンガリー
    監督■エミール・クストリッツァ
    製作総指揮■ピエール・スペングラー
    製作■カール・ボームガートナー
    原作■デュシャン・コバチェヴィチ
    脚本■デュシャン・コバチェヴィチ/エミール・クストリッツァ
    撮影■ヴィルコ・フィラチ
    音楽■ゴラン・ブレゴヴィク
    編集■ブランカ・ツェペラチ
    衣装■ネボイシャ・リバノヴィチ
    美術■ミリェン・クリャコヴィチ“クレガ”
    出演■ミキ・マノイロヴィッチ/ミリャナ・ヤコヴィッチ/ラザル・リストフスキー/スラヴコ・スティマ

    1995年カンヌ国際映画祭
    パルム・ドール授賞 エミール・クストリッツァ

    <DATA>

     1941年から始まった旧ユーゴスラヴィアの戦いと動乱の歴史を、マルコとクロという二人の男を通して描いた作品。

    1941年、ユーゴ王国はナチス・ドイツに侵略された。
    クロを誘ってパルチザンに参加したマルコは、自分の祖父の地下室に弟やクロの妻などをかくまう。
    やがて重傷を負ったクロも地下室に運び込まれる。
    終わりなき戦争を信じる彼らが、地上に戻った時、既に戦争が終わり20年が過ぎていた。

    クストリッツァ監督は、デビュー作「パパは出張中」でも、’85年カンヌ国際映画祭でグランプリ、「ジプシーのとき」で、’89年カンヌ国際映画祭監督賞を授賞している。
    世界でも最も独創的な映画作家の一人である。 <allcinema>

  • 成功する初めての映画デート!?メリットとデメリットから映画選びまで

    成功する初めての映画デート!?メリットとデメリットから映画選びまで

    映画はデートの定番?

    デートの定番として利用される映画だけど、実はメリット・デメリットがあるので、注意が必要です。

    しかも選ぶ映画でその後のことが変わってきます、映画は上映中は会話ができないので、距離を縮めるというよりも、一緒に感動や面白さを共有することで、お互いの中に共感を得ることができます。

    私の思いつく映画の注意点とかを書いていこうと思います。

    マナーは守るのは最低限のルール

    映画を観る時はマナーは守りましょう~マナーを守れないところを見せるのは、相手に失望感を抱かせます、逆にマナーを守ると相手からの好感度が上がります。
    映画館で鑑賞する時のマナーをまとめておきます。

    1. 映画が始まったら会話を止めましょう
    2. 映画の鑑賞中の飲食は注意、音が出るので注意が必要
    3. 前の席を蹴るのは注意、足の組み換え時に蹴ることがあります
    4. ケータイ・スマホの電源は切りましょう、間違ってもスマホを取り出して画面の確認はNG
    5. 帽子を被るのは止めましょう、後ろの席の人がマジ見えません、たまに髪型をいじる人もいますが、それもNG
    6. 時々見かけますが、風邪を引いてるのに無理して映画館に来るのは止めましょう~バイオハザードです(笑)うるさいし、バイ菌を撒き散らします。

    映画が始まったら、あまり身動きせずに集中して見るのが、映画も楽しめるし相手からも落ち着きのある人と評価されます。

    映画デートのメリット

    なんと言っても誘いやすい

    映画が嫌いなんて人いる?
    と言うのは、私のような映画好きには判らない答えですが、断る理由が少ないと言うのが大きいですね。

    二人きりになる場所や遠くまで行く、と言うのは付き合い始めたカップルにはなかなかハードルが高いデートになりますが、街中やショッピングモールにある映画館は何かと便利と言えます。

    私に言われると「映画館は会話ができないからデートじゃないでしょ?気軽に見に行かない?」と言うノリです。

    それにデート代が安いので、自分の懐にも優しいし、相手にも気を使わせなくて良いというのも良いところです。

    予定が立てやすい

    映画は時間が決まっています、天変地異でも起きなければ、予定通りの時間に映画が始まって終わります。
    と言うことは、前後の予定が立てやすいと言うことです、食事をするならレストランや居酒屋の予約も取れると言うこと。

    行き当たりばったりのデートにならないのは、付き合い始めたカップルにはとても都合が良いとも言えます。
    天候によって左右されないので「雨だから・・・」「寒いから・・・」「暑いから・・・」と言うこともなく、女性には日焼けの心配もありません(笑)

    何度でも行ける場所として

    映画デートは何度でもできます!
    当たり前ですが、シネコンでは毎日10本くらいの作品を上映していて2週間から4週間で入れ替わっていきます。

    他のデートスポットの場合、一度行ったらもういいや、とか、しばらくは行かなくても、と言うところが多いですが、月に1回程度行くデートスポットとしては最適です。

    また上に書いた予定が立てやすいので、組み合わせで利用ができます。
    買い物と合わせて、食事と合わせて、と言った具合に映画がメインでも、ついででも使えます。

    会話をしなくても近づける

    レストランや居酒屋に行ったら、会話が弾まないと気まずくなりますが、映画館では上映中は会話をする必要がありません、しかも映画が終わった後は会話のネタが提供されます。

    そして席を予約する時に、わざわざ離れた席を予約する人はいないと思うので、自然と隣同士に座って2時間前後の時間を過ごすことになります。
    そして、映画に感動できれば、お互いに共感できた時間を共有したことになります。

    意外に映画が印象に残る=そのデート自体が印象に残ることになります。

    映画デートのデメリット

    でも映画でデートする時にはメリットだけではありません。
    マナーを守らないと印象が悪くなります、ここでは気をつけることを少し書きます。

    会話ができない

    メリットの裏返しですが、上映中は会話ができないので、会話をしたい場合は映画の後の予定も組んでおく必要があります。

    もっというと会話ができないからと言って、スキンシップでイチャイチャしようとすると、周りの迷惑ですし、相手もそこまでは望んでいない場合も有りますので注意が必要です。

    私の体験談では、映画を観ている間は手をつなぎたいと言う女性がいました(笑)
    スキンシップは深まりますが、身動きが取れないので、けっこう疲れます。

    あくまで時間を共有すると言う意識でいましょう!

    眠たくなる、体調が悪い場合

    デートの前日は早く寝て体調は万全にしておきましょう!

    と言うのが前提ですが、やはり寝不足や食事後、自分には合わない映画の場合、ウトウトしてしまう事があるので注意。
    イビキをかいて寝てしまったら最悪なことに・・・

    映画がつまらなかったら

    事前にインターネットで調べても、結局、本人たちがつまらないとシラケます。
    こればかりは避けられないのですが・・・

    つまらなかったと言って、見終わった後にそのことを言うのではなくて、できるだけ相手の感想を聞いて合わせるようにしましょう。
    相手が面白かったのに、自分がつまらなかったことを強調すると感性が合わない人と思われます。

    号泣には気をつけよう!

    映画を楽しんでいるのだから悪くはないのですが、男が泣くと強さとは逆のイメージが付きます。
    既に親密な関係にあるカップルなら、最初から「泣ける」映画を選ぶのもアリですけど。

    危険なのが、最近のピクサー映画(汗)は男の泣きのツボを付いてきます!
    これは次の選ぶ映画でまた詳しく。

    またカップルで号泣してしまった時は、上映が終わるまで相手のことを見ないほうが無難かも。
    涙を拭く時間は必要です。

  • 映画『永い言い訳』  妻が死んでも泣けないアラフィフ男の本音と建前

    映画『永い言い訳』 妻が死んでも泣けないアラフィフ男の本音と建前

    映画『永い言い訳』

    永い言い訳

    妻が死んだ。
    これっぽっちも泣けなかった。
    そこから愛しはじめた。

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    イントロダクション

    妻を亡くした男と、母を亡くした子供たち。
    その不思議な出会いから、
    「あたらしい家族」の物語が動きはじめる。

    『おくりびと』以来7年ぶりに主人公・幸夫を演じるのは、『日本のいちばん長い日』で昭和天皇役が高評価だった本木雅弘。
    今回はタレント小説家を見事に演じてみせた、時にはチャーミングで時には憎々しく。
    主人公・幸夫の亡くなった妻と共に死んだ親友の夫・陽一にはミュージシャンの竹原ピストルを抜擢。
    幸夫の妻には深津絵里、幸夫の愛人役には黒木華、さらに池松壮亮、山田真歩などが共演。

    原作・脚本・監督は『ゆれる』『ディア・ドクター』『夢売るふたり』とオリジナル脚本で勝負し、本作の原作では直木賞候補となった西川美和監督。

    永い言い訳

    アラフィフ男の本音と建前が交差する

    有名作家の妻が死んだ、その時、その夫は若い女性と不倫をしていた。

    西川美和監督の最新作、映画『ゆれる』が衝撃的で、『ディア・ドクター』も本当に好きで、次はどんな作品を見せてくれるのだろうか?と期待していた。
    その西川監督が、それまでは完璧なものが壊れていって、そこに隠されていた人間の本性が露わとなる怖さが詰まっていたが、この作品では西川監督本人がインタビューで「その後を描いている」と言うように、壊れてしまった夫婦関係が妻の「死によって再生」していく、という物語。

    西川監督は、この作品を作るにあたってそのアイディアを、3.11の震災を目の前にした時に、死に別れた家族や友人とどういう別れ方をしたか?それを描きたかったとも言っている。
    そこには人それぞれの別れがあった筈、朝食を食べながら喧嘩してそのまま別れた家族もいるかもしれない、口も聞かずに出かけた子供との別れが有ったかもしれない、人の死はある日突然訪れる。

    無名の作家時代を支えてくれた妻、いつの間にか妻がいるのが当たり前になり、作家として有名になり、お金もあり女性も近づいてくる。
    50も近づき、自分の才能も枯渇してきてるのかもしれない、実は何も思い通りにならない自分がそこにはいる。
    その隙間を埋めるために、若い女性と身体を重ねる主人公、そんなタイミングに妻が事故死する。
    主人公の本音は「自分は何も悪くないのに、妻が死んでしまった」と言う思い。

    周りからは「大変でしたね」と言われ、それを演じなくてはと思う主人公。
    彼は、他人(妻の親友)の子供たちの世話を始める、子供たちとのやり取りが微笑ましく、またその子供たちが可愛い、特に可笑しく苦労もする、幸夫は自然に癒やされていき世間の喧騒から一時離れることができる、が、自分の子持ちのマネージャー(池松壮亮)から
    「子育ては男の免罪符ですから。自分がイヤな、ダメなヤツってことを帳消しにしてくれる逃げ場ですから」
    と言われてしまう。

    主人公の本音は「自分が好き」で誰も愛したことがない。

    永い言い訳

    失った愛を取り戻す

    作家を諦めかけていた時に、自分を励まし、金銭的にも支えてくれた妻。
    でも実際には、自分が有名になったことで少しずつ、彼女に対する思いが変わっていく。

    実際、何が変わったと言う訳ではなく、そこは時間が過ぎていくと言うことなんだと思う。

    妻の死によって失った愛、そして愛人からも捨てられていく。
    子供と接するうちに、妻の死にいつまでもグズグズと泣き崩れる男と接するうちに、自分は誰かを本当に愛せていたのだろうか?と感じ始める。
    そして、愛を取り戻す、寸前でいつも主人公の手からこぼれ落ちていく。

    ラスト、妻の写った写真を見て本当の妻の気持ちを知ることで、主人公は一歩、再生へと歩み始める。

    夫婦ってなに?愛ってなに?そんなことを思い始めた人には考えさせる何かがここにあります、今年一番のオススメ作品。
    渇いた心を少し癒やしてくれる映画、それってやっぱり貴重だと思う。

    永い言い訳

    私的『永い言い訳』ネタバレあり

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    不倫に対する見る人のスタンスで、この作品の解釈が変わってくると思う。

    不倫は絶対に駄目!と思っている人にとっては、主人公が情けなく、赦せない存在で、ラストに妻の本心を知って愛に向かって一歩歩み始める姿に映る。

    夫婦の愛がなくなったとしても、世間体や面倒くさいと言うことで別れずに不倫に走る男、それってあるよね、と思ってしまった人にとっては、「こんな俺でも妻は俺のことを愛してくれてたんだ」と思い、自己中心的な自分愛に自信を取り戻す。

    不倫が良いと言う訳ではないが、私は後者だと思ってこの作品を見た。
    “長い”ではなく“永い”と言う死ぬまで自分のことを言い訳し続ける主人公。

    それはある意味、アラフィフになり、自分の実力の限界も判り、人生と夢とのギャップで自分が何者にもなれなかったことに気付き始める、その心の隙間を埋めるのは「自分を愛する」ことかもしれない、そんな風に感じる。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    西川美和監督が、自ら原作本を書き、それを脚本・演出した作品。
    図らずも、今年、西川監督の師匠・是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』も、アラフィフ男の情けなさを描いていて、主人公が同じ作家でもある、そして子供も出てくる点も共通している。

    それまで問題提起をしてきた西川監督が、一歩踏み出して、その人間の本質に右往左往する人々を描いたところに、そして今のアラフィフの姿を描いていた点がとても良かった。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    この作品の番宣で、久々によく本木雅弘がテレビに出ていたが、過去作品より彼本人に近いのでは?感じさせる。
    もちろん彼が実生活で不倫をしてるっぽいとかではなく、どこか飄々としていて、どこかに熱いものを持っていて、そんな感じが主人公とダブる、だからこそなのか、情けなさが板についてるし、そして納得させられる。
    本木雅弘自身が「幸夫の方が(僕より)清いんですよ」と言ってるところが面白い。

    竹原ピストルの妻の死に、いつまでも泣いているトラック野郎と言う役どころが良かった、演技が新鮮で良かった点と、世間で持てはやされたビッグダディと似ているところを感じて、素直な人間性っぽい気もするが、本当は人生(この作品では子育て)から逃げている男の姿が、また良かった。

    深津絵里が登場するシーンは少ないがその美しさが素晴らしい、そしてやはり写真での登場の存在が凄い。
    二人の子供たちも掘り出しもの。
    池松壮亮は、いつもこんな斜に構えた、妙に説得力がある、そしてズルい感じの男が似合ってしまう。

    黒木華が、初めて?濡れ場に挑戦、昭和顔と本人が言っていたが、岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』から少しずつ変わってきて、この作品では色っぽかった!新しい発見であり、彼女はどこまで色んな顔を見せてくれるのか、本当に楽しみな女優。

    永い言い訳

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    今回、16ミリフィルムでの撮影と言うちょっと特殊な画作りをしている。
    ずっとボヤッとしたザラツイた映像が続く。
    きっと、自分を愛してやまない主人公の行き先の判らない人生そのもの、ボヤッとしたものとリンクしている。

    今回、子役を上手く使いつつ、親の本音、子供の本音が垣間見える。
    「子供なんかいなかったら・・・」と、でも一方で本当に子供を愛している、矛盾・・・やっぱりこれは映画で表現するべきことだと思う。

    ⑤ エンターテインメント性

    冒頭の妻の死、以外に何も取り立てて事件はない、それでも、人の本性がそこかしこに垣間見え、そして赦しが差し込まれていく。
    なにも事件はないのに、複雑に話が絡み合い、そして物語は起伏を持ってラストに続く。

    最大のサスペンスは「自分は妻に愛されていたのだろうか?」と自分勝手な男の謎解きが縦軸にしっかり柱がある。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    是枝監督に師事して、ということで非常に演出が似ている。
    そして、西川監督の好きな作品の影響も大きいと思う。

    説明的なセリフやシーン(キャラクターの動作)をできるだけ排した画作りをしてくる。
    タクシーの鏡で髪型を直すところは象徴的。

    今回は、是枝監督並に子供も演出できることが判った(笑)

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    原作・脚本と監督が一緒、完全なオリジナルと言うこと。

    縦に一本「愛される自分」があって、妻を失った家族や愛人、出版社に振り回されながら、本音を撒き散らす主人公の姿が滑稽でもあり、真実でもある。
    女性がこれだけ男の本音の部分を描けるのか?そんなに冷静に男を見てるのか?とちょっと西川監督の頭の中を覗いてみたくなる。

    ⑧何度も見たくなるか?

    2016年も残り数ヶ月、日本のアラフィフ男性は疲れ果てている、そんな作品が数多く出てきたが、一番、男の本音が表現されていて面白かった。
    そこに家族や妻への愛、と言うものを考えさせるものがあった。
    映画としての完成度やストーリーの面白さ、今の自分を見つめ直す機会に見たい作品。

    映画『永い言い訳』のデータ

    永い言い訳

    原作・脚本・監督■西川美和
    撮影■山崎裕
    出演■本木雅弘/竹原ピストル/藤田健心/白鳥玉季/堀内敬子/池松壮亮/黒木華/山田真歩/深津絵里
    公開日■2016年10月14日

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    【ストーリー】
    人気作家の津村啓こと衣笠幸夫(きぬがささちお)は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。
    その時不倫相手と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。

    そんなある日、妻の親友の遺族―トラック運転手の夫・陽一とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い彼らの世話を買って出る。
    保育園に通う灯(あかり)と、妹の世話のため中学受験を諦めようとしていた兄の真平。
    子どもを持たない幸夫は、誰かのために生きる幸せを初めて知り、虚しかった毎日が輝き出すのだが・・・
    (C) 2016 「永い言い訳」製作委員会 PG-12