カテゴリー: 映画タイトルな行

映画タイトルな行

  • 映画『永い言い訳』  妻が死んでも泣けないアラフィフ男の本音と建前

    映画『永い言い訳』 妻が死んでも泣けないアラフィフ男の本音と建前

    映画『永い言い訳』

    永い言い訳

    妻が死んだ。
    これっぽっちも泣けなかった。
    そこから愛しはじめた。

    永い言い訳 — Amazonで見る

    イントロダクション

    妻を亡くした男と、母を亡くした子供たち。
    その不思議な出会いから、
    「あたらしい家族」の物語が動きはじめる。

    『おくりびと』以来7年ぶりに主人公・幸夫を演じるのは、『日本のいちばん長い日』で昭和天皇役が高評価だった本木雅弘。
    今回はタレント小説家を見事に演じてみせた、時にはチャーミングで時には憎々しく。
    主人公・幸夫の亡くなった妻と共に死んだ親友の夫・陽一にはミュージシャンの竹原ピストルを抜擢。
    幸夫の妻には深津絵里、幸夫の愛人役には黒木華、さらに池松壮亮、山田真歩などが共演。

    原作・脚本・監督は『ゆれる』『ディア・ドクター』『夢売るふたり』とオリジナル脚本で勝負し、本作の原作では直木賞候補となった西川美和監督。

    永い言い訳

    アラフィフ男の本音と建前が交差する

    有名作家の妻が死んだ、その時、その夫は若い女性と不倫をしていた。

    西川美和監督の最新作、映画『ゆれる』が衝撃的で、『ディア・ドクター』も本当に好きで、次はどんな作品を見せてくれるのだろうか?と期待していた。
    その西川監督が、それまでは完璧なものが壊れていって、そこに隠されていた人間の本性が露わとなる怖さが詰まっていたが、この作品では西川監督本人がインタビューで「その後を描いている」と言うように、壊れてしまった夫婦関係が妻の「死によって再生」していく、という物語。

    西川監督は、この作品を作るにあたってそのアイディアを、3.11の震災を目の前にした時に、死に別れた家族や友人とどういう別れ方をしたか?それを描きたかったとも言っている。
    そこには人それぞれの別れがあった筈、朝食を食べながら喧嘩してそのまま別れた家族もいるかもしれない、口も聞かずに出かけた子供との別れが有ったかもしれない、人の死はある日突然訪れる。

    無名の作家時代を支えてくれた妻、いつの間にか妻がいるのが当たり前になり、作家として有名になり、お金もあり女性も近づいてくる。
    50も近づき、自分の才能も枯渇してきてるのかもしれない、実は何も思い通りにならない自分がそこにはいる。
    その隙間を埋めるために、若い女性と身体を重ねる主人公、そんなタイミングに妻が事故死する。
    主人公の本音は「自分は何も悪くないのに、妻が死んでしまった」と言う思い。

    周りからは「大変でしたね」と言われ、それを演じなくてはと思う主人公。
    彼は、他人(妻の親友)の子供たちの世話を始める、子供たちとのやり取りが微笑ましく、またその子供たちが可愛い、特に可笑しく苦労もする、幸夫は自然に癒やされていき世間の喧騒から一時離れることができる、が、自分の子持ちのマネージャー(池松壮亮)から
    「子育ては男の免罪符ですから。自分がイヤな、ダメなヤツってことを帳消しにしてくれる逃げ場ですから」
    と言われてしまう。

    主人公の本音は「自分が好き」で誰も愛したことがない。

    永い言い訳

    失った愛を取り戻す

    作家を諦めかけていた時に、自分を励まし、金銭的にも支えてくれた妻。
    でも実際には、自分が有名になったことで少しずつ、彼女に対する思いが変わっていく。

    実際、何が変わったと言う訳ではなく、そこは時間が過ぎていくと言うことなんだと思う。

    妻の死によって失った愛、そして愛人からも捨てられていく。
    子供と接するうちに、妻の死にいつまでもグズグズと泣き崩れる男と接するうちに、自分は誰かを本当に愛せていたのだろうか?と感じ始める。
    そして、愛を取り戻す、寸前でいつも主人公の手からこぼれ落ちていく。

    ラスト、妻の写った写真を見て本当の妻の気持ちを知ることで、主人公は一歩、再生へと歩み始める。

    夫婦ってなに?愛ってなに?そんなことを思い始めた人には考えさせる何かがここにあります、今年一番のオススメ作品。
    渇いた心を少し癒やしてくれる映画、それってやっぱり貴重だと思う。

    永い言い訳

    私的『永い言い訳』ネタバレあり

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    不倫に対する見る人のスタンスで、この作品の解釈が変わってくると思う。

    不倫は絶対に駄目!と思っている人にとっては、主人公が情けなく、赦せない存在で、ラストに妻の本心を知って愛に向かって一歩歩み始める姿に映る。

    夫婦の愛がなくなったとしても、世間体や面倒くさいと言うことで別れずに不倫に走る男、それってあるよね、と思ってしまった人にとっては、「こんな俺でも妻は俺のことを愛してくれてたんだ」と思い、自己中心的な自分愛に自信を取り戻す。

    不倫が良いと言う訳ではないが、私は後者だと思ってこの作品を見た。
    “長い”ではなく“永い”と言う死ぬまで自分のことを言い訳し続ける主人公。

    それはある意味、アラフィフになり、自分の実力の限界も判り、人生と夢とのギャップで自分が何者にもなれなかったことに気付き始める、その心の隙間を埋めるのは「自分を愛する」ことかもしれない、そんな風に感じる。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    西川美和監督が、自ら原作本を書き、それを脚本・演出した作品。
    図らずも、今年、西川監督の師匠・是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』も、アラフィフ男の情けなさを描いていて、主人公が同じ作家でもある、そして子供も出てくる点も共通している。

    それまで問題提起をしてきた西川監督が、一歩踏み出して、その人間の本質に右往左往する人々を描いたところに、そして今のアラフィフの姿を描いていた点がとても良かった。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    この作品の番宣で、久々によく本木雅弘がテレビに出ていたが、過去作品より彼本人に近いのでは?感じさせる。
    もちろん彼が実生活で不倫をしてるっぽいとかではなく、どこか飄々としていて、どこかに熱いものを持っていて、そんな感じが主人公とダブる、だからこそなのか、情けなさが板についてるし、そして納得させられる。
    本木雅弘自身が「幸夫の方が(僕より)清いんですよ」と言ってるところが面白い。

    竹原ピストルの妻の死に、いつまでも泣いているトラック野郎と言う役どころが良かった、演技が新鮮で良かった点と、世間で持てはやされたビッグダディと似ているところを感じて、素直な人間性っぽい気もするが、本当は人生(この作品では子育て)から逃げている男の姿が、また良かった。

    深津絵里が登場するシーンは少ないがその美しさが素晴らしい、そしてやはり写真での登場の存在が凄い。
    二人の子供たちも掘り出しもの。
    池松壮亮は、いつもこんな斜に構えた、妙に説得力がある、そしてズルい感じの男が似合ってしまう。

    黒木華が、初めて?濡れ場に挑戦、昭和顔と本人が言っていたが、岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』から少しずつ変わってきて、この作品では色っぽかった!新しい発見であり、彼女はどこまで色んな顔を見せてくれるのか、本当に楽しみな女優。

    永い言い訳

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    今回、16ミリフィルムでの撮影と言うちょっと特殊な画作りをしている。
    ずっとボヤッとしたザラツイた映像が続く。
    きっと、自分を愛してやまない主人公の行き先の判らない人生そのもの、ボヤッとしたものとリンクしている。

    今回、子役を上手く使いつつ、親の本音、子供の本音が垣間見える。
    「子供なんかいなかったら・・・」と、でも一方で本当に子供を愛している、矛盾・・・やっぱりこれは映画で表現するべきことだと思う。

    ⑤ エンターテインメント性

    冒頭の妻の死、以外に何も取り立てて事件はない、それでも、人の本性がそこかしこに垣間見え、そして赦しが差し込まれていく。
    なにも事件はないのに、複雑に話が絡み合い、そして物語は起伏を持ってラストに続く。

    最大のサスペンスは「自分は妻に愛されていたのだろうか?」と自分勝手な男の謎解きが縦軸にしっかり柱がある。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    是枝監督に師事して、ということで非常に演出が似ている。
    そして、西川監督の好きな作品の影響も大きいと思う。

    説明的なセリフやシーン(キャラクターの動作)をできるだけ排した画作りをしてくる。
    タクシーの鏡で髪型を直すところは象徴的。

    今回は、是枝監督並に子供も演出できることが判った(笑)

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    原作・脚本と監督が一緒、完全なオリジナルと言うこと。

    縦に一本「愛される自分」があって、妻を失った家族や愛人、出版社に振り回されながら、本音を撒き散らす主人公の姿が滑稽でもあり、真実でもある。
    女性がこれだけ男の本音の部分を描けるのか?そんなに冷静に男を見てるのか?とちょっと西川監督の頭の中を覗いてみたくなる。

    ⑧何度も見たくなるか?

    2016年も残り数ヶ月、日本のアラフィフ男性は疲れ果てている、そんな作品が数多く出てきたが、一番、男の本音が表現されていて面白かった。
    そこに家族や妻への愛、と言うものを考えさせるものがあった。
    映画としての完成度やストーリーの面白さ、今の自分を見つめ直す機会に見たい作品。

    映画『永い言い訳』のデータ

    永い言い訳

    原作・脚本・監督■西川美和
    撮影■山崎裕
    出演■本木雅弘/竹原ピストル/藤田健心/白鳥玉季/堀内敬子/池松壮亮/黒木華/山田真歩/深津絵里
    公開日■2016年10月14日

    永い言い訳 Blu-ray — Amazonで見る

    公式サイトはこちら

    【ストーリー】
    人気作家の津村啓こと衣笠幸夫(きぬがささちお)は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。
    その時不倫相手と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。

    そんなある日、妻の親友の遺族―トラック運転手の夫・陽一とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い彼らの世話を買って出る。
    保育園に通う灯(あかり)と、妹の世話のため中学受験を諦めようとしていた兄の真平。
    子どもを持たない幸夫は、誰かのために生きる幸せを初めて知り、虚しかった毎日が輝き出すのだが・・・
    (C) 2016 「永い言い訳」製作委員会 PG-12

  • 映画『何者』  ウザいな、二階堂ふみ!就職戦線はゾンビだらけのホラー映画?

    映画『何者』 ウザいな、二階堂ふみ!就職戦線はゾンビだらけのホラー映画?

    映画『何者』

    何者

    恋愛、友情、就活、裏切り。
    これが僕たちのリアル。

    イントロダクション

    原作は映画『桐島、部活やめるってよ』で大ヒットを飛ばし、平成生まれの作家として初めて直木賞を受賞した朝井リョウのベストセラー「何者」(新潮社)。
    就活活動を通して自分が「何者か?」を模索する5人の大学生たちの青春物語。

    お互いを励まし合いながらも、SNSで表と裏の顔を使い分ける今時の彼ら、“痛いほど圧倒的な現代のリアル”が詰まった問題作を映画化。
    監督・脚本は、演劇界の若き鬼才・三浦大輔。
    演劇ユニット「ポツドール」主宰者として数々の話題作を上演している、映画では『愛の渦』が近年話題になっている。

    主人公・拓人を演じるのは人気絶頂の実力派の若手・佐藤健。
    競演にも、今、旬の若手俳優達、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之といった実力派が並ぶ。

    これから就活を始める人、就職で苦労した人、必見の就活青春エンターテイメント!

    何者

    今の就職戦線とSNSは切り離せない

    2chとかを普通に使っている自分にとっては「なりすまし」や「ネカマ」とか「裏アカウント」とかは普通なので、結構“あるある”感の方が大きくって、2chでの潰し合いを知ってるから、Twitterでの裏の顔も楽しく見れた。

    それにしても、カッコイイよなぁ~映画自体が、作りが洗練されている。。
    これから就職を控える大学生・若者は絶対見ておいた方が面白いし、就職活動を終えたばかりの新人サラリーマンとかは、やっぱり「あるある」だと思う。
    実際、オジサン(私)の周りを埋め尽くした若者からは上映後「ああいう奴、いるよなぁ~」「ウザいな、二階堂ふみ」とか声が聞こえてきた。

    そして、中田ヤスタカ×米津玄師の音楽が最高な訳だし。

    そしてここで語られるのが、SNSの怖さ、就職によって自分が「何者」かを試される、そしてふるいにかけられていく残酷な体験をする。
    本音と建前、お前らゾンビだろ~と言うくらいSNSにはびこっている、こんなヤツらいるよなぁ~意識高い系からそれを裏で悪口を書きまくるヤツと、どんどん怖くなってくる。

    若者にとっては「こんなヤツ周りにいたよ」とか、就職ってこんなもんなんだ~疑似体験できる楽しさ?怖さがある。
    通り過ぎてきた、オジサンを含めた上の世代は、自分の子供たちがこういうところに突っ込んで行く、という大変さが本当に判る、本音を言わない建前のSNS社会でどうやって上手く生きていくか。
    まっ、facebookも、気持ち悪いくらいポジティブなことしか書かないのってどうなの?あっ!(笑)

    就職活動で苦労した人間には”共感ハンパねぇ~”楽しいエンターテイメント。

    私的『何者』ネタバレあり

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    当たり前だけど、大人になる人のほとんどの人が就職活動をする。
    そこで否応なく自分が「何者」かを相手に伝える必要がある、それは本音が伝わる場合もあれば、建前で乗り切れるヤツもいる。
    就職って意外と運だったりするし、甘い青春の終わりの始まりだったりと。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    原作者の朝井リョウがその世代そのものと言うのもあるんだろうけど、『桐島、部活やめるってよ』同様になんかイタイところがそこかしこに出てくる。
    「学生時代にはこんなことに打ち込んでいました!」「友達が沢山いて人脈作りをしてきました!」「慈善活動でこんなに充実してました!」と言ったアピール。

    もう就活から社会の仕組みの競争という歯車に組み込まれていく姿が見事に表現されている。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    佐藤健演じる主人公の冷静に分析しながら裏の顔を・・・と言うのは怖い反面、なんか一番あるなぁ~と。
    それにしても、みんながハマっていて。
    一番好きなことやって、就職に無関心なヤツ=菅田将暉演じるバンドマンが一番最初に内定もらったりと。

    女性二人が対照的で面白い、二階堂ふみは真面目て意識高い系だけど、チラッと胸元を見せながらも、彼氏を紹介してしまう嫌な女・・・

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    顔が出てこない演劇に熱中している主人公の親友が出てくる、あらゆるところで舞台のシーンが出て来る。
    後半の物語の進行と、舞台が混じり合うところが面白いし「まさか!?」と思わせるところがある。

    それと、就職を「横並び」で表現するところが度々出てきて、そうそう学生時代まではなんでも横並びになったなぁ~と思ったりして。

    何者

    ⑤ エンターテインメント性

    ネタバレ!

    で、書くと、この映画は実は映画の予告が「騙し絵」になっている。
    ほぼ、重要なシーンが予告に流れてるのに、予告を見ると絶対見た人は誤解する。

    でも、それとは違う方向性に走っていく面白さは有った、それと上手に伏線が張っていて最後一気にまきとっているところが鮮やか。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    ラストのどんでん返しに向かって、結構、演出の罠がある、まぁ~フィクションだから許して、と言う感じで。
    なんとなく、就職活動経験者(30年前だけど)には「あれ?」と感じさせる。
    そのくらい上手く仕込んでいるので、これは見て騙されるか、何となく気付くか、楽しめる。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    原作は主人公の一人称らしいけど、それが今回はそれぞれの視点で語られていくから、その点で人の表と裏がジワーっと出てきて面白い。
    それと、舞台との融合がちょっと面白い雰囲気がある。

    でも・・・ネタバレ・その2

    どんでん返しが、てっきり「この物語は全部舞台で、舞台に熱中しているイタイやつ」と主人公・拓人が同一人物、くらいの意外性を期待していた~
    人生って就職だけじゃないだろ~くらいの原作にないどんでん返しを入れても良かったのでは?と。

    何者

    ⑧何度も見たくなるか?

    テンポが良くて、音楽と俳優の競演と言う感じでセンスが抜群、ノリの良さで見れる作品。
    一方で、朝井リョウ原作と言うこともあり、今の若者、現代と言うものを意外な切り口で見せてくれる。

    私の世代は、金子修介監督、織田裕二主演の『就職戦線異状なし』(1991年)が懐かしい。

    映画『何者』のデータ

    何者

    原作■朝井リョウ(『何者』新潮文庫刊)
    監督・脚本■三浦大輔
    音楽■中田ヤスタカ
    主題歌■「NANIMONO(feat.米津玄師)」中田ヤスタカ(ワーナーミュージック・ジャパン)
    企画・プロデュース■川村元気
    出演■佐藤健/有村架純/二階堂ふみ/菅田将暉/岡田将生/山田孝之
    公開日■2016年10月15日
    公開情報■全国東宝系にてロードショー

    映画『何者』

    【ストーリー】
    就職活動の情報交換のために集まった、5人の22歳。

    企業に入れば特別な「何者」かになれるのか、そして自分は「何者」になりたいのか。
    それぞれが疑問を抱えながら、就活に立ち向かっていた。

    かつて演劇サークルで脚本を書いていた、人を分析するのが得意な拓人(佐藤健)。
    天真爛漫で何も考えていないようで、着実に内定に近づいていく光太郎(菅田将暉)。
    光太郎の元カノで、拓人が思いを寄せ続ける、実直な性格の瑞月(有村架純)。
    「意識高い系」でありながら、結果が出ず不安を募らせていく理香(二階堂ふみ)。
    社会の決めたルールには乗らないと宣言しながらも、焦りを隠せない隆良(岡田将生)。
    そんな5人を先輩として見守る、大学院生のサワ先輩(山田孝之)。

    力を合わせて就活を進める中、5人はそれぞれの思いや悩みをツイートするが、それはあくまで表の顔。内定が決まらない中、お互いの就活へのスタンスや取り組み方の違いに嫌悪感を抱き、人間関係に歪みが生じ始める。やがて「内定者」が現れたとき、そこで見えてきたのは、これまで隠されてきた裏の顔だった――。
    (C)2016映画「何者」製作委員会 
    (C)2012 朝井リョウ/新潮社

  • 映画『日本のいちばん長い日』 終戦記念日に思うこと

    映画『日本のいちばん長い日』 終戦記念日に思うこと

    映画『日本のいちばん長い日』 THE EMPEROR IN AUGUST

    the-emperor-in-august01

    永遠の戦後のために

    2016年8月8日に天皇陛下が「象徴としてのお務めについての天皇陛下お言葉」を発せられました。(映像とお言葉があります)
    そして71回目の終戦記念日を迎えました。

    昨年は戦後70年と言うことで今作品が公開されたり、NHKザ・プレミアム戦後70年ドキュメンタリー・ドラマ「玉音放送を作った男たち」が放送されました。
    日本の玉音放送に関しては、NHKの戦時録音資料として「昭和天皇、終戦の玉音放送」として聞けます。(お言葉があります)

    何故、冒頭に生前退位のことを書いたか・・・
    今の日本は無宗教と言う人がほとんどで、正月にはお宮参り(神道)をして葬式にはお坊さんを呼ぶ(仏教)と言うことが日常にある。
    おそらく日本にとっては天皇の存在こそが宗教だったのでは?と考えている。
    もちろん大東亜戦争が終わるまでは天皇は“神”だったわけなので。
    昭和天皇は、終戦直後、マッカーサー元帥と十数回に渡って会談をして、その後の日本の方向を決めたと言う事実を知ると、戦後70年が経って改めて昭和天皇について知ることは重要なこと、天皇制について考える必要性を思う。
    人としての天皇、象徴としての天皇なら、退位と言うことも当然考えるべきとは思う。

    the-emperor-in-august02

    昭和と平成

    戦後20年が経って描かれた岡本喜八監督版は作り手は戦中派である、この作品に対して矜持を持って挑んだと思う。
    それは俳優の演技からも伝わってくる、岡本喜八監督が過度なまでに求めたものだと思う。
    あの戦争は何だったのか?そして止めることが何を意味したのか、神としての天皇を知る世代が国体とは何だったのか?それを描くことに昭和40年代には必然が有った。

    一方、戦後70年経って描かれた原田眞人監督版は監督を含め作りては戦後派である、見ている私も戦争を体験したことのない世代。
    だからこそ、岡本喜八監督版のような戦争を生きた人々の群像劇ではなく、昭和天皇、阿南陸軍大臣と鈴木貫太郎首相の三人を中心に物語を進めている。
    おそらく国体維持と言う実感の有る世代とない世代の違いではないかと思う。

    2006年にはロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督が『太陽』で、2012年にはアメリカのピーター・ウェーバー監督が『終戦のエンペラー』で昭和天皇を描いている。
    そして岡本喜八監督版では後ろ姿とお言葉だけでしか描かれなかった昭和天皇が、原田眞人監督版では、本木雅弘演じる昭和天皇が積極的に終戦へ向けて意志を示している。
    実際の皇室の研究をしている訳ではないので、本当のところは知らないが、戦後のマッカーサー元帥との会談の多さから考えて、終戦に対して昭和天皇がハッキリとした意志を示されたことは想像に難くない。

    the-emperor-in-august03

    日本は敗戦から目を逸らしてはいけない、それは70年以上経った今でも、決して自虐的歴史観とは思わない。
    戦争に負けると言うことは20世紀以前においては、敗者は虐殺か自殺で終わるもの。
    天皇を殺させないためにポツダム宣言受諾した訳で、東京裁判もあった訳で、それを否定したら天皇制の存続も否定することになるのではないのかな?と思うのだが。
    昭和天皇も、今上天皇も、この点はちゃんとした歴史認識を持たれていて、靖国参拝などということは行わない。
    それは『永遠の0』にも書いた「重たいジレンマ」が有り、日本国民全体が背負っていくものだと思う。
    岡本喜八監督版では、反戦映画として体験としての終戦を描いた点で優れたものを感じ、一方で原田眞人監督版では玉音放送と共に生き残った日本人が重い十字架を背負っていくことの覚悟を感じることができた点で、平成にこの作品を作ったことの意味を感じた。

    そして今上天皇の生前退位へのお言葉は、象徴天皇としての戦後、昭和天皇から引き続いて背負い続けているものの重さを感じずにはいられない。
    365日24時間、天皇でいることを求められる、日本で最も有名な?公人でいることを求められる大変さを考えると、その荷を早く引き継ぐことも必要なのではないか?と思うのは変だろうか。

    the-emperor-in-august04

    2016年5月27日午後6時6分、アメリカ・オバマ大統領が広島でスピーチをしました。

    オバマ大統領が広島で演説

    2016hiroshima

    広島は「謝罪を求めない」ことで実現したアメリカの大統領の被爆地・広島訪問。
    戦争に負けた日本が戦勝国に謝罪を求めること自体が、自分たちの背負う責任を放棄することになる訳で、その一線を超えなかったことで、今回の歴史的訪問が実現した。
    今年は、戦後の一つの区切りになるのかもしれない、現在の日本国憲法がどちらの方に向かっていくのか、日本はどこに向かうのか?
    『シン・ゴジラ』にも有った既に機能しない日本の政治と官僚制度、それと共に沈んでいく国・日本、果たして日本がゴジラと言う国難に対して一致団結して叡智を尽くして乗り切ったように、日本は未来に向って新たに向かっていくのだろうか?

    改めて終戦に向けて、この日に何が有ったのか?それを知ることは今の日本を理解する上で必要なことだと思う。

    映画『日本のいちばん長い日』のデータ

    1967年版

    日本のいちばん長い日 東宝DVD名作セレクション — Amazonで見る

    上映時間■157分
    製作国■日本
    公開情報■劇場公開(東宝)
    初公開年月■1967/08/03
    監督■岡本喜八
    原作■大宅壮一「日本のいちばん長い日」
    脚本■橋本忍
    ナレーション■仲代達矢
    出演■宮口精二(東郷外相)/戸浦六宏(松本外務次官)/笠智衆(鈴木総理)/山村聡 (米内海相)/三船敏郎(阿南陸相)/志村喬(下村情報局総裁)/黒沢年男(畑中少佐)/松本幸四郎(今上天皇)

    2015年版

    日本のいちばん長い日 豪華版(3枚組) Blu-ray — Amazonで見る

    降伏か、本土決戦か――。
    その決断に、
    すべての希望は託された

    上映時間■136分
    製作国■日本
    公開情報■劇場公開(松竹=アスミック・エース)
    初公開年月■2015/08/08
    監督■原田眞人
    原作■半藤一利「日本のいちばん長い日 決定版」(文春文庫刊)
    脚本■原田眞人
    出演■役所広司(阿南惟幾)/本木雅弘(昭和天皇)/松坂桃李(畑中健二)/堤真一(迫水久常)/山崎努(鈴木貫太郎)

    オフィシャルサイトはこちら

  • 映画『夏の嵐』 ヴィスコンティの耽美趣味が見え始める

    映画『夏の嵐』 ヴィスコンティの耽美趣味が見え始める

    映画『夏の嵐』 SENSO


    senso

    ルキノ・ヴィスコンティの生涯についてはこちらから

    ルキノ・ヴィスコンティ -作品と演出- はこちら

    ヴィスコンティの見事なまでなメロドラマ

    1999年に渋谷BUNKAMURAル・シネマで観ることが出来た、この時はフランス語版。
    観終わって、なんて幸せなんだろう!と思わずにはいられなかった。
    物語は決して幸福な話ではない、むしろ悲劇的な最後に終わる。
    それでも、心の中はある種の幸せで満たされてしまう作品なのだ。

    この作品に対して、ヴィスコンティは2つのテーマを持って取り組んだらしい。
    一つはイタリアの解放戦争を舞台にした政治的なドラマ。
    もう一つは、男女の情愛を描いたメロドラマ。
    ヴィスコンティの意志は、もっと政治的なドラマに作りたかったらしいが、ラスト・シーンを含め、検閲等の問題で思い通りには撮れなかったらしい。
    その点を踏まえても、この作品は素晴らしいの一言に尽きる。

    映画が始まって、延々とオペラのシーンが映し出されるが、そのオペラ自体も素晴らしいのだが、それを背景としてドラマを進めていく凄さ。
    オペラはイタリアのある種、文化の象徴であり、その劇場で独立派がビラを巻くシーン、それはイタリア独立の雄叫びのようでもある、と併行にアリダ・ヴァリ演じる伯爵夫人リヴィアの立場と、そしてファーリー・グレンジャー演じるオーストラリア将校マーラー中尉との出会いが描かれる。
    やはり、ヴィスコンティの作品は、人物なのである。
    オペラやその劇場のセット、後のイタリアの田園風景、ヴェネチアの街並み、それらが素晴らしいにも関わらず、全てを背景に収め、人間ドラマとしての物語を描く上手さはヴィスコンティならではで有る。

    senso

    次第に、ヴァリとグレンジャーの不倫の愛が燃え上がる。
    ヴァリは無垢な愛を感じさせ、グレンジャーの愛には、どこか打算を感じさせる。
    しかし、ヴァリにしてもグレンジャーにしても、無垢なようで激しく、打算的なようで溺れていく、そんな愛の両面を描いていく。
    そう、愛とは不倫であろうがなかろうが、決して単純なものではないのだ。
    ヴァリ演じる伯爵夫人リヴィアは、イタリア解放への理想が愛の前で崩れ去り、自ら持つ誇りを失っていく。
    まるでイタリアが不遇の時代から、独立へと希望に満ちあふれていくのとは正反対のように。

    グレンジャー演じるマーラー中尉も、イタリアを支配する側のオーストリアのエリート将校でありながら、愛に溺れ、また打算に溺れ、彼もまた自分の誇りを失っていく。
    愛のためには全てを犠牲にした二人、その事によって二人は破滅へと向かっていく。

    ラストのグレンジャーがヴァリを罵倒するシーンの醜さ、自分の愛を見失い、全てを失い怒り狂って愛人(グレンジャー)を死に追いやるヴァリの恐ろしさ、愛の深さと繊細さが伝わってくる。
    ヴァリは無垢な女性から、徐々に情念的な女性へと、そして最後は恐ろしい女に変貌していく様を見事なまでに演じきる。
    この演技は、ヴァリの一世一代の演技と思わせる。
    グレンジャーの優男ぶりと繊細さも光る。

    ヴィスコンティは、この見事なまでのメロドラマ、人間のドラマを、奥行きのある深い映像と音楽で包みながら、あくまで人を魅せる事に集中している。
    人間、愛の脆さ、危うさを描きながらも、それを観る私の心は満たされていく...

    senso

     

    映画『夏の嵐』のデータ

    夏の嵐 DVD — Amazonで見る

    SENSO/LIVIA WANTON CONTESSA 126分 1954年 イタリア

    監督■ルキノ・ヴィスコンティ
    製作■ドメニコ・フォルジェス・ダヴァンツァーティ
    原作■カミッロ・ボイト 『官能』
    脚本■スーゾ・チェッキ・ダミーコ/ルキノ・ヴィスコンティ
    脚本協力■カルロ・アリアネッロ/ジョルジョ・バッサーニ/ジョルジョ・プロスペーリ
    英語台詞■テネシー・ウィリアムズ/ポール・ボウルズ
    撮影■G・R・アルド/ロバート・クラスカー
    音楽■アントン・ブルックナー 『交響曲七番』/ジュゼッペ・ヴェルディ 『イル・トロヴァトーレ』
    音楽指揮■フランコ・フェルラーラ
    音楽演奏■RAI・TVオーケストラ
    編集■マリオ・セランドレイ
    美術■オッタヴィオ・スコッティ/ジーノ・ブロージョ
    衣装■マルチェル・エスコフィエール/ピエロ・トージ
    助監督■フランチェスコ・ロージ/フランコ・ゼッフィレッリ
    製作会社■ルックス・フィルム
    備考■テクニカラー
    日本公開■1955年
    出演■アリダ・ヴァリ/ファーリー・グレンジャー/マッシモ・ジロッティ/ハインツ・ムーク/リナ・モレッリ/クリスチャン・マルカン/マルチェッラ・マリアーニ/トーニオ・セルヴァルト/セルジョ・ファントーニ

    【解説】
     だって原題が「官能」(19世紀末のカミッロ・ボイトの短編小説が原作)だもの、もう、その通り。オペラ座の舞台から始まる、この絢爛たる恋の絵巻は、後期のヴィスコンティの耽美趣味が既に顔をだしながらも、やはりネオ・レオリズモで鍛えた直截な描写力が活きていて、全くヴァイタルなメロドラマになっている。
     1866年、オーストリア軍占領下のヴェネツィアで観劇中の軍の将校と抗戦運動の指導者の侯爵との間に決闘騒ぎが起り、それを諌めに入った伯爵夫人は、従弟である侯爵を流刑にされながらも、その美貌の将校に狂おしく恋をする。再び戦争が勃発し、密入国した侯爵は従姉のもとを訪ね軍資金の保管を依頼するが、夫人はその金を、将校に軍籍離脱の賄賂のためにと渡してしまう。祖国は敗れ、ヴェロナにいる彼の元に馬車を急がせた夫人の見たものは……。
     薄汚れた姿で恋人を探して兵舎を訪ね回る夫人=A・ヴァリの激情は、トリュフォーの「アデルの恋の物語」のI・アジャーニの比ではない。G・R・アルドと彼の死で途中交代したR・クラスカーのキャメラのゴージャスさ、全篇に響き渡るブルックナーの第七番。これぞイタリア映画というボリュームで観る者を圧倒する、ヴィスコンティの最高傑作。(映画データベース – allcinema より)

     

  • 映画『ニュー・シネマ・パラダイス』 感動!映画好きが泣ける映画No.1

    映画『ニュー・シネマ・パラダイス』 感動!映画好きが泣ける映画No.1

    ニュー・シネマ・パラダイス

    NUOVO CINEMA PARADISO/CINEMA PARADISO 124分 1989年 イタリア=フランス

    ニュー・シネマ・パラダイス
    ニュー・シネマ・パラダイス

    映画を愛するということ

    この映画の感想を言う時は、自分の立場を明確にしなくてはいけないのかもしれない。
    それは、映画を観る者、映画を愛する者を描いた映画で有るからだ。

    もちろん僕は、こうして映画のサイトを立ち上げている以上、映画を愛している一人である。
    従って、この映画に対しても、映画を愛する一観客として観てしまう、しょうがないが... 果たして、映画を娯楽として時々しか映画を見ない人、
    そう言う人にはこの映画はどういう風に映るのであろう?

    娯楽と言えば、映画しかなかった時代に、子供が故の純粋さに、勉強よりも映画に興味を持つのは、ある種自然の成り行き。
    そんな少年が、たまたま映写室のおじさんと仲良くなって、次第に映画の世界にのめり込んでいく。
    そして、自らが映画の映写技師になっていく。
    しかし、映写室のおじさんアルフレードは、少年から青年に成長したサルヴァトーレに、街を出るように言う。
    数十年後、サルヴァトーレはローマで有名な映画監督になり、アルフレードの訃報を聞き、故郷に戻ってくる。
    サルヴァトーレの少年時代のアルフレードとのやり取り、また、街の人々が映画観る姿が微笑ましい。

    そう、この映画観ている観客達がそうであるかのように...。 もちろん、映画の中の彼らの方がもっと純粋である、それはこの映画を観ている我々の願望でも有るのかもしれない。
    そして、サルヴァトーレは成長して恋をする。
    徐々に、映画だけではない人生が彼の前に現れてくる。
    しかし、サルヴァトーレは街を出ても、映画監督になっているのである。

    ここでふと、自分を振り返る。
    人生は、映画のような作られたものではない。
    いや、映画にも素晴らしい点が沢山ある。
    しかし、アルフレードは、「街を出ろ!絶対に戻ってくるな」と言う。
    その言葉の中に、人生にはいろいろな生き方が有ることを言っているように思えて ならない。

    アルフレードの人生は、映画だけに生き、読み書きも出来ずに人生を過ごしてきた事への後悔の有った人生なのかもしれない。
    彼の素晴らしい想い出は、サルヴァトーレとの出会いだったのかもしれない。
    サルヴァトーレは、映画から離れるために街を出たが、映画の道を選び、そう人生のいろいろな生き方の中から、映画を選んだのだ。
    いろいろな人生の選択肢から、またいろいろな経験から、サルヴァトーレは映画を選んだのである。

    僕はこの映画を、決して映画こそが人生である...と言ってる訳ではないと思う。
    人生に起こるいろいろな事は、映画以上に素晴らしい事なのだ、そして、その傍らに映画を置いておくともっと豊かに素晴らしい人生が送 れるのではないか?そんな思いを抱く。
    街に戻ってきたサルヴァトーレは、映画館の取り壊しを見る。
    そしてアルフレードが残したフィルム、かつて切り取られたキス・シーンばかりを集めたフィルム、それは郷愁と共に、人生として映画を 選んだアルフレードの魂を、サルヴァトーレは感じ取ったに違いない。

    街を出たからこそ、人生が豊かに感じられるからこそ、映画の素晴らしさを感じ取れるのであろう。
    この映画は、映画そのものを描いた映画...私には涙と歓びを持ってしか観ることの出来ない、大事な映画なのである。

    私的『ニュー・シネマ・パラダイス』

    ① テーマが有るか?共感できるか?

    映画が好きな人なら共感できない人はいないだろう、でも映画が好きな人以外でも、自分の青春に思い入れがあるなら、何か共感できることがある筈。

    ② 作り手の強い意思を感じるか?

    この作品が出来てから25年以上が経過するが、監督の故郷に対する思い入れの深さは今でも変わらない。最近(2015年)テレビで、トルナトーレ監督がシチリアを訪れて、映画の想い出を語ってくれたのは、印象的だった。
    映画(の内容)自体が、監督の青春そのものだったらしい。

    (2020.07.07. 追記)

    トルナトーレ監督は、地元の人々を映画に実際に出演させました。
    2015年でも、当時、映画の撮影エピソードやエキストラ出演した人々がトルナトーレ監督に話かけます。
    青春はある意味、美化されて思い出となりますが、それをそのままパッケージにしたような話であり、これはファンタジーとも言えるかもしれない。
    知り合いのプロデューサーが、この作品は「最低」という評価をしています。
    それも理解できる部分なのです、あまりに映画へのオマージュにあふれ過ぎていて、問題提起や時代性という映画の本来の力を使っていないというのも判ります。

    トルナトーレ監督は『マレーナ』や『海の上のピアニスト』でも同様に、正確な事実を描くのではなく、彼の創造した世界=ファンタジーとして、その時代をとらえている気がしてなりません。

    ③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?

    少年トトは実際に街に住んでいた一般の男の子の中から選ばれたカシオ少年。
    フィリップ・ノワレの名演も、カシオ少年の可愛らしさ・表現力には敵わない。
    逆に、街の人々が多くエキストラとして参加し、映画を愛していたからこそ成立した作品だと思う。

    ④ 映画らしい楽しさが備わっているか?

    映画のキス・シーンをカットするところとか、映画館の情景が生き生きと描かれている。
    そして、映写機からの光を反射させて、建物の外に映画を投影させるところは、映画館の素晴らしさを感じさせてくれる演出と言える。

    ⑤ エンターテイメント性

    笑って、泣いて、感動して~深く考えなくても、自分の青春へのオマージュを感じることが出来るだろう。

    (2020.07.07. 追記)

    昨日、エンニオ・モリコーネが91歳で亡くなった(合掌)。

    セルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』などのマカロニ・ウエスタンで多くの音楽を提供、と同時にジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品にも多く関わっている。
    この映画のスコアも印象的であり、ロマンチックで素敵な楽曲になっています。

    映画にとっては、音楽も重要な要素だと感じさせてくれる作品です。

    ⑥ 演出が素晴らしいか?

    何か素晴らしいテクニックを感じることはないが、映画好きな監督らしいツボを押さえた演出になっていると思う。

    ⑦ 脚本が素晴らしいか?

    実は普遍的なテーマを正統派の語り口で描いている。これを映画ではなくてサッカーや何か青春の1ページに置き換えてみても成り立つ物語。
    出てくるアイテムも素敵で、ラストの映写シーンは、涙無くして見れない筈。

    ⑧何度も見たくなるか?

    人を前向きにさせてくれて、人生を思い返すことが出来る、と言う点で、何度も見てしまう。
    何度見ても、泣いてしまう、そんな作品。

    映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のデータ

    監督■ジュゼッペ・トルナトーレ
    製作■フランコ・クリスタルディ
    脚本■ジュゼッペ・トルナトーレ
    撮影■ブラスコ・ジュラート
    音楽■エンニオ・モリコーネ
    編集■マリオ・モッラ
    美術■アンドレア・クリザンティ
    出演■フィリップ・ノワレ/サルヴァトーレ・“トト”・カシオ/ジャック・ペラン/アニェーゼ・ナーノ/マリオ・レオナルディ/イザ・ダニエリ/レオポルド・トリエステ/ブリジット・フォッセー 『ニュー・シネマ・パラダイス』オフィシャルサイト

    アカデミー賞 1989年 外国語映画賞授賞
    カンヌ国際映画祭 1989年  審査員特別賞授賞 ジュゼッペ・トルナトーレ
    ゴールデン・グローブ 1989年  外国映画賞授賞

    Amazonビデオで配信中!

    映画『ニュー・シネマ・パラダイス』

    【解説】
    シチリアの小さな村にある映画館パラダイス座。
    そこで青春時代を過ごした映画監督サルヴァトーレが、当時、慕っていた映写技師アルフレード(フィリップ・ノワレ)の訃報を聞き、故郷に帰ってくる。
    そして、少年時代、青年時代の思い出に浸っていたサルヴァトーレが受け取ったアルフレードの形見には、映画への愛とアルフレードの想いがぎっしり詰まっていた・・・。
    弱冠29歳のトルナトーレ監督が、映画を愛する全ての人に送る感動編。
    劇場とフィルムにまつわるエピソードはどれも楽しく、その中で展開される悲喜こもごもの人生模様。
    エンニオ・モリコーネの切なくも美しいメロディに包まれて迎える、映画の持つ“力”が具現化されたクライマックスは、涙なくして観られまい。

    かなり印象を異にする3時間完全オリジナル版もあるが、はっきりいってこちらだけで十二分である。(映画データベース – allcinema より)