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  • 広瀬すずをアイコンにした岩井俊二の傑作! 映画『ラストレター』

    広瀬すずをアイコンにした岩井俊二の傑作! 映画『ラストレター』

    映画『ラストレター』

    ラストレター

    君にまだずっと
     恋してるって言ったら
      信じますか?

    堂々のロリコン映画の傑作!

    21歳(1998年生まれ)の広瀬すずと18歳の森七菜(2001年生まれ)が高校生役に!

    本当の岩井俊二監督作品が帰ってきた!という興奮が冷めない、広瀬すずの高校生役が『海街diary』と被ります。
    岩井俊二監督のかつての傑作『Love Letter』と同様に一人二役で、現在と過去を絡めていきます。

    広瀬すずは、作品によって見え方が大きく変わる女優ですが、この作品では彼女の魅力が光ります。
    一方、森七菜の清々しさと広瀬すずとの立ち位置が、映像的にも絶妙で、流石!ロリコン監督岩井俊二の面目躍如といったところです。

    一方で、珍しい『花とアリス』以来の東宝作品、プロデュースは『悪人』『君の名は。』『怒り』『天気の子』の川村元気。
    当初の岩井俊二の持っていた企画を、川村元気Pが大幅に変更を依頼して、今作品に至ったとのこと・・・不倫に近い関係を匂わせた物語や衝撃的な結末も、川村元気の鬱(うつ)の部分がよく現れているような気がします。
    (『世界から猫が消えたなら』は余命宣告をされた若者が鬱になり妄想を見て、『億男』では億万長者になった妄想にとりつかれた鬱男の話でもあり・・・世界が崩壊しようが二人の愛が大切な『君の名は。』等、川村元気Pの作品群はどこか、ズレた若者像が存在します)

    だからこそ、映像で広瀬すずと森七菜の若さが光ると思います。
    そして、今まで岩井俊二監督作品を愛してきた人には、やっとこの立ち位置に戻ってきてくれた、そんな感想を抱く作品になっています。

    タイトルも似ている『Love Letter』との共通性

    『Love Letter』『スワロウテイル』『花とアリス』『リップヴァンウィンクルの花嫁』と数々の名作を世に送り出してきた映画監督・岩井俊二。
    初めて出身地である宮城(や地元仙台)を舞台に、手紙の行き違いをきっかけに始まったふたつの世代の男女の恋愛と、それぞれの心の再生と成長を描く。

    初期の名作『Love Letter』と通じる世界観があります、その大きな要因は、まず、物語の前半と後半が大きく変わっていきます。
    今作品では、前半は松たか子が演じる裕里を中心に物語が進み、後半は福山雅治演じる鏡史郎、そして広瀬すずが演じる一人二役へと繋がっていきます。

    『Love Letter』は中山美穂が一人二役を演じていたのと同様に、今作品ではより複雑に、一人二役、二人一役と物語が紡がれて行きます。

    そして『Love Letter』とは直接関係はないものの、『Love Letter』の主人公二人、中山美穂と豊川悦司が、夫婦役(内縁)で出てきます。
    但し、『Love Letter』と『ラストレター』では直接、物語のつながりもなく、共通の登場人物や場所もありません。
    ただ、『Love Letter』が撮影された当時は、日本にもまだまだ成長し続け希望もある明るい時代ですが、『ラストレター』ではその後の四半世紀で大きく、挫折や絶望にあふれる時代になったのかもしれません。

    また面白いのは、少し話はズレますが、もう一人の日本の映画界の第一人者・是枝裕和監督との作品との関連性。
    前述の『海街diary』では広瀬すずを高校生役に瑞々しく、一方で縁や血の繋がりを演じさせることでそのキャラクターを輝かせていました。
    この作品では、男に翻弄されて人生を誤った女性と、一人のおじさんのオマージュの対象の少女という二面性に処女性と女性の欲深さを感じさせるところが面白い。

    合わせて、『そして父になる』のエリートビジネスマンでありながら、駄目な父親像とも被る、うだつの上がらない小説家役が、二枚目の福山雅治が演じることで、過去とのギャップという点で、上手く演出している。
    その点で、岩井俊二の中の『Love Letter』と『ラストレター』の時代の流れ、是枝裕和監督との現代の見え方という点で興味深い。

    他に『エヴァンゲリオン』の庵野秀明や神木隆之介が出演という東宝ならではの豪華キャスト。
    私には、岩井俊二監督の過去作品と比べても最も好きな作品となりました。

    映画『ラストレター』

  • 映画『ラ・ラ・ランド』 伝えずにはいられない、この楽しさ!切なさ!

    映画『ラ・ラ・ランド』 伝えずにはいられない、この楽しさ!切なさ!

    映画『ラ・ラ・ランド』 LA LA LAND

    夢をみていた

    2017年2月24日から絶賛ロードショー中!

    『セッション』のデイミアン・チャゼル監督、最新作!

    いよいよ明日に控えるアカデミー賞に14ノミネート、既に前哨戦のゴールデン・グローブ賞を歴代最多7部門受賞という作品、おそらくアカデミー賞も作品賞と監督賞は確実でしょう。

    ちなみに『セッション』は面白かったけど、世間の評判ほど私は評価しておらず・・・ジャズにこだわりを感じる監督ですが、私の知っているジャズとイメージが違ったりと、『セッション』は『愛と青春の旅だち』の焼き直しというところも有って。

    さて話はそれたので戻すと、主演の二人、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの魅力が全開!
    歌に踊りにピアノに!と全てを見せてくれます。

    なんと言っても、過去のミュージカル映画へのオマージュが凄かったり。
    先日、チャゼル監督が来日した時には、ウルトラワイドアングルとか映像の色使いとかは、故・鈴木清順監督に影響を受けたとも語っていた。
    本当によく勉強していて、それが画面いっぱいにあふれている、映画愛を感じる作品だし監督。

    そして映像や音楽だけではなく、恋愛映画としても本当に切ない見事な物語になっています!

    オープニングから、これがミュージカル!という入り方、あれも凄いなぁ~よく撮ったなぁ~と感心させられる、いきなり感動!
    逆にミュージカルが苦手な人は、オープニングでNGかも。

    実は大人のための『君の名は。』だったり

    去年は日本から世界中で『君の名は。』旋風が起きた、10代から30代くらいまでは熱中できた、50の私が分岐点くらいでこの世代から上はNGだったっぽい、私は『君の名は。』は大好きだが。

    個人的には、去年の『君の名は。』のような鑑賞後の興奮を感じている。

    『ラ・ラ・ランド』は逆に30代から上のゾーンにハマりそうな作品。
    実際は『ウエストサイド物語』やもっと古いハリウッドのミュージカル『雨に唄えば』や『バンド・ワゴン』など、そしてジャック・ドゥミ監督の『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』などの作品へのオマージュと思われるシーンが出てくる。

    フレッド・アステアやジーン・ケリーのダンスを模したりと、映画好きにはたまらないシーンのオンパレード。

    そう言った演出、それに音楽の良さもあるが、なんと言っても物語が映画好きの琴線に触れる。
    映画スターに夢見る女性の夢と挫折とそして・・・
    ハリウッドのアカデミー会員、映画を作っている人たち、映画好きの観客にはたまらない!

    ミュージカルが苦手じゃない映画が好きな人には絶対オススメの極上ラヴ・ストーリー!

    私的『タイトル』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    夢をあきらめるな!
    『セッション』でもそうだが、夢のためには犠牲にするものがある。

    前半はボーイ・ミーツ・ガールもので、ハッピーな恋愛ミュージカルという趣き。
    中盤から少し主人公二人の葛藤を音楽なしで語られる。
    それはシビアな現実!夢をとるのか、二人の愛をとるのか?

    ラストに結果が判るけど、どちらを選んでもそれぞれの幸せがある、それは自分が選択したことだから。
    人生は一度きり、やり直しはきかない、だったら自分の夢をあきらめるな!

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    1940年代から’60年代くらいのミュージカル映画へのオマージュが凄い!それがこの監督の映画愛なんだと思う。

    それでいて、それを越えようとするチャレンジが凄くて、映像が凄いし音楽も踊りも最高!
    オリジナルでこんな作品を作れてしまうなんて。

    ジェームス・ディーンの『理由なき反抗』の舞台となったグリフィス天文台が重要なシーンととして使われている。
    なんとなく、ライアン・ゴズリングとジェームス・ディーンが被って見えるのは私だけ?

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンが、歌に踊りと見事にやりきっている!
    まるでフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのよう~(流石にレベルが違うけど)
    歌も決して上手くないけど、全編に渡って頑張ってる。

    ライアン・ゴズリングはピアノを実際に弾いてるらしい、指の動きはかなり完璧!役者根性を感じる。
    実際の演奏は他の人だと思うけど、『セッション』でもこだわった演奏シーンも迫力もの。

    エマ・ストーンはこのところ、いろんな名監督の作品に主演しているが、今回はハリウッド・スターに憧れる女優の卵、色々な表情を見せながら、同じ女優卵たちには共感できるシーンであふれている。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    ミュージカルって、本当に映画でしかできないと思う。

    そして今回は、演出が映画らしさ!にこだわっている。
    過去のミュージカルでは、スタジオ(室内セット)を使って、トワイライト・タイムのシーンを再現したりするが、今回は完全ロケ(外での撮影)!

    トワイライト・タイムは30分位しかないが、そこを一発撮りをしている。
    もちろん入念に準備をして挑んでると思うけど、背景の夕日が最高に美しいところを映像化している。

    『ウエストサイド物語』で上空からニューヨークの街中に入っていくシーンに驚かされたが、そんな映画でしかできない!と言うような驚きのシーンが冒頭から詰まっている!!

    ⑤ エンターテイメント性

    人の好き嫌いが分かれるところだけど、私にとってはミュージカルは最高のエンターテインメント。
    逆に映画の要素の他に、歌や踊りという要素にも完璧が求められる。

    個人的にはチャゼル監督のジャズへのこだわりがあまり好みではない(私がジャズを理解していない・汗)ので、そのあたりには不満はあるけど。

    この作品は、映像も凄いし、歌や踊りのノリもよい!しかし物語も、ハリウッドのサクセス・ストーリーとしての完成度も高い。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    この監督は本当に映画を勉強している、過去のシーンを真似ているのではなく、オマージュとして取り入れているという感じ。

    オープニングのクローズなカメラから音楽と踊りとともにウルトラワイドにパンしていくカメラとか、凄いなぁ~と思わせる。
    一方で、ジャズ・バーの中を移動していく主人公を追うようなハンディカメラを使った映像とかも、躍動感を映画に持たせている。

    ちょっとしたシーンでもこだわってこだわって作っている。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    オリジナル!
    ハリウッド・スターを夢見る女優の卵とジャズ・バーを持ちたいジャズピアニストの男性が出会って恋をして・・・
    そして夢に向かって、困難を乗り越えていく姿を描いている。

    この監督は、どちらの人生を選んでも、その人生に間違いはないと。
    本当は切ない物語なんだけど、でも二人とも夢を叶えた人生を歩んでいく。

    ⑧何度も見たくなるか?

    夢を諦めかけた時、夢を見失った時に勇気を与えてくれる作品。

    そして映画としてこんなに楽しい作品は久々!映画は夢の世界!そんなことを一時でも楽しめるなんて素敵なことだと思う!

    映画『ラ・ラ・ランド』のデータ

    上映時間■128分
    製作国■アメリカ
    公開情報■劇場公開(ギャガ=ポニーキャニオン)
    初公開年月■2017/02/24
    監督■デイミアン・チャゼル
    脚本■デイミアン・チャゼル
    撮影■リヌス・サンドグレン
    衣装デザイン■メアリー・ゾフレス
    振付■マンディ・ムーア
    作詞■ベンジ・パセック/ジャスティン・ポール
    作曲■ジャスティン・ハーウィッツ
    音楽■ジャスティン・ハーウィッツ
    音楽監修■スティーヴン・ギジッキ
    エグゼクティブ音楽プロデューサー■マリウス・デヴリーズ
    出演■ライアン・ゴズリング(セブ)/エマ・ストーン(ミア)/ジョン・レジェンド/ローズマリー・デウィット/ソノヤ・ミズノ/J・K・シモンズ
    (C)2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. Photo credit EW0001 Sebastian(Ryan Gosling)and Mia(Emma Stone)in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

    公式サイトはこちら

    【解説】
     「セッション」のデイミアン・チャゼル監督がライアン・ゴズリングとエマ・ストーンを主演に迎えて贈る本格ミュージカル・ラブストーリー。大きな夢を抱いてLAへとやって来た男女の出会いと甘く切ない恋の行方を、カラフルかつマジカルなミュージカル・シーンと、夢と現実の狭間で苦闘する主人公2人の葛藤のドラマを織り交ぜほろ苦くもロマンティックに綴る。
     夢を追う人々が集う街、ロサンゼルス。女優志望のミアは映画スタジオのカフェで働きながら、いくつものオーディションを受ける日々。なかなか役がもらえず意気消沈する彼女は、場末のバーから流れてくるピアノの音色に心惹かれる。弾いていたのは、以前フリーウェイで最悪な出会いをした相手セブだった。彼も自分の店を持って思う存分ジャズを演奏したいという夢を持ちながらも、厳しい現実に打ちのめされていた。そんな2人はいつしか恋に落ち、互いに励まし合いながらそれぞれの夢に向かって奮闘していくのだったが…。<allcinema>

  • 映画『ルートヴィヒ』 バイセクシャルの不完全な美学

    映画『ルートヴィヒ』 バイセクシャルの不完全な美学

    映画『ルートヴィヒ/神々の黄昏』 LUDWIG

    ludwig

    ルキノ・ヴィスコンティの生涯についてはこちらから

    ルキノ・ヴィスコンティ -作品と演出- はこちら

    ヴィスコンティ作品の中で完璧ではないが最も好きな作品

    ヴィスコンティの傑作中の傑作。
    彼はこの作品に際して、老体に鞭を打ちドイツの寒い山林の中での撮影を敢行した。
    この事が彼を病に追いやった。
    それでも、この大作を完成させた執念は、もの凄いものを感じずにはいられない。

    この作品の内容と言うより、ここには総合芸術としての映画、全ての芸術・娯楽という要素を見事に融合させている。
    オペラなどのクラシック音楽はもちろん、映像的にもその室内装飾から衣装までも素晴らしく、ルードウィヒが建てたノイシュヴァンシュタイン城までもが、この映画を際ただせている。
    その構成する要素全てを完璧なまでに使いこなす。
    これだけの作品は、これ以降も生まれる可能性は少ない。

    狂王と呼ばれたルードウィヒ二世をヘルムート・バーガーが見事に演じている。
    その変わっていく様と共に、彼の置かれる環境も変わり、徐々にその耽美で倒錯的な世界が展開される。
    この作品でヴィスコンティは、芸術を愛する一人の国王が、国王という存在そのものが変わろうとした時代に、変化についていくことが出来ず、それに押しつぶされる人物像を描いている。
    こういった人物を描いた時に、ヴィスコンティの本領が発揮される。
    私がこの作品を楽しんだのは、ストーリーそのものや、その裏に有るヴィスコンティの表現したい事ではない。
    ヴィスコンティの作った世界観、それは上にも書いた音楽や映像、そして魅力有る登場人物。
    ルードウィヒやエリザベートと言った周りの人物自体も魅力的であるが、それを演じる俳優達の上手いこと・・・
    ヴィスコンティが見事にその個性を引き出し、映画の一部に取り込んでいる。
    それ全てが歪みが無く完璧に構成されていることに酔いしれることが出来る。
    そして見終わった後の心に残る強い感動を止めることは出来ない。
    感動と言っても、それは得体の知れないものであるが・・・。
    映画というもの存在が何か・・・この作品を観ていると、それすらを超越してしまっている。
    架空の世界にも関わらず、そこには完璧なまでのリアリズムと同時に余りに美しい世界が広がっている。

    ludwig

    テーマやストーリーの意図するものを追ってみたい。
    この作品のテーマは、(明らかにヴィスコンティの出生にまつわる)有る階級が、時代に取り残され崩壊していく様を描いている。
    ヴィスコンティはイタリア貴族の名門中の名門。
    主人公・ルートヴィヒは、バーヴァリア王国(ドイツ南部バイエルン地方のミュンヘンに首都を置く)の国王。
    ルートヴィヒは純粋さと王族として育った環境(教養や躾けと言ったもの)によって、芸術と言うものに強い関心を持った。
    この点はヴィスコンティと共通する点でも有る。
    ルートヴィヒの悲劇は、ヴィスコンティよりも半世紀早く生まれたことが大きく影響している。
    それは旧時代から新時代過渡期とも言える時代。
    ルートヴィヒは心の自由を求め孤独を好んだ。
    このことが彼の立場、特に彼の所属する階級には許されないことだった。
    時代が違えば許されたことであったとしても、20世紀に向かう激動の時代において、王制の存在自体が疎まれた時代おいて許されることでは無かった...特に政治家にとっては。

    ルートヴィヒは自分の理想のため、ワグナーに莫大な国費を投じたが、それは国民、国に受け入れられなかった。
    ルートヴィヒは自分の中に有る、自由を求める心、欲求が有ったが、それを手に入れているかのような女性、エリザベートに恋をする。
    しかし、それはルートヴィヒやエリザベートにおいても許される恋では無かった(この点、エリザベートは現実的)。
    彼の理想と孤独を求める欲求は、最初からこの時代に受け入れられる事は無かった。
    ルートヴィヒは、まず戦争という現実から逃避した。
    それからは常に現実とは向き合おうとはしない。
    国王としての義務、世継ぎを作ること、これ(結婚)も拒否をした。

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    ヴィスコンティは、明らかに時代に押しつぶされる、ある階級を徹底的に描いている。
    ルートヴィヒだけではない、ルートヴィヒの母親の皇太后も、弟オットーも、輝きを失っていく。
    ルートヴィヒの追い求める、芸術や孤独の裏側に有るのは、常に人への、人からの“愛情”で有った。
    これがうち破られ、彼は本当の孤独になり自らの人生に自分で幕を下ろす。
    ルートヴィヒが男色に走るシーンが描かれるが、これはカトリックの教えを彼なりに守った故。
    婚約者ソフィーとの婚約解消の際に、司教に童貞で有ることを聞かれる。
    彼は唯一愛した女性エリザベート以外に結婚の意志もなく、童貞を守り続けること誓うのがこのシーンで判る。
    また舞台女優が、ゴシップ目当てにルートヴィヒに近づいて来るシーンも、彼の純潔さを表現している。

    ルートヴィヒが政府に追いつめられた時に、エリザベートはルートヴィヒが作った城を周り、ルートヴィヒの元を訪れる。
    ルートヴィヒが建てた壮大な城を見てエリザベートは大声で笑う。
    彼女は、はっきりとルートヴィヒを理解したのだ。
    本来はルートヴィヒに会って、彼の浪費を諫めに来たはずだが、ルートヴィヒが会わないことを知ると、あっさりと帰ってしまう。
    彼女には痛いほど、ルートヴィヒの悲しみと苦悩が感じてしまう...だから、逢わずに帰ってしまう。

    しかし、この映画の本当の素晴らしさは、そのテーマ自体ではない! これを如何に表現したか?に有る。
    ヴィスコンティの演出の素晴らしさには目を見張る。
    カメラのアングルや音楽の当てはめ方...そして、その完璧性。
    鏡の使い方や色使い、ルートヴィヒが幽閉された精神病院的な城は、モノトーン的な色使いをしている。
    それまでの鮮やかな色使いから一転する。
    鮮やかと言えば、洞窟に池を作り船を浮かべて白鳥を泳がしている。
    ワグナーの音楽が鳴り響く。

    どのシーンをとっても印象的で美しい造形。
    調度品にしても全てが本物(少なくともそう見える)で、貴族出身のヴィスコンティでなくては、これだけ細部までのこだわりは出せないはず。
    幽閉された城に掛けられた絵の数々は、エリザベートに招待されて初めてソフィーに会った部屋に掛けられていたもの(確か...?)。
    そう言った一つ一つのシーンを印象づけ、しかも意味の有るものにしている。

    またヴィスコンティの最も得意とする人物描写と俳優への演出。
    ルートヴィヒを演じたヘルムート・バーガーやエリザベートを演じたロミー・シュナイダーの素晴らしさは言うまでもないが、他の人物に関しても丁寧に描かれる。
    一つの例としてルートヴィヒを捕らえに来た中心人物の大臣・ホルンシュタイン伯爵の描き方。
    あまりにも野心的で頭の切れる人物であることを明確に描ききっている。
    ルートヴィヒの母親にしても、彼女の威厳有る態度がルートヴィヒの立場を明確にし、しかもプロテスタントからカトリックへの改宗(?)のシーンでの疲れ果てた表情で、時代の流れまでも表現させている。
    ストーリーと言っても、一人の人生を描いているだけにも関わらず飽きさせないのは、人物の描き方が魅力的だからであろう。

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    ヴィスコンティ作品のどこが良い?『ルートヴィヒ』のどこが素晴らしい?と聞かれても一言で答えを出すことは出来ない。
    それは絵のルノワールやゴッホ...音楽のベートーベンやモーツァルト...のどこが良いのか?と聞かれるのと一緒。
    映画という総合芸術そして娯楽性、それを見事に表現しているのがヴィスコンティ作品であり、特にその表現力と言う点で、ヴィスコンティ作品の中でも『ルートヴィヒ』は優れた作品と言える。
    映画のなんたるか!が、この作品で味わうことが出来る、傑作中の傑作。

    イタリア語版ではルートヴィヒ役のヘルムート・バーガーの吹き替えをジャンカルロ・ジャンニーニ(後にヴィスコンティの『イノセント』に出演)を起用するなど、豪華。
    ヴィスコンティの偉大さが判る。
    また題名の日本語表記が「ルードウィヒ」から、「ルートヴィヒ」に変更されている。

    映画『ルードウィヒ』のデータ

    映画『ルートヴィヒ』 デジタル修復版 [Blu-ray]

    LUDWIG 184(240)分 1972年 イタリア=西ドイツ(現ドイツ)=フランス

    監督■ルキノ・ヴィスコンティ
    製作■ウーゴ・サンタルチーア
    製作総指揮■ロバート・ゴードン・エドワーズ
    原案・脚本■ルキノ・ヴィスコンティ/エンリコ・メディオーリ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ
    撮影■アルマンド・ナンヌッツィ
    音楽■ロベルト・シューマン『子供の情景作品15』/リヒァルト・ワグナー『ローエングリーン第一幕への前奏曲』、『トリスタンとイゾルテ』、『タンホイザー』、『最後のピアノ曲』/ジャック・オッフェンバック『パリコール序曲』
    ピアノ独奏・演奏指揮■フランコ・マンニーノ
    演奏■サンタ・チェチリア国立音楽院管弦楽団
    編集■ルッジェーロ・マストロヤンニ
    美術■マリオ・キアーリ/マリオ・シッシ
    衣装■ヒエロ・トージ
    助監督■アルビーノ・コッコ
    製作会社■メガ・フィルム/ディーター・ガイスラー・プロドゥクツィオーン/ディフィナ・フィルム/シネテル
    備考■テクニカラー、パナビジョン
    日本公開■1980年
    出演■ヘルムート・バーガー/ロミー・シュナイダー/トレヴァー・ハワード/シルヴァーナ・マンガーノ/ゲルト・フレーベ/ヘルムート・グリーム/イザベラ・テレジンスカ/ウンベルト・オルシーニ/ジョン・モルダー・ブラウン/フォルカー・ボーネット/ハインツ・モーク/アドリアーナ・アスティ/ソニア・ペトローヴァ/マルク・ボレル/ノラ・リッチ/マーク・バーンズ

    【解説】
     狂王と呼ばれたバイエルン国王ルードウィヒ二世は、19歳で玉座につき、その美的趣味を国費でもって究めたいけない人。ワグナーのパトロンになって、言われるがままに金を出し、オペラ劇場を作るわ、自分でも三つのお城を建てて、その一つ、リンダーホフ城には地下に人工池造って白鳥のゴンドラうかべてるし……。そんな贅沢三昧そのままに、映画はそれら本物を使ったり、再現して、もう垂涎の絵巻物を繰り広げる。けど、ルードウィヒは寂しいのだ。最愛の従姉エリザベート(R・シュナイダーの白鳥に跨る姿の美しさ!)は人の妻(オーストリア皇后)。その妹ソフィと結婚するはずが、やっぱ諦め切れなくて婚約破棄。以後はただもう、そんな享楽生活に身も心も捧げて歯も腐るほど。親しい人(含む愛人の男たち)みんなに逃げられて、結局“ご乱心”とされ幽閉。暗殺だか自殺だか判らぬ死を迎える。製作会社を倒産に追い込み、自分は卒中に倒れても完成させた大作だが規模だけでなく、その精神の気高さ、深い教養、美への執着において、このような映画は二度と作られまい。これをヴィスコンティは、主演のお稚児さん、H・バーガーを役者として大成させるために作ったってぇんだから、侯爵さまのなさることはスケールが違う。彼のドイツ三部作(「地獄に堕ちた勇者ども」「ベニスに死す」)の終幕を飾る作品で、その死後、本作の回想形式をとらない完全版(220分余)がM・マストロヤンニの弟ルッジェロの編集によって作られた。(映画データベース – allcinema より)

  • 映画『リンカーン』 リーダーの孤独と資質を描いたスピルバーグの最高傑作!

    映画『リンカーン』 リーダーの孤独と資質を描いたスピルバーグの最高傑作!

    映画『リンカーン』

    LINCOLN 150分 アメリカ 2012年

    リンカーン

    世界を変えた英雄の<28日間>の物語―

    2013年に映画館で観た映画の中で圧倒的なNo.1でした

    監督はスティーヴン・スピルバーグです、私が周りの人に勧めたら、早速見に行ってくれた人がいましたが、その人の感想は「退屈」でした、確かにスピルバーグ監督作品なのに戦闘シーンもほとんどなく、議会での会話のやり取りばかりです。

    スピルバーグ監督と言えば、今も『JAWS/ジョーズ』を一番の作品に挙げる人もいますし、もちろん大ヒット作『E.T.』も有りますし、その他にも好きな作品がたくさんあります。
    いずれ、監督としてここで取り上げたいと思います。

    スピルバーグ監督の最新作『 ブリッジ・オブ・スパイ』が公開中(2016年1月9日から)です。

    スピルバーグ監督からのアメリカへのメッセージ

    スピルバーグがリンカーン大統領を描くと言えば「人類の平等を訴えた博愛主義的な作品」と思いきや良い意味で予想を裏切ってくれた。
    それは今のアメリカへのスピルバーグ監督からのメッセージだったと思う。

    アメリカには、三権分立の上に成り立つ民主主義が存在する国家、それを成り立たせているのは、国民から選ばれた議員の信条と誠実さの上に成り立っている。
    大統領は行政の長であり、議会に立つことは出来ない、だからこそ大統領としての発する言葉に魂が有る。
    リンカーンが喩え話が好きな人物とは初めて知ったが、政治家の資質である言葉を大切にする事を丁寧に描いている、時にはそれが冗長に感じるのだが。

    人類における正義とは何か!それを成り立たせる仕組みがアメリカには有る、それがアメリカの尊厳で有ると訴えかけてくる。
    史実がそうだったのか?スピルバーグの演出なのかは、私の知識では知るよしも無いのだけど、奴隷解放の議決は、一人ずつ名前を呼ばれて賛否を回答する。
    これはアメリカだけでは無く日本の政治家にも心して欲しいが、後世に政治家が成したことは名前とともに残る。

    当時の政治家は、黒人の男性に参政権を与えると、ゆくゆくは女性にも参政権を与えることになる、そんな事は有り得ないとまで言う。
    今、アメリカでは民主主義の根幹が試されている。
    国民の多数が望んでいる、国民皆保険や銃規制が、党利党略・企業のロビィ活動によって否決されている。
    民主主義の崩壊こそが、アメリカの崩壊なのだから。
    そんな切実なメッセージがスピルバーグから届いたような気がした。

    ダニエル・デイ=ルイスの静かな佇まいと共に、力強さがリンカーンの信念の強さを見事に表現していた。
    ここに政治家に必要な資質を映し出しているようなだった。
    そしてその「言葉」=演説の一つ一つが心に焼き付いた・・・

    面白かったのは、意外と当時は大統領の警護と言うのがほとんど無い。
    リンカーンも気軽に人の家を訪問したりしている。
    まぁ~リンカーンが暗殺されたから、その後は警護ともしっかりするようになったのかもしれない。

    何に感動したのか?聞かれたので、こう答えた。
    政治の世界で、高い目標を達成するために汚いことでも率先して行う姿、だからこその理想の神々しさが有ると。
    そして、その高みに上がるためには孤独がつきまとう、大統領というトップに立つものの孤独の姿をダニエル・デイ=ルイスが見事に演じていた。
    これは、大統領だけではなくても、会社のトップや映画製作のトップに立つ者、何にでもその孤独と日々の積み重ね、それを達成するための高い目標と理想、これが必要だと気づかせてくれる作品。

    リンカーン

    私的『リンカーン』

    テーマが有るか?共感できるか?

    日本ではなかなか理解されづらい部分はあるが、民主主義とは何か?と言う大きなテーマ。
    そしてリーダーの資質とは何か?そこにある孤独に立ち向かうリンカーンを描くことは、真リーダー像が見えてきて心が震える。

    作り手の強い意思を感じるか?

    スピルバーグ監督は、あきらかにオバマ政権への応援歌としてリンカーンを描いた節がある。
    そこには民主主義への危機感があったんだと僕は感じました。
    スピルバーグ監督はメッセージ性の強い作品が意外と多い監督だと判る。

    俳優の意思や演技力が伝わるか?

    ダニエル・デイ=ルイスの演技が圧巻!リーダー像を見事に演じきっていた。
    もちろんリンカーンの実像を知る訳ではないが、魂を感じる演技だった。

    映画らしい楽しさが備わっているか?

    議会の駆け引きが中心の人間ドラマ、それでもリアリティにこだわった映像、強いメッセージ性を感じる作品。

    エンターテイメント性

    個人的には地味とは思わない、人と人との駆け引きが面白い。
    そしてアメリカの民主主義がこれほど解りやすい形で描かれた作品は無かった。

    演出が素晴らしいか?

    スピルバーグ監督はどの作品でもその演出に隙はない。
    このあたりは、クリント・イーストウッド監督など、ベテランの域の仕事だと思う。
    なんと言っても俳優たちの素晴らしい演技を引き出している。

    脚本が素晴らしいか?

    雄弁さと背中から感じさせる部分、脚本と演出の素晴らしさが光る。
    リンカーンの有名な演説「人民の人民による・・・」は出て来ない、それでもリンカーンの話す言葉にメッセージを感じる。

    何度も見たくなるか?

    感動的な物語、リーダーとしての志・姿勢を確認する意味でも、時折に観たい作品。

    映画『リンカーン』のデータ

    リンカーン

    監督■スティーヴン・スピルバーグ
    製作■スティーヴン・スピルバーグ/キャスリーン・ケネディ
    製作総指揮■ダニエル・ルピ/ジェフ・スコール/ジョナサン・キング
    原作■ドリス・カーンズ・グッドウィン 『リンカーン』(中央公論新社刊)
    脚本■トニー・クシュナー
    撮影■ヤヌス・カミンスキー
    プロダクションデザイン■リック・カーター
    衣装デザイン■ジョアンナ・ジョンストン
    編集■マイケル・カーン
    音楽■ジョン・ウィリアムズ
    出演■ダニエル・デイ=ルイス/サリー・フィールド/デヴィッド・ストラザーン/ジョセフ・ゴードン=レヴィット―/ジェームズ・スペイダー/ハル・ホルブルック/トミー・リー・ジョーンズ

    ■アカデミー賞 2012年
    主演男優賞 ダニエル・デイ=ルイス
    美術賞 リック・カーター
    ■全米批評家協会賞 2012年
    主演男優賞 ダニエル・デイ=ルイス
    脚本賞 トニー・クシュナー
    ■NY批評家協会賞 2012年
    男優賞 ダニエル・デイ=ルイス
    助演女優賞 サリー・フィールド
    脚本賞 トニー・クシュナー
    ■ゴールデン・グローブ 2012年
    男優賞(ドラマ) ダニエル・デイ=ルイス
    ■英国アカデミー賞 2012年
    主演男優賞 ダニエル・デイ=ルイス
    ■放送映画批評家協会賞 2012年
    主演男優賞 ダニエル・デイ=ルイス
    脚色賞 トニー・クシュナー
    音楽賞 ジョン・ウィリアムズ

    映画『リンカーン』 ダニエル・デイ=ルイス,スティーヴン・スピルバーグ(監督、製作)

    映画「リンカーン」オフィシャルサイト

    【解説】
     「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」の巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が、“アメリカ史上最も愛された大統領”エイブラハム・リンカーンの偉大な足跡を映画化した感動の伝記ドラマ。
    国が大きく分断された過酷な状況において、リンカーンはいかにして奴隷解放という大いなる目的を達成するに至ったのか、その知られざる政治の舞台裏を、理想のリーダー像という視点から丁寧に描き出していく。
    主演は本作の演技で「マイ・レフトフット」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」に続いて、みごと3度目のアカデミー主演男優賞に輝いた名優ダニエル・デイ=ルイス。
    共演はサリー・フィールド、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、トミー・リー・ジョーンズ。
     南北戦争末期。国を二分した激しい戦いは既に4年目に入り、戦況は北軍に傾きつつあったが、いまだ多くの若者の血が流れ続けていた。
    再選を果たし、任期2期目を迎えた大統領エイブラハム・リンカーンは、奴隷制度の撤廃を定めた合衆国憲法修正第13条の成立に向け、いよいよ本格的な多数派工作に乗り出す。
    しかし修正案の成立にこだわれば、戦争の終結は先延ばししなければならなくなってしまう。
    一方家庭でも、子どもの死などで心に傷を抱える妻メアリーとの口論は絶えず、正義感あふれる長男ロバートの北軍入隊を、自らの願いとは裏腹に黙って見届けることしかできない歯がゆさにも苦悩を深めていく。そんな中、あらゆる手を尽くして反対派議員の切り崩しに奔走するリンカーンだったが…。(映画データベース –allcinema より)